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「乳姉妹」 第5回「針のむしろの学園」

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 第5回「針のむしろの学園」(1985年5月14日)

 前回のラスト、色々あって、結局千鶴子のワガママが爆発して、自分であつらえてやった耐子たちのドレスを、庭の焼却炉で自分で焼くと言う、訳の分からないことをして、剛造たちを呆れさせているシーンから。

 千鶴子はさらに、しのぶと耐子にとっとと家から出て行けと命じるが、無論、剛造がそんなことを認める筈がない。

 前回の、父親および母親の霊に対しての「優しい人間になります」宣言は一体なんだったのだろうと言う感じだが、必ず二人を追い出して見せると言い切って、自分の部屋に引き揚げていく。

 厳格な剛造、すぐ追いかけてその横っ面を引っ叩きに行こうとするが、

 
 雅人「お父さん」
 剛造「私は千鶴子を殴る。あの子の将来の為にはそうしなければならん」
 雅人「待ってください、殴るんなら僕が殴ります」
 剛造「雅人!」
 雅人「僕は千鶴子が好きです。将来は僕の妻にと思っています。未来の妻に高慢な女になってほしくないですからね。叩き直すなら僕がやります」

 「殴るんなら俺を殴れ」と言うのは青春ドラマなどではよくある言い草だが、「殴るんなら僕が殴る」と言うのは、初めて聞いたなぁ。

 とにかく、剛造は千鶴子のスパンキングを雅人に任せ、自分はしのぶたちを慰めようとする。

 
 一方、よほどあのドレスが気に入っていたのか、それを無残に焼かれた耐子の悲しみは深く、焼却炉の前に立って、とめどなく涙を溢れさせていた。

 剛造「本当にすまないことをした」
 しのぶ「いいえ、ドレスは元々お嬢様が作ってくださったものです。お嬢様の好きになさるのは当然です。私たちこそ旦那様にご迷惑お掛けしまして」

 いつもながら、しのぶは腹立たしいほどに忍耐強く、こんな場面でも殊勝な態度を崩さず、剛造に恨みを言うどころか、逆に謝罪してしまうほどであった。

 
 しのぶ「いつまでメソメソしてるの、新聞配達をしてたころのことを思い出してごらん、下着にまで染み透るような氷雨の中を走ったり、犬に噛み付かれたり、あのつらさを思えばこれくらいのこと、つらいうちに入らないわよ」
 耐子「でも、でも、私悔しい!」

 しのぶ、いつまでも泣き止まない耐子を叱るように励ますが、耐子はありったけの声で叫ぶと家の中へ駆け込んでしまう。

 その夜、ベッドに入った剛造、ふと、しのぶの「下着にまで染み透る」と言う言葉を思い返して、ついニヤニヤしてしまったと言う。

 さて、雅人、公言したとおり千鶴子を殴りに行こうと階段を上りかけるが、1階の部屋から、物悲しいピアノの音が聞こえてくる。

 ドアを開けると、薄暗い部屋の中でピアノを弾いていた千鶴子が、前を向いたまま、「お兄様、私を殴りにいらしたんでしょう?」と尋ねる。

 
 振り向いた千鶴子の大きな目からは、一筋の涙が頬を伝っていた。

 千鶴子「いいわよ、殴っても」
 雅人「千鶴ちゃん……」

 管理人の思う、千鶴子の一番タチの悪いところは、こう言う風に、何かやるたびに反省の色を示して、改心する素振りを見せるところである。

 これが、徹頭徹尾、たとえば「赤い衝撃」の原知佐子みたいに、いついかなる時も自分の行いを後悔することなく、信念を持ってヒロインをいじめまくるようなキャラなら、かえって戦いやすいのだが、千鶴子のように、ライバルに対し火のような憎しみを滾らせたその次の瞬間には、しおらしい、マザー・テレサのような清純な瞳になってしまう、実に不安定で移り気な悪役ほど、扱いにくいものはないからである。

 そして、しのぶは勿論、剛造にしても、雅人にしても、千鶴子が時折見せる反省の色に幻惑されて、つい反撃の鉾先を緩めたり、中途半端な温情をかけてしまったりして、結果的に、その抜本的な更生を遅らせてしまうことに繋がるのだ。

 で、千鶴子はこの厄介な性格のまま、その時々で周りの環境を変えつつ、ほとんど最終回近くまで、善と悪とのはざまで揺れ動き続けることになる。

 揺れ動き続けるのは勝手だが、それに延々振り回される家族や、視聴者にとっては良い迷惑である。

 今回のケースでも、その可憐な見せ掛けの涙で、やる気マンマンだった雅人の気勢を殺いでしまう。

 
 千鶴子「おかしいわね、何故涙が出るのかしら……」
 雅人「あんなひどいことをして、君だって良い気持ちはしないだろう……だけど、そんな自分をどうしようもないんじゃないか? 行こう、悪いことをしたと思うんなら謝るんだ」

 結局、殴るのはやめて、その肩に手を置いて、しのぶたちに謝るよう促すまでにトーンダウンする。

 
 その後、居間のソファに座って延々としゃくりあげては、しのぶに涙を拭いて貰っている耐子の様子は、まるっきり幼稚園児のようであった。

 だが、そこが可愛いのである!

 森恵さんがもう少し年上だったら、いっそのこと彼女をヒロインにしても良かったんじゃないかと思う。

 則子「ドレス一枚のことでいつまで……しょうのない子ね」

 と、則子が、呆れたような声を投げながら、その後ろを通り過ぎていく。

 ま、この場面での耐子はいつになくウジウジしているので、そう言いたい気持ちも分からなくはないが、心の中で思うことと、口に出して言うこととは、100万光年の開きがあることを、人はいつになったら理解できるのだろう?

 それに、生まれてこの方、セレブのべったら漬けだった則子にとっては「たかがドレス一枚」だが、生まれついての貧乏暮らしの耐子にとっては、「生涯初めてのドレス」であったことを忘れてはならない。

 
 耐子「……」

 耐子、その後ろ姿に憎しみの視線を射ると、

 耐子「お姉ちゃん、こんなとこ出て行こう! だけどその前に千鶴子さんをぶちのめしてやる!」

 そう叫んで即座に千鶴子を「ぶちのめし」に行こうとするが、しのぶが必死に引き止める。

 結果論だが、二人にとって、また千鶴子や剛造にとっても、耐子の好きにさせて、二人とも屋敷から追い出される羽目になっていたほうが、どれほど幸せだったかも知れない。

 だが、しのぶの「タエちゃん、海!」と言う一言が、魔法の言葉のようにピタッと耐子の興奮を鎮める。

 しのぶ「海よ、海の心……」
 耐子「分かった、私パーティーに行けないって陽子に電話してくる」

 耐子、微笑みながらそう言って2階に上がっていく。

 元々、二人のドレスは、耐子が友達の誕生パーティーに来て行く服がないと嘆いたことから、千鶴子が作ってくれたものだったのだ。

 
 雅人「今言っていた、海の心ってなに?」
 しのぶ「あ、真鶴の海のことです。新聞配達をしてた頃(中略)ある日、こんなことがあったんです」

 ここで、姉妹と、亡き母・静子とが、三人で真鶴の海岸のゴミ拾いをしている時の様子が回想される。

 
 しのぶ「海は元々、自分で自分を綺麗にする力を持ってるんですって……でもこんなにゴミを捨てられたら海だって死んじゃうわよね」
 静子「自浄力ね、母さん、人間にも自分で自分を綺麗にする力が備わってると思うの。だからあんたたちもどんなにつらいことがあっても憎しみとか恨みとかそんな心のゴミ抱いちゃダメよ。海のように広い綺麗な心で生きてってね」

 
 しのぶ「それで私たち、つらいことがあった時は、海って自分に言い聞かせるんです……って、あれっ、雅人さん?」

 長い回想シーンが終わって振り向くと、雅人はとっくの昔にどっか行っちゃってました。

 ……嘘です。ちゃんとそばにいます。

 
 感心したように雅人が頷くと、立ち聞きしていた剛造も入ってくる。

 剛造「耐子さんも、それを思い出して憎しみを捨ててくれたんだね」
 雅人「海の心か……良い話だね」
 剛造「千鶴子の方はどうした?」
 雅人「しのぶさんたちに謝るよう言ったんですが……」
 剛造「そうか、じゃ、私からも厳しく言っておこう」
 雅人「いいえ、千鶴ちゃんも心の中では十分反省してるんです。一晩考えさせてくれと言ってましたから」
 剛造「どうかな、あの子は、一度も人に頭を下げたことがないからな
 しのぶ(……えっ?)

 空恐ろしいことをサラッと言ってのける剛造を見るしのぶの目に、明らかな恐怖の色が浮かぶ。

 しのぶが、ただのワガママお嬢様だと思っていた相手が、精神的奇形児とでも言うべきモンスターであることを悟った瞬間であった。

 などと管理人がテキトーなことを口走っている間に、OPが終わり、

 
 紅葉坂教会で、シックな青いドレスをまとった優子が祈りを捧げているというシーンになる。

 
 と、背後の扉が開いて、一瞬なんと表現していいか分からない、物凄い色のスーツを着こなした島田が、子分たちを引き連れて入場。

 蘇芳色と言うのか、とにかく、それを着て一人で出歩くのに勇気が要りそうなカラーリングであった。

 島田「また、ここか……」

 島田は、まだ10代と思われる女の子と一緒だった。「不良少女」の景子役・立原ちえみさんである。

 
 島田「渋谷で拾った家出娘だ、店で雇うことにするからな……今夜から客の相手が出来るよう仕込んでおけ」
 優子「あなた、国へ帰りなさい」
 女の子「帰れないんです、母ちゃんは男作って蒸発しちゃうし、父ちゃんはヤケ酒飲んで私を引っ叩くし」
 優子「うちの店に来たら、もっとつらいわよ」
 島田「余計なこと言うんじゃねえ!」

 島田の面前でそんなことを言う優子を、島田がいきなり平手打ちする。

 優子、白い喉にチョーカーが良く映えるが、これは首輪のアレゴリーで、いくら反抗しても、所詮彼女は島田の飼い犬に過ぎないことを象徴しているのだろうか?

 島田「帰るんだ。二度とこんなところに祈りに来るんじゃねぞ」

 
 島田が二人を強引に連れて行こうとすると、その前に革ジャンの青年が立ちはだかる。

 言うまでもなく、朝男、否、路男である。

 前にも言ったけど、こう言う場面での登場の仕方で、松村さんの右に出る俳優はいないだろう。

 路男「島田ぁ、祈りってのは人間の呻き声なんだ。幸せな人はお祈りなんてしやしねえ。てめえらがつらい目に遭わせるから優子さんだってここに来るんだ」

 路男、ちょっと鼻声である。

 島田「とべねえ哀れな渡り鳥、路男か、羽根毟ってやれ」

 
 島田のウィットに飛んだ命令に、手下のひとりが凄んでその襟首を掴むが、路男は平然と、その両手の間から手を差し入れて、その顔面をぶん殴る。

 

 

 
 路男「……」
 手下「ぶおっ!」

 続いて向かってきた手下を、右ストレート一発で昇天させる。

 
 三人目も、原口あきまさっぽい顔にされながらぶっ飛ばされる。

 つ、強い、圧倒的に強過ぎるぜ、路男ぉっ!

 朝男って、口の割りに喧嘩は大したことなかった(トミーと引き分け、園長に完敗)し、大木も、川浜一のワルと言う割りに、鶴見辰吾と良い勝負してたから、ちょっと鬱憤が溜まっていたが、このシーンですっきりした管理人であった。

 
 一方、島田は、見てるこっちが情けなくなるほど弱く、へなちょこパンチをかわされ、左ブローを食らってふらふらになっていた。

 
 優子「路男、この子を頼んだわよ」
 路男「わかった!」

 岡田奈々さんの露出した二の腕が美しい……。

 路男は女の子を連れて教会を逃げ出し、島田たちも追いかけるが、すぐに見失って諦め、優子だけ連れて引き揚げ行く。

 路男たちは逃げたと見せかけて、実は教会の庭の茂みの中に潜んでいた。

 路男がその女の子を預けられる相手は、無論、紅葉坂教会の若山しかいなかった。

 若山は、牧師の傍ら、不良少年少女を引き取って、エリカと共にその更生に尽力していた。路男が行くと、若山は快く少女の身柄を引き受けてくれたが、その間にも、エリカたちは仲間たちとお面やちょっとしたおもちゃなどを熱心に作っていた。そうやって内職をして、なんとか食い扶持を稼いでいるのである。

 路男、ふと、カラフルな風車に目を留め、

 
 路男「先生、これはまた問屋からの返品かい?」
 若山「ああ、折角作ったんだが、近頃の子供たちはそういうのはあんまり喜ばんらしいなー」

 しかし、内職って普通、問屋から依頼されて作って納品するものじゃないの? 出来が悪いのならともかく、そう言う理由で返品はおかしいのでは?

 路男「生まれて初めて見たこの世の景色を覚えてるかい。俺は覚えてる。あれは二つか、三つぐらいの頃かな。そばにいたのは多分お袋だ。お日様が照ってた、潮風が吹いてた……」

 路男、昔を懐かしむような眼差しをして、幼い自分が浜辺で、母親らしき女性が砂山に風車の軸を刺すのを見ているイメージシーンとなる。だが、不意に険しい表情になると、

 路男「その幸せをぶち壊したのは大丸剛造だ。今俺の体を吹き抜けてるのは潮風じゃねえ」
 若山「恨みの風か……」

 
 路男「先生、この風車全部買うぜ」
 若山「ああ、ありがとう……全部買う? お前は風車の弥七か?」

 じゃなくて、

 若山「ああ、ありがとう……全部買う? どうするんだ?」

 若山、路男から数枚の千円札を渡され、何気なく受け取ってから、ギョッとして尋ねる。

 その答えは……、

 
 これだーっ!

 そう、渡り鳥連合すべてのバイクにその風車を付けさせて、暴走し倒すのである!

 路男「今夜は東京中駆け巡るぜ!」
 部下たち(トホホ……)

 部下たちは、途中で家族や知り合いに出くわさないことを切に祈るのだった。

 さて翌朝は、剛造が仕事でアメリカに旅立つ日に当たっていた。

 出立前、1階のリビングで、剛造が千鶴子に、しのぶたちに謝るよう促すが、千鶴子は頑として頭を縦に振らない。

 千鶴子「いくら考えても何故私がお手伝いさんに頭を下げなければならないのかしら?」
 雅人「千鶴ちゃん!」

 
 則子「私も、しのぶさんたちには出て行ってもらったほうがいいと思いますわ」
 剛造「お前まで!」
 則子「争いごとはもうたくさんです。しのぶさんたちさえいなければ、千鶴子さんたちの気も休まるし」

 則子までうんざりした様子でそんなことを言い出すが、剛造は剛造で、静子との約束だからと断固として拒否する。

 
 剛造「千鶴子、もっと素直になるんだ」
 千鶴子「お父様、お留守の間に私が忍さんたちを追い出すんじゃないかって心配なのね? じゃあ約束するわ、お父様がアメリカに行ってらっしゃるあいだはしのぶさんたちに出て行けとは絶対に言いません」
 剛造「ほんとか、千鶴子」
 千鶴子「でもそれは、お父様のお仕事の邪魔をしたくないからなの、別にしのぶさんたちに優しくするつもりはないわ。あの人たちとは絶対に口を利きません!」
 剛造「千鶴子!」

 我が子ながら、なんと器の小さい人間だろうかと嘆く剛造だったが、出発の時刻が迫っていたので、それ以上何も言わず、心を残しながらお抱えの車で空港へ向かう。

 その後、しのぶと耐子が歩いて学校へ向かっていると、雅人の車が追いかけてきて、剛造から預かったという一通の手紙を渡す。しのぶはその場で開封し、手紙に目を通す。

 
 剛造の声「……千鶴子も決して根は悪い娘ではない、それだけは信じて欲しい。そして何があろうと私に免じて千鶴子を許してくれたまえ……」

 と、剛造は文中で娘を庇っているのだが、しのぶの目からは、どう見ても性根の底の底まで腐り切った人間のようにしか見えないのだった。

 また、手紙には四日後の午後3時に、紅葉坂教会まで来てくれと言う追伸があった。

 
 その剛造、空港への途中でその教会に立ち寄り、家内安全をマリア像に祈っていたが、そこへ現われたのが、人間のクズ街道驀進中の龍作であった。

 龍作「ねえ、これ、何だと思います? 俺が書いた手記ですよ。あの子達が生まれてすぐ取り違えられた顛末がくわーしく書いてあります」
 剛造「……」

 剛造、龍作の語彙の中に「手記」などと言うシリアスな単語が存在していたことに驚く。

 じゃなくて、そんなことをマスコミに公表されたら一大事じゃいと驚く。

 封筒には、既に雑誌社の宛名が書いてあり、切手も貼ってあった。

 龍作の狙いは、勿論、金で、1億円と言う大金を要求する。

 
 剛造「今は時間がない。話は旅から帰ってからにしてくれ」
 龍作「じゃあ、お帰りになる日の夜、お宅のほうへ伺います。いいですね」
 剛造「……」
 龍作「どうぞ、良い旅を!」

 だが、剛造には時間がないので、帰国後に改めて話し合うことを取り決めて行こうとするが、龍作は、その背中に敬礼をしつつ、おどけた口調で挨拶を送る。

 いやぁ、こんなに思いっきり殴りたい顔はドラマでもなかなか見られませんよ!

 ま、「乳姉妹」って、そんな奴がやたらたくさん出てくるドラマのような気がする……。

 
 一方、千鶴子は、車でしのぶたちより先に学校に到着したが、手に持っていたトマトを、花壇を囲っている杭の先端に、ぶすりと突き刺す。

 
 すぐ後からしのぶたちがやってきて、不思議そうに串刺しのトマトを見ていたが、

 まなみ「千鶴子さんの癖を見るの、久しぶりね」
 女子「千鶴子さんはトマトが大嫌いなの。憎くて堪らない人がいると、いつも千鶴子さんはああするのよ」

 続いて現われた千鶴子の取り巻きたちがいとも明快に説明してくれる。

 と言う訳で、ここからしのぶにとっては地獄の学園生活のはじまり、はじまり~。

 その後、まなみたちは千鶴子がしのぶを無視していることを知って、自分たちもそれにならってしのぶを無視することに決める。さらに、

 まなみ「千鶴子お嬢様のご意向はきっとしのぶさんに学校辞めて欲しいことなのよ、もっと何かしてあげなくっちゃ」

 そう、これがいわゆる「忖度」と言う奴である。

 主に彼ら4人によって、しのぶへの(お嬢様学園としては)壮絶なイジメが開始される。

 まず、昼食時、しのぶが購買部で買ったゆで卵(そんなもん買うなよ)を、そっと生卵にすりかえ……って、その生卵はどっから手に入れたんだよ!

 
 しのぶが卵を机の角で割ろうとして、中身が制服に垂れてしまうと言う、軽いジャブ。

 
 女子「すりかえ、うまくいったわね」
 まなみ「うん」

 それを見て、小気味良さそうにほくそ笑むまなみたち。

 管理人だったら、すぐさまヨード卵光を10パックほど買ってきて、彼らがトイレの個室に入ったところに、上から卵爆弾を投下してやるのだが、しのぶは慌てて制服の汚れをハンカチで拭くので精一杯。

 千鶴子は、それを横目で見ながら、平然と昼食をとり続けていた。

 でも、親御さんによれば、「決して根は悪い娘ではない」んですってよ、奥さん!

 根が良かろうが悪かろうが、いじめられるほうからしたら同じことじゃい!

 
 さらに、中庭の水道で制服を洗っているしのぶを見て、いかにも楽しそうにげらげら笑うまなみたち。

 いやぁ、こいつらも思いっきり殴りたいわ~。

 
 しのぶ「……」

 それを見上げたしのぶが、目からレーザービームを放ってこいつら全員薙ぎ払ってやればいいのに本気で思いました。

 
 気丈で我慢強いしのぶも、まなみたちや他の生徒たちにも嘲笑されるのを見ては、思わず涙がこみ上げてくるのを抑えられなかった。

 それでも、母親に言われた「海のように広い心を……」と言う言葉を思い出し、なんとか皆殺しだけは勘弁してやるのだった。

 しかし、家では家で、今度は千鶴子からの執拗なイジメが待っていた。

 さすが千鶴子のイジメは、まなみたちよりグッと高度で、

 
 朝、学校へ行こうと玄関に行くが、まるでしのぶに語りかけるように「雨が降りそうね」とつぶやく。

 しのぶ「はい、お嬢様」

 すかさず、しのぶが傘立ての傘を取って差し出すが、千鶴子はそれを取るどころか、しのぶには見向きもせず、

 千鶴子「お母様、お母様、傘を……」
 則子「はいっ」
 千鶴子「どうもありがとう」

 わざわざ奥の母親を呼び付け、しのぶの持っていた傘を自分に渡させるのだった。

 そして、嬉しくってしょうがないという目で、屈辱と悲しさで打ち震えているしのぶの顔を見遣る。

 ……

 って、傘ぐらい自分で取らんかぁーっ!(管理人の魂の叫び)

 しかしまぁ、生まれてからずーっとこんな生活してたら、そりゃ性格も歪むわな。

 
 その様子を、窓越しにじっと見ている雅人。

 普通の男だったら、これ見ただけで千鶴子のことが嫌いになると思うのだが……。

 千鶴子も、しのぶたちへの意地悪な態度を雅人が見て、自分がどう思われるかちょっとでも考えたことがあるのだろうか?

 
 その夜、路男が部下を引き連れ、屋敷の正面扉まで押しかけてくる。

 全員風車を付けたバイクに乗っているその様は、まるで、風車の弥七の親族会議でも開かれているかのようであった。

 もっとも、路男、今までもしょっちゅう屋敷の前に来ては、ペットを吹き鳴らして自分の存在をアピールしていたらしい。暴走族と言うのはだいたい世間に迷惑をかけるために存在しているものだが、路男たちのかける迷惑は、そんじょそこらの暴走族とは桁が違っているようだ。

 
 雅人「まだ分からないのかい、人に口ひとつ利いてもらえないって言うのはね、罵られるよりつらいことなんだ。何故もっと広い心を持てないんだ? 海の心を」
 千鶴子「海の心? ああ、しのぶさんが話してたって言うあれ……お兄様、その話だとしのぶさんの心は綺麗な海で、私はそこに流れ込んだゴミのように醜いものだということになるわね」
 雅人「しのぶさんはそんな意味で言ったんじゃない!」

 同じ頃、雅人は千鶴子の部屋に行き、しのぶたちに対するあんまりな態度を責めていた。

 その最中、高らかなペットの音が聞こえてくるが、雅人は「あんなものは放っとくんだ」と、一言で切り捨てる。

 
 路男(あ、あんなもの……)

 今回の千鶴子は、良くも悪くもブレがなく、雅人に何を言われようと不遜な態度を改めようとしない。

 
 千鶴子「考えても見て、私の暮らしは朝凪の海のように穏やかだったわ、そこへ飛び込んできて、秩序を乱したのは誰? 私の立場からすればしのぶさんたちこそ、海を汚すゴミよ、排除したくなるのは当然でしょ?」

 反省するどころか、自分の立場を正当化しようとして、最後にはしのぶたちをゴミ呼ばわりする。

 
 雅人「……」

 これには温厚な雅人も我慢できず、無言で音高く千鶴子のほっぺをビンタする。

 
 引っ叩かれた千鶴子、

 
 振り向いたその目は、驚きで大きく見開かれていた。

 そんな暴言を吐いておいて、「どうして殴られなきゃいけないの?」と言う顔する時点で終わってるよね、人として。

 ま、この場合は、優しい雅人に殴られたことが途轍もなくショックだったのだろう。

 
 雅人「なんて情けないことを言うんだ、人をゴミ扱いするなんて……ムスカか!」

 じゃなくて、

 雅人「人をゴミ扱いするなんて……そんなひどい言葉をニューヨークにいるお父さんが聞いたらどう思うだろう? 僕はお父さんの代わりに殴った」
 千鶴子「……出て行って、ここは私の部屋よ」
 雅人「日本は狭い。だから、日本人は人をいびることと、競争することしかやることがないのかもしれない。せめて心だけは広く持ちたいよ、海のように」

 さすが大学生の雅人、急にむつかしい日本人論を絡めた捨て台詞を残し、さっさと部屋から出て行く。

 しかし、千鶴子を改心させる一番良い方法は、雅人が千鶴子を無視するようにすることではなかっただろうか。それでこそ、初めて無視されているしのぶたちの気持ちが分かろうというものだと思うのだが。

 さて、「あんなもの」と言われた路男たち、いつまで経っても千鶴子が出て来ないので、部下たちが痺れを切らしてじかに門を乗り越えて侵入しようするが、しのぶにホースの水をぶっかけられ、押し戻される。

 鼻息を荒くする部下たちだったが、路男は、水を被ったペットを大事そうに抱え、

 路男「命より大事なこれが濡れちまった。手入れしねえとな。引き揚げだ」
 部下たち(トホホ……)

 楽器が濡れたからって帰っていく暴走族なんて聞いたことがねえと、当の暴走族たちが心の中でぼやくのだった。

 
 路男「お前、度胸があるぜ。ふっ、誉めてんじゃねえぞ、貧乏な育ちの奴にはそれぐらいしか売り物がねえからな」

 赤ん坊を背負うように、ペットを背中にくくりつけながら、路男がしのぶに語り掛ける。

 翌日、ふとしたことから千鶴子は、人に無視されることのつらさを実感するが、それでも、しのぶに対する態度を変えようとしない。

 
 その日、しのぶたちが学校に着くと、

 
 花壇の杭の上に、5つのトマトが……。

 一応、これ、スタッフはシリアスなシーンのつもりで撮ってるんだろうけど、ちょっと笑ってしまったのは管理人だけではあるまい。

 
 また、教室へ行くと、しのぶの机の上にこんな中途半端な悪戯がされていた。

 管理人ならとりあえず机を持ち上げてまなみたちに突っ込んでいくところだが、忍耐強いしのぶは、黙ってテープを剥がし始める。

 
 そこへプリケツ男谷先生(仮名)が入ってきて、それに気付く。

 男谷「松本君、何してるんだ? 誰だ、こんなことをしたのは?」

 先生に、誰がやったか心当たりはないかと聞かれ、反射的に千鶴子の顔を見るしのぶ。よっぽど、その名前を告げたかったが、剛造の手紙の一節(なにがあろうと私に免じて……)を思い出し、

 しのぶ「心当たりはありません」
 男谷「しょうがないな。……よし、今日は授業を中止して、何故陰湿なイジメをしてはならないか話そう」

 
 男谷「それは一言で言えば、人間の尊厳を踏みにじる行為だからだ! まして君たちは大学に進学し、将来上流家庭の人となる身だ、これくらいの道理が分からぬ筈はない。もし今後イジメをしたものは、見つけ次第厳罰にする。分かったな?」
 生徒たち「……」
 男谷「よーし、以上だ」
 生徒たち「終わりかいっ!!」

 三浦友和ばりの鋭い目付きで説教をかます男谷であったが、その話が1分足らずで終わってしまったので、しのぶを含めた全員が一斉に突っ込みを入れたという。

 しかし、なんか生徒たちの反応を見ると、男谷自身、常日頃より生徒たちから無視されているのではないかと言う悲しい想像をしてしまった管理人であった。

 
 さて、帰宅中、しのぶは、学年の違う耐子までいじめられていると聞かされる。

 無論、千鶴子の意を受けたグループの仕業だろうが、いくら大丸コンツェルンの令嬢と言っても、元々そこは有名なお嬢様学校なのだから、千鶴子の威光を恐れる必要のない別のお嬢様がいてもおかしくないと思う。その人たちまで、いじめを放置して、千鶴子の好き放題にさせているというのは、いささか不自然のような気もするのだ。

 だいたい、金持ちとか貧乏人とか以前に、権威に屈せず、いじめに加担しないで、しのぶや耐子の味方になってくれる善良な女生徒だって少しはいると思うんだけどね。雅人のように。

 耐子「家に帰っても構ってくれるのは雅人さんだけだし……やっぱりあの家出て行こうよ。真鶴へ帰ろう。心の中で海って叫んでるより、貧しくてもほんとの海のそばで暮らした方がどれだけいいか知れないもん」
 しのぶ「そうね、そうしよっか……」

 無理もないことだが、耐子は大丸家から出て行こうと言い出す。

 しのぶも、連日のイジメや無視にいい加減うんざりしていたのだろう、少し考えてから、あっさり同意する。

 耐子「あれ、お姉ちゃん、負け犬みたいに逃げたくないって反対すると思ったんだけどな」
 しのぶ(じゃあ、そんな提案しないでよ……)

 その日のうちに屋敷を出て行けば、しのぶも千鶴子もこれ以上傷付かなくて済んだかも知れないが、またしてもそれを邪魔したのが、剛造が善意からしたためた、あの手紙の存在だった。

 
 しのぶ、せめて剛造の指示は守ろうと、出立から四日後の午後3時、紅葉坂教会へ行くが、そこでしのぶを待っていたのは、意外にもニューヨークからの剛造の国際電話だった。

 剛造「君、変わりはないかね」
 しのぶ「はい、お陰さまで」
 剛造「千鶴子が君に口を利かないんじゃないのか?」
 しのぶ「……」
 剛造「やっぱりそうなんだね」
 しのぶ「いいえ、お嬢様はその後、とても優しくして下さいます」

 家を出て行くと決めているのに、つい剛造を心配させまいとそんな偽りを口にしてしまうしのぶだった。

 剛造「それならいいんだが。どんなにつらいことがあっても、私に黙って家を出るようなことはしないで欲しい。いや、なんだか、君がいなくなるんじゃないかって気がしてな」

 
 剛造「しのぶさん、くれぐれも元気でね」
 しのぶ「はい、ありがとうございます」

 善意からとはいえ、しのぶたちの決意を見透かして妨害する形となった剛造からの電話であった。

 かつて若山が言っていたように、悲劇と言うのは悪意からだけではなく、善意からも生まれてしまうものなのかもしれない。

 結局、しのぶは耐子を説得し、大丸家を出ることを思い止まらせる。

 そしてプリケツ男谷の説教の後も、しのぶへの陰湿ないじめは続いていた。

 つまりは、男谷の面目丸つぶれ! と言うことである。

 まぁ、プリケツ男谷に人の道説かれてもねえ……。

 これが熱血・滝沢先生や、爽やかトミー先生だったら、幾分か違っていただろうが。

 さて、やっと剛造が帰国する日がやってくる。約束どおり、門の前で龍作が帰りを待っていたが、そこへ風車軍団が現われる。

 
 路男「あんたも大丸家を狙ってるらしいが、俺のほうが先口だ、消えな」
 龍作「何だと、この若造!」

 路男の声が、また鼻声になっている……。

 路男は殴りかかってきた龍作を軽くあしらうと、彼が持っていた「手記」を、中身も読まずにその辺りにぶちまけてしまう。

 それには、路男にとっても非常に重要な事実が記されていたのであるが……。

 
 路男が龍作をぶん殴って追い払った後、また延々とペットを吹き鳴らしていると、遂に我慢できなくなった千鶴子がアーチェリーを手に家から出てくる。

 路男「とうとう出て来たな」
 千鶴子「あなたね、この間から耳障りな音を立てていたのは」

 
 路男「……」
 千鶴子「やめなさい!」

 路男、再びペットを吹き始める。千鶴子が矢をつがえて引き絞るが、一向に構わず徐々に千鶴子に迫っていく。

 このまま千鶴子が指を放して、矢がペットを通り抜けて路男の口の中に刺さったら面白いだろうなぁと思った管理人であった。

 
 が、路男は千鶴子がひるんだところで、素早くその弓を奪い取り、

 路男「お嬢さん育ちには人は殺せねえよ。今夜はあんたと差しでゆっくり話がしてえ、連れてけ」

 部下たちは、力づくで千鶴子を連れて行こうとする。

 しかし、剛造が帰ってくると分かっている夜なのに、則子や雅人がその騒ぎに気付いて出てこないというのはちょっと変だよね。

 
 と、そこへしのぶがやってきて、千鶴子を助けようとするが、あっさり突き飛ばされる。

 ならばと、路男が持っているペットを奪い取ると、それをバイクの前で振り上げ、

 しのぶ「千鶴子さんを放してください、でないとこれを叩き潰します」
 路男「貴様ぁ……」
 しのぶ「これはあなたが命より大切にしてるものでしょ。良いんですか」
 路男「よし、わかった。放してやれ」
 部下「だけど、会長」
 路男「いいから放してやれ!」
 部下(トホホ……)

 トランペットを人質にされて尻尾巻いて逃げてきましたなんて、とても人には言えねえなぁと今回三度目のトホホな気分になる渡り鳥たちでありました。

 路男「この女は命を賭けてやがる、くだらねえことにでも命を賭ける奴を俺はとりあえず尊敬する」

 しのぶは、千鶴子をガードするように門の中へ入ってから、ペットを路男に返す。

 路男「お前は千鶴子にはもったいねえようなお手伝いさんだぜ、今夜はお前に免じて引き揚げるが、このことだけは覚えておけ、金持ちだけは絶対に信用できねえぞ。また会おう!」

 怪人二十面相みたいな台詞を残して、路男たちはけたたましく走り去って行く。

 
 しのぶ「お怪我はありませんか」

 しのぶ、弓矢を拾って千鶴子に渡しながら言葉を掛けるが、千鶴子、礼を言うどころか、いきなりその頬を引っ叩く。

 千鶴子「余計なことを……私ひとりでもあんな連中負けはしなかったわ!」

 いくらいじめていた相手に助けられたからといって、ビンタするのはどう考えても頭がおかしいよね。

 しかし、くどいようだが、「決して根は悪い娘ではない」のである!

 さすがにしのぶが「やってられねえ」的な顔で頬に手を当てて立ち尽くしていると、漸く剛造の車が到着する。

 久しぶりに剛造の顔を見て、しのぶも笑顔になるが、ここでまた剛造が、しのぶにお土産のブローチを渡すと言う余計なことをして、しかもそれを千鶴子に見られてしまい、千鶴子の憎しみの火に油を注いでしまう結果を招く。

 ここまで来ると、剛造、わざとやってるんじゃないかと言う気さえしてくるが、あくまで偶然の神(大原清秀)の悪戯なのだった。

 翌朝、しのぶたちが学校に着いて目にしたのは、

 
 花壇の杭に串刺しにされた無数のトマトたちであった……。

 いや、さすがにこれは笑っても良いよね?

 朝早く来て、ビニール袋に入れた大量のトマトをひとつひとつ杭に刺している千鶴子の姿を想像すると、笑いが止まらなくなってしまう管理人であった。

 しのぶ、そのトマトを抜き取ってゴミ箱に入れながら、

 しのぶ「私は千鶴子さんを恨まない、でも、海だって時には怒るわ! 私、戦う!」

 堂々の宣戦布告をしたところで「つづく」のだった。

 こうして次回、耐えに耐えてきたしのぶと、全国のトマト農家の皆さんの怒りが爆発し、学園を千鶴子たちの血の色で真っ赤に染め上げていくことになる(註・なりません)。
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