第13話「狙われた怪魔少女」(1989年1月29日)
茂とその親友の健吾が自転車を走らせていると、突然、前方から緑色の不思議な光が飛んでくる。

驚いて指差す二人の傍らを、光は猛烈なスピードで駆け抜けていき、

それが通過した落ち葉の上に炎の筋が走る。
光は二人のそばを通った後、大小二つの塊に割れて左右に飛び散る。
好奇心旺盛な二人は急いでその後を追い掛ける。

大きな方の光は、小型宇宙船のような乗り物の残骸として実体化して人気のない場所に墜落し、乗っていた二人の人間もやや離れた場所に投げ出される。
キララ「パパ!」
サム博士「大丈夫だったか、キララ?」
キララ「うん!」

二人が互いの無事を確認しあった直後、背後の残骸が激しく爆発し、巨大な炎を噴き上げる。

キララ「パパ、Gクリスタルが!」
サム博士「近くに投げ出されのかも知れない。あれが帝国の手に渡ったら大変なことになる」
その特殊な耳の形状や服装から、彼らは地球人ではなくクライシス人であり、それもクライシス帝国から追われている立場だと言うことがうかがえる。
そして彼らの言う「Gクリスタル」は、小さな方の光となって茂たちのいた場所からそう遠くない森林公園の芝生にめり込んでいた。

茂「隕石だ。綺麗だなぁ」
健吾「きっと宝石だよ。宇宙からやって来た緑の宝石だ!」
一方、こちらは、毎週毎週必ず何らかのトラブルに巻き込まれて、てんやわんやの騒ぎとなるクライス要塞の皆さん。最後に必ず怪人が倒され、作戦が潰されるところなどは、毎回必ず寅さんが失恋する「男はつらいよ」シリーズとほとんど同じである(註・そんなことはない)。
試しにキャラを当て嵌めてみると、
怪人……寅さん
ジャーク将軍……おいちゃん
マリバロン……さくら
ガテゾーン……博
ボスガン……タコ社長
ゲドリアン……源ちゃん
RX……マドンナ
クライシス皇帝……御前様
と言うことになる(なるかっ)。

ジャーク将軍「なにっ、サム博士と娘が逃げたっ?」
チャックラム「Gクリスタルを持って空間移送機に乗り、エスケープ」
マリバロン「怪魔界より地球へ呼び寄せたサム博士によって、せっかく地球側の次元転換装置も完成したと言うのに、肝心のGクリスタルがなくてはその装置も作動しない」
ボスガン「次元転換装置は地球側と怪魔界側と両方作動して初めてその効果を現わすもの。そのどちらかが作動しなくても次元の転換はありえない」
マリバロン「取り戻さなくては」
ガテゾーン「二つの次元転換装置が連動し、作動すれば、地球と怪魔界が一瞬のうちに入れ替わるんだ。地球人を暗いねじれた空間に永遠に閉じ込めて、俺たちはこの明るい世界へ出て行けるんだぜ?」
ゲドリアン「ジャーク将軍、この失敗は必ずや……」
ジャーク将軍「みなのもの、説明台詞乙!」 じゃなくて、
ジャーク将軍「Gクリスタルは地球、怪魔界を通じてもたったひとつしか存在しない。なんとしても取り戻し、作戦を成功させるのだ!」

さて、サム博士とキララはすぐにクライシスに見付かってしまい、怪魔異生獣フラーミグラーミと戦闘員たちに取り囲まれる。
なんか、このキララ役の女の子の立ちポーズが、怯えていると言うよりダンスしているように見えて、妙に緊迫感がなくて可愛いのである。

怪人「Gクリスタルを出せぇ」
サム博士「Gクリスタルを奴らに渡したら、何もかもおしまいだ。分かってるな?」
キララ「うん!」
サム博士は自分が戦闘員を押さえつけている間に、キララをその場から逃走させる。
フラーミグラーミが博士を締め上げていると、その悲鳴を聞きつけた光太郎が飛んでくる。

長い手足を振り回して、戦闘員を蹴散らす光太郎。
倉田さん、今見ても惚れ惚れするほど足が長い。アクションも上手くなったし……。
これでドラマもの方も面白けりゃなぁ(溜息)。

光太郎「変身!」
カッコよく変身ポーズを取ってRXに変身するが、フラーミグラーミはすぐに退却する。

キララ「ここに落ちたんだわ、でも、何所行っちゃったんだろ?」
父親からGクリスタルの回収を頼まれたキララは、その落下地点を探し当てるが、既に茂と健吾によって持ち去られた後だった。
キララを演じるのは南風見恵子さん。この少し後の「ちゅうかなぱいぱい」18話では、ぱいぱいが変身した排田排子と言う美少女を演じている。

キララ「そうだ、これを掛ければ、少し前に起きたことが再現できるわ」
キララ、大きなゴーグルのような物を取り出して顔に付ける。それは、過去の出来事を映像として見ることが出来ると言うドラえもんのひみつ道具顔負けのハイテクメカであった。
キララ「何処かの子供たちが持って行ったんだわ」
茂と健吾がGクリスタルを持ち逃げする映像を見て、途方に暮れるキララ。
涼しげな目元と言い、ナチュラルな(棒読み)演技と言い、ギャル軍団みたいな衣装や髪型と言い、このキララと言う女の子、なかなか魅力的である。

だが、クライシスの目を逃れようと、たまたま前を通り掛かった同世代の女の子の服装を参考に、

右腕のリングに触って、一瞬でありきたりのスタイルになってしまうのがちょっと勿体無い。

新しい服をまとってご機嫌で歩き出すキララだったが、曲がり角で自転車に乗った健吾が飛び出してきて、健吾がこけて膝小僧を擦り剥いてしまう。
キララ「ごめんなさい」
健吾「気をつけろよ!」

反射的に怒鳴り声を上げる健吾であったが、相手の顔を見た途端、態度が軟化する。
健吾「カワイイ……」
キララ「怪我したの?」
健吾「もう大丈夫だよ、このくらい」
……
チクショウ、美人なら何しても許されるのかよぉっ! (全国の不美人の皆さんに成り代わり、管理人の魂の叫び)
キララ、さっきのビジョンでははっきり子供の顔は分からなかったので、健吾がGクリスタルを発見した子供のひとりだと気付かず、とりあえずその辺の子供を集めて情報を得ようと、健吾に彼の友人たちを紹介してくれるよう頼む。

光太郎「次元転換装置?」
サム博士「地球と怪魔界を一瞬のうちに反転させてしまうその装置を作る為、私は娘のキララと共に地球に連れてこられました。だが、その反転の巨大なエネルギーに地球も怪魔界も耐えられないんです。地球も怪魔界も共に大爆発を起こし、全てが滅びてしまう。だが奴らは私の言葉を信じようとはしないんです」
光太郎「だから、命懸けで脱出したんですね」
一方、光太郎はサム博士からあらましの事情を聞き、Gクリスタルの回収とキララの保護を博士に約束するのだった。

だが、キララは健吾との待ち合わせ場所に行く途中、フラーミグラーミに見付かり、触腕のようなもので絡め取られる。

怪人「Gクリスタルを出せ」
キララ「持ってないわ」
怪人「むん、白状させてやる!」
フラーミグラーミは……どうでもいいけど、「RX」の怪人ってこういう覚えにくくて間違いやすい名前の奴が多くて嫌いである。他にも、ガイナギスカン、ドクマログマ、ムサラビサラ、ギメラゴメラ、ガゾラゲゾラとか……キララの体に電流を流して催眠状態に落とす。

怪人「さあ、言え」
キララ「誰か子供が持って行ったの。だからみんなを集めて探すつもりで……」
夢見るよう眼差しで問われるままに何もかも告白するキララ。
ちょうどその時、こちらに近付いてくる子供たちの声が聞こえてくる。「女の子を紹介してやる」と言う健吾の言葉に釣られてやってきた茂や他の子供たちであった。

フラーミグラーミはキララの体に乗り移る。それと同時にキララの爪が毒々しいピンク色に染まり、メイクも分かりやすい邪悪系のものになる。

健吾「すっごく可愛くてさぁ、優しくて、美人で……」
子供「ほんとかよ!」
子供「信じられないよ!」
半ズボン姿も勇ましい子供たち(非モテ)ががやがや言いながら歩いていると、その美少女が目の前に現われる。

健吾「キララちゃん!」
キララ「あなたたち、Gクリスタルを知らない? 緑色の宝石のように透き通った石よ」
健吾「ええー」
健吾が笑顔で駆け寄るが、怪人に操られているキララは健吾には見向きもせず、単刀直入にGクリスタルのことを茂たちに問い掛ける。

キララ「私、それが欲しいの。それを手に入れる為なら、100万円、いいえ、1000万円上げてもいいわ。誰か持ってないの?」
いかにもゲドリアン配下の怪人らしく、金で子供たちを釣ろうとするキララの中のフラーミグラーミ。
もしマリバロンが指揮を取っていたなら、もっと子供たちの情に訴える作戦に出ただろう。あの宝石は、自分の死んだ肉親の形見の品なんだとか言って。
健吾「それなら……」
茂「健吾!」
健吾「あ……」
健吾、別に金に目が眩んだ訳ではないだろうが、思わずGクリスタルのありかを話してしまいそうになるが、茂に鋭く注意されて口ごもる。
二人はGクリスタルのことは誰にも内緒だと固く約束していたのだ。

茂「何が可愛くて優しくてだよ、あの子性格悪いじゃないか」
健吾「そうかなぁ」
茂「健吾、この石を二人で研究しようと言い出したのはお前だぞ。ノーベル賞貰えるかも知れないんだ」
貰える訳ねえだろ。 健吾「キララちゃんがあんなに欲しがってるんだ。上げたっていいじゃないか」
茂「じゃあお前は男同士の約束より、女の子の方が大切なのかよ」
7話では
「女の子とデートするより、男の友達と遊んでいる方が幸せだ」などと悲しいことを言っていた茂なので、キララの望みを叶えてやりたい健吾の気持ちなど一切汲んでくれない。
さらに、「大体この石は俺が見付けたんだ。それを二人のものにしてやったんだぜ?」と、傲慢な態度で言い放ったものだから、どちらか言うと大人しい健吾もついに切れる。

健吾「茂、お前がそんな奴だとは思わなかったぜ!」
茂「お前こそなんだよ、あんな女の子にチャラチャラしちゃって!」
健吾「分かったよ、約束だけは守ってやる! だけどもうお前なんか友達じゃねえや!」 健吾、そう叫ぶと、茂の前から走り去る。
茂「チェッ! こっちだってお断りだ!」
売り言葉に買い言葉、茂もついそんな憎まれ口を叩いてしまう。
健吾の前に再びキララが現われ、Gクリスタルのありかを尋ねる。自分で言ったとおり、約束だけは守って口を閉ざす健吾だったが、キララが女の子とは思えぬ馬鹿力でその腕を捩じ上げる。

キララ「どこにあるの?」
健吾「うわっ、うっ……」
キララ「さあ、言いなさい」
やがて健吾の腕を取ったまま、キララの体からフラーミグラーミが抜け出し、本物のキララはどさりと地面に投げ出される。

健吾の身に危険が迫っているとも知らず、茂はGクリスタルをもてあそびながら芝生の上に寝転がっていた。
茂「あいつ、ほんとに絶交する気かなぁ……」
光太郎「茂君」
そこへ光太郎が通り掛かる。茂は慌ててGクリスタルをポケットにしまう。

光太郎「どうしたんだ、元気ないぞ」
茂「健吾と喧嘩したんだ」
光太郎「あっはっはっ、そうかぁ、僕も友達と良くやったなぁ。喧嘩するほど仲が良いって言うじゃないか。それに喧嘩した後って前より仲良くなれるんだ」
茂「そうかなぁ」
光太郎「心配ないよ、本当の友達なら大丈夫さ」
人生の先輩として、健吾との仲がこれっきりになるのではないかと心配している茂を元気付けてやる光太郎。
光太郎の台詞、これが「BLACK」当時のまま光太郎のキャラなら、当然、親友と言うより兄弟に近い存在だった信彦(シャドームーン)のことを念頭においての重みのある台詞になって、なかなかしんみりした雰囲気になると思うのだが、「RX」の光太郎が言うと、本当に言葉どおりの意味しか持たない、何の深みもない人生訓にしか聞こえなくなる。
光太郎に対しても健吾との約束を遵守してGクリスタルのことは隠す茂であったが、光太郎と別れた後、再びフラーミグラーミにのっとられたキララと出会う。
キララは、健吾が怪人に捕まったこと、Gクリスタルを持ってこないと殺されると告げ、茂を健吾のいる場所へ案内する。

砂利だらけの険しい斜面をよじ登ろうとして、差し出されたキララの手を掴む茂。
と、茂の目が、キララの肩越しに、高台の上の柱に縛り付けられている健吾の姿を捉える。
健吾も同時に茂に気付き、「茂、来るな、そいつは本物のキララちゃんじゃなーい!」と叫ぶ。

茂「えっ?」

茂が驚いてキララの顔をもう一度見ると、いかにも悪いこと企んでいる目付きで自分を見詰めていた。
でも、可愛い……。
キララの体からフラーミグラーミが出て、茂の体を抱きすくめてGクリスタルを渡せと強要する。
茂「渡すもんか、健吾と約束したんだ! 男同士の友情だ」
健吾「茂……」
ならばと、フラーミグラーミは健吾に触手を巻き付けて茂を脅す。それを見た茂はあっさりGクリスタルをポケットから出す。怪人はGクリスタルを奪うと、もう用はないとばかり茂の体を放り投げる。

茂「うわーっ!」
……
こんなもん見せられてもなぁ。
せめてキララちゃんだったら……。
だが、茂の体は空中で光太郎に抱き止められる。
フラーミグラーミは、拙速にその場で次元転換装置を起動させて、直ちに地球と怪魔界の入れ替えを行おうとする。これも、わざわざ最大の敵RXを前にして、そんな重大なプロジェクト行うと言うのは、いかにも危なっかしい行為に映る。
この場は一旦Gクリスタルを持ち帰るだけにして、日を改めて安全な場所に次元転換装置を設置して行うのが吉であったろう。
もっとも、サム博士の言葉が正しいとすれば、仮に次元転換が行われていたら地球も怪魔界も消滅してしまっていただろうから、結果としてフラーミグラーミの判断が二つの世界を救うことになったのであるが。
次元転換装置の影響で、大地が揺れ、あちこちで激しい爆発が起きる。
茂はひとりで険しい斜面を登って健吾を助けようとする。途中でキララも目を覚まし、茂に手を貸して健吾のところまで到達する。
光太郎、ここでRXに変身して、まずは三人をその場から逃がす。

空高くジャンプして、カメラの手前に着地するRX。
RXと言えば、やはりこの、着地の際に手で地面を叩く仕草だよね。なんの役に立つのか知らんが……。
ここからラス殺陣になるが、

姿を消したフラーミグラーミの攻撃で爆発が起き、RXの体が宙に舞うシーンや、

同じく、連鎖的に起こる爆発の中をアクロバッターに乗るRXが、炎の舌に舐められながら突っ切るシーンなど、エクスプロージョンショットについては言うことなし。
ただねえ……、

アクロバッター「左後方5メートル、0.5秒後に実体化」
自由自在に姿を隠顕させるフラーミグラーミの位置を、アクロバッターが口頭でRXに知らせるシーンには正直げんなりしてしまう。
だいたい「0.5秒後」って……、そう言ってる間に実体化しちゃうだろ。

RX「リボルケイン!」
それはさておき、RXはアクロバッターの助言を受けて後ろを向いたままリボルケインを抜き放ち、フラーミグラーミの体を貫く。
そして次元転換装置はフラーミグラーミの体と共に吹っ飛び、Gクリスタルも消滅、こうしてあえなくクライシスの壮大な計画は「わや」になってしまうのだった。

キララ「健吾君、茂君、本当にありがとう」
ラスト、このまま地球にとどまり、怪魔界に平和が訪れるまで人間として生きていくと言うサム博士とキララを、光太郎たちが見送る。
キララは二人と握手をして爽やかに去って行き、健吾と茂の甘酸っぱい青春の思い出となるのだった。
今回の事件を通じて、茂と健吾がより強い友情で結ばれたことは言うまでもない。
そして管理人がそんなことに何の興味も感じないことも、また言うまでもないのだった。
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