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アニメ「はいからさんが通る」 第31話「ああ涙もかれ果てて」



 第31話「ああ涙もかれ果てて」 作画監督 富永義貞

 前回、忍の小隊とコサック兵の死闘が繰り広げられたシベリアの荒野の上を、猛吹雪が吹きつけ、人間の死体も死馬も打ち捨てられた武器も、何もかも真っ白に覆い尽くしていく。

 生き残った兵士たちは、1メートル先の視界も利かない中を、忍や鬼島の姿を求めて探し回っていたが、どちらの影も形も見当たらなかった。

 兵士たちは諦めて引き揚げようとするが、忍に強い恩義を感じている小林二等兵だけは、仲間の反対を押し切って吹雪の中へ突っ込んでいく。

 この調子だと、行方不明になった鬼島を探しに行って行方不明になった忍の行方を探しに行って行方不明になった小林二等兵を探しに行って……と、エンドレスで遭難と捜索が繰り返される気がしたが、他の兵士たちも小林の後に続き、ひたすら忍と鬼島の名を呼びながら見る見る積もっていく雪の上をさまようのであった。

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 一方、東京にははや秋の気配が漂っていた。

 伯爵邸の庭に、雪のように銀杏の葉がひらひらと舞い落ちる。

 紅緒「もう秋ねえ」
 蘭子「銀杏がこんな!」
 紅緒「ギンナン見っけ、如月さんに頼んで茶碗蒸しに入れて貰おうっと」
 蘭子「そうそう、煎って食べても美味しいしね」

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 蘭子「そう言えば、子供の頃、良く植物園にギンナンを拾いに行って」
 紅緒「そうねえ、良く行ったわねえ」

 今回の作画は(悪い意味で)安定の富永義貞画伯と言うことで、ご覧のとおり、蘭子がパーマを失敗してチリチリに焼けたような髪型になっている。

 期せずして、二人ともギンナンにまつわる幼い頃の共通の思い出に心を馳せ、懐かしい気分になる。

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 蘭子「僕たち、どうしてあのままでいられないんだろう?」
 紅緒「蘭丸……」
 蘭子「ごめん、こんなこと話して、紅緒さん困るだけなのにね」
 紅緒「ううん、ありがとう」

 不意に陰影の濃い顔になって、深刻な思いを吐露する蘭子。

 蘭子「少尉、まだ帰ってこないのかなぁ。だって10月18日に12000人の帰還が決まってもうとっくに戻ってきた人もいるんだってよ」
 紅緒「……」

 蘭子、わざと明るい声を出して話題を転じるが、それは紅緒もずっと気になっていることだった。

 無論、紅緒は必ず忍が無事で帰ってくることを信じていた。

 加藤高明から「外交上まれにみる失政」と酷評されたシベリア出兵は、かなり早い段階から一部部隊の撤退が行われていたようだが、日本軍が完全に撤兵するのは、これから4年後の1922年のことである。

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 と、そこへ、ただならぬ様子で、如月が走ってくる。

 紅緒「あら、いいところへ、今、ギンナンが焼けたところよ」
 如月「ギンナンどころではありません! 奥様がお倒れになって」
 紅緒「えっ、なんですって!」

 紅緒と蘭子、愕然として、折角集めたギンナンも焚き火もそのままにして屋敷の方へ駆け出す。

 この後、焚き火が延焼して庭木も建物も、敷地ごと全焼したそうです(嘘)。

 伯爵夫人はベッドに横たわり、うわごとに忍の名を呼んだりしていた。医者が呼ばれ、鎮静剤が打たれる。

 原作では如月が「軍から知らせがあった」と言っているので、忍の戦死の知らせを聞いてショックで倒れたことが分かるのだが、アニメではそれが省略しているので、その辺が曖昧で、日頃の心痛が祟って倒れてしまったようにも受け取れる。

 その後、忍の部下の兵士たちが紅緒に会いに来たとメイドが取り次ぐ。夫人のそばを離れたくない紅緒であったが、父親の花村少佐も同行していると知り、1階の大広間に降りて行く。

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 紅緒「お父様、お久しぶりです」
 花村「紅緒、忍君の隊の部下たちだよ」
 兵士「お会い出来て光栄であります!」
 紅緒「こちらこそよろしく……」
 小林「少尉殿はいつも紅緒さんのことを話しておいででした」

 その中には、あの小林二等兵の姿もあった。

 忍の声で「紅緒さんて人は優しくて明るくて……」と具体的に語られるのだが、確かに忍、鬼島に紅緒のことを親しく話したことはあったが、それ以外の部下には一言も言ってなかったと思うのだが。

 ま、アニメでは忍が鬼島に紅緒のことを話した後、だいぶ日数が経っているのでまだ分かるのだが、原作では、忍が初めて鬼島に紅緒のことを話した直後、敵兵に囲まれて逃走し、忍と鬼島が行方不明になっているので、兵士たちが聞いたというのは、どう考えても矛盾している。

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 小林「自分たちの隊は真っ先に最も危険な最前線に回されたのです。ならずものの集まりと軍の上部から睨まれてたもんすから」

 立ったままでは話も出来ないということで、応接室のテーブルに座って、彼らの話を聞く紅緒。

 小林は、そもそも彼らが前線に送られることになった経緯から切り出して、本隊から見捨てられてコサック兵に囲まれたこと、乱戦の中で鬼島を助けようとして引き返した忍が行方不明になったことなどを要領よく説明する。
 無論、こんな場合、「忍が余計なこと言ったから最前線に送られることになった」などと婚約者に対して無神経なことは言わないものなのである。

 忍の人柄を褒めちぎりながら、小林たちは熱い涙をこぼす。花村も思わず貰い泣きをする。

 最初はきょとんとしていた紅緒だが、漸く彼らの言わんとしていることを悟り、思わず倒れそうになる。父親の花村少佐が慌ててその体を抱きとめる。

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 紅緒「みんな、何を言っているのか、わからない。……一体みんな何を言おうとしているのか」

 理性では分かっていても、その感情は「忍の戦死」と言う忌まわしい事実を拒絶して、認めようとしない。

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 花村「紅緒、信じたくはないが、伊集院忍君は戦死したのだ」
 紅緒「少尉、少尉……、死んだ……?」

 紅緒、目の前のコーヒーカップを激しく倒すと、黒い液体をテーブルの上にぶちまける。

 と、そこへ伯爵と如月に両側から支えられながら、伯爵夫人が姿を見せる。

 ……しかし、さっき鎮静剤を打たれたばっかりなのに、伯爵夫人まで出て来ると言うのはいかにも不自然だ。

 原作では三人ともこの場には出て来ない。

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 伯爵「わしはこの家のあるじ、伊集院伯爵じゃ」
 兵士「はっ、お噂はかねがね伺っております!」

 小林たちは直立不動で伯爵に対して敬礼する。

 伯爵「ま、楽にしてくれたまえ」
 花村「お久しぶりです。このたびは忍君のこと、無念であります」
 伯爵夫人「忍のこと、話してください。どんなことでも聞かせて」
 兵士「は、何を思い出しましても胸が詰まりまして」

 小林たちはみな目に涙を浮かべて言葉を詰まらせる。それを見て、夫人も如月も新たな涙を誘われる。

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 伯爵「こりゃお前たちそれでも帝国軍人か、男だったらしゃんと……く、く、しゃんとせい、しゃんとーっ!」

 嗚咽する兵士たちを叱り飛ばしながら、伯爵も涙を流すまいと天を振り仰ぐのであった。

 ここで溶暗(フェードアウト)してCMです。

 CM後、

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 兵士「自分たちは最初は少尉殿のことをただの苦労知らずのお坊ちゃんだとばかり……」

 引き続き同じ構図で、兵士たちが乞われるまま忍の思い出話をしているシーンとなる。

 正直、「え~っ、もうこの話ふくらませるのやめましょうよ~っ」と言う気持ちになってしまった。

 小林たちも実はそんなに話すことはなかったのだが、家族の手前、「いや、他には特にないデス」などと言う訳にも行かず、

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 小林「(前略)ただひとつの泣き所は手紙です。日本から懐かしい便りが来る日も、孤児の自分には葉書一枚来たためしがございません」

 仕方なく、小林、無い頭を絞って、それらしい感動的エピソードを即興ででっちあげることにする(註・あくまで管理人の妄想です)。

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 小林「その時、少尉はロシア革命で親を失った白系ロシアの孤児たちを連れてきて……」

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 小林「自分に日本語の先生になれっていうんです」

 戸惑いつつ、小林が子供たちに日本語を教えている微笑ましいイメージシーンが描かれる。

 ……しかし、なんでロシアの孤児たちが日本語を習わなくてはならないのだろう?

 そもそも、ロシア語が分からなかったら、日本語だって教えられないと思うのだが。

 だいたい、紛れもない侵略軍である日本兵と、いくら白系(反革命派)だからと言って現地住民との間にそんなほのぼのした空気が流れていたとは到底思えない。

 よって、管理人の妄想どおり、そもそもこの話は小林が作り出した嘘だった可能性が高い。

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 それはともかく、話のオチは、小林たちが最前線に赴く時、レーザービームを発射しそうな目をした女の子に見送られ、人の温かさに触れることが出来て幸せでした、と言うものだった。

 ただ、これもねえ……。忍が彼らと打ち解けたのは、喧嘩をして最前線に送られることが決まったあとである。つまり、それから最前線に送られるまでの僅かな間に、現地の子供たちと落ち着いて交流を図る時間的余裕があったとは考えにくいのだ。

 これが、最前線の駐屯地での話なら、まだ分かるんだけどね。

 とにかく、小林の信憑性の無い思い出話を聞いて、伯爵たちも「いかにも忍らしい」と悲しみを深くし、とめどなく涙を流すのだった。

 だが、紅緒だけは、最初に一筋涙を流した後は、無表情で一切の涙を見せなかった。あまりに深い悲しみに心を抉られ、泣くことさえ出来なかったのだろう。

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 翌日(?)、それこそ涙のような冷たい秋雨が降っている。

 天丸・地丸も、ご主人様の亡くなったことが分かるのか、天を仰いで悲しげな鳴き声を放っている。

 今回の作画はお世辞にも上手いとは言えないのだが、この犬なんかは割と良く描けている。

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 紅緒(あの日から、おばあさまはショックのあまり寝込んでしまわれて……おじいさまはあれからお部屋に閉じこもってしまわれたきり……時々出ていらっしゃると目が赤く腫れているのが分かる)

 紅緒のモノローグで、悲報を受けた後の伯爵邸の様子が描写される。

 しかし、「ショックのあまり寝込んで……」と言うのなら、やっぱり伯爵夫人は最初にぶっ倒れたままにして、(演出上)応接室には来させるべきではなかっただろう。

 伯爵夫妻は勿論、如月もメイドたちも太陽のような存在だった忍の死を嘆き悲しみ、泣き暮らしていた。

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 蘭子「紅緒さん、少尉のお葬式、明日だって」
 紅緒「そう……」

 蘭子からそう聞かされても、紅緒は他人事のように聞き流し、フランス窓を開いて雨のしとしと降るテラスへ出る。

 紅緒「私は何故、涙が出ないの? 泣くことが出来ないの? 悲しみに塞がれて声が出ない。目が塞がれて涙が出ない……」

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 忍の声「きっと帰って来ますよ、きっと」
 紅緒「そうよ、あなたは帰って来なくてはならないのよ! 私のこの思いを聞くために、帰って来なくてはいけないのよぉっ!」

 紅緒は懐かしい忍の面影に向かって、全身全霊から絶叫を迸らせる。

 やっぱり、横沢さんは上手い。

 と言うか、昔のアニメ声優さんはみんな上手いんだけどね。

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 紅緒はそのまま屋敷を出て、雨の降りそぼつ街をあてもなく歩く。

 紅緒(私は信じない。信じたくない。どうして、どうしてあなたは帰ってこないの?)

 自分を奇異な目で見ている通行人たちの姿も目に入らず、紅緒の胸に去来するのは何処まで行っても忍の優しい笑顔だけであった。

 しかし、これはだいたいアニメも原作も同じ展開なのだが、雨の中を傘も差さずに出掛けて行った紅緒を、蘭子がそのまま放置しているのはいささか解せない。

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 しばらくすると雨もやむが、橋のたもとで流しのバイオリン弾き(?)が、シベリア出兵をモチーフにした物悲しい歌を弾き語りしている。

 紅緒もふと立ち止まり、その調べになんとなく耳を傾ける。

 紅緒「ニコライエスクの戦い……味方の少ないその為に……」

 ここに出てくる「ニコライエスクの戦い」は、「尼港(ニコラエフスク)事件」のことを差していると思われるが、それが起きたのは1920年、つまり今から2年後のことなので、時期が合わない。

 とにかく、その歌によって無残にパルチザンに殺された忍のイメージを喚起された紅緒、再び滂沱と涙を流しつつ、「少尉ーっ! 少尉ーっ!」と、心の中で叫びながら駆け出す。

 横沢さんの熱演が続くが、その熱演にアニメーションの方が追いついていないのがちと悲しい。

 紅緒、めくら滅法に道を走っていたが、数人の兵隊たちとぶつかって因縁を付けられてしまう。

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 兵隊「謝りもせず行く気かな、お嬢さんよ、え?」

 ちなみにその中の一人、↑この台詞を言ってるのが、小林二等兵と同じ二又一成さんだったりする。

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 紅緒(それならあんたたちは少尉に何をしたの? あんたたちは少尉を死地に追いやって、見殺しにした。許せない。誰も彼も、私から少尉を奪ったものは何もかも!)

 紅緒は、忍を殺したのは軍隊そのものだと考え、それに連なる目の前の野卑な兵隊たちに凄まじい怒りを向ける。なんとなくエスパー魔美みたいである。

 紅緒は怒りに身を任せて兵隊たちをボコボコにするが、その後、駆けつけた駐在にしょっ引かれてしまう。

 取調べでも一切口を利かなかった紅緒は、結局そのまま留置所で一夜を明かすことになる。

 明日は忍のお葬式だと言うのに……。

 (C)大和和紀・講談社・日本アニメーション
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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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