第14話「ひとみちゃん誘拐」(1989年2月5日)
この14話から17話まで、主に怪魔界を舞台にした連続ストーリーとなり、ひとみちゃんを誘拐してクライシス皇帝の娘の身代わりにしようとするマリバロンの陰謀を主軸に、数体の怪人との激闘、新たな登場人物の出現、そして「仮面ライダー」史上初の多段変身のお披露目など、盛り沢山の内容となっている。
この辺りまでは、オンエア時も結構燃えながら見ていた記憶があるが……。

冒頭、クライス要塞の奥深く、厳重に警護された一室に、マリバロンとムーロン博士が戦闘員を引き連れて静々と入ってくる。
部屋には、チューブ型のハイテク保育器のようなものが据え付けられており、その中に、クライシス人と思われる5~6才くらいの女の子がすやすやと眠っていた。

マリバロン「もうこんなに大きくなられたのか、つい3月ばかり前にお生まれになられたと言うのに」
ムーロン「ガロニア様には特別な成長促進光線を照射しております」
マリバロン「それにしてもなんという綺麗な姫君であろう……」
まるで自分の愛娘でも見るような慈愛に満ちた眼差しを注いでいたマリバロン、ふと、ガロニア姫のうなじにほくろがあるのを見付け、ムーロン博士に尋ねるが、
ムーロン「そのほくろこそが、クライシス皇帝陛下の姫君の証なのであります。私たちが調べたところ、クライシス皇帝陛下の姫君には、必ずその同じ場所にほくろがあるのでございます!」
マリバロン「なんで?」 ムーロン「いや、なんでと言われましても……」
是が非でもそうじゃないとストーリーが成立しなくなって、うーん、リンダ困っちゃうからである。
ま、それ以前に、クライシス皇帝のお姫様が、なんでわざわざ地球侵略の為の移動要塞である、このクライス要塞の中で養育されているのか、そっちのほうがよっぽど謎である。
マリバロン「うん、そっか、それなら良い」
マリバロンがムーロン博士の説明に納得した時、不意に壁際で大きな物音がする。

二人が驚いて振り向くと、それは、ひとりのそそっかしいチャップ(戦闘員)が、トレイに乗せた薬品瓶を落とした音だった。
チャップ、慌てて瓶を拾い上げて立ち上ろうとするが、

今度は、その頭がアームの先に付いている照明にぶつかって火花が散り、さらに背後のコントロールパネルにまで飛び火してしまう。
ムーロン(ああ……) マリバロン(どこの職場にもいるのよねえ、ああ言う奴……) 二人は、
あずきバーのように固く冷たい目でチャップのドリフ的な失態を見ていたが、爆発は次々と連鎖して、遂にはガロニア姫の保育チューブにまで致命的な異変をもたらしてしまう。
チューブの中でガロニア姫が苦しそうに呻いているのを目の当たりにして、二人はお湯切りしようとしたカップ焼きそばの麺を流しにぶちまけてしまった時のようにパニくるが、なにしろ二人はビデオの予約録画すら出来ない機械オンチなので、何をどうしようと言う算段も湧かず、茫然とカタストロフィーを見ているしかなかった。
マリバロン「何を手をこまねいておる! 姫君が苦しんでおられるではないか! ムーロン博士……」 ムーロン「マリバロン様、ちょっと落ち着いて! 顔が裕太くんみたいになってますぞ!」 マリバロン「はうっ!」 じゃなくて、
ムーロン「マリバロン様! もはや手の施しようがない」
マリバロン「ああ、おお……」
ムーロン博士、落ち着き払ってるが、クソの役にも立たないのであった。
マリバロン、思わず姫に手を差し伸べるが、指先が触れる前に、ガロニア姫の体はパッと消滅してしまう。
クライシス人が死ぬ時は、いつもこんな風になるらしい。
クライシス帝国の葬儀屋は大変である。
そう言えばこないだ珍しく知人の葬式に出たのだが、ああいう厳粛な場所であればあるほど、ついついくだらないことを考えて笑いそうになってしまい、自業自得であるが、つらい時間を過ごす羽目となった。
坊さんが控え室から出て来る時に、プロレスのような入場曲があったら面白いだろうなぁ、とか、坊さんがメインとサブの二人いて、読経の途中で時々
ハモるのがツボだったり、列席者に年寄りが多かったので、葬儀会社のスタッフの目には、彼らがひとりひとり札束に見えただろうなぁとか思ったり……。
えー、で、何の話だったっけか。
マリバロン、空っぽのベッドに残された姫のつけていたペンダントを握り締めて、実の娘が死んだような深い悲しみに打ちひしがれる。

だが、その悲しみはやがて凄まじい怒りとなって、マリバロンの双眸から放たれる。
無論、その対象は全ての原因を作ったおっちょこちょいのチャップである。

マリバロンに睨まれて、思わずたじろぐチャップ。
マリバロン「この、愚か者!」
怒号と共に、頭の羽根飾りを投げて、チャップの額に深々と突き立てる。
マリバロン、それでいくらか落ち着きを取り戻し、今度は自分たちの保身のことに考えを巡らせる。
マリバロン「このことがクライシス皇帝陛下に分かれば、私ひとりの命を差し出すだけでは収まらん。ジャーク将軍をはじめ、我ら四大隊長ことごとく処刑されるのは目に見えている!」

マリバロン「よいか、みなのもの、誰にも口外してはならんぞ。もし口外するものあらば!」

マリバロン「このチャップ同様、私が処罰する!」
鞭のように舌を舞わせ、その場にいる全員に厳しく緘口令を敷くマリバロン、最後におっちょこちょいチャップの前に立ち、羽根飾りを勢い良く引き抜く。
チャップはぶっ倒れて、姫と同じく煙のように消えてしまう。その場にいた全員が震え上がったのは言うまでもない。
しかし、クライシス帝国の刑事は大変だね。殺人事件が起きても死体がないんだから。
そしてマリバロンは、この大失態を糊塗する為、ガロニア姫と同じ日に生まれた6歳の女の子、しかもうなじにほくろのある女の子を捜してきて、大胆にも姫の身代わりに立てようとする。
普通ならクライシス人の中から探すと思うのだが、何故かマリバロンは地球人の中から選び出そうとする。地球人とクライシス人、明らかに違う人種なのだから、そんなもん一発でバレると思うのだが、そうしないとストーリーが成立しないので仕方ないのである。
一方、光太郎の寄寓する佐原家。
ここで、父親の俊吉と、娘のひとみが、どちらもまっぱで風呂に入り、背中の流しっこをするという、良く考えたら○○○○○○○○(自主規制)みたいなシーンとなる。
おまけにひとみはまだ6歳なので、とてもじゃないが、そのものずばりの画像を貼る勇気は私にはない。読者の皆様、私のことを意気地なしと激しく罵って下さい。

せいぜい、これくらいが限界である。
俊吉「ひとみ、なんかほくろが大きくなったみたいだね」
ひとみ「私が大きくなったから、ほくろも大きくなったのよ」
俊吉「そうだね、きっとそうだね」(註1)
ひとみの背中を洗ってやっていた俊吉、うなじのほくろが大きくなっているのに気付く。
それにしても、いつも思うことだが、肝心のこのひとみ役の子役が全然可愛くない! もっと他にいなかったのだろうか?
(註1……これに続けて、とても下品なギャグを書こうとしたが、やめにした)

リビングでは、光太郎と玲子がまったりババ抜きなどしていた。
一見、遠近法でトランプが大きく見えているのかと思いきや、

カメラが引くと、本当にビッグサイズのカードで遊んでいたことが分かると言うオチ。
当時、パーティーグッズ的なノリで、流行っていたのだろう……か?
その後、風呂から上がったひとみのほくろのことが話題に上り、光太郎も、ひとみのうなじにほくろがあることを知るのだった。
続いて、各地に散らばったチャップによる、条件に合う女の子たちの誘拐の様子が描かれる。

最初に出てくる女の子は、廊下でばったり侵入したチャップと鉢合わせするのだが、少なくともひとみよりは可愛いよね。
さて、マリバロン、クライス要塞で、いつガロニア姫の一件が露見するかと、薄氷を踏むような日々を送っていた。

ジャーク「ところでマリバロン、ガロニア姫は健やかに成長されているのであろうな?」
マリバロン「はい、申すまでもございません」
ジャーク「それは上々、どんな姫君におわすのか、一目会ってみたい、マリバロン、案内せい」
マリバロン「……」
そんなある日、何気なくジャーク将軍からそんなことを言われ、思わず顔から血の気が引くマリバロン。

マリバロン「姫様にとっては今が一番大切な時期、お会いになるのはもう少しお待ち下さいませ」
ボスガン「マリバロン、私たちもガロニア姫にお会いしたいと思ってるんだ。遠くからお顔を見るくらいなら構わんだろ」
ガテゾーン「そうとも、姫は我らの命令者となられるお方だ。顔を知らんでは話にもならんぞ」
ボスガンたちも、他意なくそんなことを言い立てて、マリバロンを窮地に追い込んでいく。
それでも鉄の精神力で何とか言い繕ってその場を切り抜けたマリバロンだったが、

ジャーク「お前がそこまで言うのなら、一週間だけ待とう」
マリバロン「ははっ!」
ジャーク将軍に、一週間後に姫に面会させると言う約束をさせられる。
マリバロン、ジャーク将軍の横顔を盗み見ながら、ジャーク将軍に何もかも見抜かれているような言い知れぬ不安を覚えるのだった。

尻に火の付いたマリバロン、チャップたちが集めてきた女の子たちを検分するが、
マリバロン「駄目じゃ、駄目じゃ、この子供たちではとてもガロニア様にはなることは出来ん! ほくろの位置が同じでも、ガロニア様とは似ても似付かぬ子供たちじゃ! ああ……」
そう簡単にガロニア姫そっくりの女の子が見付かる筈もなく、声を荒げてNGを出し、苦悩の呻きを漏らす。
それにしても、風呂場のシーンと言い、このパジャマ姿の幼女大集合のシーンと言い、今回は全国のロリコン戦士たちが狂喜乱舞しそうな回である。
と、そこへひとりのチャップが耳寄りの情報を届けに来る。条件に適合し、しかもガロニア姫そっくりの娘が見付かったと言うのだ。
言うまでもなく、それこそ、佐原家の長女・佐原ひとみであった。
その後、佐原俊吉は、近頃、ひとみと同じ1982年10月22日生まれの女の子が相次いで行方不明になっていると職場の新聞で知り、慌てて自宅に電話するが、まだひとみは学校から帰ってないという。
俊吉は、妻や茂たちと一緒にひとみを一刻も早く見付けようとするが、一足遅く、ちょうど老婆に化けたマリバロンに担がれて、連れて行かれているところだった。
俊吉たちは必死にマリバロンを追いかけるが、無論、彼らにマリバロンを止める力はない。
と、反対側の空から、一機のヘリコプターが飛んでくる。俊吉が残したメモを見た光太郎が、急いで応援に駆けつけたのだ。

唄子「光ちゃん、ひとみが攫われるわ! 助けて!」
光太郎「ひとみちゃんを?」
いや、さすがに地上にいる人の声が、ヘリを操縦している人の耳に届くとは思えないんですが。
ま、光太郎は改造人間で、常人より何十倍も耳が良いからね。

ぐんぐんマリバロンに近付いてくるヘリ。

光太郎、オートパイロットに切り替えると、

いきなりヘリから飛び降りちゃうのである!
いや、さすがにプロの操縦士としては乱暴かつ無責任な行動であろう。
いくらオートパイロットといっても、着陸は無理だろうから、この後、無人のヘリがどうなったのか、心配で夜も眠れないのである。
ちなみに二枚目の画像、良く見たら、「AUTO PILOT」の部分だけ上からシールで貼っているのが分かる。つまり、元々そのヘリにはそんな機能は付いてなかったのだろう。
だが、光太郎の捨て身の行動も実らず、ひとみはマリバロンと共に忽然と姿を消してしまう。
俊吉「光さん、ひとみを助けてくれ!」
光太郎「おじさん、おばさん、ひとみちゃんは必ず僕が助け出します!」
ズガガガガーン!!(ヘリが住宅地に落ちる音)
俊吉「……」
光太郎「……」
さて首尾よくひとみを攫い、ガロニア姫に仕立てたマリバロン、約束どおり、ジャーク将軍たちを姫の寝所に通し、姫と対面させる。
ガロニア姫そっくりのひとみを、ジャーク将軍たちは全く疑うことなく姫として敬い、その成長ぶりに目を見張る。
……ま、良く考えたらマリバロンとムーロン博士以外は姫の顔を知らないのだから、別に姫と似てなくても問題なかったような気がする。

ジャーク「ようくやったぞ、さぞかし皇帝陛下もお喜びになるだろう」
マリバロン「はっ、ありがたきお言葉」
養育係としてのマリバロンの仕事に、手放しの賛辞を送るジャーク将軍。
マリバロン、ホッとして彼らが退室するのを見送るが、ドアの前で一度立ち止まってみたりするジャーク将軍の思わせぶりな態度に、どうにも心の底から安心できないのであった。
だが、このままでは成長速度が異なるので、ひとみがクライシス人でないことはすぐバレてしまう。
マリバロンが、その問題についてムーロン博士に教えを乞うと、ムーロン博士はクライシス帝国にある「奇跡の谷」へ行けば良いと教えてくれる。
「奇跡の谷」の「聖なる滝」に打たれれば、ひとみもあっという間に成長し、なおかつガロニア姫にふさわしい能力を得られるのだという。
マリバロン、その為には勝手に任務を離れなければならない。たまってた有給使おうかしらと悩んでいると、他ならぬジャーク将軍が再び姿を見せる。

ジャーク「マリバロン、ムーロン博士から事情は全て聞いたぞ」
マリバロン「……! それでは、ガロニア姫の一件を?」
マリバロン、驚いてムーロン博士の顔を見る。博士は気まずそうに顔を背ける。
そう、とっくの昔にジャーク将軍は全てを承知していたのだ。
マリバロン「ああ、全て私の過ち、どんな罰でもお受けいたします」
さすがのマリバロンも観念して、その場に崩れ落ちてジャーク将軍の裁きに身を委ねるが、ジャーク将軍の口から出た言葉は、意外なものだった。
ジャーク「……ガロニア姫はここに健やかにおわすではないか」 マリバロン「はあ、なんと申されました?」
ジャーク「この娘こそまさしくガロニア姫だ」
マリバロン「しかし将軍!」
ジャーク「マリバロン、余が許す。お前は直ちにその娘を連れて、『奇跡の谷』へ行け!」
マリバロン「ははっ」
ジャーク将軍、マリバロンの隠蔽工作に全面的に協力することを口早に示し、すぐさまマリバロンとひとみを「奇跡の谷」へ向かわせようとする。
ジャーク将軍、ガロニア姫が死んだと分かれば、マリバロンだけでなく、自分たちも処刑されると考え、マリバロンの企みに加担することにしたのだろう。

と言う訳で、絶望の淵から息を吹き返したマリバロンは、チューブ型保育器と一緒に、ムーロン博士が作り出した怪魔界への移動トンネルの中に入って行くのだった。
この装置と言い、ヘリを使った撮影と言い、やっぱり金が掛かってるよね、この番組。
そこまでは良かったが、ジャーク将軍がガテゾーンに命じて、最強の怪魔ロボットをRXにぶつけさせたのが、(短期的にも長期的にも)クライシス帝国にとって取り返しの付かない失敗を招く結果になってしまう。
実際、まだ光太郎が何もしていない段階で、わざわざそんなちょっかいを出す意味があったのか? ジャーク将軍の指揮能力に疑問を抱かせてしまう展開である。

それはともかく、(移動トンネルで生じた)次元の歪みを追っていた光太郎の前に、最強の怪魔ロボット・デスガロンが立ちはだかる。
で、これがめちゃくちゃカッコイイのだ。
蜂をモチーフにしたようなデザインと、銀色を主体にしたメカニックなボディ。
しかも声は森篤夫さんの渋い声である。「超人機メタルダー」のクールギンね。

各部に埋め込まれた緑色の宝石(?)などは、シャドームーンに通じるところがある。
全体的に、「悪のライダー」っぽいんだよね。
ひとみちゃんのことで頭が一杯の光太郎、RXに変身してさっさとデスガロンを撃退しようと思うが、デスガロンはルックスだけの戦士ではなく、その強さはまさに「最強」で、RXを圧倒する。
デスガロン「貴様の力など俺には通用しないと思い知れ!」 いや~ん、カッコイイーッ!
そこまでは良かったのだが、まずいことに彼にも「仮面ライダー」の歴代怪人のDNAがしっかり受け継がれていたようで、
デスガロン「冥土の土産に教えてやろう。ひとみは既にお前の手の届かない世界に飛び立ったぞ!」 RX「なにっ、それではひとみちゃんは怪魔界へ連れ去られたというのか!」
と、言わなくてもいいことを言ってしまい、RXに重要な情報を漏らしてしまうのである!
さらに、マクロアイでデスガロンの体を調べたRX、左胸の赤いボタンが怪魔界への飛行チャンネルになっていることを知ると、デスガロンの体に密着し、それを押して、デスガロンと一緒に怪魔界へ転送されるのであった……。
しかし、よりによってそんなボタンを何で怪人の押しやすそうなところに付けたのか、ガテゾーンの設計思想が問われるところである。
よって、少なくともRXを怪魔界へ引き入れてしまった責任はデスガロンではなくガテゾーン、あるいは余計な命令を下したジャーク将軍にあると思うのだが、デスガロンは登場早々、その責任をひとりで負わされて、クライシスからも追われる身となってしまうのである。
つい話が次の15話まで及んでしまったが、14話はこれにて終わりです。
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