第14話「海女の刑・女体を密輸する逃がし屋」(1983年11月11日)
の続きです。
ある日、表向きの稼業である旅行会社に、チャンプが意気揚々とした顔で帰ってくる。
チャンプ「ジャーン!」
チャンプがアタッシェケースを開くと、札束がぎっしり詰まっていた。

チャンプ「見てちょんまげ! 正真正銘、日本銀行発行のお札や」
ヌンチャク「どうしたんすか」
チャンプ「5000万、5000万やど、埼玉の農協のヨーロッパツアーの前金やがな」
加代子「じゃ、決まったんですか、あの契約」
チャンプ「当たり前やがな、だてに営業でメシ食ってまへんでー」
加代子「私、初めて見ます、こんな大金」
何も知らない加代子は、本気で興奮してはしゃいだ声を上げる。
ヌンチャク「会社始まって以来ですね」
チャンプ「そうや、これで当分安泰やがな」
チャンプ、加代子にひとまずその金を銀行に預けに行ってくれと頼むが、当然、ひとりで物騒なのでETが一緒に行くことになる。
だが、その途中、急にETが激しい腹痛を訴える。そして、加代子を路上に待たせ、アタッシェケースを提げたまま、手近の建物のトイレへ駆け込む。
しかし、いつまで経ってもETは戻ってこず、心配した加代子が男性トイレに入ってみると、ETの姿は影も形もない。
加代子、青くなって会社に戻ってくる。

加代子「結城さん、戻っていませんか」
チャンプ「いや、一緒でしょうが」
加代子「トイレに行くって行ったまま、戻ってこないんです」
チャンプ「金は? 5000万は?」
加代子「結城さんが……」
チャンプ「礼子君、あの、銀行へいっとるかどうかちょっと電話してみてくれ」
無論、これは全て最初から仕組まれたお芝居なのだが、加代子を信じさせる為に、チャンプたちは迫真の演技で応じる。

マリア「アロハツーリストの結城ってものなんですけど……行ってない?」
マリアが銀行に電話するが、ETは来ていないと言う。
ETの自宅に電話しても、誰も出ない。
チャンプは、状況から判断して、ETが5000万を持ち逃げしたのだと決め付け、激しく落胆するふりをする。
加代子がすぐ警察に通報しようとするが、そうされては困るのでチャンプは慌ててやめさせる。

チャンプ「あかん、あかん、この店から縄付きを出すつもりか? 築いて来たアロハツーリストの信用が台無しやないか」
ヌンチャク「それでなくても信用がないんですからね」
チャンプ「うるさいっ!」
加代子「それじゃ一体、どうすれば?」
チャンプ「探せ、探せ、手分けして探せ、草の根を分けても探しだすんや!」
チャンプ、どさくさ紛れにマリアの尻を触りながら、二人をせき立てて、ETを探しに行かせる。

加代子「私が至らないばっかりに……申し訳ありません」
チャンプ「もうええ、あんたに謝ってもろうてもしゃあない、金が返るわけやなし」
加代子「小出さん、私が弁償いたします。この先、お給料は要りません」
小心で責任感の強い加代子、泣きながらそんな殊勝なことを言い出す。
チャンプ「簡単にいいなはんな、5000万やで、5000万、あんたの給料ナンボや、11万8000円やないかい、あんたがここで70、80になって働いたかて返しやしまへんがな、ほんまにもう!」
加代子「うう、うわぁあああーっ!」
チャンプの心無い罵声を浴びて、とうとう加代子は号泣してしまう。

チャンプ「泣きなはんな、それとも、トルコで働く言うんか?」
加代子「はいぃっ!」
なおも、セクハラまがいの追い討ちをかけるチャンプ。
この、チャンプの加代子に対する態度は、はっきり言って最低と言えよう。
おまけに、農協の5000万も、ETの持ち逃げも全て嘘なのだからなおさらである。
そう、彼らは会社ぐるみで、ETが大金を横領して逃亡したと言う事件をでっち上げた上で、ETがルミに助けを求めに行き、それによって密出入国組織の全貌を暴こうという、思い切った作戦なのだ。
こういう、無関係な加代子まで巻き込んでの大掛かりな騙しは、見ていて実に楽しい。
今回は、裸方面のみならず、ストーリーも、初期の頃のようなダイナミズムが戻ってきた感じで嬉しいのである。
さて、横領犯となったETは、その夜、直ちにサンセットへ行き、ルミの袖に縋る。

ET「頼む、俺を逃がしてくれ」
ルミ「ええっ?」
ET「金ならここに5000万入ってる」
ET、信用させる為にケースの中の現金を見せ、マニラに逃がしてくれと頼む。
ルミ「あなた、何言ってるの、逃がすとかマニラだとか」
ルミも、そう簡単に信用することは出来ないので、適当にはぐらかしていたが、ETは、用意していた写真を取り出して見せる。

ET「知ってるだろ、一緒に映ってるのが津田さんだ。添乗員でマニラに行ったときに知り合ったんだ。津田さんから聞いたんだ、あんたが密航ルートの窓口だってね」
それは、西山に送られてきたあの写真に、ETの顔を合成したインチキ写真だった。
これも、ちゃんと旅行会社の社員であるETが、仕事でマニラで行った時の写真……と、辻褄が合うようになってるのが、今回のシナリオの優れたところなのである。
ルミ「でも私、知らないわ、津田なんて人」
ET「取っといてくれ、あんたのボスに話をつけてくれないか」
ET、札束をひとつ強引にルミの袂に押し込むと、自分の隠れ場所を告げて立ち去る。
……しかし、これでルミが、ハングマンの見込み違いで、全然、密航組織と関係ない人だったら、かなり笑えるシーンになっていたんじゃないかと思う。
あと、そもそもこの5000万はどうやって調達したのだろう?
まさかほんとうに農協から受け取ったとは思えないし、ケチな園山が一時的にせよ、5000万も貸してくれる訳がないし……。
ルミに渡した分だけ本物で、残りは偽札だったのだろうか?
でも、もし相手に札を調べられたら一発でバレてしまうから、危険ではないか?
このアイディア自体は面白いのだが、肝心の5000万の出所だけ説明がないのが、ちょっと惜しい。
ルミ、それでもその写真を牧村に見せ、牧村はルミを抱きながら、そのことをボスに電話で伝えている。

で、ここで、今回三発目のお色気、ルミのおっぱいが放出となります。
ただ、折角脱いでくれたのに、この1カットだけと言うのは実に勿体無い。
牧村「じゃあ、明日、身辺を調べてみます」
翌日、まだゴタゴタしている旅行会社に、サラリーマン風の格好をした牧村がやってくる。ETの言ったことが事実かどうか、裏を取りにきたのだ。
この辺も、騙す方も騙される方もお互い用心深くて、見応えがある。

牧村「あのー、こちらに結城さんて方いらっしゃいますか」
チャンプ「あなた、どなたですか」
牧村「あの、結城さんの昔の友達なんですけど、近くに来たもんですから」
チャンプたちは、相手が結城の友人と聞くなり、色めきたって牧村を引っ張り、椅子に座らせる。

チャンプ「結城が何処立ち回ってるか、知りまへんか? わしらも探してまんのやけど」
牧村「あの、なんかあったんですか」
チャンプ「実はね、結城の奴、会社の金を5000万持ち逃げしましたんや、はぁーっ、見損ないました。いや、もともとわしはねえ、あいつのこと気に入らんかったんです。一見良い男風ですけど、こら計画的な犯行でっせ、計画的な」
加代子「いいえ、結城さんはそんな方では……」
チャンプ「あんた、黙ってなさい! ほんとにもう」
加代子「……」
ETを庇おうと口を挟んだ加代子だったが、チャンプに一喝されて涙目になる。
これまたひどいけど、本気で5000万持ち逃げしたと思い込んでいる加代子の存在が、牧村を信じさせる決め手になっているのは否めない。
チャンプ「あいつはだいたいねえ、根性が腐ってますがな、女には手が早い、金には汚い、口はうまい、ええ、わしゃ、あんな、こっ、最低最悪の人間、今まで見たことおまへんで」 調子に乗って、その場にいないETのことをぼろくそにけなすチャンプ。
なんか、自分のことを言ってるようにも聞こえるが……。
牧村「しかし、そんなこと新聞には出てなかったですね」
チャンプ「わしらの力で今、警察押さえてまんのやが、わしらの商売、信用が第一でっしゃろ」
マリア「極秘で捜査して貰ってるんです」

チャンプ「あ、そや、あんたちょうどええわ、お友達やったらせめて半分、1/3でも立て替えてもらえまへんか?」
牧村「いや、あの、そんな」
チャンプ「1/10でええ、500万、500万だけでも」
牧村「いえ、あの、私ねえ、実は、一度会っただけなんですよ、結城さんと……」
そのうち、チャンプが牧村に立て替えてくれとメチャクチャなことを言い出し、牧村も恐れをなしてほうほうのていで逃げ出してしまう。
チャンプ「確かめにきやがった……」
牧村が行った後、加代子がいるのを忘れてつい本音を口走ってしまうチャンプ。

加代子「小出さん、なにもあんなにボロクソに言わなくなくたっていいじゃありませんか。仮にも机を並べてお仕事した仲じゃありませんか。私、もう耐えられませんわ」
チャンプ「辞めますか」
加代子「いいえ、早引きさせていただきます」
もっとも、加代子はチャンプのあんまりな言い方に対する怒りで頭が一杯で、気付きもしない。
その後、ETの潜伏場所に牧村がやってくる。
ETが車で連れて行かれたのは、町外れの、使われていない倉庫のような建物だった。
ETは、その地下室で、首尾よく、組織のボス・石神と言う男に会うことが出来た。
石神「最初に断っておく、密航の費用は2000万だ」
ET「2000万?」
石神「警察に捕まれば一銭も入らん、入るのは豚箱だ」
ET「分かりました、しかし、何処からどうやって行くんですか」
石神「君は余計な心配はしなくていい、あとは私たちに任せなさい」
その場で、ETは服と靴を取り替えろと言われる。
実は、靴の底に、発信機が仕込まれており、それをもとにアジトでチャンプたちがETの居場所を把握する仕組みになっていたのだが、下手に拒むと怪しまれるので、ETはあっさり靴を履き替える。

その代わり、ライターを取り出してタバコに火をつけるふりをして、ライタにー仕込んだカメラで石神の写真を隠し撮りする。
その上で、「ダメだなぁこりゃあ」と言って、ライターを投げ捨てる。

牧村「こん中に入ってもらおうか」
ET「ええっ?」
牧村「嫌か」
石神「外国へ逃げたいんじゃないのか?」
ET「わかりました」
ET、しぶしぶ、アタッシェケースと共に木箱の中に入る。
その後、チャンプたちがETの脱いだ靴の発信機を頼りに地下室までやってくるが、無論、既にそこはもぬけの殻だった。
ただし、ETがわざと捨てたライターが床に落ちていた。

三人は一旦アジトへ戻り、マリアがそのライターから細いフィルムを取り出し、

細長い金属製のケースの中に入れて、

コンピューターのキーボードの側面にはめ込む。
これは、単にフィルムをスライドに映す為の装置なのだが、なんか、現在のUSBメモリーのようである。
ま、原理的には似たようなもんなんだけどね。
それはともかく、フィルムには、しっかり石神の顔が映っていた。

物知りのチャンプは、石神のことも知っていた。
チャンプ「石神だ」
ヌンチャク「何もんですか」
チャンプ「以前、拳銃の密輸をやってた男だ。こいつは東南アジアのギャングとは太いパイプで結ばれてる。なるほど、こいつなら密入国、密出国はお手のもんだ」
しかし、このままではETがほんとにマニラに密航させられてしまう。
ここでまたチャンプが意外な作戦を思いつく。
チャンプ「ETにかかる危険は大きいが、石神を燻り出すのはこれしかないな」
チャンプ、津田とETが映っている合成写真と、そのオリジナルの写真とを、まとめて封筒に入れて、ヌンチャクに石神の会社に届けさせる。
さいわい、石神は中興貿易と言うダミー会社を持っているので、会うこと自体は難しいことではない。
ヌンチャクは、事務服を着てその会社へ行き、石神に直接封筒を渡し、ついでに机に盗聴器を仕掛けて帰る。

石神「ちくしょう……」
封筒から出てきた何枚かの写真を見比べた石神は、たちどころにあれが合成写真であり、ETに一杯食わされたことを悟る。
石神は車で移動中の牧村にすぐ電話で知らせ、先に鳥羽に入り、自分が行くまで待つよう命じる。
そう、彼らは何故か鳥羽に向かっていたのだ。密航は、その港から行っているのだろう。
もっとも、実際のところは、最初に言ったように、11話の鳥羽ロケの時に同時に14話のハンギングシーンを撮っているから、強引に鳥羽が舞台になってるだけなのだが。
長くなったので、後は簡単に片付けよう。

牧村たちは、先に鳥羽の戸田家と言うホテル(タイアップ)へコンテナを担ぎ込み、やがて、近鉄特急ビスタカー(タイアップ)で石神も到着する。
彼らは、明日の朝、船をチャーターして浜島乗船場(タイアップ)から出航し、コンテナに入れたままETを海へ沈めるつもりなのだ。
そこへ、仲居に扮したマリアが入ってきて、その声に気付いたETが箱の隙間から出したメモをさりげなく受け取る。

チャンプ「明日の朝10時、浜島、フィッシング1号」
ETを縛ることもせず、箱の中に放置していたせいで、石神たちの計画は全てETを通じてチャンプたちに筒抜けになってしまう。
しかし、いくら釘で打ちつけてるからって、これから殺そうとしている男を眠らせも縛りもしないでおくというのは、無用心だよね。
ホテルの中を運んでる時に、ETに大声で助けを求められていたらどうするつもりだったのだろう?
翌朝、予定通り、石神たちは釣り船に箱を乗せて出港するが、船にはマリアたちも入り込んでいて、海へ出ると、すぐに船を乗っ取ってしまう。

チャンプが石神たちの前に現れると同時に、ETも箱の中から出てくる。
石神「な、なんだ、貴様ら」
チャンプ「閻魔さんもよけて通る、地獄の掃除人や。おい、石神、己の私利私欲の為にえらいえぐいことやってくれたな、おい」
ET「女の密輸だけじゃ飽き足らず、凶悪犯を海外へ逃亡させ、それを探った人間まで殺した」
ここでやっと、ハンギングタイムとなるが、それまでのストーリーが面白かった分、ハンギングはいつも以上に平凡で退屈である。

11話にも出てきた「船上バーベキュー」(タイアップ)でお馴染み、「いわほ観光汽船」(タイアップ)の、「海女のショー」(タイアップ)のあと、

石神たちにも海女の格好をさせて海へ浮かべ、ETがスピーカーで彼らの罪状を観光客に語った上で、マリアとヌンチャクが水中に何度も引っ張り込んで苦しめ、彼らの口から罪を告白させるという、11話のハンギングと同様、面白くもなんともないもの。
しかし、今回は純粋に彼らを痛め付けるだけで、密入国した女性たちはともかく、海外に逃亡した凶悪犯が野放しのままと言うのは、片手落ちのような気もする。
あと、ルミには何の制裁も加えられなかったが、良いのだろうか?
まぁ、女優さんに上記のようなシーンをさせるのは無理だから、除外されたのだろう。

ラスト、無事に戻ってきたETを、加代子が大喜びで迎える。
ET「ご心配をおかけしました」
加代子「もう、何処へ行ってたんですかー」
チャンプ「野川ちゃん、ごめんな、色んなこと言うてからに、それが聞いたらお笑いやねん、こいつな、銀行まちごうてしもうたんやて」
加代子「えーっ?」
チャンプ「それに、わしの成績に刺激受けてな、東北の方へ営業に回ってたちゅうやないかい」
と言うことで、ETの持ち逃げの件もまるくおさまり、公私(?)共に大団円となるのだった。

ET「いやー、野川さんがあんまり小出さんのこと誉めるもんだから、俺もひとつって気になっちゃったんですよ」
加代子「それで成績は?」
ET「なしなし、なんにもなし、成果は……おい、お前、わしの向こう張るのは10年早いど! 10年早いぞ! バキューン!」
加代子「ばきゅぅ~ん!」 チャンプの真似をして、手をピストルの形にして撃つ真似をする加代子が可愛いのである!
以上、ストーリー、スリル、お色気など、ハンギングを除くとかなり満足度の高い一本だった。
とりわけ、隠れ蓑のアロハツーリストを利用した大掛かりな騙しのくだりがお気に入りである。
しかし、特にETなんかは、あんな目に遭いながら、報酬が50万と言うのはいくらなんでも安過ぎでは?
しかも、200万と言うのは諸経費込みだから、5000万の一部をルミに渡した分もあるし、実際の手取りはもっと少ない筈である。
これなら、真面目に旅行会社をやってたほうが、よっぽど儲かるのではないだろうかと思ってしまうのが、欠点である。
どうせフィクションなんだから、ドカンと景気良く2000万くらい(報酬を)取れば良いのに。
いやー、とにかく、今回は画像も台詞も多くて疲れた。
なんだかんだで6時間以上は掛かったと思う。
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