第12話「地球はロボットの墓場」(1973年3月25日)
「ファイヤーマン」は、円谷プロ創立10周年記念番組として制作された巨大変身ヒーロー番組。
天変地異と共に、突如として地底から現れた太古の恐竜たちと、地球科学特捜隊SAF(SCIENTIFIC ATTACK FORCE)との戦いを描いたハードなSFドラマである。
管理人がこの作品を見たのはつい最近だが、シリアスなストーリーとリアルな人物描写、力の入った特撮シーンなど、見るべきものの多い力作であった。
……ではあったのだが、キャストがあまりに地味なこと、ストーリーがあまりに真面目なことなど、このブログでレビューするには不向きな内容であった。
ただ、今回紹介する12話だけは、レビューに値する名作だと思う。それと、個人的に好きな25話、全30話中、この二つだけを取り上げることにした。
ファンの方には申し訳ないが、その辺、ご理解いただきたい。
最初なので、簡単にキャラクターを紹介しておく。
・岬大介(誠直也)……地底からやってきた角刈りの勇士。ファイヤーマンに変身する。
・葉山マリ子(栗原啓子)……SAFの紅一点。
・千葉太(平泉征)……SAFのメンバー。角刈り。
・海野軍八(睦五郎)……SAFの隊長。当然、角刈り。
・水島三郎(岸田森)……SAFの副隊長。宇宙工学博士。
どうでも良いが、男性レギュラーの俳優の名前が全て、漢字三文字と言うのは面白いね。

OP主題歌を歌うのは、子門真人。
いかにも70年代風の泥臭い歌だが、子門さんの熱唱もあいまって、なかなか燃える名曲になっている。
ふしぎのなぞをー
うん とかねばならぬぅ~♪
この小さい
「うん」は必須なので、カラオケで歌う時には忘れぬこと。
そして、今回の脚本を書いたのは、なんと岸田森さん!
役者としてだけではなく、脚本家としても卓抜とした才能を持った人だったのだ。
かえすがえすも早逝が惜しまれる。
冒頭、水島・千葉によって新たに開発された宇宙ロケット・マリンブルが、岬、葉山両隊員によるテスト飛行を行っている。

マリ子「水島博士、素晴らしいわぁ。イルカに乗った少年みたい」(棒読み)
本部のモニター越しに、軽快に宇宙空間を飛ぶマリンブルの乗り心地に、マリ子が感嘆の声を上げる。
海野「さすがだな、水島博士、こんなに宇宙を自在に飛べるロケットがあったかねえ」
千葉「いやぁ、水島さん……」
海野たちも上機嫌だったが、何故か、当の水島博士は机に向かって何かの設計図を書くのに夢中になっていて、返事どころかこちらを振り向こうともせず、話しかけた千葉も憮然と口をつぐんでしまう。
千葉「どうなってんだろ?」
その後も、マリンブルの前方に展開する、宇宙の神秘が作り出した美しい光景に目を奪われるSAFのメンバー。

千葉「水島さん、見て御覧なさいよ。まるでオーロラですよ」
水島「……」
が、相変わらず、何を聞いても水島はうんともすんとも言わない。
それにしても、もうちょっとキャスティングに気を使って欲しかった。なんでわざわざこんな似たような雰囲気の俳優を選ぶのか?
ドラマとしての質は高いのに、この作品が低視聴率に喘ぎ、30話で打ち切りの憂き目に遭ったのも、この辺に原因があったのではないか。
改めて言うことではないが、キャスティングは大事である。

テスト飛行は大成功……の筈だったが、不意に、彼らの前方に巨大な怪獣が現れ、そのお腹にマリンブルの先端が突き刺さってしまう。
岬は、怪獣の体から発せられる放射能によって、マリンブルの機体が急速に溶けていくのを見て、即座にファイヤーマンに変身して、マリ子の体を両手で包んで地球へ帰還する。
さいわい、マリ子はずっと意識を失っていたので、岬の正体がばれる気遣いはなかった。
後に分かるが、その怪獣ティラゾウルスは、別に彼らの進路を塞ごうとした訳ではなく、単に宇宙遊泳を楽しんでいたところに、たまたまマリンブルと衝突してしまったらしい。
本部の海野たちは慌しく緊急事態の対応に追われていたが、その騒動をよそに、相変わらず水島は机に向かったままほとんど動かない。
その後、笛島と言う小さな島の浜辺に漂着しているマリ子が発見され、千葉によって保護される。

海野「水島、いい加減にしないか! 葉山君が……うん?」
さすがに海野が腹に据えかねてその肩に手を置くが、水島はペンを持った手を規則的に上下させていたが、

いきなりその体が積み木細工のように崩れ落ちてしまう。
そう、最初から、水島博士は、何者かによって精巧な身代わり人形と入れ替えられていたのだ。
衝撃のラストシーンの伏線ともなっている、見事な「つかみ」である。

岬(しかし、何故恐竜の体から放射能が……?)
一方、岬は、本部にも連絡せず、考えごとに耽りながら、引き続き笛島の周辺を探っていた。
岬を演じるのは、アカレンジャーこと誠直也さん。
個人的には、誠さんって、あまり特撮ドラマには向いてないと思うので、このキャスティングも微妙な感じがする。雰囲気的にも、共演の睦五郎さん、平泉さんと重なる部分があるし……。
これと比べたら、同じ円谷作品でも、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」などは、それぞれのキャストの個性が実にはっきりしてるよね。キャスティングの成否は、俳優ひとりひとりも大事だが、全体のバランスも大事だと言うことが良く分かる。
それはさておき、あてもなく森の中を歩いていた岬の耳に、「歌を忘れたカナリアは~」と言う、有名な童謡「かなりあ」が物悲しく聞こえてくる。

天女の羽衣のような服を枝にかけ、小さな自然の温泉にその身を浸している若い女性……と言うより、少女の口から、その歌は紡ぎ出されていた。
少女「いえいえ、それはなりませぬ~♪」
かなりのロング、しかも木々の間からのショットなのであまり良く見えないが、円谷プロで女性のヌードが出てくるのは異例のことである。
しかも、

少女「いえいえ、それはかわいそう~♪」
それが、まだ中学生くらいの透き通るような肌の美少女だったので、全国の真性ロリコン戦士たちが大喜び!
演じるのは栗野芳美さん……と言っても分からないが、後の芦川よしみさんである。
そう言えば、同時期の「V3」にも出ていたな。

レンガ造りの廃墟の上に立ち、夕陽(?)に向かって祈りを捧げるように両手を広げている少女。
あまりに良く出来ているので、パッと見、実景のようだが、これは全部セットのようである。
ロケ地は、毎度お馴染み、猿島の要塞跡である。

廃墟には、いつの間に降下したのか、さっきの怪獣もいて、しきりに唸り声を上げていた。

それを見た少女は、恐れる色もなく、逆に嬉しそうに微笑む。
いやぁ、ほんと可愛い。
思わず尻フェチからロリコンに宗旨替えしたくなる可愛らしさである。

怪獣の目の前まで行き、ニコニコ怪獣を見守っていた少女だったが、怪獣がしきりとお腹に手をやっているのを見て、怪我をしているのに気付く。
少女はそのまま妖精のような足取りで廃墟の中へ入っていき、岬もこっそり後をつける。そして、廃墟の入り口のところで、水島博士の人形のそばに落ちていたメモからこの場所のことを知って駆けつけた海野たちと合流する。

海野「岬!」
岬「隊長!」
海野「水島は?」
岬「はぁ」
入り口の前で様子を窺っていると、中から少女が悲鳴を上げて飛び出してきて、海野の体にしがみつく。
それにしても、この画像の三人、みんな同じような髪形してるので、つい吹いてしまった。
三人が少女を連れてずんずん奥に進むと、白い鉄の扉があり、

その中は、小さな研究室のようになっていて、水島が縛られて床に転がされ、その後ろに白衣の老人が座って頭を抱えていた。
水島「……」
水島もすぐ彼らに気付いてパクパク口を動かすが、声は聞こえない。
最初、アフレコのミスなのかと思ったが、どうも水島はバローグ星人によって一時的に口を利けなくされているらしい。

バローグ星人「ふっふっふっふぁっふぁっはっ、いっひーひっひっははははは!」
こちらが
「は行を自在に操る笑い上戸の宇宙人」として名高いバローグ星人さんです。
なんというか、たいへん騒々しいと言うか、野卑と言うか、無駄にテンションの高いキャラクターで、わかりやすく言うと「RX」のゲドリアンっぽい。

バローグ「この老人は30年前までロボット工学の第一人者と言われていた水島博士である。その若き水島博士のおじいさんに当たる人だ。その可愛いお嬢さんはお孫さんだ。ふっはっはっはっ、ひーっひひひひっ!」
何の前置きもなく説明を始めるバローグ星人。
バローグ「30年前、あんたたちの国は戦争の真っ最中だった。十中八九負けることが分かっている戦争のね、だが、逆転できる可能性がなかった訳じゃない! それはこの老博士が、その時既に前代未聞の水島式水爆の製造に成功しかけていたからだ。ことは秘密を要したからね、幽閉されて一週間目に大変なことが起きた。この研究室が大爆発を起こして全てが消滅した。日本政府は実験中のミスとしてこれを片付けた。ところが、これは老博士が仕組んだ巧妙な芝居だった」

水島博士「芝居? はっはっはっはっ、そうだったかもしれんなぁ、観客のいない芝居だったかも……何十年ぶりだろうか、こうして生きた人間を見るのは……いやぁ、初めてのような気もするなぁ」
CM後、大きな赤いバラの絵をバックに狂気に満ちた眼差しで語り始める老博士。
この辺は、ほとんど前衛芝居の舞台を見ているような趣きである。
赤いバラは、水爆による爆発をイメージしたものだろうか。

水島博士「三郎、お前が生まれたことは聞いていたが……お前はほんとに三郎なのかね? まさか……」
老博士、水島の横顔を見ながらしみじみと語りかけるが、不意に疑惑の目を向け、語尾を濁らせる。
水島も親しげに何か言おうとするのが、あいにく、声が出ない。
水島が、30年前に死んだと思われていた祖父とに会うのは、無論、これが初めてであった。
だとすると、あの少女は……?
バローグ星人「
いーっひっひひひひっあははははは! いーっひっははははっ! ロボットを作り過ぎるとこう言う疑いを持つようになるんだね。何もかもがロボットじゃないかと……ふっははははっ」
そのやりとりを見たバローグ星人がすかさず横から高笑いを響かせながら割り込んでくる。
善悪は別にして、こう言う人が家族や親戚の中にいたら、かなり鬱陶しいよね。

バローグ「この洞窟に閉じ込められて三日目、博士は数億年前の恐竜ティラゾウルスのミイラを発見したのだ。ロボット工学の第一人者としては核兵器を作るよりは平和的でやり甲斐のある仕事にぶち当たった訳だ。恐竜の原子力ロボット化、成功すればティラゾウルスを永久に保存できる! 岬君と言ったね、あんたはさっき宇宙でタロウ、つまり、ティラゾウルスに会った筈だねえ。かわいそうに、タロウはちょっと傷付いて帰ってきたよ。日本政府のいくさと手を切り、老博士の孤独な作業が始まった、だが、仕事はあっという間に壁に突き当たった、ウランが手に入らないんだ」

水島博士「こいつらが何を企んでいたか、わしゃあ知らなかったんだ。こいつらがウランと引き換えに要求してきた科学とは、一億体の日本人のロボットを作ることだったんだよ! わしが作るロボットは非常に精巧だ。特殊な機械がなければ地球人と見分けがつかん、一人の日本人を殺し、ひとりのロボットと入れ替える、そいつを繰り返してこいつは、東京を日本を、さらには地球までも乗っ取るつもりだったんだ。わしが、この人間のわしが、その片棒を担いでしまった……」
両手で頭を抱え、呻くように己の罪を悔いる老博士。
と言うことは、既に少なからず日本人が、ロボットと入れ替えられていることになるが……。
バローグ星人「ひっひっひっひっ、その先は言わぬことだ」
水島博士「こいつらの地球征服計画は1980年に開始され……」
バローグ星人の忠告を無視してなおも博士が言いかけたとたん、星人が発射したレーザー銃が博士の体を貫く。
しかし、自分から率先して作戦の機密をベラベラ喋りだしておいて、その挙句に、
「その先は言っちゃらめぇええーっ!」は、さすがにどうかと思う。
バローグ星人「1980計画を知ってあなたは逃げ出した、それからのあなたは、タロウを飛ばしちゃあ喜んでる、まるで宇宙が自分の遊園地であるかのようにね」

水島博士「三郎、わ、わしを馬鹿だと思ってくれ、科学を、本当の科学を忘れた科学者は歌を忘れたカナリアだ……」
孫の膝に頭を乗せて、自嘲するようにつぶやく老博士。
「本当の科学を忘れた」……と言うのは、科学とは本来、人類の進歩や福利の為に使われるべきものを、忌まわしい大量破壊兵器の開発などに使ってしまった、アインシュタインを初めとする(核兵器開発に関わった)全ての科学者に対する痛烈な非難であると同時に、そこに岸田さんの平和への祈りが込められていることは言うまでもない。
水島博士「人にモノを頼むのは、これが初めてだが……」
水島(いや、あんた、バローグ星人に頼んでウラン貰ったんじゃないの?) 老博士の前置きに、ツッコミを入れたくてしょうがない水島だったが、あいにく、まだ声が出なかった。
水島博士「三郎、あの娘のこと、よろしく頼む。死んだらわしも宇宙を飛べるんだろうか、タロウのように……」
老博士は、そうつぶやくとあえなく絶命する。
しかし、まだ計画も完了していないのに、肝心の老博士を殺してしまうとは、バローグ星人も相当頭が黄昏ているようだ。
あるいは、既にロボットは全て作らせたので、用済みだと言うことなのだろうか?
すなわち、本格的な人間との入れ替えが行われるのは、1980年からと言うことなのか?
しかし、簡単に1億のロボットって言うけど、それを博士一人の手で30年で達成できるものだろうか?
あるいは、別にバローグ星人の用意した施設・工場があって、ロボットはそちらで大量生産されているのか? 「逃げ出した」と言うのは、その施設から老博士が逃げて、この洞窟に引き篭もったことを指しているのかもしれない。
また、そもそもなんでバローグ星人がわざわざメモを残して海野たちをこの島へ呼び寄せたのかも分からない。おびき寄せて、一網打尽にする為?
と、思わず疑問文が続いてしまったが、この1980計画については、あまりに分からないことが多く、この辺は作家としての岸田さんの未熟さが露呈しているようだ。

バローグ星人「ちょっと試してみようか、このコントロール装置のダイヤルを、こう回すと!」
バローグ星人、
暇なのか、さっさとレーザー銃で全員殺しゃいいものを、黒い地球儀のようなコントロール装置のレバーを掴んで勢い良く回し、外にいるティラゾウルスを暴れさせて、ひとり悦に入る。

ちなみに、バローグ星人が反対側にレパーを回すとティラゾウルスは子犬のようにおとなしくなり、岩肌に掘られた自分のベッドにすっぽり納まるのだった。なかなか可愛い。
やがて、島に宇宙船が降りて来る。バローグ星人を迎えに来たらしいが、帰っちゃうの?
ま、本格的なのっとり計画が始まるのは1980年とのことだが、1億体のロボットはそのまま置いて行っちゃうの?
とにかく、バローグ星人の行動と1980計画については、ちょっと考え出すと疑問が百出して話が進まなくなってしまうのである。
思うに、岸田さんとしては戦争とロボットの話だけにしたかったが、番組の性質上、どうしても怪獣を出さねばならず、そこで無理矢理ティラゾウルスと言う恐竜をストーリーに追加したせいで、ますます話が混乱してしまったのではないだろうか。
その後、バローグ星人、やっと海野たちにレーザー銃を向けて殺そうとするが、水島に邪魔され、ついでにコントロール装置を破壊されて再び怪獣が暴れ出し、その混乱に乗じて、海野たちは少女を連れて洞窟の外へ逃げ出す。

少女「歌を忘れたカナリアは~♪」
祖父を目の前で殺されたというのに、少女は悲しむ色も見せず、千葉に付き添われて歩きながら、再びあの童謡を歌い始める。
その夢見るような眼差しに千葉も戸惑い、立ち止まって後ろの海野たちを救いを求めるように見る。

水島も、明らかにまともではない少女の様子を見て、痛ましげな目になる。
水島の姉ならともかく、年の離れた妹が30年前死んだと思われていた祖父と一緒にいるというのはどう考えてもおかしいのだが、あまりに色んなことが起きたせいか、誰もその点に疑義を差し挟もうとしない。
水島「海野さん……あの」
海野「行ってやれ」
あと、いつの間にか水島が喋れるようになってる点についても何か説明が欲しかった。
なお、岬だけ研究室に取り残されていたが、海野たちはさっさと諦めて逃げちゃうのである。ひでー。
ストーリー上、岬がひとりにならないとファイヤーマンに変身できないとはいえ、いくらなんでも海野たちの態度は冷淡すぎる。千葉だけは、なんとか助けに行こうとするんだけどね。
岬、(また見殺しにされたか……)と思いつつ、ファイヤースティックをかざしてファイヤーマンに変身する。

だが、今回は戦闘シーンも普段とは異なり、ファイヤーマンはファイティングポーズも取らず、棒立ちで暴れ回る怪獣を見詰めている。
ファイヤーマンは、その怪獣が別に人類に対して害意を持っている訳ではなく、ただロボットの悲しさで、狂った電子回路の命じるまま暴れているだけなのを知っているので、戦意が湧かないのだ。
怪獣もファイヤーマンに気付くが、別に向かってくるでもなく、まだお腹が痛むのか、腹に手を当ててその場に座り込んでしまう。
かと言ってこのまま放置する訳にも行かず、ファイヤーマン、怪獣の前方に回って両手を振り上げかけるが、寸前で止まってしまう。
台詞こそなけれど、巨大変身ヒーローがこれだけ人間的な素振りで芝居をするのはあまり他では見たことがない。

しかし、最後はファイヤーマンが渾身のパンチを頭部に見舞うと、怪獣はその場にずどんとひっくり返って動かなくなる。
小さくて分かりにくいが、怪獣が尻尾を下に、両足を垂直に上げてぶっ倒れる姿はかなりキュートである。

怪獣が動かなくなった後も、ファイヤーマンは勝利を誇るより、むしろ自分の行いを羞じるように、わなわなと強く拳を握り締めていた。
バローグ星人「ファイヤーマン、お前が地球の正義の為に戦うなら、私たちはバロン星の正義の為に戦う、そして、やがてバロン星の正義が地球の正義を征服するだろう!」 バローグ星人は、キャラに似合わぬ台詞を吐いて、無謀にも宇宙船で攻撃を仕掛けてくるが、ファイヤーマンにあっさり反撃されて死亡する。
初期の「ドラえもん」の
「どっちも自分が正しいと思ってるよ、戦争なんてそんなもんだよ」と言う台詞に匹敵する、なかなか深遠な台詞であった。
ただ、そもそもバロン星がどうして地球を征服しなくてはならないのか、そう言う根本的な事情が抜けているのが残念である。
ファイヤーマン、やおら怪獣の体を持ち上げると、そのまま宇宙へ飛んでいき、再び怪獣を戦争のない自由な空へ解き放ってやるのだった。
個人的には、パンチ一発で怪獣が死ぬとは思えないし、思いたくないので、怪獣は単に気絶していただけで、その後も、宇宙空間と言う遊園地でいつまでも楽しく遊んでいるのだと考えて自分を慰めた、度し難いセンチメンタリストの管理人を、皆さん笑ってやってください。
だが、今回の本当のクライマックスは、実はこの後である。刮目して続きをお読み頂きたい。

一件落着後、水島隊員がいつになくウキウキと、花束など抱えてスクランブル交差点を大股で歩いている。
街頭ロケはそんなに珍しくないが、防衛軍の制服姿のまま、と言うのは異例のことで、弥が上にも人目を引いてしまっているが、今も昔も、擦れ違うおばちゃんたちが、芸能人だと見ると、容赦なくガン見してくるのは、日本の恥ずかしい伝統である。

早足で病院の階段を上がり、名前もわからぬ少女の病室のまで息を整える水島隊員。
部屋からは、いつものあの「かなりあ」の歌が聞こえていた。
だが、

思い切ってドアを開けて一歩踏み込んだ水島隊員が見たのは、ベッドの上に仰向けに横たわった、バラバラになった少女の体であった。
一瞬ドキッとするビジュアルだが、これは、俳優の顔から下をベッドの下に潜り込ませて、その上にダミーの胴体を置いているトリック撮影なのだ。

見れば、口は動いていないのに、声は途切れることなく聞こえているではないか。
そう、この少女も、水島博士が孤独を慰めるために作った精巧な人形だったのだ!
それにしても、パッと見、本物の人形にしか見えない芹川よしみさんの一重瞼の整った顔が、このシーンに実にマッチしている。
ま、その辺も考慮して彼女がキャスティングされたのだろうが。
また、咄嗟に、少女が人形のふりをしているのだと思い込んで、笑い出した水島隊員が、やがて、それが人間ではなく人形だと気付いて愕然とし、恐怖に駆られて反射的に病室から飛び出しかけるシーンの、岸田さんの演技がこれまた素晴らしいの一語である。
こればかりは、管理人の貧弱な表現力とキャプ画像では伝えきれないので、あえて貼らないことにした。読者の皆様には、是非、実際に映像で確認して頂きたい。

水島、なんとか心を落ち着かせて、改めて少女人形を悲しい目で見遣る。

少女「かわいそう……かわいそう……」
胸に仕込まれたテープから、いつまでも流れる「かなりあ」の歌を聴きながら、少女人形の無表情のショットで「幕」となる。
いやぁ、ほんと、全てはこの1シーンの為にあったと言っても過言ではない、今回のエピソードであった。
この衝撃で、今まで抱いていたストーリー上の色んな疑問まで全部吹っ飛んでしまったような気さえする。
俳優としても脚本家としても、岸田さんの異才にただただ感服する他ない(無論、監督たちスタッフの手腕も預かってのことだけどね)。
もっとも、今回のプロット、岸田さんも出ていた「怪奇大作戦」の、「青い血の女」と「24年目の復讐」を足したような感じもあって、岸田さんがそこから着想を得ている可能性はある。
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