第36回「恐竜大脱走 寄生植物の恐怖」(1978年3月9日)
時は白亜紀、第9コロニーの恐竜研究所、通称「恐研」に、稲田所長の娘である弓子と、仲良しの子供の恐竜、ジュリーがいた。

そのジュリー、近くの森の中をほっつき歩いていると、オレンジ色に光る不思議な木の実を発見し、意地汚くも貪り食ってしまう。
その一見、些細な出来事が、タイムGメンを戦慄させた重大事件の発端であった。

弓子「ジュリー、こんなところにいたの? あら、何を食べてるの? 変なもの食べちゃいけません! 今日はね、コセイドン隊のパトロールデーよ、あたしのボーイフレンドも来るの」
弓子はまるで母親のようにジュリーに語りかけ、その太い腕を引っ張って恐研へ連れ戻す。

弓子「コセイドン隊と言うのは、21世紀とこの白亜紀を行ったり来たりしてるタイムGメン、だから、いたずらするとレーザー銃で……」

弓子「撃たれちゃうぞ、バーン、バーン!」
弓子が喋りながら不意に後ろを振り返り、指で銃を撃つ真似をすると、習慣になっているのか、ジュリーもそれに合わせて撃たれたふりをして見せる。

弓子「あっはっはっはっ」
ロケ地は、毎度お馴染み伊豆シャボテン公園である。
ジュリー(付き合いきれねえな……) とでも言いたげに、バタバタさせていた両腕をパッと止めるジュリー。
台詞はあくまで管理人の想像だが、しかし、この時、ジュリーが……いや、ジュリーの中に巣食う何者かが、実際に、そんなことを考えていた可能性はある。
そう、既にジュリーの精神は、さっきの奇妙な果物によって支配されつつあったのだ。
後にジュリーがコセイドン隊に真っ先に目を付けたのも、弓子からタイムGメンについての情報を聞かされていたからだろう。
話が先走ったが、そうこうしているうちに、上空に、コセイドン号がワープアウトして来るのが見え、時を移さず、弓子の言うボーイフレンドたちがやってくる。

弓子「いらっしゃーい、テツさん、ゴウさん」
ゴウ「よお、弓ちゃん」
テツ「お前、馴れ馴れしいんだよ、お嬢さん、しばらくでした」
モリィ「弓ちゃん、俺には何も言ってくれないんだよ、冷たいんだよなぁ」

弓子「モリさんなら大歓迎するわよ、ジュリーが」
モリィ「そりゃないでしょ、あたしゃ人間の男ですよ!」
弓子「あっはっはっ」
弓子が三人のそばへ行って和やかに話していると、不意に近くで爆発音が轟く。

モリィ「うわあああーっ!」
すかさず、弓子に抱き付いて、その結構でかい乳に顔を埋めるモリィ。
さすが蛾次郎さん、抜け目がない。
そこへ緊迫した様子のスタッフが駆けつけ、

所員「所長、恐竜たちが脱走しました。高圧電流のシールドを破って」
所長「そんな馬鹿な、感電のショックで怯まなかったのか?」
所員「それがいつの間にか、配線が切られていたんです」
弓子の父親で、恐研の所長を演じるのはマナベ参謀こと宮川洋一さん。
ちなみにクレジットでは、稲田博士・宮川洋一となっており、それとは別に所長・牧田正嗣となっているが、ここで、所員たちがはっきり宮川さんに向かって「所長」と呼んでいるので、明らかに変である。
牧田正嗣さんは、後に出てくるお医者さん役の俳優だと思われる。
それはさておき、コセイドン号に残っていたバンノは、恐竜脱走の報に接すると、囲みから逃げ出した恐竜たちの捕獲に協力するよう、ゴウたちに指示する。
ゴウとテツ、そして弓子はファイタス1号で地上から、モリィはファイタス2号で空から捜索を行う。
シールドを破って混乱を巻き起こしたのはジュリーなのだが、そのジュリーも騒ぎに紛れて恐研から姿を消していた。
ほどなく、モリィが白亜山の崖の上に倒れているジュリーを発見、降下して保護しようとするが、

モリィ「ジュリー、どうしたんだ?」
モリィが駆け寄って呼びかけると、ジュリーはガバッと跳ね起き、モリィに襲い掛かってくる。
そう、人間並みに悪賢くなったジュリーは、そうやってコセイドン隊のメンバーをおびきよせ、ひとりひとり始末しようと考えたのだ。
モリィは崖から突き落とされ、重傷を負い、

ゴウ「モリィ、モリィ、だいじょぶかーっ!」
続いてやってきたゴウも、同じ手口でジュリーにやられそうになるが、寸前で、テツと弓子が駆けつけた為、ジュリーは慌ててまた死んだふりをするのだった。
結局、ジュリーとモリィは共に保護され、モリィはコロニーの病院で手当てを受け、ジュリーも身体検査をされることになる。

医者「脳波は正常です。じきに意識を取り戻すでしょう」
バンノ「どうもお世話かけます。こいつめ、まったく心配させやがって……」
医者の言葉に、バンノも安堵の表情を浮かべる。
ゴウ「気にいらねえな」
バンノ「え?」
医者「うん?」
ゴウ「だってそうでしょう、まるで俺たちの来るのを待ってたように、恐竜の脱走、モリィの事故、それに、ジュリーがあんなとこに伸びてた訳わかんない」
ゴウ、一連の事件の背後には誰かの悪意が潜んでいるのではないかと睨む。
ゴウ「電線を切った犯人は?」
医者「不明です。機械を使った様子もないし、人間の力ではとても」
ゴウ「ええ、恐竜にでも頼まなきゃ切れっこないし……ジュリー?」
医者「ははっ、まさか」
ゴウの思い付きを、医者は一笑に付すが、

バンノ(だが、ジュリーはモリィと同じ崖にいた。万一、モリィを突き落としたのが……)
バンノの胸裏には、漠然とした疑惑がむくむく膨れ上がっていた。
バンノ「ジュリーはどうした?」
ゴウ「今、テツが、レントゲン検査に立ち会ってます」
ジュリーはガラス張りの検査室に入れられ、体をベルトで縛られ、稲田所長じきじきの検査を受けていた。

ナレ「しまった! ジュリーの内部に潜んだそいつは狼狽した。気絶したふりをしていたばかりに体内を検査されてしまった」
ナレーターに代弁させたジュリーの懸念どおり、稲田所長は、恐竜の体内に異物があるのを発見する。
だが、レントゲンだけではそれが何なのか分かる筈もなく、彼らはジュリーを放置して席を外してしまう。

その間に、ジュリーは拘束具を引き千切り、ベッドから起き上がる。
ナレ「ひとりずつ、ひとりずつタイムGメンを始末するつもりだったのに、こうしてはいられない。目指すは21世紀、気が遠くなるほど長い年月宇宙を彷徨った末、漸く求める獲物を嗅ぎ当てたのだ」
この辺のモノローグ、辻真先さんが書いてるとは思えないほど、ぎこちない、素人くさい文章だ。
そもそも、どうせ後で稲田所長や、ジュリー自らが説明しているのだから、このナレーション自体、不要だったろう。
CM後、漸く意識を取り戻したモリィの口から、やはり、ジュリーがモリィを突き落としたことが判明する。
さらに、

所長「これは恐竜にとって第二の脳と言うべき神経の集まりです。ごらんなさい、神経叢と言うより」
バンノ「植物の根のようなものが伸びてますねえ」
所長「大胆な推定ですが、今ジュリーの体を支配しているのは、この植物生命体ではないでしょうか。ま、恐らく宇宙から飛来したのです。植物の種は宇宙空間でも命を保てますから」
ゴウたちが急いでレントゲン検査室へ向かうが、既にケースの中はもぬけの殻だった。

その頃、ジュリーは少し離れたところに着陸しているコセイドン号の前に立ち、ブリッジに向かって愛嬌を振りまいていた。
ジュリーの中に入っているのが、あの岡田勝さんだと思うと、ちょっと微笑ましいものがある。
アルタシヤ「可愛い!」
何も知らないアルタシヤは、ジュリーの策略にまんまと引っ掛かり、

ビックラジィー「姫、どうなさる?」
アルタシヤ「留守番は退屈ですもの、遊び相手になって貰うのよ、うふっ」
コセイドン号を出て、ジュリーに会いに行く。
ジュリーは、そのままアルタシヤにまとわりついてうまく船内に入り込む。

アルタシヤ「じい!」
ビックラジィー「姫、こんなことをしてはいけません。隊長さんに叱られますぞ」
ジュリー「黙れ、ロボット!」 と、いきなり喋れる筈のないジュリーがビックラジィーに向かって叫ぶ。

アルタシヤ「はあっ!」

ビックラジィー「お前は一体、誰だ?」
ジュリー「ふっふっふっふっ、私はこのタイムマシンの力を借りて21世紀に行きたいのだ。その時代の星を我が手に収めるために……私は低級な爬虫類ではない、君たちの言葉で言えば、さよう、コスモプラム、ふっふっふっふ、お前たちは向こうの時代に着いた時の人質になって貰う」
しかし、ジュリーの体を乗っ取ったばかりだと言うのに、言語からコセイドン号の時間航空機能のことまで、何もかも知り尽くしていると言うのは、いささか変である。
弓子からタイムGメンのことは多少聞き知っていたとしても、全く初めて見る世界で、そこまで手回し良く動けるものだろうか?
だいたい、その星を征服するのが目的なら、まずはこの白亜紀を支配しようとするのが筋で、いきなり21世紀に行くことはあるまい。そもそも、いくら知能が高くても所詮は恐竜、白亜紀ならともかく、21世紀にタイムスリップしたところで、世界征服どころか、あっさり退治されるのがオチだろう。
せめて、ジュリーから人間、たとえば弓子に乗り移ってからなら、まだ分かるんだけどね。
と、ここでバンノから通信が入るが、一足遅かった。

バンノ「アルタシヤ、用心しろ、そこへ恐竜が行ってもだな」
ジュリー「ふわっはっはっはっ、恐竜とは私のことか?」
いや、いくら知能が高くても、恐竜の手で銃を持つのは無理だと思うんですが……。
また、ジュリーが何も言ってないのに、バンノが、「コスモプラムが21世紀へ時間移動するつもりだから阻止しろ」と、ゴウたちに命令するのもちょっと変である。
ジュリーがコセイドン号を乗っ取ったからって、別に21世紀へ飛ぶとは限らないからである。
別の時代に行くとも、単に別の場所に移動するだけとも考えられる訳で。

ジュリー「エンジンの始動スイッチは何処だ」
アルタシヤ「私は知りません」
ジュリー「嘘をつくな!」
ジュリーに銃を突きつけられて、跳ねるように動くアルタシヤのお尻、良いですねえ。
この、光沢のある生地の、パツンパツンのズボンがなかなか良いのです。
ファイタス1号は、すぐにコセイドン号の前まで辿り着く。

テツ「ようし、マントル砲をお見舞いしてやるぞ」
ゴウ「お、お前、本気でコセイドンにぶち当てるつもりか」
テツ「馬鹿言え、アルタシヤを巻き添えに出来るか。わざと狙いを外すんだ」
テツはそう言って、いきなりコセイドン号の至近距離にマントル砲を撃ち込む。
命中せずとも、その衝撃でコセイドン号は激しく振動する。

ジュリー「何故お前がいるのにあいつらは撃つ?」
アルタシヤ「私を人質にしたお前が計算違いしてたんだわ」
ジュリー「ええい、そんな筈はない!」
無論、アルタシヤはテツの意図を正確に見抜いており、ジュリーに、コセイドン号にとどまっていては危険だと思い込ませようとするが、ジュリーもなかなかしぶとく、容易に逃げ出そうとしない。
結局、テツの作戦は失敗に終わり、いささか芸がないが、ゴウがコセイダーに変身してコセイドン号のブリッジに突撃するのだった。

ブリッジにて、コセイダーとジュリーのバトルが繰り広げられる。
考えたら、コセイダーがコセイドン号のブリッジにいるのって、とても珍しいケースだよね。
色々あって、二人はコセイドン号の外へ出て、なおも激しくどつきあう。

まるで親の仇にでも会ったように、ジュリーの頭を何度も何度も地面に叩きつけるコセイダー。
ジュリー、単なる恐竜の子供に過ぎず、普通に考えればコセイダーの敵ではないのだが、コスモプラムに乗っ取られると、その潜在能力を100パーセント使えるようになるのか、コセイダー相手に互角以上の戦いを演じて見せる。
コセイダー、ジュリーを殺す訳にも行かず、逆にピンチに陥る。

が、戦いを見守っていた弓子の「ジュリー!」と言う叫びに、まだジュリーの中に眠っていたジュリー本来の意思が反応して、動きが止まってしまう。
コセイダー、その隙に乗じて反撃に転じ、レーザーサーベルを構えて突っ込み、レントゲン写真で見たジュリーの体内のコスモプラムの位置を正確に貫く。
こうして、コスモプラムによる21世紀侵略は未然に防がれたのだった。

弓子「さよーならー、ありがとう、コセイドン隊、ジュリーの命を助けてくれて」
ジュリー「ぐるるる」
ラスト、21世紀へ飛び立つコセイドン号に向かって、感謝を込めて手を振る弓子と、体に包帯を巻いたジュリーの姿を映しつつ、幕。
以上、アイディアは良いのに、結果はツッコミどころの多い凡作に終わっていた36話であったが、これでも、後半ではマシな方である。
そうそう、言い忘れていたが、ゲストヒロイン弓子を演じたのは野上美智代さんでした。
ところで、今回の話とは関係ないが、

次の37話の予告に出てくる松岡まりこさんのアップは、煽り画像として使えるんじゃないかと思った。
「あ~ん?」って言ってるみたいで。
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