第50話「輝け北極オーロラ」(1982年1月30日)
いよいよ最終回である。
ほんとはもっと短く片付けるつもりだったのに、結局、丸2年以上かかってしまった。
北極の地下に広がる複雑に入り組んだ通路の中を歩き回っているアマゾンキラー。一応、機械帝国のトップの座に就いたものの、ゼロガールズも戦闘員も言うことを聞いてくれず、真の支配者である全能の神を倒さない限り張子の虎に過ぎないと、全能の神の居場所を探しているのだ。
アマゾンキラー、案外簡単に全能の神のいる秘密の小部屋を突き止め、短剣を振り下ろそうとするが、その手を、何者かの腕が掴む。

アマゾンキラー「ヘルサターン!」
全能の神「お前の負けだ、アマゾンキラー」
全能の神の力で甦ったヘルサターンに邪魔され、結局、全能の神に従わざるを得なくなる。

その後、北極の氷の上に久しぶりに登場した鉄の爪が、上空を飛んでいた平和守備隊のパトロール機を撃墜すると言う事件が起きる。
そのパトロール機が撃墜されながら撮影した写真を手掛かりに、サンバルカンは遂にブラックマグマの根拠地を割り出すことに成功する。
もっとも、それは、全能の神がサンバルカンをおびき出す為にわざと仕掛けた攻撃であった。
嵐山は直ちにサンバルカンにジャガーバルカンで出撃させるが、

イーグル「長官」
嵐山「美佐が生きているような気がしてな……どーしても行ってみたいんだ」
イーグル「いや、これ、一人乗りなんですけど……」 じゃなくて、
イーグル「わかりました」
こうして、嵐山長官も一緒に、北極へ向けてジャガーバルカンが発進する。
で、詳細は省くが、サンバルカンと嵐山は、ブラックマグマの本拠地、つまり、司令室へ辿り着く。
全能の神「ようこそサンバルカン、歓迎するぞ嵐山長官」
嵐山「さては我々をここに誘い込んだな」
全能の神「勿論、全てコンピューターが弾き出し、全てのことがその通りに運ばれた」
嵐山「娘は何処にいる、美佐は生きているのか? それだけでも教えてくれ」

美佐「お父さん! お父さーん!!」
嵐山「答えろ、答えてくれ!!」
美佐「お父さん、美佐はここにいます!!」
と、正面の紋章の脇の壁が窓になっていて、その向こうにいる美佐が嵐山に大声で呼びかけるが、それは
マジックミラー号でお馴染みの特殊な窓で、向こう側からは美佐の姿も見えず声も聞こえない仕組みになっていた。
全能の神「想像に任せる。それよりお前たちと命を賭けて戦いたいと言う闘士がいる。ゼロツー、サンバルカンを勇者の広場に案内するのだ」
ゼロツー「かしこまりました」

ゼロツーに案内されて連れて来られたのは、雪と氷で囲まれたベランダのような小スペースであった。
無論、彼らの相手はアマゾンキラーをおいて他にない。
盾と剣を持った、戦闘スタイルでサンバルカンの前に現れる。
全能の神「お前は機械帝国の女王だ、女王の威信に懸けて戦うが良い」
アマゾンキラー「ゼロガールズ、マシンマン、私と一緒に戦いなさい!!」
アマゾンキラーが嵐山たちと見物席に立っているガールズたちに命令するが、相変わらず、彼らは嘲笑を浮かべて立っているのだけで、全く言うことを聞こうとしない。
部下にシカトされている「悪の組織」の首領ほど、悲しいものはない。

アマゾンキラー「そう言うことか!!」
アマゾンキラー、全能の神が自分をサンバルカンに殺させるつもりなのだと悟る。
やっぱ、先週のうちに宇宙に帰っとけば良かったと悔やんでも後の祭りであった。
で、この戦いが、番組最後のラス殺陣となる。

アマゾンキラー「銀河無宿、アマゾンキラー!」
アマゾンキラーも腹を括り、マントを脱ぎ捨て、サンバルカンに戦いを挑む。
この、黒いタイツの上に鎧を羽織ったスタイルは、なかなかカッコイイ。
しかし、いつものことだから見過ごしてしまいがちだが、一対三と言うのは、公平な戦いとは言えないよね。今回は、ガールズや戦闘員たちの手助けはないし、おまけに相手は女性である。

それはそれとして、三人を相手に踏ん張って、時折面白い顔を披露するアマゾンキラー。
イーグルに剣を叩き落されるが、なおも多彩な攻撃で三人を苦しめる。
だが、最後はニューバルカンボールを浴び、

アマゾンキラー「全能なる神、氷の部屋!! うっ、ぐあっ!!」
せめてもの復讐に、全能の神の居場所をサンバルカンに教えてから、短剣を自らの腹に突き立てる。
アマゾンキラー「あっ、あああ……ああっ」
頭を大きくのけぞらせてから、踊るようにくるっと一回転し、その場に倒れ伏せる。
激しい爆発が起き、アマゾンキラーの体は粉々に吹っ飛ぶ。

イーグル「アマゾンキラー……」
敵ながらその見事な死に様に、三人も威儀を正して敬礼を捧げるのだった。
管理人、このシーンを見てつらつら思ったのは、ヘルサターン、ヘドリアン、アマゾンキラー、イナズマギンガー、それぞれ一騎当千のツワモノで、個々の能力ではサンバルカンひとりひとりを上回っていると思われる彼ら4人が一致団結して戦っていれば、1クール待たずにサンバルカンを倒せていたのではないだろうかと言うことだ。
だが、実際は、サンバルカンそっちのけで権力闘争と陰謀に明け暮れ、気がつけばひとりまたひとりと非業の死を遂げてしまった訳で、なんとなく虚しくなってくる。
それにしても、悪の長い歴史の中でも、幹部、それも女性幹部が切腹して果てるなんて、空前絶後の壮絶な死に様だよね。
三人と嵐山は、再び司令室へ戻る。

嵐山「全能の神は何処にいる?」
イーグル「ヘルサターン総統は?」
パンサー「ヘドリアン女王はどうした?」
全能の神「彼らは全て死に絶えた、命あるものはいつか滅びるのだ。そして機械生命だけが永遠に生き長らえるのだ」
嵐山「自らを全能の神などと、なんと言う傲慢な!!」
三人がバルカンスティックを四方の計器類に投げつけるが、メカは爆発してもあっという間に元に戻ってしまう。
嵐山「自己再生能力を持っているんだ」
なんか、このラストの一連の流れは、「レットバロン」の終盤に通じるものがあるよね。
主人公たちが遠く離れたアジトに乗り込むところとか、ラスボスが人工頭脳であるところとか、自己修復能力を有しているところとか。
ま、同じ人が書いているのだから似ても不思議はないのだが。
全能の神「全能の神は滅びぬ。いよいよ最期の対決だ。サンバルカン、黒い太陽神の復讐の時が来た。ゼロガールズ、キングマグマーに乗り込むのだ」
全能の神は、その場に巨大ロボットを出現させ、残ったガールズたちに操縦させる。

まさか、ゼロガールズが最後まで生き残るとも、巨大ロボットを操縦することになるとも、全く予想外の展開であった。
CM後、最後の巨大ロボットバトルがスタート。
と、戦いの最中、日蝕が始まり、日がみるみるうちに欠けて行き、あたりは真っ暗になる。
キングマグマーはすかさず冷凍ガスを吹き付け、サンバルカンロボを氷漬けにしてしまう。
さしものサンバルカンロボも、プラズマエネルギーを補給できなくては身動きが出来ない。

無抵抗のサンバルカンを一方的に痛め付けるキングマグマー。
が、悪はいつもながら最後の詰めが甘い。肝心のキングマグマーが、柳生博の百万円クイズハンターのゴールデンハンマーみたいなへぼい武器しか持っておらず、それでゴンゴン殴りまくると言う決定打に欠ける攻撃しか出来ない。
全能の神「ようし、やったぞ、ゼロガールズ」
嵐山「日蝕まで計算して北極へ誘い込んだのか……」
全能の神「勿論だ。黒い太陽神の復讐の時なのだ」
嵐山「いや、そんなことしなくても、夜に活動したら良かったのでは?」 全能の神「……………………あっ」
と言うのは嘘だけど、全能の神が、賢しらぶったアホだったことがこれで証明された。
果たして、ゼロガールズが執拗に、だが決め手に欠ける攻撃を続けているうちに、日蝕が終わってしまったのである。
太陽の光と共に、美しいオーロラがふりそそぎ、サンバルカンロボが復活する。

最後は、オーロラプラズマ返しを浴び、あわれ、三人は、枕を並べて討ち死にするのだった。
全能の神「勝ったと思うなよ、サンバルカン、長官の娘は我が手中にある、勝負はこれからなのだ」
ほんとは泣きたいのを我慢しつつ、全能の神がなおも負け惜しみを言う。
はっきり言って、わざわざサンバルカンをアジトまでおびき寄せた作戦そのものが、大失敗だったと言わざるを得ない状況になっていると思う。
前回、ジャガーバルカンの能力を以てしても、ブラックマグマの本拠地を探し出すことは出来ず、すごすご引き揚げていたくらいだから、そんな余計なことをしなければ、永久にこの場所を突き止められることはなかっただろう。
だから、その間に、壊滅状態にある戦力をじっくり立て直し、改めて侵略を開始するのが最良の方策だったと思われる。
それはさておき、4人は助けを求める美佐の声を頼りに、例の部屋を発見し、飛び込む。

美佐「お父さん、助けて!!」
嵐山「美佐!」
その小さな部屋には、全能の神(脳味噌)、ヘルサターン、美佐、そして何故かヘドリアンとアマゾンキラーの姿もあった。
ヘルサターン「少しでも動いてみろ、娘の命はないぞ」

アマゾンキラー「おめおめと地獄の部屋に入ってくるとは」
ヘドリアン「これでサンバルカンもおしまいじゃな」
二人は生気のない顔でつぶやくが、その表情からも分かるように、全能の神の作り出した幻影に過ぎないのである。
全能の神「機械帝国と人間の戦いはこれで機械帝国の勝利と言うことになる。君を生かしておいたのはここで敗北宣言をして貰いたかったからだ。さあ、土下座して許しを乞え」
妙に形式にこだわる全能の神さんは、嵐山長官に「参った」と実際に言わせようと迫る。
美佐「助けて、お父さん、土下座して謝って!! お願い」 と、この時、十字架に縛られた美佐が涙混じりに漏らした一言が、機械帝国を崩壊に導くことになる。

そんな危急の場合であったが、あくまで嵐山の頭脳は冷静かつ明晰で、
嵐山(あれは美佐ではない、アンドロイドだ。本物の美佐が私に土下座しろとは言わない筈だ)
そう、それだけで、嵐山はそれが本物の美佐ではないことを見抜いてしまう。
しかし、全能の神、この期に及んでなんでわざわざ美佐のニセモノを使ったのか、いささか理解に苦しむ。本物の美佐なら真逆のことを言うだろうから、あえてニセモノに「土下座して」と言わせたかったのかもしれないが、それはあまりに(特撮ヒーロー番組における)人間心理に疎い発想だと言わざるを得ない。
個人的には、美佐は既に殺されていたので、ニセモノを使うしかなかった、と言う救いのない話の方が好きだし、70年代の特撮ならそれくらいハードな展開もありえただろうが、80年代の、それもちびっ子たちの見ている戦隊シリーズではちょっと無理な相談だろう。

嵐山、その場にしゃがみこんで、ほんとに土下座をすると見せかけ、

嵐山「バルカンスティック!」
咄嗟に、かたわらのイーグルが持っていたバルカンスティックを奪い、全能の神に向けて叫ぶ。

嵐山の叫びと共に、ビームが発射され、すっかり油断していた全能の神に命中し、あえなく全能の神は死に、同時にヘルサターンたちの姿もスーッと消える。
ついでに美佐の姿も消えたのは、アンドロイドではなく単なる幻影だったようだ。
考えたら、全能の神って、最後は完全なひとりぽっちになってしまい、幻影の部下だけを従えていきがっていた訳で、それを思うとちょっとかわいそうに見えてくる。
何度も言ってるように、視聴者に同情されるような「悪の組織」に明日はないのである。
全能の神、メカは再生能力があると言う触れ込みだったのに、何故か本体は復元できないらしく、代わりにあらかじめ用意されていた時限爆弾が作動し始める。
嵐山たちは爆発までの僅かな時間に別の場所に監禁されていた美佐を発見、救出し、ジャガーバルカンで間一髪脱出するのだった。
しかし、さっきも言ったように、なんでわざわざ美佐を殺さずに生かしておいたのか、どうも機械帝国のやり方が理解できないのである。
とにかく、こうしてブラックマグマはほとんど自滅する形で消滅し、遂に地球に平和が訪れたのだった。
ラスト、久しぶりにサファリパークに来ているサンバルカン、嵐山親子、そして子役および助八のレギュラー陣。

まり「あ、こっちもいる!!」
メンバーと子供たちとの絡みは特にないが、子役たちが素でサファリパークを楽しんでいるのが伝わって、なんとなく心が温かくなるのである。

嵐山「君たち、これからどうするつもりだ?」
その後、バスを降りた三人に、嵐山が今後の進路を尋ねると言う、珍しいシーンとなる。
たいてい、戦隊シリーズでは各メンバーひとりひとりの過去の名場面を流してから、長官と別れの挨拶を交わすくらいだからね。

飛羽「僕は部隊に戻ってジェットパイロットの教官をやります」

嵐山「うむ、まさに適任だな」
本作では、このタイミングで、ナレーションと共にバルイーグルの過去の名場面が流れるのだが、名場面と言ってもほんの数秒の短いものである。

欣也「自分は研究室に戻って海洋学の研究を続けます」

嵐山「いいだろう、頑張れよ」

朝夫「僕は田舎に帰ってオヤジの仕事を手伝い……」
嵐山「おめえにゃ聞いてねえんだよ!!」 朝夫「ヒイイッ!!」
意味もなく朝夫に厳しい嵐山であった。
じゃなくて、
朝夫「僕は田舎に帰ってオヤジの仕事を手伝います」
嵐山「ほう、そりゃ、お父さんも喜ぶだろう」
でした。
※以下、ボツネタ

助八「僕は、美佐ちゃんと結婚して店を継ぎます!! お父さん!!」
嵐山「いっぺん、カレーの具にしたろかっ?」 助八「ヒイイッ!!」
以上、ボツネタでしたー。
飛羽「長官はどうなさるんですか?」
嵐山「そうだな、美佐のお婿さん探しでもするか、美佐もいつの間にか大人になったことだしな」
美佐「まぁ、お父さんたら!!」
嵐山の言葉に、飛羽たちがこぞって「立候補」するが、ま、これは社交辞令と言うか、その場のノリであって、誰も本気で美佐と結婚したいとは思っていなかっただろう。
美佐も、今のところ結婚する気はないようで、三人のうち誰を選ぶでもなく、
美佐「やっと平和が戻ったのよ、当分青春を謳歌しなくちゃ!!」
と言う、曖昧な台詞でお茶を濁すのだった。

助八について走っている子役たち。
ゼロワンと並んで管理人の心のオアシスだったまりちゃんとも、これでお別れ。

ナレ「機械帝国は滅びた。だが、第二、第三の機械帝国が出てこないとは言えない。その時、この素晴らしい地球を救うのは君たちの平和を願い続ける温かい心なのだ。ありがとう太陽戦隊サンバルカン、さようならサンバルカンロボ」
横一列になって歩く4人の映像に、感動的なナレーションが被さって、幕となる。
と、同時に、「太陽戦隊サンバルカン」のレビューもこれにて終わりです。
長い間のご愛読、ありがとうございました!!
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