第25話「さそり座の花嫁」(1989年4月23日)
冒頭、クライス要塞の司令室に、あの三角錐を通じてクライシス皇帝からの怪魔通信が入る。
その場に居合わせたのはジャーク将軍とボスガンだけだった。
通信終了後、ガテゾーンとゲドリアンも姿を見せる。
ジャーク「皇帝陛下はお怒りになっておられるぞ、我らの地球支配の戦略が一向に捗らぬ、何をしているのだとお怒りになっておられるのだ」

ガテゾーン「我らの戦略が進まないのはRXがことごとく邪魔をするからです。RX打倒こそ、我らが急務」
今更だが、ガテゾーンのデザインとスーツの質感って、何度見ても惚れ惚れするほどカッコイイよね。
なんとかのひとつおぼえのように、打倒RXに名乗りを上げる二人を制し、

ボスガン「待て、その役目は俺がする、お前たちでは信用が出来ん」
ゲドリアン「なにぃっ、無礼だぞ」
ガテゾーン「我々を見くびるのか?」
ボスガン「お前たちの力ではますます強化されたRXを倒すことは出来ん!」
ボスガンが、自信たっぷりにその任務を買って出る。
と、再び怪魔通信が開かれ、何かのメッセージをジャーク将軍に伝える。
ジャーク「これは本国にいるマリバロンからの通信だ」
ボスガン「マリバロンは何の為に本国に?」

ジャーク「マリバロンは皇帝陛下に呼ばれ、じきじきに地球攻略の作戦指揮を受けているのだ。よってお前たちに命令を与える。ゲドリアンとガテゾーンはRX打倒の作戦を始めよ」
ガテゾーン「アイアイサー!」
ジャーク将軍はそう説明するのだが、ぶっちゃけ、高畑さんがスケジュールか何かの都合で撮影に参加できないせいだろう。
しかし、総司令官である自分を差し置いて、部下であるマリバロンがじきじきに皇帝に招かれていることに、ジャーク将軍は何も感じないのだろうか?

ジャーク「ボスガン、そちはさそり座生まれの5人の花嫁を誘拐し、生贄として皇帝陛下に捧げるのじゃ」
ボスガン「……」
なにを思ったか、ジャーク将軍、ガテゾーンたちにRX打倒の命令を与える一方、ボスガンには唐突にそん命令を下す。それが、いまマリバロンが伝えてきた新たな命令らしい。
ガテゾーンとゲドリアンの立てる無遠慮な笑い声を背中で聞きながら、ボスガンは俯いてじっと唇を噛み、必死に感情を抑え込もうとする。
ジャーク「ボスガン、何か不服でもあるのか?」
ボスガン「いやっ、不服などは何も……」
それにしても、さそり座などと言う概念が、クライシスにもあるのだろうか? 全く異なる文明を築いている両者に、そんな文化的共通項があるとも思えないのだが。
ちなみになんでさそり座なのかと言うと、当時、美川憲一がコロッケのモノマネがきっかけで再ブレイクしていたことからの安直な発想ではないだろうか。そう言えば、管理人の旧友の白石君もよく「さそり座の女」をカラオケで歌っていたような記憶がある。

ゲドリアン「花嫁生贄作戦を承知した時の、ボスガンの顔ときたら、見物だったぜぇ」
ガテゾーン「ジャーク将軍の命令とはいえ、真面目にやるつもりかな」
ゲドリアン「誇り高い奴のことだ、裏でとんでもないことを考えているかもしれん」
ガテゾーン「寝首を掻かれぬよう、奴の動きを監視しなくては」
その後、ゲドリアンとガテゾーンの仲良しコンビは、ボスガンのことを嘲笑いつつ、今後のボスガンの行動に警戒感を抱いていた。
だが、同じ頃、ボスガンは、彼らの想像だにしないことに思いを馳せていた。

ボスガン「奴らはジャーク将軍が皇帝陛下の重大な命令を隠していたのを知らんのだ。半年以内に地球支配を成し遂げなければ、ジャーク将軍を処刑する……とすれば、次の将軍の地位は同じクライシス人のこの私しかいない。チャンス到来とはまさにこのことだ」
そう、ゲドリアンとガテゾーンはその場にいなかったので聞いていないが、実は、既にジャーク将軍の尻には火が付いていたのだ。
ただ、ボスガンが直ちに「次の将軍はミーざます」と決め付けるのは、言い換えれば、自分たちには「半年以内に地球支配を成し遂げる=RXを倒す」ことは、
「絶対に不可能」だと考えていることになり、腐っても悪の組織の一員としては、あまりにプライドがないように見える。
それに、仮にジャーク将軍が任務失敗で処刑されることになれば、その配下の実行部隊長であった彼ら4人にも当然、それ相応の責任が問われることを、何故ボスガンは予想できないのだろう?
とにかく、ボスガンは秘めた野心を燃え上がらせつつ、花嫁生贄作戦を利用して、RXを倒し、皇帝に対するポイントを稼いでおこうと画策する。

ボスガン「鋼すらも断ち切るこの剣で、RXの体を真っ二つにしてくれる」
ボスガン、自慢の名剣を手にすると、

あらかじめ切れ目が入っている、切れてるチーズみたいな円柱を、見事両断するのだった。
自信満々のボスガンだったが、ついさっき自分が口にした「ますます強化されたRX」と言う言葉をすっかり失念していた。
確かに、14話までのRXになら、それで勝てたかも知れないが……。
さて、ある夜、光太郎は道路を転がる謎の空き缶を追いかけて、橋の下までおびき出される。

ボスガン「久しぶりだな、南光太郎」
待っていたのは、ガテゾーンやゲドリアンではなく、ボスガンであった。

光太郎「貴様はボスガン!」

ボスガン「そのとーりだ」
平然と応じつつ、心の中で、
「良かったー、名前覚えててくれてほんとうに良かったーっ!」と、ガッツポーズを取るボスガンであった。
その横に、怪魔獣人ガイナカマキルが立つ。
ボスガン「これは怪魔獣人大隊の最強の戦士、ガイナカマキル!」
光太郎「うるっせえっ!! 毎回毎回……どこが最強なんだよっ!?」
怪人「ヒィィィーッ!」 つもりつもった、彼らの空疎な決まり文句に対する光太郎の怒りが遂に爆発し、その怒声に思わず怪人もビビる。
……嘘である。
光太郎「そいつに俺を襲わせるつもりか」
ボスガン「光太郎、私はクライシス帝国の貴族にしてナイトの位を持つ者だ、貴様ごときを倒すのに怪魔獣人の手は借りぬ。一対一で決着をつけてやる」
光太郎「邪悪なクライシス人にも誇りと言うものがあるようだな、良いだろう、どっからでも来い」

ボスガン「慌てるな、お前にトドメを刺す前にやることがある。面白くなるから見ているんだな」
光太郎「なにっ、どうせろくでもないことでも企んでるんだろう?」 身も蓋もないこと言う光太郎part1
その後、ガイナカマキルによって、結婚式の最中に花嫁が攫われるという事件が続発する。
しかも、攫われたのはすべてさそり座生まれの女性だと言う。
それを伝えるテレビニュースを街頭スクリーンで見ている光太郎とジョー。

光太郎「ボスガンの奴、俺を倒す前にやることがあるといったのは、花嫁を攫うことだったのか」
ジョー「しかし、何の為に花嫁を?」
光太郎「奴ら、俺たちの常識では測れない、馬鹿げたことをするからな」 ジョー「うん」
身も蓋もないこと言う光太郎part2
せめて、「恐ろしいこと」って言ってーっ!(ボスガンからのお願い)
そこへ玲子も来て、自分もさそり座生まれだと告げる。

光太郎「ええーっ? ……あっははっ、道理でー」
玲子「何が道理で?」
光太郎「クライシスは鼻っ柱の強いさそり座の女が好きなんじゃないかと……」
玲子「もう、失礼ね、こらーっ!」
久しぶりに、「青春ごっこ」に興じる光太郎たちであった。
二人の後ろを歩きながら考え込んでいたジョー、不意に指を鳴らすと、
ジョー「そうだ、兄貴、玲ちゃんと結婚式挙げないか?」

光太郎「えーっ?」
玲子「私と光太郎さんがーっ?」
ただし、あくまで偽装で、それによってガイナカマキルをおびき出そうという作戦だった。
光太郎は反対するが、二人は大乗り気で、
玲子「かりそめでもなんでも、光太郎さんと結婚式挙げられるんだもんね」
ジョー「そうだよ」
結局、光太郎、ジョーに顔を近付けて耳を舐めながら(註・舐めてません)、ある交換条件を持ち出してその計画に同意する。

CM後、教会で、光太郎と玲子の偽装結婚式が執り行われている。
正装した佐原家の人たちや、エキストラとして雇ったのか、他の参列者もいる、本格的な式だった。
無論、佐原家の人たちは、それが偽装だと承知の上で協力しているのだ。

偽装と言っても、二人はちゃんと結婚衣裳を着ており、かなりの費用が掛かっていると思われるのだが、一体、誰が負担しているのだろう?
また、これ以外にも他の花嫁の披露宴のシーンなどもあって、何度も言ってきたことだが、バブル期のドラマは金がしこたま掛けられているのである。
ただ、誓いのキスなんて言うドキドキシーンもなく、あっという間に二人で車に乗って新婚旅行に出掛けるシーンになってしまうのが物足りない。
しかし、男はともかく、女性の方は、ドラマとは言え、結婚式を挙げるのは嬉しいことなのだろうなぁ。

光太郎「えっへっへっ、可愛いなぁ」
しばらく車を走らせていると、フロントウィンドウにガイナカマキルが飛び降り、助手席の花嫁を運び去ろうとする。
怪人「光太郎、白鳥玲子は貰っていくぞ」
光太郎「待てーっ!」
光太郎も車から降りて追いかける。

花嫁「キャーッ、光太郎さん、助けてーっ!」
だが、肩に担いでいた花嫁の足がバタバタ動いてるのを見て、それが異様に毛深いのに気付き、
怪人「怪物っ!」 自分のことは棚に上げて、思わず悲鳴を上げてその体を地面に投げつけるカマキルちゃんでした。
果たして、かぐわしいウェディングドレスの中身は、いつしか、むさ苦しいジョーに入れ替わっていた。

ジョー「冗談じゃないぜ、どっちが怪物だってんだ!」

怪人「貴様、霞のジョーだな?」
ジョー「バレたからには仕方ねえや、ガイナカマキル、花嫁は何処だ、白状しろ!」
スカートの裾をたくし上げながら、怪人に問い掛けるジョーが可愛い。
しかし、この状況で、なんで上から目線でそんな要求が出来るのだろう、コイツは?

玲子「ああ、怖かった。神様、どうか光太郎さんをお守りください」
一方、本物の玲子は、車の後部座席に、花束に紛れて隠れていた。
車から出ようとするが、そこへボスガンが現れたのを見て、慌てて車の中に戻り、すべてのドアを閉めて閉じ篭る。

ボスガン、車の左右上下を素早く動き回りながら、あの剣で切り裂く。
そして、離れたところに立ち、

額の顔でひと睨みすると、

ドアやルーフなどが綺麗に切り落とされ、玲子の姿が丸見えになる。
五右衛門みたいな奴であった。

結局玲子も捕まり、他の花嫁たちと共に、近くの海に面した岩場に立たされる。
全員、催眠状態にあるらしい。
なお、衣装はローブのような新しいものに取り替えられているのだが、これは、やはり隊長権限でボスガンがひとりで脱がせて着替えさせたのだろうか。

ボスガン「怪魔空間におわします、全知全能の神、クライシス皇帝陛下、これより、臣ボスガン、さそり座の花嫁5人を生贄としてあなた様に捧げます。なにとぞ、お怒りをお鎮め下され」
しかし、生娘(じゃないだろうけど)を生贄に捧げて怒りを鎮めようとは、皇帝のことを、ほとんど古代の邪神扱いしてるよね。
もっとも、これは、「スカイライダー」の魔神提督が人間の耳1000個(げげっ)を勝手に供物として捧げようとしたのとは違い、皇帝自身のリクエストらしいので、ありがた迷惑になることはなかっただろう。

と、そこへRXが駆けつけ、向かい側の突端に着地する。
RX「待て!」
ボスガン「待っていたぞ、RX!」
結婚28年目の倦怠期の夫婦のように、いまいち噛み合わない二人の会話。

RX「5人の花嫁をどうするつもりだっ?」
ボスガン「我らの忠誠の証として、皇帝陛下に生贄として捧げるのだ。さそり座の女は活きがいい。皇帝陛下もさぞ満足されるであろう!」
RX「貴様ぁ、どんな残酷なことをやろうとしているのか、分かっているのかぁっ?」
ボスガン「黙れRX、貴様こそ分かっていないようだな、私の真の狙いは、この作戦につられてのこのこ出てくる貴様の首を刎ね、この花嫁と共に皇帝陛下に捧げることなのだ」
で、結局、具体的に女の子たちをどうしようと言うのか、さっぱり分からないのだった。
その場で処刑するのか、皇帝の下へ送り届けるのか。
後者の場合、やっぱりスケベでスケベでどうしようもないクライシス皇帝(註1)の後宮に入れられることになったのだろうか。
「活きが良いから……満足」と言うからには、それ以外の目的はなさそうだしね。
(註1……わざわざ半ケツ・マリバロンだけを呼び寄せてじっくり話を聞いているところから見て、そうとしか考えられない)
さて、いよいよボスガンとの一騎打ちとなる。
大口を叩くだけあって、ボスガンの剣技はなかなかのもので、

RX(なんて凄まじい剣だ。このままでは……)
巨大な岩も易々と断ち割る剣の威力に、RXも驚嘆する。
しかし、

ロボライダー「俺は炎の王子、RX、ロボライダー!」
RXがここでロボライダーに変身してしまったことで、ボスガンの目論みは脆くも崩れる。
そう、ボスガン、前述したように、自分で「強化されたRX」と言っておきながら、ロボライダーやバイオライダーに対する方策をすっかり怠っていたのだった。
どうでも良いが、ロボライダーって「悲しみの王子」じゃなかったっけ? ま、いいけど。
頑丈さが売りのロボライダーに対しては、ボスガン秘蔵の名剣も役に立たず、あえなくへし折られてしまう。
結局、ガイナカマキルがボスガンを庇う形で割り込み、RXに戻ったリボルケインでサクッと倒されて事件は解決する。
……ほんと、どこが最強の戦士だよ。
ガイナカマキルが死ぬと同時に、何故か戦闘員たちの姿も消え、玲子たちも正気に返る。

全員ビミョーなルックスの花嫁たちが、向かい側の岩場に雄々しく立つ漆黒の戦士を憧れと感謝の眼差しで見遣るのだった。
今回の総括。

ガテゾーン「ボスガンの奴、さそり座の花嫁作戦のみに精出せば良いものを」
ゲドリアン「それそれ、己の野心のために先走りしおって……虻蜂取らずとはまさにこのこと」
……
はい、管理人が何も付け加えることはありませんね。
屈辱に塗れたボスガンだったが、執念深く、なおもRXの命を狙っていた。
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