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「宝石の美女」~江戸川乱歩の「白髪鬼」(画像復刻版)

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 今回紹介するのは、第7作目「宝石の美女」であります。1979年1月6日放送。

 原作は乱歩の「白髪鬼」だが、元々これは1800年末にイギリスのベストセラー作家・コレリお姉さまが若干22才の時に物した「ヴェンデッタ(復讐)」と言う小説を、黒岩涙香が「白髪鬼」のタイトルでリライトし、さらにそれを1931年に乱歩が翻案小説として書いたものなのである。つまり、パクリのパクリ……。

 よって、元々のネタから90年の時を隔ててドラマ化されたことになる。

 ネタバレといっても、この作品は他とは違い、最初から犯人が誰か、簡単に分かるようになっているので、ネタバレのしようがないかもしれない。原作からして、妻とその愛人に裏切られた男の復讐の様子が一人称で語られると言う、ミステリーと言うより伝奇小説の体裁を取っている(とうぜん、明智も出ない)。

 原作の舞台は大分、だったっけ? とにかく九州なのだが、ドラマでは砂浦と言う海に面した町になっている。

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 オープニングタイトルのイメージ。

 ドリフの「博士と助手のコント」が始まりそうな予感がビンビンするぜぇ。

 さて、冒頭、刑務所から逃亡する宝石強盗犯・西岡(睦五郎)の様子が描かれる。これはドラマのオリジナルだが、一応、モデルとなる人物は原作にも出てくる。そっちは海賊だけど。

 彼は捕まる前に、ある場所に盗んだ宝石を隠匿しており、そこへ向かったのではないかと思われたが、行方は杳として知れなかった。変装用の白髪のカツラを持っていることは分かったのだが。

 その知らせは、西岡逮捕に尽力した明智の事務所にも届く。波越は仕返しされるかもしれないから気をつけろと注意する。

 その西岡、砂浦町にある大牟田家の墓(大牟田家は土葬で、代々の棺が石窟のような墓に安置され、入り口には錠がかけられている)に忍び込み、そこに隠していた宝石を回収しようとするが、既に何者かに奪われていた。

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 その後、物語の主な舞台となる大牟田家へスイッチ。のっけからスリップを脱いで、男性視聴者の目を楽しませてくれるのは、金沢碧さん演じる大牟田ルリ子(原作は瑠璃子)です。

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 ヌードも披露されている……と言いたいが、全然別の脱ぎ女優さんです。しかし、このくっきりした日焼け跡はどうかと思う。それに、もうちょっといいお尻をした人を呼んで来て欲しかった。

 気持ちよく浴槽に身を沈めていたが、窓からこちらを見ているハリネズミのようにとがった白い髪の不審者に気付き、悲鳴をあげて人を呼ぶ。

 屋敷には、愛人の画家・川村(小坂一也)と、ルリ子の妹の豊子(田島はるか)が同居していた。駆けつけた彼らに警察を呼ぶよう指示する。

 最初に書いてしまうと、ルリ子は財産目当てで夫の大牟田敏清を、川村、豊子とも共犯で海へ突き落として殺しており、ドラマはそれから1年後と言う設定である。

 砂浦の港から、西岡が逃走用に使った車が見付かり、警視庁の目も、そこへ集中する。

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 一方、近くのホテルに、白髪でサングラス、顔に大きな傷のある里見と名乗る男がやってくる。

 そのフロントのホテルマンを、宅麻伸(当時は、詫摩繁春)が演じている。彼が天知茂の付き人だったと言うのは、いまさら言うまでもない。

 宅麻「気味の悪い人だな。金はあるらしい、前金だってポンと百万預けたんだからな」

 宅麻さん、第6作の「妖精の美女」では、犬を散歩させていてビックリするだけの役だったな。第8作「悪魔のような美女」では、パンツ一丁で殺されていた。

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 波越と明智は、大牟田邸へ行き、ルリ子たちから事情を聞く。彼らは当然、不審者を西岡と考え、彼がこの辺りに宝石を隠しているのではないかと推測する。

 川村は売れない画家で、生前から敏清が面倒を見ていたが、今では屋敷でルリ子と一緒に暮らしていると聞き、

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 明智「つまりお二人は近い将来結婚なさるんですね」

 相変わらずそういうことには敏感な明智さん。この段階で、彼の心のメモ帳に「大牟田ルリ子……見込みなし」と書き込まれていた。

 ルリ子「あなた様は?」
 明智「は、明智小五郎です」

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 豊子「あの有名な私立探偵の明智さん?」
 明智「ええ、有名な私立探偵の明智です」

 この豊子を演じる田島はるかさん、なかなか可愛いんだよね。明智の心のメモ帳に「豊子……脈あり」と書き込まれていた。

 なお、ルリ子の妹と言うのはドラマのオリジナルだが、原作に、お豊と言う老婢が出てくるので、名前はそこから取られたのだろう。

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 折も折、そこへ真っ白な頭にサングラスをかけた怪人物がやってくる。ルリ子は別荘を売りに出していて、その買い手として、不動産会社の人が連れてきたのだ。

 里見、その正体は、死んだ筈の敏清なのだが、演じるのは田村高廣さん。

 原作だと、主人公が正体を巧妙に隠して川村や妻に近付くのだが、ドラマでは最初から、

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 ルリ子たちが一斉に部屋に飾ってある敏清の肖像画と見比べたほど、バレバレの状態である。

 明智も、絵と似てますねとずばり指摘するが、里見はまるで動じない。彼はよほどの金持ちらしく、別荘を買って、海外で集めた名画を置きたいらしい。

 ところが、波越から、西岡のことについて聞いた里見は、面目なさそうに、昨夜、ルリ子の入浴を覗いたのは西岡ではなく自分だろうと打ち明ける。彼はこの近くのホテルに投宿しているが、この辺を散歩しているうちに迷い込み、思わずルリ子の美しさに見惚れてしまったと、しきりに恐縮する。

 拍子抜けした警察と里見が引き揚げた後、ルリ子たちは「幽霊かと思った」と気味悪そうに話す。何事か後ろ暗いことがありそうだが、さすがにまだこの時点で、彼らが敏清を殺したとまでは明示されない。

 川村は里見に別荘を売るのは気が進まないと言う。

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 ルリ子「あたしだって売りたくないわ、あなたの絵がもっと売れてくれればね」
 川村「なにっ」
 ルリ子「遺産は思ったより少なかったし、これからの生活が不安なのよ」

 ルリ子は美女シリーズのヒロイン中でも、特に物欲の強い打算的な女なのだ。

 豊子「私は、あの明智って探偵の方が気味悪いわ」

 そのキモい明智さんが、例の大牟田家の石室のような墓の前にいると、里見が話しかけてくる。

 明智「土葬とは今時珍しい」
 里見「亡くなったご主人もここに眠っておられるわけですね」

 自分がその「ご主人」の里見は、抜け抜けと語る。

 里見は明智と別れ、風呂場を覗いたお詫びにとルリ子をホテルの自分の部屋に招く。

 そこでも、自身がルリ子によって突き落とされた「地獄岩」なる場所をわざと彼女に見せて怖がらせたり、ドラマの里見さんは妙にアグレッシブであった。

 さらに、タバコの箱を気取った手つきでポンと叩いて見せる。それは大牟田敏清のよくやる仕草の一つであった。またしてもドキッとするルリ子。

 ルリ子自身、「あなたが死んだ主人に思える」と疑問を口にするが、いつものように里見は平然と「死んだ人間が生き返るはずがないでしょう」などと常識論を並べて一笑に付す。

 里見は「あなたにあげたいものがある」と、宝石ケースを開き、サファイアだかエメラルドだか、高価そうな宝石を見せる。

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 ルリ子「まあ、綺麗~」
 ルリ子は宝石には目がなく、たちまち喜色に染まるが、「こんな高価なものとてもいただけませんわ」と、突き返そうとする。

 里見はそれをルリ子の指にはめ、「お気に入ったら、どうかそのまま……」と、鷹揚な態度を示す。

 宝石に目がないルリ子は「まあ夢みたい」と、ころころ喜んでいる。

 一方、警察は西岡の捜索を続けていたが、成果はなかった。
 一旦東京へ戻るのだろう、車の中で明智と波越警部が話している。

 明智「あの人(ルリ子)には魔性を感じるなぁ」
 波越「女の魔性は犯罪を呼ぶ。だから女性は怖い。明智探偵一流の女性哲学だな」

 うん、それって、ただの女性恐怖症なのでは?

 だからいつまで経っても童貞なのだろう。

 その西岡、サングラスと白いカツラをかぶり、ホテルの非常階段を昇って里見の部屋にやってくる。

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 里見「あ、内田裕也さんですか?」
 西岡「ちゃうわ!」

 嘘はさておき、西岡は里見が墓に残しておいた手紙を見てここへ来たらしい。西岡はピストルを突きつけて宝石を返せと凄むが、里見は全く動じず、

 里見「返して上げてもいい。海外へ逃げる段取りもしてあげる。その代わり、私の仕事を手伝って欲しい」

 と、悠々、交換条件を提示する。

 原作では、堂々とホテルの支配人を通じて志村と言う元刑事を部下として雇い、復讐の手助けをさせるんだけどね。原作で財宝を墓に隠していた中国人の海賊の方は、上海で里見に会い、財宝はくれてやるから好きに使えと許している。

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 ルリ子は里見に貰った宝石をためつすがめつしていたが、愛人の川村が近寄ると、

 ルリ子「あん、やめてよっ」
 川村「俺より宝石の方が良いのか? 俺とは事実上結婚していながら、ああいう金持ちには色目を使うのか」

 ルリ子の体を抱こうとするが、ルリ子はするりと別の椅子に逃げてしまう。

 原作では川村はもっと若くて美男子なのだが、ドラマでは何故か小坂一也なので、ルリ子が里見に心を動かすのも無理はない。売れない画家と言うのは同じだけど。

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 その川村、海岸に立って絵を描いている。

 ま、これじゃ売れないだろうなぁ……。

 そこへルリ子を連れた里見がやってきて、あれこれ、川村の神経を逆撫でする。と、ここでも、生前の大牟田敏清の癖をわざと彼らに見せ付ける里見だった。ふたりはびっくりしてあとずさるが、

 里見「こんな醜い私とご主人にそんなに共通点があるのはもう偶然じゃありませんね。これはね、あなたの面倒を見ろと言う神のお告げです」

 と、あくまで図々しい。

 さらに早くも「私と結婚してくれませんか」と申し出るのだった。

 その夜、川村とルリ子の妹・豊子が話している。

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 川村「今度はあの里見の財産と宝石に惹かれてるんだ。自分が殺した夫に似た男に」
 豊子「姉さんが殺したんじゃないわ、あんたが殺したのよ」

 豊子はずけずけと切り返す。

 川村「唆したのは君だぞ」
 豊子「姉さんにとってこの家は『人形の家』だったわ、それに財産が姉さんのものにならなきゃあたし、いつまで経ってもよそ者だったもの」

 いきなりブンガク的な表現をする豊子さん。大牟田は生前、ルリ子を家に縛り付け、豊子に対する態度も冷たかったと言うことか。しかし、後の回想シーンに出てくる敏清、あまりそういう感じには見えないんだけどね。

 と、急に照明が消える。

 ひとり寝室で眠っていたルリ子にも、亡夫を思わせる不気味な声が迫る。

 起き上がったルリ子の肩をポンと叩くものがいて、振り返ると、

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 ルリ子「うにゃああああああーーっ!」

 悲鳴を聞いて階下から二人がやって来たときには、既に誰もいなかった。豊子は「しっかりしてよお姉さん」と、水を持って来ようと居間に降りるが、

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 今度は、暖炉の上の肖像画が、こんなになっていた!

 ……

 ま、スタッフは別に笑いを取りに来ているわけではないのだろうが……。

 しかし、状況的に見て、二人が駆け上がったあとの僅かな時間で、里見ひとりでこんな作業をしたことになるが、時間的にちょっと無理なんじゃないかなぁ?

 豊子はその写真を一枚撮ってから、窓の外にたたずむ「白髪鬼」を発見し、逃げる彼の後をカメラを構えて追いかける。ただ、こんな夜更けに、武器も持たずに若い女性がそんなことをするだろうか? 凶悪犯の西岡と言う可能性だってあるわけだし。

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 実際、追いかけているうちに逆に「白髪鬼」に襲われてしまう。この辺は、ほとんど「ミイラ男」などの怪奇映画のノリである。

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 川村の方は、里見が関与しているか確かめるため、すぐホテルの部屋に電話をする。ところが、里見はすぐ電話に出る。拍子抜けする川村。

 このシーン、映像的には里見の顔ははっきり見えないので、後に明らかになるトリック(西岡が里見に化けていた)は可能かもしれないが、声はまるっきり田村高廣なので、ミステリードラマとしてはややアンフェアに感じる。実際に演じているのも、田村氏だろうからねぇ。

 とにかくこの時点では、里見と「白髪鬼」は無関係と言うことになるのだが。

 翌日、ショックで寝込んでいるルリ子を住田と言う女医(奈美悦子)が診ている。

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 そこでのやりとりで、ようやく、1年前、「地獄岩」から里見を川村が突き落としたこと、その死体を住田女医が買収されて遊泳中の心臓発作と言うニセの診断書を書いたこと、などが明らかになる。

 ルリ子は依然として、夫がまだ生きているのではないかと疑うが、女医が彼は絶対死んだと太鼓判を押すので、やや落ち着く。

 この住田と言うキャラ、原作にも出てくるが、男である。ただ、共犯者と言うわけではないので、里見に復讐されたりもしない。

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 一方、豊子は「白髪鬼」に殺され、全裸で「地獄岩」の松からぶら下げられると言うひどい状態で発見される。しかし、彼女は三人の中で一番罪が軽いのに、ここまでしなくてもいいんじゃないかとは思う。

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 おっぱいを見せに来る仕事とは聞かされていたものの、まさか逆さ吊りにされるとは思っても見なかった田島はるかさん、二十歳(?)に吹く秋風は冷たかった。

 田島さん、この半年前に日活ロマンポルノに出ていて、他の出演作はそれしか見当たらないけど、美女シリーズでは片桐夕子さん、加山麗子さん、野平ゆきさんなど、ロマンポルノ出演者が主におっぱい要員として登場することがしばしば見られる。

 警察や明智が屋敷へ来て、川村から事情を聞く。川村は、肖像画の白髪のイタズラのことは敏清殺しを勘繰られたくないので警察が来る前に拭き消してしまい、誤魔化そうとするが、豊子が持っていたカメラに白髪になった肖像画が写っていたので、あっさりバレる。

 なおも、豊子のイタズラじゃないかとひたすら言い繕う川村だった。

 そこへ里見も駆けつける。彼はアリバイを聞かれ、昨夜、川村から電話を受けたこと、ホテルのボーイにも会っていることなどを話す。

 里見は寝室で休んでいるルリ子を見舞い、そこでも堂々と求婚する。

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 ルリ子は里見が主人に似ていて怖いと怯える。

 里見「確かに私は醜い。でも有り余る財があります。全てはあなたのものです。いいえ、決して金で釣ろうと言うのではありません」

 思いっきり釣ってるだろうが!

 逡巡するルリ子に、里見は愛人の川村に対してもそれなりの償いはさせてもらうと約束する。また、パリで買ってきたものだと言うネクタイピンを川村に渡してくれと託す。

 大牟田家の墓の前で再び会った明智と里見が事件について話し合う。明敏な明智は、どうやら今回の事件は、強盗の西岡ではなく、別の誰かによるものではないかと察しているようだ。明智が、肖像画の白髪の件を持ち出すと、里見は自ら髪の毛を切り、明智に渡してカツラかどうか、庭から発見された犯人のものらしい髪と同じかどうか調べてくれと申し出る。

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 さて、金に目のないルリ子は、あっさりと里見の求愛を受け入れることにして、川村に話す。当然、激しく反対する川村だが、

 川村「俺はどうなる?」
 ルリ子「里見さんにお願いするわ。一生面倒見てもらえるようにするわ」
 川村「そんなことあいつが承知するもんか」

 と、逆に言えば、生活の心配さえなかったら、ルリ子は別にどうでもいい感じで、ひたすら寄生虫的なクズ野郎なのだった。原作だと、終盤、大阪の伯父さんから財産を譲り受けて、多少は金持ちになっていたけどね。

 ルリ子がさっきのネクタイピンを見せると、川村はそれが敏清がつけていたものだと仰天する。

 それは、棺の中に遺体と一緒に入れた筈のもので、また、夫が生きているのではないかと言う疑惑が再燃する。

 ただ、彼ら、里見のことは疑っても、その指紋を取ろうとか一切考えないのは、原作はともかく、1979年のドラマとしてはちょっと物足りない。

 波越警部は明智に、庭に残っていたのはカツラの毛で、里見の髪は本物だったと鑑識の結果を知らせる。

 ルリ子たちは往診に来た住田女医にもう一度、夫が確かに死んだことを確認する。ネクタイピンについては、住田女医は同じものが二つあっただけだろうと説明する。

 しかし、彼女が車で帰宅中、後部座席から白い髪の怪人が現れる。

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 豊子とは逆に、脚をスーッと伸ばした状態で発見される、住田の死体。

 ただ、彼女にしても、敏清殺しそのものには関与しておらず、事後、買収されて死亡診断書に嘘を書いただけなので、彼女まで殺すのはどうかと思うよ。彼女の場合、別に殺さなくても犯行の邪魔にはならないしね。

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 明智は、里見の泊まっているホテルへ向かう。その応対をするのが天知茂の弟子の宅麻伸と言うのが、粋なはからい。

 宅麻「明智先生、また事件ですって?」
 明智「ゆうべ1時ごろ、里見さんは部屋にいらしたかい?」
 宅麻「ええ、いらっしゃいましたよ。10時、11時、12時、3回もルームサービスの電話があってボーイが氷やウィスキーを運んでますが」

 明智は別のホテルマンから、里見の食事の量が多く、特にサンドイッチの追加注文が多いと聞く。

 そんな折、漁港付近に白髪の不審人物が現れたと通報があり、西岡に違いないと警察が捜索する。「地獄岩」の洞窟へ逃げ込んだと言う情報を受けて、中へ入ると、西岡は「ハラがへった もうにげられない オレは死ぬ」と言う、情けない遺書を残して首吊り自殺していた。

 波越警部たちはあっさりと西岡の単独犯として捜査本部を解散して東京へ帰ってしまう。美女シリーズの世界では、明智がいなかったら、殺人事件は全部未解決になる。

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 明智は帰京する前に、また墓の前で里見と会う。これで三度目ですなとか言ってるが、撮影は一回で全部やってるんだろうなぁ。

 明智「ルリ子さんと結婚されるそうですね。幸せを祈っています」
 里見「いやぁ、結婚ってそんなに幸せなものじゃないようですよ」

 里見のこの台詞と笑顔、意味深でゾクゾクする。

 里見はルリ子に、ネクタイピンについてはパリで買ったものだと言い、彼女を安心させてから、

 里見「別荘の改装も終わりました。あの家にはこれだけの名画も運びました」

 と、目録を見せる。

 ルリ子「まあ、ピカソ、セザンヌ、ルノワール、モジュリエニィ(モディリアーニ)、シャガール、ラッセン! 素晴らしい!」

 結局、ルリ子って、金になるんだったら何でもいいのか?

 ルリ子「一つお願いがあるんです」
 里見「川村君のことですね」
 ルリ子「一生食べれるようにしてあげて欲しいんです」
 里見「分かりました。じゃあ彼にはこの絵をみんな譲りましょう」

 そう言われた途端、

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 ルリ子「そんなことまでしてあげなくったって!」

 ほんと、美女シリーズのヒロインでも、これだけあからさまに強欲なお姉さんも珍しい。

 あなたには宝石があるじゃないですかと言われても、ルリ子は「絵は全部わたしのもの」と、一歩も譲らないのだった。

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 その話を盗み聞きしていた川村も、別荘へ来て、

 川村「僕はあの女から手を引く。その代わり地下室にある絵を僕にくれ」

 と、プライドのかけらもない要求をするのだった。最低のカップルですね。

 が、里見は快諾し、二人で地下室へ降りるが、壁には絵など一枚もなかった。そう、最初から名画など存在しなかったのだ。

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 すすめられるまま、川村がとある椅子に座ると、金属のベルトで自動的に拘束されてしまう仕掛けになっていた。

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 さらに、里見がスイッチを押すと、壁に飾ってある鹿の剥製がバタッとお辞儀をし、角を水平にする。そして、その壁ごと、川村の心臓に向かって近付いてくるのだ。

 里見は漸くここでサングラスを外し、自分が死んだ筈の敏清だと教えてやる。

 川村「どうやって生き返ったんだ」
 里見「わからん」
 川村「わからんのかいっ!」

 里見、続けて、「恐らく裏切られた恨みが私をもう一度この世へ甦らせてくれたんだ」と、説明になってない説明をする。

 原作でもここはウィークポイントになっていて、崖から突き落とされて仮死状態になり、お棺の中で目覚めたと言うのに、主人公は外傷は一切受けていないのだ。

 ドラマでは、海へ突き落とされ、その時のショックで心臓麻痺を起こしたものだろうから、まだしも説得力がある。

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 ここでやっと、里見が棺の中で蘇生して、その頑丈な板を素手で必死になって打ち破る様子が再現される。指先から血が出るほど板をかきむしる里見の様子は、凄惨である。

 もっとも、原作ではそれよりも棺から出た後の飢餓地獄の方が、乱歩特有のねちっこい筆で活写されてるんだけどね。ドラマだと、割と簡単に西岡の隠した財宝と抜け道を見付けている。

 里見は、棺から苦労して出る過程で、髪が真っ白になってしまったと説明する。

 川村は命乞いするが、里見は相手にせず、その場を離れる。川村の命が……と言ったところで次のシーンへ移る。

 この処刑シーンも、原作だともっと悲惨な状況になっていて読む者を慄然とさせる。是非、一読することをおすすめする。

 波越警部が明智探偵事務所に遊びに来る。応対に出た文代さんだが、彼女、今回は特に出番が少ない。もっとも、他のシリーズに比べ、この作品ではレギュラー全員の出番が控え目である。あくまで主役は、里見とルミ子の「夫婦」だからね。

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 明智はなにやら難しい文献を読んでいた。彼は人間の頭髪が心理的恐怖で短期間に白髪になると言う海外の実例を挙げる。

 波越「それが今回の事件と何の関係が?」
 明智「これですよ」
 波越「ピー、オー、イー……俺フランス語だめなんだよなぁ」
 明智「いいえ、英語です」

 波越の渾身のボケを素っ気なく処理すると、

 明智「これはアメリカの探偵作家ポーの『早過ぎた埋葬』と言う小説です。つまり死者が棺の中で生き返り、必死に脱出しようとする話なんですよ」

 ここへ来て、波越も明智の言いたいことを察する。

 波越「つまり、大牟田敏清が生き返ったってわけだ」
 明智「そうです」

 しかし「早過ぎた埋葬」って、そういう事例を紹介した後、コントみたいなオチになる小説だったと思うが……。

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 そこへ小林少年が飛び込んできて、1年前に香港で、正体不明の白髪の日本人が大量の宝石を売りに出したことがあったと明智に知らせる。

 明智「波越さん、過去の完全犯罪とその復讐と、西岡の脱獄、この三つの事件があの墓で交差してるんです!」

 明智の台詞にあわせて、何故かみんな机の前に、と言うか、カメラの前に並ぶ。

 波越「なるほど、なるほど」
 文代「わかります?」
 波越「分かんないんだよ」

 ここの、荒井注のギャグ2連発はかなり笑える。そこへ波越の部下が川村が行方不明だと知らせに来る。それにあわせて、鹿の角で串刺しにされた川村の死体がイメージ的に挿入される。

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 里見は「宝石を見せてあげましょう」と、言葉巧みにルリ子を例の墓へ引っ張って行く。原作では、ちゃんと二人の結婚式もあるのだが、ドラマでは省略されている。

 里見は強引に墓の中へ入り、棺に入れておいた川村の死骸を見せる。

 そして初めてサングラスを外し、夫の敏清としての正体を晒すのだった。

 川村を殺した時に彼に説明した蘇生の模様の続き、宝石、そして抜け穴をあっさりと見つけて脱出し、香港へ渡って顔を焼き、パスポートを入手し、復讐のために彼らの前に別人としてやってきたことを、さくさくと説明すると、里見は川村の横たわる棺にルリ子を押し込んでしまう。

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 里見「あはははは、思い知ったか、はははははっ」

 復讐を果たして狂ったように笑う里見だが、その後ろに、いつの間か死んだ筈の西岡が立っていた。

 里見「あ、内田裕也さんですか」
 西岡「ひつこいわっ!」

 じゃなくて、

 里見「誰だ」
 西岡「お前と同じように、生き返ったらしい」(睦五郎の声で)

 無論、これは明智の変装である。明智は里見が西岡を協力者として利用した経緯を推理して、里見に話す。

 今回、ほとんど唯一のトリックである、豊子が殺された晩のアリバイトリックについては、

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 西岡が里見に変装して、川村の電話にも出て、アリバイを偽装したのだろうと喝破する。

 前述したように、本編では明らかに田村高廣が演じていて、声も彼のものだったが、謎解きシーンでは睦五郎が演じている。ちょっとアンフェアだ。それに、豊子殺しについては、無理にそんな手の込んだことをせずとも、西岡自身に豊子を殺させれば良かったのだ。冒頭、西岡は仲間を簡単に殺しているから、宝石のためならそれくらいあっさり引き受けただろう。

 で、現場にカツラの毛を置いて全ての罪を西岡になすりつけたあと、里見は西岡を始末したのだった。その回想シーン。

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 洞窟に隠れている西岡に、里見が、彼の好物のフルーツサンドを差し入れる。夢中でそれを頬張っていると、背後から里見がステッキで咽喉を絞めて殺そうとする。

 西岡「うぐっ、これ、ツナサンドじゃねえか!」

 それが西岡さんの最期の言葉だったそうです。

 で、港で目撃された西岡は、今度は里見が変装していたものだった。これも、本編では睦さん、回想では田村さんが演じているから、なんか釈然としない。

 とにかく彼はわざと洞窟へ警察を誘い込み、事前に用意していた西岡の死体と遺書を発見させたのだった。

 と、漸く里見が「西岡が生き返るわけがないと」と気付く。

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 西岡「そう、確かに西岡が生き返るわけがない」

 そのタイミングで、声が天知茂先生のものに変わる。

 サングラスとカツラを外し、

 べりべりべり

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 この段階では、明智の衣装早変わりは完成されておらず、

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 西岡のジャケットを一気に剥いで、下に着ていた青いスーツを見せるシンプルなもの。

 明智「そうです、明智小五郎です」

 里見の「さすがだな明智さん。どうして分かった?」と言う質問に、

 明智「あまりにも巧妙過ぎたからです。自信過剰がミスを呼ぶ。西岡の食事をホテルに頼んだことで私は計画の全貌が察しがついたのです」

 と答えているが、食事の追加注文だけで、そこまで見通すのはさすがに無理がないか? もう少し名探偵らしい手掛かりを披露して欲しかったところだ。

 そこへ警察もやってきて、袋の鼠となる里見。

 里見「自信過剰だといったが、それは違う。私はね、この復讐に命を懸けてるんだ。死を覚悟したゆとり、そういうものだよ」
 
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 不敵な笑みを浮かべながら、ピストルを取り出した里見、迷わずこめかみを射抜く。

 原作では、ルリ子を閉じ込めて発狂させた後、海外へ高飛びしようとして捕まり、終身刑を言い渡されるんだけど、こっちの方がはるかに潔くてかっこいいね。

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 ただ、撃った直後に、口から血を流しているのは、ちょっと変じゃないか、と……。

 事件は解決したのだが、その後、棺から白い女の手が伸びて、ルリ子が這い出てくる。

 が、

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 ルリ子「ふふ、ふふふっ、あはははっ、おっほほほほほっ……」

 パッパラパーになってました!

 ま、川村の死体と棺に閉じ込められたショックだろう。それまでにも事件や里見のために神経を磨り減らしていたのだから、この展開は割と納得できる。

 解せないのは、明智がなんで彼女をすぐ助けようとしなかったと言う点だ。

 しょうもない変装をしたり、得々と事件の解明をしたりする前に、まず彼女を助けんか。

 狂ったルリ子が転がっている石を拾って「こんなたくさんの宝石、みんなあたしのものよ」と、世迷言を口走っている凄絶な姿を映しつつ、エンドクレジットが流れ出す。

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 で、ここでも何故か、誰も彼女を介抱しようとせず、墓から出て、岩場に落ちている貝殻も宝石だと思ってもてあそんでいるルリ子を、ずーっと後ろから見ていると言う、間抜けな画面になる。

 まあ、ルリ子の狂態にみんな呆気に取られて、明智でさえ身動きできなかったのだろう。

 この、金沢碧さんのキチガイ演技はなかなか見事である。

 振り返ってみれば、明智がいなくても事件は自然に解決していたなぁと言う話だった。もともと、探偵の出てこない復讐譚なのだから、それも道理だけどね。

 と言う訳で、明智探偵の活躍を期待して見るとちょっと肩透かしを食うかもしれないが、ひとりの男の血みどろの復讐劇として見れば、なかなか面白い。ただ、おっぱいと言い、トリックと言い、キャストと言い、美女シリーズとしては、やや地味だったか。


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コメント

画像復刻ありがとうございます

小学生の時に原作を読んでおり、大好きな作品です。
お書きになられている通り、原作との差異がありますがドラマも良いです。
しかし、最後にキチガイになるのはインパクト大ですね!
まったく、真っ先に彼女を助けろよ!明智先生。

Re: 画像復刻ありがとうございます

私も好きな作品のひとつです。田村さんの演技が素晴らしいです。

復讐鬼の資金源について

ご興味の無い劇画、しかも超どマイナー作品ですみません。
小池一夫の原作&池上遼一の作画による「I・餓男(あいうえお)」です。
復讐相手が「恋人を死に追いやった副総理」なのですが
復讐の手法と資金源がユニークなのです。
「復讐相手への殺害を映画に撮らせる」というものです。
そのため、アメリカに渡り、ハリウッドのプロデューサーに接触します。
つまり、「こっそりと撮影させて儲けさせてあげるので、復讐に必要な資金を出してくれ」と。
残念ながら、この作品は打ち切りになり、数年後の同コンビの「傷追い人」では
資金源はポルトガルの財宝という「妥当」なものになりました。

Re: 復讐鬼の資金源について

情報ありがとうございます。

「傷追い人」は読んだことありますが、これは全然知らないですね。

美女シリーズには、自分の復讐動機を説明する為にわざわざ映画を作ったり、芝居をやらせたりする、自己顕示欲の強い悪人がたくさん出て来ますね。

No title

 明智の変装を解くスタイルは多羅尾伴内の影響ですかね。もっとも多羅尾伴内の様に事件をより混乱させるようなことはしてないようですが。
来年も一層の健筆を期待しています。

Re: No title

>  明智の変装を解くスタイルは多羅尾伴内の影響ですかね。もっとも多羅尾伴内の様に事件をより混乱させるようなことはしてないようですが。

そうなんですか。恥ずかしながら多羅尾伴内は一度も見たことないです。

> 来年も一層の健筆を期待しています。

はい、ご期待にこたえられるよう頑張ります。良いお年を。

狂気を感じる

ルリ子女史に狂気を感じたのは小生だけでしょうか?リアルタイムで観ていない(その頃の小生は就学前のお子様)ので余計に印象深いですね😅

Re: 狂気を感じる

これだけ物欲が強いヒロインも珍しいですよね。

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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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