第11回「さよなら貴男」(1985年6月25日)
見た人の100人中100人が、「貴男(たかお)って誰?」と、首を傾げてしまうサブタイトルの11話である。
無論、これは、「たかお」じゃなくて、「あなた」と読むのだろうが、それにしても、誰が誰に対して「さよなら」と言っているのか、良く分からないのだ。千鶴子が雅人に? そんなシーンなかったけどなぁ。
全体的に「乳姉妹」ってサブタイトルのセンスが悪いと思う。
さて、冒頭から緊迫したシーンとなっている。遂に大丸家を飛び出したしのぶが、島田の指示を受けた猛たちに捕まり、彼らの溜まり場の(?)廃ビルの中に連れて来られる。

マヤ「親に背いて家を出たからには、体を張ってでも生き抜く覚悟があるんだろう? あたいたちの言うとおりにしな、職も探してやるし、仲間にも入れてやろうじゃないか」
しのぶ「イヤです、私はあなたたちの仲間になんてなりません!」
猛「……」
毅然として彼らの申し出を拒否するしのぶに、猛は無言で近付くと、

いきなりブラウスの胸元を引き裂き、純白のブラに包まれた巨乳を露出させる。

しのぶ「きゃあっ!」

猛「俺たちに狙われて逃げられた奴はいねえのさ、思い知らせてやれ!」
しのぶ「……」
猛はそう嘯くと、しのぶの体を突き飛ばす。
ブラウスをかき合わせて怯えた目であとずさるしのぶと、上着を脱ぎ捨てながらニヤニヤ迫ってくるチンピラたちの対比が、実にスケベなのです!
レビューを始めて気付いたのだが、「乳姉妹」って、妙にHなシーンが多いのだ。
ま、と言ってもせいぜい下着が露出する程度で、おっぱいがぽろりすることはないんだけどね。
床に転がっていた棒でチンピラたちの向こう脛を払い、なんとか逃げようとするしのぶであったが、猛に阻まれ、再び床に尻餅をつく。

あれ、さっきも同じような画像貼ったような記憶が……
非道にもその場で輪姦されかねない勢いだったが、そこへやっと雅人が助けに来る。

しのぶ「雅人さん」
雅人「君たち、何をするんだ? 馬鹿な真似はよしたまへ!」 今更だけど、雅人って、「不良少女」の哲也そっくりだよね。性格からスペック、「たまへ」に代表される、人を見下したような物言いにいたるまで……
猛「大丸雅人だな、俺は鬼神組・組長、長田猛だ」
雅人&しのぶ「ぷっ」
猛「何がおかしい!」 雅人「いや、悪い。でもねえ……」
しのぶ「ねえ?」
いくらなんでも鬼神組はないよね、鬼神組は。
オンエア時は、「ハイスクール奇面組」も連載中だったから、当時の笑撃度はもっと高かったんじゃないかと思量される。
雅人、恵まれた体格を生かしてがむしゃらに暴れまくり、なんとかしのぶとそこから脱出しようとするが、多勢に無勢、あえなく捕まってそれぞれボコボコにされる。

その時、開いていた窓からさっと入ってきたのが、我らが朝男じゃなくて、路男だった。
以前も書いたが、こう言うシーンの「出」のタイミングにおいて、松村さんの右に出る俳優はいないと思う。
路男「しのぶ、訳はある人から聞いた、おふくろ探してえんなら、俺が見付けてやる、大丸家には戻るんじゃねえ。雅人ぉ、ここは俺が引き受けた、しのぶを連れて逃げろ」
雅人「恩に着るぞ」
路男「バカヤロウ、てめえに恩を売る気なんてねえや」
この台詞を、群がるチンピラをちぎっては投げちぎっては投げしながら言い切る路男のかっこよさは、ドラマ始まって以来の高みに達しているといえるだろう。
現在の朝男指数(註1)………………120!
(註1……大映ドラマにおける松村雄基さん演じるキャラクターのかっこよさを数値化したもの)

猛「田辺、言い機会だな、ここできっちりカタつけようぜ」
路男「いいだろう、どっからでも来い」
猛、しのぶなどどうでも良くなって、追おうともせずナイフをふりかざして路男に勝負を挑む。
傍らのマヤも、チェーンで風を切りながら身構えているので、まるで、「不良少女」で、笙子が初めて朝男&麻里のコンビと地下駐車場で相対した時の伝説的シーンの再来のようであった。
もっとも、路男は適当に二人の攻撃をいなすと、「悪いがな、今日はこれで失礼する。俺が命のやりとりをするのはてめえらのようなチンピラじゃねえ、あばよ!」と、捨て台詞を残して退散する。
一方、建物から出てひた走りに逃げていた雅人としのぶは、繁華街の路地まで来たところでようやく立ち止まり、息を整えていた。
だが、偶然にも程があるのだが、ちょうどすぐそばに千鶴子がいて、彼らのやりとりをあまさず盗み聞きしていた。
しのぶ「私は大丸家には戻りません、今の私はお母さんが生きていたことを知って、胸がいっぱいなんです。母が何故、死んだと偽って私たちの前から姿を消したのか……その訳が知りたいんです。雅人さん、紅葉坂教会の若山先生ならその訳を知っているのかも知れません」
雅人「分かった、僕も付き合うよ」
雅人もしのぶの気持ちを慮り、その足で一緒に紅葉坂教会へ向かうことにする。
千鶴子「しのぶさんのお母さんが生きていたなんて……」
立ち聞きしていた千鶴子にとっても、それはちょっとした驚きだった。
そう、てっきり投身自殺をしたと思われていたしのぶの母・静子が、実はピンピンしていたことが前回判明したのである。

同じく前回、血液鑑定でしのぶと千鶴子がやはり幼時に取り替えられていたことを知った剛造も、果てしのない懊悩に苛まれていた。
ちなみに剛造の右に見えるのは、テトリスのプレイ画面ではなく、隣のビルの窓の光である。
そこへ若山から電話が掛かってきて、しのぶが静子に会ったこと、しのぶと雅人が教会に来ていることを知らせる。
剛造も、もう何もかも打ち明ける時が来たと覚悟を決め、則子、耐子と一緒に教会へ向かう。
やがて教会に、千鶴子を除く大丸家の面々が勢揃いすることになり、「不良少女」の12話だったか、聖一郎がお寺にメインキャストを集めて過去の一切を打ち明けたのと同じようなシチュエーションとなる。
それでも剛造は、千鶴子にだけはあまりに残酷な事実を知らせたくないと考え、あえて千鶴子を探して連れて来させなかったのだが、しのぶたちの会話を立ち聞きしていた千鶴子は、ちゃっかり教会の庭に入り込んで、開いた窓から中の会話に耳を澄ませていたのである。

しのぶ「旦那様、お母さんが海に身を投げて死んだというのは嘘だったんですね」
剛造「いや、静子さんが海に身を投げたと言うのは本当のことだ。しのぶさん、これから私が話すことをようく聞くんだ」
まず、しのぶの疑問に答える形で、剛造が静子のことを話し始める。
かいつまんで言うと、静子は確かに崖から飛び降りたのだが、
うっかり泳いでしまい、

ちょっと色っぽいポーズで岩場に打ち上げられ、死に切れなかったのだ。
そしてそこを、剛造の命を受けて静子を尾行していた手島によって保護され、さらに、東京の病院で乳がんの手術までして貰い、すっかり元気な体になったのである。
考えれば、手術さえ受ければ助かる命だったのだから、ここでは、経済格差がそのまま人間の寿命さえ左右してしまうひどい社会に我々が生きているのだと言う、一種の告発になって……はおらず、その辺は割りとあっさりスルーされている。
だが、静子は健康を回復するや、病院からトンズラ、いや、失踪してしまい、それ以来、剛造もその行方を知らなかったのだ。
置き手紙に「自分は死んだものとしてくれ」と書かれていたこともあり、剛造はしのぶたちには静子は死んだと偽りを言い、結果、しのぶと耐子が大丸家に引き取られることになったのだ。
剛造が静子の生存を秘密にしていたのは、静子本人からの願いもあるが、実の娘かも知れないしのぶを手元に引き取りたいと言う剛造のエゴもあったのだろう。
しかし、静子が生きていて、それを剛造も知っていたと言う意外な事実について、伏線が一切張られてなかったのは、ドラマとしてちょっと物足りない。

剛造「私は静子さんの意思を尊重して、君たちには静子さんは死んだと伝えたのだ」
しのぶ「わかりません、母がどうしてそんなにまでして私たちの前から姿を隠さなければならなかったんですか? 旦那様、その訳を教えてください!」
剛造「それは……」
しのぶの悲痛な問い掛けに、咄嗟に言葉を詰まらせ、傍らのマリア像に救いを求めるような視線を向ける剛造。
ここで若山が「大丸、真実を話す時だ」と促し、剛造も腹を括ってしのぶを真っ向から見詰める。

剛造「しのぶ……それは、お前が本当の娘だからだ!」
剛造の衝撃の告白に、しのぶや耐子は勿論、雅人や則子たちも一様に愕然とする。

だが、一番ショックを受けたのは、窓の外に立って聞いていた千鶴子であったろう。
千鶴子「……!」
口に手をやり、漏れそうになる声を押さえ込む。
その場に崩れそうになる体を窓枠に置いた手でかろうじて支え、なおも剛造たちの会話に耳を向ける。
しのぶ「旦那様!」
剛造「旦那様ではない、私がお前の本当の父親だ」
しのぶ「分かりません、急にそんなこと言われたって!」
雅人「どういうことなんですか?」
剛造「誘拐されたのは私の娘ではなかった。静子さんの娘だったんだ」

窓枠に縋るようにして立っている千鶴子を、裏口から見ているものがいた。教会に住み込んでいるエリカである。
とある事情から、人一倍、他人の悲しみに敏感な人間となったエリカには、泣き崩れる千鶴子の気持ちが手に取るように分かり、自分も思わず涙を流すのだった。
ここで剛造の口から、我々の良く知る、18年前の赤子取り替え誘拐事件の顛末がざっくり語られる。

ちなみに、この回想シーンで初めて、誘拐実行犯の女、路男の母・育代の姿がはっきり映し出される。
演じるのは「スクールウォーズ」の柳先生こと、松井きみ江さんだが、これは若作りしているのではなく、変装のために付けているカツラである。
剛造「誘拐犯人は私たちの子と間違えて、松本夫婦の子供を攫っていってしまったんだ」
千鶴子「そ、そんなしょうもない原因で……」 自分たちの運命が、そんな馬鹿馬鹿しいことで変えられたのかと思うと、泣くに泣けない千鶴子だった。
ま、考えようによっちゃあ、本来ならどん底の貧乏暮らしの筈が、18年間、超セレブのお嬢様としてちやほやされて育てられてきたのだから、ある意味、超ラッキーなんだけどね。
無論、今の千鶴子に、そんな頭のネジの外れたようなポジティブシンキングが出来る筈もなく、とうとう耐え切れずにその場にしゃがみこんでしまう。

エリカが慌てて駆け寄って助け起こすが、千鶴子はエリカを誰何する気力もなく、引き裂かれた心と体を引き摺って、顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら教会の敷地から出て行くのだった。
一方、教会の中でも、しのぶや雅人、則子たちが千鶴子に劣らぬほど激しく動揺の色を見せていた。
則子「私は信じませんわ、そんな馬鹿げた話……信じてたまりますか!」
剛造「則子、私は千鶴子としのぶの血液鑑定を依頼した。その結果、しのぶが間違いなく私の子であることが分かったんだ」
則子「おほほほほ……」(註・笑っているのではなく、泣いているのである)
しかし、厳密に言うと、血液鑑定では、千鶴子が剛造たちの娘では
ないことが明らかになっただけで、しのぶの場合は「剛造と慶子の娘であってもおかしくない」程度しか言えないと思うんだけどね。
まぁ、静子の証言もあって、その可能性が限りなく100パーセントに近いとは言えるだろうが。
則子はまた、このことを知ったら千鶴子が自殺してしまうと、よよと泣き崩れる。

剛造「落ち着くんだ、千鶴子は私たちの子だ、たとえ血の繋がりがなかろうと、今までどおり私たちの子として育てるつもりだ」
剛造が則子を安心させようと掻き口説くように説得するが、則子の耳には入らず、則子はひたすら涙に溺れていた。
剛造「しのぶ、私と屋敷に戻ろう」
しのぶ「待って下さい、私はお母さんを探さなければならないんです!」
耐子「私はイヤ! 千鶴子さんがほんとのお姉さんだなんて!」 不意に、耐子が涙交じりの叫び声を上げる。
剛造(ま、そりゃそうだろうなぁ……) 我が娘のことながら、思わず耐子の嘆きに納得してしまう剛造であった。
耐子は「私のお姉ちゃんはしのぶお姉ちゃんだけよ」と、しのぶの体にむしゃぶりについて泣き喚く。

最初から血縁関係の薄い雅人(もともと、剛造の姪の息子)だけ、この中では比較的落ち着いていたが、それでも、これからどうやって千鶴子にこのことを告げるべきか、思わず溜息が出そうになるのだった。
それに対し、唯一の他人である若山は、
若山(ああ、家族じゃなくて本当に良かったぁ!) と、心の中で、自分の幸運をしみじみと噛み締めるのだった。

さて、問題の千鶴子、ひとまず自宅に戻り、18年間過ごした自分の部屋に入って、涙を流しながら部屋の中を見回していたが、なにしろプライドだけはG馬場より高い女性なので、「自分にはもうこの家にいる資格はない」と決め付けると、何も持たずに家を飛び出し、玄関先に止めてあった雅人の車に乗り込んで走り出す。
……って、あれ、千鶴子って免許持ってたの?
高3だから、取得していても不思議はないのだが、仮にも日本有数のお嬢様が、そんなに急いで免許を取ると言うのは明らかに変である。

それはさておき、例によって屋敷の外の植え込みの陰に路男が張り込んでいたのだが、千鶴子に気付いて慌ててバイクで追いかける。
しかし、毎晩のようにこんなところに張り込むのはなかなか大変だよね。
トイレとか、どうしてるんだろう?
思わず、こそこそと立ちションしている路男の姿が思い浮かんでしまったではないか。
現在の朝男指数………………80!(マイナス40)
そして、そのすぐ近くの茂みの中には、猛たち鬼神組一家も張り込んでいたのである。

猛「マヤ! 俺たちってかなり暇なのか?」
マヤ「たぶん」
じゃなくて、
猛「マヤ! 仲間集めろ。それからおやじさんに連絡しとけ」
マヤ「オッケイ」
猛はマヤを降ろすと、千鶴子の車の追跡を開始する。
マヤから知らせを受けた島田は、今度は千鶴子を誘拐しろと猛たちに命じる。
千鶴子を保護して、それをネタに、大丸剛造とよしみを通じる為である。
その後、剛造たちが屋敷に戻ってきて、千鶴子が車に乗って飛び出したことを女中たちから聞かされる。
雅人「千鶴ちゃんが僕の車を? そんな馬鹿な、千鶴ちゃんは無免許なんだよ!」
……え? 無免許だったの?
その割に妙に手馴れた感じで車を出していたが……。
また、エリカから話を聞いた若山が剛造に電話を掛けてきて、千鶴子が全ての秘密を知ってしまったと知らせる。剛造は、警察に千鶴子の捜索願を出す一方、手島や雅人に千鶴子の行方を探させる。

無免許の千鶴子、フツーに車道を走っている。
さすがに、おかしいのでは?
ま、雅人や剛造から、多少は車の運転を習っていたのかもしれないが、それにしても……。
しかし、ドラマで、免許を持ってない俳優が運転しているように見せるシーンと言うのはまま見られるが、免許を持っている俳優が、持ってない役で車を運転すると言うのは極めて珍しいシーンである。
その後、多分、島田の意図を
まったく理解していない猛たちの車が、千鶴子の車に後ろからガンガンぶつけてきたので千鶴子は路上に車を停め、外へ引き摺り出される。
だが、そこに路男のバイクが突っ込んできて、千鶴子を横取りしてしまう。

意味もなくウィリー走行する路男。
しかし、後ろの千鶴子がガニマタ状態になるのが、ちょっと品がない。
現在の朝男指数………………90!(プラス10)

路男の背中にしがみついている千鶴子の犬みたいな口が可愛いのである!
後編に続く。
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