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「悪魔のような美女」~江戸川乱歩の「黒蜥蜴」 その1



 親愛なる読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。

 お正月は皆さん、どうお過ごしでしたか?

 管理人は、あまりに暇なので、「光戦隊マスクマン」のレビュー書いてました(泣)

 それにしても、こんなにブログの開始が遅くなったのは多分はじめてだと思いますが、ほんと言うと昨日、ちょっとしたネタで更新しようと思ったのですが、一応書き上げたものの、あまりに内容がくだらなかったので没にしちゃいました。てへっ。

 さて、例によって、新年一発目は……? そう、美女シリーズですね。

 もっとも、反省会で書いたように、今回の記事は、すでに去年の前半に書いておいたもので、あれやこれやで公開が延び延びになって、とうとう年をまたいでしまったものなのです。

 ついでに言うと、もともと、過去の記事の画像を貼り直すだけのつもりが、手を入れているうちに興が乗ってきて、映像をチェックしながらのほぼ全面的に書き直しになったリフォーム作品でもあります。



 さて、前置きが長くなったが、今回紹介するのは、美女シリーズ第8弾「悪魔のような美女」である。放送は1979年4月14日。

 原作の「黒蜥蜴」は、乱歩の通俗長編の中では評判の良い作品で、天知茂先生にとっては、1968年に舞台で明智小五郎役を演じたことのある記念すべき作品でもある。

 
 原作と同じく、冒頭から、女賊・黒蜥蜴が視聴者の前に登場する。ここは彼女の秘密のアジトである。

 
 しかもパンツ一丁の美青年を縛り付けて、それを嫣然と微笑んで眺めているという、実にインモラルな雰囲気が漂う。

 
 黒蜥蜴「美しい……でも、美しいもの必ず滅びる。この顔も、この肉体もいつの間にか輝きを失って萎びてしまう。それが私にはやり切れない」
 青年「僕をどうする気だ」
 黒蜥蜴「永久に保存したいのです、あのように……松吉」
 松吉「へい」

 彼女は部下の松吉に命じて、部屋のあちこちに展示してある剥製人形を、美青年……あ、言い忘れたが、演じているのは天知茂の付き人でもあった宅麻伸である。彼は色んな端役でちょこちょこ美女シリーズに出演している……に、披露させる。

 そして、美女シリーズで唯一「特別出演」と言うカッコ書きのある女優、小川真由美さんだが、当時は39歳。原作の黒蜥蜴(緑川夫人)は正確な年齢は不明だが、30代前半と思われる。まあ、多少年は食っているが、身にまとう妖艶なイメージは文句ないし、風格も天知茂先生に対抗できる。もっとも、原作でのボーイッシュなキャラを期待していた人はがっかりしたかもしれないが。

 
 さて、彼らの周りには、恐ろしくも美しい人間の剥製の数々が麗々しく展示されていた。

 その中の一体は、ブロンドの美人であったが、

 
 股間にはこんなものが付けてある。フルヌードより恥ずかしい。

 
 このモデルさん、「なんでこんな異国の地で、こんな格好せにゃならんのだろうか」などと考えていたことだろう。

 
 他に筋骨逞しい黒人男性(毎度お馴染みウィリー・ドーシー)や、黒髪の日本人女性の剥製などもあったが、ちゃんと、まだ生きている美青年の為の展示スペースも確保してあった。

 黒蜥蜴は、日本一美しい男と女を一緒に展示するのが夢だとうっとりとした目で語る。

 なお、原作ではこの人間剥製が登場するのはほとんど終わりの方である。冒頭でいきなりそれを視聴者に見せ付けるドラマのインパクトは凄いものがある。シナリオはジェームス三木さん。

 当然、「いやだーっ、助けてくれーっ」と恐怖にかられて泣き叫ぶ美青年だが、黒蜥蜴の部下に殴られておとなしくなる。

 
 その腹心の部下・雨宮は、後年、チワワ御殿を建てることになる清水章吾さんである。

 ちなみに原作は、クリスマスイブの夜、ボクサー青年の雨宮が、恋人とその浮気相手を殺してしまったと言って、かねてからの知り合いだった緑川夫人に助けを求めにパーティー会場に来る……と言う現代的なシーンから始まっている。

 緑川夫人に死体の処理をして貰った雨宮は、それ以降、緑川夫人の腹心として犯罪に加担するようになるのである。

 
 ここでタイトル。

 OPクレジット後、明智は、岩瀬と言う宝石商からの依頼で、

 
 単身、車を飛ばして、世界じゅうのセレブが雪崩を打って押し寄せてくると言う、超高級リゾートホテル「サンハトヤ」にやってくる。

 ラウンジでは岩瀬氏(柳生博)、娘の早苗(加山麗子)、波越警部(荒井注)が、警備の打ち合わせをしながら明智の来るのを待っていた。

 と、ほぼ同時に、緑川夫人こと黒蜥蜴本人が、にこやかに現れる。無論、この時点では、彼女は岩瀬氏の知り合いで、早苗さんとも仲の良い上流階級の女性として紹介される。

 明智「明智小五郎です、よろしく」
 緑川「緑川でございます。お目にかかれて光栄ですわ。なにしろ、明智さんの名探偵振りは日本一ですものね」

 この、探偵と犯人が最初から顔を合わせていると言う設定がゾクゾクするではないか。

 
 明智が呼ばれたのは、こういう予告状を岩瀬氏が受け取っていたからだ。

 明智「このマークからすると、悪戯ではなさそうですね」
 波越「僕もそう思うんだ」

 
 明智「一番大切なもの……」
 波越「なんですか、それは?」
 
 
 岩瀬「これがエジプトの星です」

 岩瀬は、宝石ケースに入れた馬鹿でかいダイヤを取り出して、みんなに見せる。

 明智「ほう、見事なものですね。おいくらぐらいするものなんでしょうか」
 緑川「南アフリカ産、31カラット、時価20億……」
 波越「20億?」
 緑川「これじゃ私だって喉から手が出るほど欲しくなりますわ」

 冗談めかした口調で、本音を口にする黒蜥蜴。

 波越の立てた計画では、ツインの寝室に岩瀬と波越が泊まり、その隣の居間に明智が待機し、廊下やロビーには刑事たちが張り込むというオーソドックスなもので、明智もあえて異議は唱えない。

 やがて日が沈み、ホテルの周囲が闇に包まれる。

 9時、居間で岩瀬、波越、明智の三人が最後の打ち合わせをしており、緑川、早苗が彼らの為にコーヒーを入れている。

 波越「いやぁ、眠気覚ましにはコーヒーが一番ですなぁ」
 明智「お嬢さんはどちらで休まれますか?」

 
 早苗「はい、隣の部屋で」
 緑川「私とご一緒に」
 明智「なるほど……全裸で?」
 緑川&早苗「いいえ!」

 ところで、原作では早苗さん、当時のヒロインとしては珍しい「眼鏡っ子」なのだが、ドラマでは再現されていないのが残念である。

 一方、刑事たちは同じフロアの全ての客室を訪ね、不審な人物がいないかとチェックしていた。

 
 そして早苗たちの部屋の向かいの部屋に宿泊しているのが、大学教授に化けた雨宮なのだった。

 雨宮が教授だと名乗ると、刑事たちはへへーっと畏れ入る。時代を感じさせる描写である。

 やがて、岩瀬が先にベッドに行き、宝石ケースをサイドテーブルの上にポンと置くのだが、ちょっと無用心ではないか。せめて鍵のついた抽斗に入れておくとか。

 
 眠気覚ましにシャワーを浴びている波越。

 波越「ぶわぁっ、どうしてこんなに眠いのかな、ガラガラガラ」

 そんなことを言いながら、シャワーを自分の口の中に流し込んでうがいをして、

 
 思いっきり吐き出す。

 なんで正月早々、こんな画像貼らにゃいかんのだ?

 波越「やっぱり眠いなぁ」

 コーヒーをがぶがぶ飲んだのに、強い眠気を覚えて不思議がる波越警部。まさか、緑川夫人に一服盛られたとは夢にも気付かない。

 
 居間で、大人のムードたっぷりに、今度の事件や黒蜥蜴について会話を交わすふたり。

 緑川「でも、黒蜥蜴は何故、自分の犯罪を予告したりするんでしょうか」
 明智「多分、バカなんでしょうねえ」
 緑川「あ゛あ゛っ?」

 じゃなくて、

 明智「多分、自己顕示欲が強いんでしょうねえ」
 緑川「でも、それだけでこんな危険な橋を渡るとは思えませんわ」
 明智「危険な橋を渡るかどうか、まだ分かりませんよ」
 緑川「は?」
 明智「案外、あの脅迫状は高校生か何かのいたずらかもしれませんからねえ」
 緑川「おっほっほっほっ、明智さんらしくないことを仰いますのねえ……黒蜥蜴はきっと来ますわ、この事件は明智さんに対する挑戦だと思うんです」

 微妙に、「さっきと言うてることが違う!」明智さん。

 二人が談笑していると、シャワー室から波越警部が出てくる。

 波越「もうお休みになったほうがいいですよ、私は寝ずの番してますから」

 波越に促されて、緑川と早苗は隣室へ移動する。

 
 波越「明智君、黒蜥蜴ってどんな奴だと思う? 日本人か外国人か、男か女か、それすらも分かっていない。ただ、部下と組織を持った大胆不敵な奴だ」
 明智「その上、素晴らしい知能を持っていますよ」
 波越「今分かってるのはねえ、奴のどちらかの腕にねえ、黒いトカゲの刺青があるらしいんだな。明智君ねえ、奴はきっと片目に黒い眼帯をしてね、青い血の色をしたね、冷酷無残な奴だと思うな」
 明智「そうですかね、私は案外優しい顔をして人一倍情熱的な人間だと思いますよ」
 
 近頃、世間を騒がしている謎の怪盗・黒蜥蜴の正体について語り合う二人。

 波越、しきりに「眠い」と欠伸を連発しながら、早々に寝室に引っ込む。

 明智もいささか呆れ顔だが、さすがに睡眠薬のせいだとは分からない……のだろう。

 その頃、早苗さんは隣室で優雅にバスを使っていた。

 
 加山さん、後半を見れば分かるようにヌードOKなのだが、何故かここでは不自然にカットが切り替わって、おっぱいは別の女優さんのものが映されている様子。

 なんでここではダメなのか、その基準が良く分からない。

 それにしても、なかなか可愛いよね。

 さて、刻々と黒蜥蜴の予告した深夜12時が近付いてくる。

 ホテルは、静かだがピリピリしたムードが漂っていた。

 寝室の隣で、ひとりトランプ遊びをしながら見張りをしている明智。

 
 寝室では、岩瀬氏がぐっすり眠っていたが、その隣のベッドの波越警部までもが、のんきに高鼾。

 普通ならすぐクビになるのだが、この世界では波越警部はどんなヘマをしようが責任を問われることはないので安心である。

 11時半頃、ドアをノックするものがいて、明智が用心して開くと、立っていたのは緑川夫人だった。

 
 明智「あ、緑川さん」
 緑川「お邪魔してよろしい?」
 明智「ええ」
 緑川「なんだか眠れなくて……波越さんは?」
 明智「あのとおり、よく眠ってます。鼾をかいて」
 緑川「まぁ、この大事な時に」

 自分で睡眠薬を持っておいて、白々しく呆れてみせる緑川夫人だったが、

 明智「まったく、まるで睡眠薬でも飲まされたようですなぁ」

 明智も、それを見抜いているかのように、わざとらしく嘆声を上げる。

 だが、天下の女賊・黒蜥蜴、明智の言葉にも眉ひとつ動かさない。

 
 明智「タバコでも如何ですか」
 緑川「頂きますわ」

 うーん、実にアダルティなムードです。

 
 緑川夫人のタバコに火をつけてやると、自分のタバコにも火をつけ、幸せそうに煙を吹かす明智。

 緑川夫人、さっきの話の続きとして、ひとつ賭けをしてみないかと言い出す。

 緑川「12時を境に、明智さんが勝つか、黒蜥蜴が勝つか……」
 明智「なるほど、こりゃ面白い。で、あなたはどちらに?」
 緑川「あなたは?」
 明智「はっ、僕は僕自身に賭けるしかないでしょう」
 緑川「それじゃ私はなりいきじょう、篠沢教授に賭けるしかありませんわね」
 明智「なんでだよ!」

 じゃなくて、

 緑川「それじゃ私はなりいきじょう、黒蜥蜴に賭けるしかありませんわね」
 明智「で、何を賭けます?」
 緑川「全財産を賭けますわ。那須の別荘、田園調布の屋敷、ありったけの宝石類。もしお望みでしたら、あたしの身も心も……
 明智「……」(今度こそ童貞を捨てられるかもしれないぞぉ!)

 明智、困ったように、自分はそれに引き合う財産など持ってないと打ち明けるが、

 緑川「明智さんには探偵と言う職業を賭けていただきます」

 緑川夫人、いや黒蜥蜴は、原作そのままの意外な提案をしてくる。つまり明智が負けたら探偵を廃業するということだ。

 緑川「おイヤかしら?」
 明智「賭けましょう」

 こうして、傍目には座談のお遊びっぽく見えるが、その実、互いの笑顔の裏にただならぬ真剣味を感じさせる賭けを成立させる二人。

 と、ここで、緑川夫人は隣の自分の部屋で物音がしたと言い出す。明智も緑川夫人が余りにおびえるので、一緒に隣室で寝ている筈の早苗の様子を見に行くことになる。

 部屋に入るが、早苗は熟睡しているようで、内部には何の異常も見られなかった。

 
 緑川「早苗さん、早苗さん」
 早苗「う゛ーん、眠い」
 緑川「ま、よく寝てること」

 緑川夫人がベッドに近付いて声を掛けるが、早苗は少し変な声で寝言を言う。

 
 部屋に戻ってきた二人は、優雅にポーカーを始める。

 明智「あと3分ですねえ」
 緑川「来ないとおっしゃるの?」
 明智「多分ね」

 
 ここで、ポーカーをしている二人の映像に、ホテルの置き時計の映像を組み込んだ演出が面白い。

 明智「フルハウス」
 緑川「あーら、凄い、でも残念ねえ、私はフォアカード」
 明智「はっはっ、またですか」

 明智、ツキに見放されたのか、どんな役を作っても、緑川夫人にそれ以上の役を作られてしまう。

 次のゲームをしている途中、遂に時計が12時を指す。

 明智「とうとう来ませんでしたね、怖気づいたのか」
 緑川「あら、黒蜥蜴はそんな卑怯じゃないと思いますけれども」

 明智は寝室に行って二人を叩き起こし、岩瀬氏に「エジプトの星」が無事かどうか確認させる。

 
 岩瀬「無事だ、無事ですよ」
 波越「ははは、黒蜥蜴の奴、手も足も出なかったんだ」
 岩瀬「明智先生、ありがとうございました」
 明智「無事で何よりでした」

 明智は居間に行き、

 明智「あなたと私の賭けも決着がついたようですね」
 緑川「ふふふ、うふふふふっ……あっははははっ」

 カードをもてあそびながら、明智の勝利宣言を聞いていた緑川夫人、やがて、おかしくってたまらないという風にとめどもなく笑い出す。

 明智「何がおかしいんです?」
 緑川「お喜びになるのはまだ早いわ」

 
 波越「どう言う意味ですか」
 緑川「黒蜥蜴ほどの怪盗が皆さんとの約束を反故にするとは考えられませんわ」
 岩瀬「それじゃ、エジプトの星をすりかえたとでも?」
 緑川「そうじゃありませんのよ、ただ皆さんは、黒蜥蜴の予告の内容を取り違えてらっしゃるんじゃありませんの?」

 緑川夫人の言葉に、波越はあの予告状を取り出し、もう一度読み上げる。確かに、予告状では「エジプトの星」とは名指しておらず、「一番大切なもの」としか書かれていなかった。

 緑川「岩瀬さん、あなたの一番大切なものってなんでしょう?」
 岩瀬「ええ?」
 緑川「エジプトの星よりもっと大切なものありませんの? もっと美しくてもっと価値のあるもの」
 波越「……」
 岩瀬「……」

 夫人の謎めかした言葉に、二人は無言で顔を見合わせていたが、ここで明智さんが緑川夫人の言わんとしていることに気付く。

 明智「もしかしてあなた、早苗さんのことを言ってるんじゃありませんか?」
 岩瀬「早苗?」
 明智「しかし、早苗さんはついさっきまで……」

 明智、慌てて隣室へ急行する。

 一見、早苗さんはさっきと変わらず、ベッドで熟睡しているように見えたが、

 
 明智は即座に、それがマネキンの首に過ぎないと看破する。いつの間にか早苗さんと人形が入れ替わっていたのだ。

 びっくりする百万円クイズハンター岩瀬氏。

 波越は、ロビーに行き、自分がぐーすか眠っていたことを棚の上に放り投げ、

 波越「バカモノ! さてはお前たち眠ってたな?」

 と、見張りの刑事たちを全力で叱り飛ばす。

 ある意味、立派である。

 そしてフロントに掛かってきた明智からの電話を、受話器を一度反対に持つという小ボケをまじえつつ取る。明智は、波越から、11時前にホテルを出た人物、山川教授なる人物が大きなトランクを抱えていたと知ると、その男がトランクに早苗をつめて連れ出したのだと推理する。

 波越たちが山川の部屋に行くと、トランクに入っていた大量の書類がそっくり残されていた。

 と、緑川夫人がやんわりと明智の推理に異を唱える。

 
 緑川「山川教授がチェックアウトなさったのは11時、ところが私と明智さんは11時40分に早苗さんの寝ている姿を確認した筈ですが」
 明智「いや、あの時の早苗さんは既に人形の首だったんです」
 緑川「あっほっほっほっほっ、さすがの名探偵もドウテンしてらっしゃるわ、だって、確かにあの時、早苗さんは眠いと仰ったじゃありませんか」

 明智さん、一瞬「ドウテイ」と言われたのかと思ってドキッとするが、「動転」だったのでホッとして、「腹話術と言う手もあります」と、あたかも緑川夫人が犯罪に関わっているようなことを言い出す。

 緑川夫人は、それを明智の負け惜しみの悪あがきだと決め付け、

 
 緑川「それより、潔く敗北宣言なさったらいかがですか」
 明智「いいえ、僕はまだ負けてはいません。僕は宿泊者カードを見たときから、山川と言う客をマークしていました」
 緑川「……」
 明智「今頃は僕の部下が、山川を尾行している筈です」

 得意げに、自分の先見の明を誇る明智だったが、どうして山川教授に目を付けていたのか、その説明が一切ないのが物足りない。ま、その辺は原作も同じなんだけどね。

 
 それはさておき、山川教授こと雨宮の車を追跡中の文代と小林少年。

 原作では山川を尾行するのは明智の部下の男性で、文代たちは一切登場しない。

 波越警部も緊急手配を命じ、明智たちは引き続き岩瀬氏の部屋で、文代や警察からの連絡が入るのを待つことにする。

 
 明智「おや、どうしました」
 緑川「え」
 明智「顔色があまり良くないようですね」
 緑川「いいえ、なんでもありませんわ」
 明智「ふっはっはっ、じゃああちらで勝負の続きを」

 明智、居間に行きかけるが、急に静かになった緑川夫人にからかうような声を掛ける。

 緑川夫人、いかにも浮かない顔色だったが、仕方なく明智の後に続く。

 明智と緑川夫人は、娘のことが心配で気が気じゃない岩瀬氏を尻目に、再びポーカーを始める。

 波越「明智君、良くこんな時にトランプなんかやってられるねえ」
 明智「焦っても仕方がないでしょ」

 今度は一転、明智の方にツキが回ってきたようで、勝ちまくり、緑川夫人もお手上げと言う顔をする。

 
 一方、雨宮もさすがに黒蜥蜴の腹心だけあって抜け目のない男で、尾行している車に気付くと、カープの先でUターンして、逆に文代たちの車に向かって突っ込んでその動きを止め、素早く彼らにピストルを突きつける。

 雨宮「お前ら明智小五郎の手下だろうが? 降りろ!」

 ピストルを突きつけられてはどうすることも出来ない。小林少年はともかく、文代にしては珍しい凡ミスだった。

 雨宮は、ピストルで脅しながら、二人にジェラルミンのケースを彼らの車に積み替えさせようとする。この場で、文代たちの車に乗り換えようと言うのだ。

 仕方なく、両側から重たいケースを担いで、雨宮の車から運び出すと言う屈辱的な仕事をする二人。

 と、その時、パトカーのサイレンの音が近付いてきた。

 雨宮が驚いた隙に、小林少年がピストルを叩き落し、捕まえようとするが、

 
 文代「小林君、しっかり! えいっ」
 小林「あいたーっ」

 二人が路上を転がりながら掴み合ってるのに加勢しようとした文代が、誤って小林少年のドタマを懐中電灯で殴ると言うミスを犯す。

 
 文代「あっ、ごめんなさい」

 雨宮、結局パトカーを恐れて、ケースはそのままに元の車に乗って走り去ってしまう。

 
 ケースを開けると、果たして、下着姿の早苗が押し込められていた。

 
 二人がケースを傾けると、早苗さんの体が外へ転がり出る。

 お嬢さん、パンツが見えてますよ!

 ま、どうせならここは原作に忠実(フルヌード)にやって欲しかったところだ。

 
 明智「ストレート、また勝ちましたね。ツキが変わったのかな」
 緑川「……」

 文代たちの苦労も知らず、明智さんは引き続き優雅にポーカーに興じていた。

 そこへ警察から電話があり、早苗さんを救出したこと、雨宮は取り逃がしてしまったことを知らせる。

 雨宮が逃げおおせたと聞くと、緑川夫人はホッとした顔になり、

 緑川「この勝負、どうやら引き分けのようですわね」
 明智「お気の毒ですが、この勝負は僕が勝ちました」
 緑川「何故ですの、黒蜥蜴は逃げてしまったんですのよ」
 明智「いや、山川は黒蜥蜴ではありません、恐らく部下でしょう」
 緑川「はぁ?」
 明智「黒蜥蜴は女ですよ」
 波越「なにぃ、女ぁ?」
 明智「優れた頭脳と組織を持った、大胆不敵な女賊・黒蜥蜴は我々の目の前にいます」
 波越「前?」

 いくら鈍い波越でも、そこまで言われれば、明智が緑川夫人こそ黒蜥蜴だと言ってるのだと理解する。

 岩瀬氏は、馬鹿馬鹿しいと言いたげな笑いを浮かべ、

 岩瀬「明智先生、緑川さんは私どもの大切なお得意様なんですよ」
 明智「だから計画的に接近したんですよ」

 
 明智「波越さん、黒蜥蜴の腕にはトカゲの刺青があるって言ってましたね」

 
 そう言って明智は、ゆっくりと緑川夫人の袖をまくり、白い右腕の上に蠢く黒いトカゲを暴き出す。

 明智「警部と岩瀬さんが眠ってしまったのも、さっきのコーヒーの中に眠り薬が入っていたからですよ。勿論、入れたのは緑川夫人、いや、自己顕示欲の強い黒蜥蜴女史……さぁ、今夜の賭けは君の負けだ」
 緑川「……ふふふふ、あは、あははははっ、さすが名探偵・明智小五郎さん」

 緑川夫人も観念して自分が黒蜥蜴だと認める。だが、

 
 ハンドバックから取り出した香水スプレーから、刺激性の液体を噴射し、波越、岩瀬、明智たちに次々と浴びせていく。

 
 この不意打ちにはさすがの明智さんも対応できなかった。

 原作では、黒蜥蜴は、ピストルで脅して部屋を出て行くと言う芸のない方法でこの窮地を脱するのだ。

 
 よろよろと倒れ込む男たちを尻目に優雅に部屋を出て行く緑川夫人、いや、黒蜥蜴。

 明智さんには申し訳ないが、ここは黒蜥蜴のかっこよさが存分に描かれた名シーンである。

 ふらふらしながらも、波越は電話でロビーに連絡し、緑川夫人をホテルから出さないよう命じる。

 
 さて、黒蜥蜴、そのまま慌てて逃げるようなことはせず、一旦自分の部屋に戻り、念入りに男装して悠々とホテルから出て行こうと言う意外な作戦に出る。

 菊容子さんもゲスト出演していた「おんな浮世絵・紅之介参る!」でも、男装の麗人を演じていた小川さん、男にしては体つきがややふっくらし過ぎているが、なかなか見事な変装ぶりで、

 
 田村刑事も、チラッとその顔を見るが、身元を確認しようともせず、スルーしてしまう。

 田村刑事役は、美女シリーズではお馴染み、北町嘉朗さん。

 
 こうして黒蜥蜴は、刑事たちの目を掠め、正面から堂々とホテルを出て行くのだった。

 その2へ続く。
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コメント

名作ですね

小川真由美さんはまさしく適役ですね。
早苗の加山麗子さんはなかなか可愛いし。

>篠沢教授に賭ける
「クイズダービー」ですね。よく観てました。

それにしても明智と緑川夫人=黒蜥蜴のやり取りは魅力的ですね。

Re: 名作ですね

> 「クイズダービー」ですね。よく観てました。

拾っていただいてありがとうございます。

> それにしても明智と緑川夫人=黒蜥蜴のやり取りは魅力的ですね。

シリーズ中でも大好きなシーンです。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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