第4話「謎の飛行船?宇宙へ!!」(1974年4月30日)
冒頭、東京郊外の金保管庫に押し入った国際強盗団が奪おうとした50億の金塊を、ドリルデスパー率いるデスパー軍団が掻っ攫うと言うややこしい事件が起きる。
しつこいので有名な国際強盗団のボス・藤本が、逃走中のデスパー軍団の車に自分たちの車をぶつけて、金塊を奪い返そうとするが、逆にドリルデスパーに殺されそうになる。
それを邪魔したのが、これまた国際刑事警察機構の秘密捜査官・荒井であった。
さらにイナズマンも駆けつけ、ドリルデスパーと睨み合いになるが、その隙に、藤本が金塊を積んだ車に乗ってその場から逃げ出す。

イナズマン「荒井さん、奴らの後を追ってください」
荒井「わかった」

荒井が、もう一台の車に駆け寄るが、

すかさずイナズマンも、まるで二昔前の、プロレス中継のカメラに映り込もうとする鬱陶しいガキのように横っ飛びでフレームインしてくる。
じゃなくて、身をもって荒井をドリルデスパーの攻撃から守っているのである。
イナズマンはドリルデスパーを撃退するものの、荒井は結局藤本に逃げられてしまう。
「悪の組織」とヒーローが、普通の人間に完全に出し抜かれてしまうという珍しいケースであった。

ガイゼル「……」
おめおめ手ぶらで戻ってきたドリルデスパーに、激怒したガイゼル総統は拳をワナワナさせて直ちに処刑命令を下そうとするが、
ウデスパー「いや、殺すには惜しい」
冷静沈着なウデスパーの助言に、何とか怒りを鎮める。
ドリルデスパー「もう一度チャンスを、ガイゼル総統様ーっ」
ガイゼル「あの50億の金塊だが、我々の日本壊滅作戦を成功させる為の最大の武器となるのだ。デスパーが開発した特殊な化合液に、金塊を溶かして入れれば液体爆弾が完成できる。ゴールド爆弾の威力を見よ!」
そばのモニターに、ゴールド爆弾を積んだミサイルの試射実験の様子が映し出される。

ガイゼル「ふっふっふっふっふぁーっはっはっはっはっ……」
ひとりでウケているガイゼル総統。

ガイゼル「はっはっはっ……」
ウデスパー「50億の金塊が手に入ればこの10万倍の威力、すなわち日本全土を壊滅できるゴールド爆弾が完成するのだ」
「アホな上司はほっといて仕事しましょう」とばかりに、ガイゼルの笑い声が消えないうちにドリルデスパーに説明するウデスパー。
ガイゼル総統、軽くスルーされたことには気付かないふりをして、とある教会に金塊を隠している藤本の姿をモニターに映し出し、

ガイゼル「ふっふっふっ、馬鹿な人間め、我々のアジトがあの下にあるとは気付かず、所詮人間は新人類にとっては虫けら同然!」
興奮気味に立ち上がり、その勢いでマントが落ちて、痩身があらわになるガイゼル総統。
安藤三男さん、背が高くて細面で、若い頃は結構イケメンだったのではないだろうか。
しかし、藤本が金塊を隠した教会が、たまたまデスパーのアジトの上だったというのは、あまりに偶然が過ぎるよね。
だが、その偶然に頼らなければ、デスパー軍団もそう簡単に隠し場所は発見できなかっただろうし、それを思えば、彼らからまんまと金塊を横取りした藤本のことを「虫けら」とは呼べないだろう。
もっとも、デスパーの軍事力の前には藤本はまさに虫けらに過ぎず、ドリルデスパーにあえなく殺されてしまう。

彼らが隠し場所から金塊を移していると、戦闘員が荒井の接近を伝える。
荒井は荒井で、藤本の部下の残した言葉を手掛かりに、この教会に目星をつけて、神父に化けて探索に来たのだ。
……しかし、彼はれっきとしたインターポールの捜査官なのだから、そんなことしないで令状とって堂々と乗り込めば良かったのではないだろうか?
まぁ、教会の関係者が藤本の仲間かもしれないと用心したのだろうが。
荒井は、礼拝堂を調べ、実に簡単に金塊の隠し場所を突き止める。

と、急にあたりが暗くなって、椅子の間から、三人の白塗りの奇怪な女が立ち上がる。
女たち「私たちは死の花嫁……」
黒一色の衣装に、顔にはベールを垂らし、頭には花飾りをつけた、なかなか不気味ないでたち。
荒井「死の花嫁?」
女たち「ほっほっほっほっ……」
三人は笑いながら荒井の前にやってくると、
右端「お前は死ぬ!」
中央「お前は死ぬ!」
左端「お前は死ぬ!」 と、順繰りに叫ぶ(註1)。
対して荒井は、
「ま、いつかは死ぬけどね。むしろ死なないと困るし……」と、冷静に応じたと言う。
(註1……下書きではもっとくだらないギャグを書いていたのだが、あまりにくだらないのでボツにした)
もっとも、「死ぬ」「死ぬ」と言いながら、三人は花に仕組まれた催眠爆弾を投げ付け、荒井を眠らせる。

荒井が目を覚ますと、礼拝堂の奥の控え室のようなところで縛られており、さっきの女たちが悪の大好物の幼稚園児や、シスターを連れてくる。
女「騒ぐな、この教会はデスパーが占領した。観念しろ」
シスター「お願いします、この子たちにはなんの罪もありません」
女「黙れ、我々新人類にとって無能な人間どもに用はないのだ」
シスター「それは違います! この世に生を受けたものすべての命は清く尊いものです! 猫ひろし以外は!」
女「うるさい!」
悪の人たちにまで説教しようとする、彼女はシスターの鑑であったが、無論、それで改心するような連中ではなく、みんなその部屋に押し込められてしまう。

荒井「大丈夫だ、イナズマンが必ず助けに来る」
女「イナズマンか、今に面白いことになる」
「いや、今でも十分面白いんですが……」と言い掛けた荒井であったが、殺されそうな気がしたのでやめておく。

荒井「園長先生!」
と、礼拝堂の入り口から、ふっと入ってきたのは、誰あろう、シスターと瓜二つの女性であった。
シスター「はっ、何これ? どういうこと? ひょっとして、私、双子だったのーっ? うっそーっ!」 荒井「いや、園長先生、そうじゃなくて……」
……嘘である。
シスター「はっ」
偽シスター「ふふふふ、まんまと騙されたな荒井、ここにあるのはお前をおびき寄せる為の金だ」
言い忘れていたが、なかなか綺麗なシスターを演じるのは、色んなドラマに出ている中真千子さん。
10年以上後の「セーラー服反逆同盟」でも、シスター役で出てたな。

勝ち誇った笑みを浮かべながら、マリア像の置いてあった台の蓋を取る偽シスターであったが、
イナズマン「チェーストッ!」 偽シスター「はわわっ」
中から出て来たのは、金塊ならぬイナズマンその人であった。
……
このシーン、なんとなく、コントみたいである。
だから、

荒井「……」
シスター「……」
それを見ていた荒井とシスターが黙って目を見交わすのだが、
「なんでこんなもん見なきゃならんのよ?」などと、目で語り合ってようにも見えてしまうのだ。
偽シスターも女たちも、それであっさりドリルデスパーや戦闘員になってしまうのがちと残念。
イナズマン、ドリルデスパーを追いかけて教会の外へ出るが、

地面に四角い穴が開いて、そこから気球が浮上するのだが、そのゴンドラには荒井、シスター、子供たちが乗っていた。
さっきの小部屋そのものが、ゴンドラになっていたのだろうか?

ウデスパー「あれを見ろ、はっはっはっ、手が出せまい」
勝ち誇った笑い声を立てるウデスパーだが、手が出せないのは彼らも似たようなもので、あまり賢い人質の利用法とは言えまい。
ちなみに、タイトルには「飛行船」とあるが、これはどう見ても「気球」だよね……。
宇宙にも、まかり間違っても行けないよね、気球じゃあ。ま、飛行船でも駄目だけど。

イナズマンが、ライジンゴーでデスパー戦闘機と空中戦を繰り広げている頃、地下のアジトでは、ウデスパーの指揮のもと、着々と50億円の金塊を特殊な薬液に溶かし、ゴールド爆弾、すなわちゴールデンボンバーの材料にするという、実に勿体無い作業が行われていた。
そんなことせずとも、その金を使って核爆弾でも作った方が、遥かに効率的だと思うのだが……。
だいたい、日本全土を壊滅させて、一体デスパー軍団の何の得になると言うのだろう?
かつて、豊かな中国の土地を占領した野蛮なモンゴル人の将軍が、「村人を皆殺しにして田畑を潰して牧草地にしませう」などと言い出した史実を思い起こさせるような愚挙ではないか。
さて、イナズマンはなんとか人質を救出し、安全なところへ連れて行こうとしていたが、

女たち「デスパー、デスパー」
彼らの前に、再びあの不気味な白塗りの花嫁たちが現れる。
彼ら、なかなか魅力的なキャラなのだが、もうちょっと素顔の分かるナチュラルメイクで、衣装もミニスカだったらなお良かったのだが……。
あと、組織の名前を言いながら十字架をおったててるところは、「V3」の第1話を連想させるね。
女たち「イナズマンは死ぬ、イナズマンは死ぬ!」

三人が投げつけた十字架が爆発し、そこに出来た穴にイナズマンが埋まってしまう。
荒井「イナズマン!」
イナズマン「来るんじゃない。子供たちを頼む!」
あと、白いソックスが剥き出しになっているシスターの細い足がエロティックだと思いました。
全く関係ないが、この前、テレビで「二代目はクリスチャン」と言う映画を初めて見た。
すげーつまんなかった。
……
それはさておき、イナズマンはそのまま地底の牢獄に落ち、さらに左右の壁が迫って、イナズマンを押し潰そうとする。
その様子をモニターで眺めているガイゼルとウデスパー。
イナズマン「このままではやられてしまう」
ウデスパー「無駄だ、せんべいにしてやる!」
戦闘員「ゴールド爆弾が完成しました」
ガイゼル「よおっし、爆弾をミサイルに積み込め。これで日本を破壊してやる!」
ウデスパーはテキパキとミサイル発射作業を進め、早くも打ち上げのカウントダウンが始まる。

イナズマン「よし、ゼーバー・逆転チェースト!」
せんべいになりかけていたイナズマンは、おもむろに、超能力増幅装置・ゼーバーを取り出して叫ぶ。

と、たちまち動く壁は反対方向へ退き、イナズマンはガイゼル総統の3時のお茶受けになるのを免れる。
ま、それは良いんだけど、

イナズマン「ゼーバー・テレポーテーション!」

間髪いれず、ゼーバーで瞬間移動しちゃうのは、さすがにどうかと思う。
そんなことが出来るのなら、落ちた時点でやれっての。
それと、

ミサイル発射のコントロールルームにパッと現れたイナズマンが、そばに戦闘員がいるというのに、

イナズマン「むんっ」
とりあえずポーズを決めてしまうところが、かなりのツボであると同時に、特撮ヒーローの悲しいサガであった。
ミサイルはウデスパーが手動で発射させるが、イナズマン、咄嗟にそのミサイルに飛び乗って、一緒に空へ打ち上げられる。
ガイゼル「イナズマンめ、ゴールド爆弾もろとも、大爆発だ」
ガイゼル、これでイナズマンも日本も終わりだと早合点し、

ガイゼル「ミサイルの打ち上げを祝して、これより打ち上げを始める!」
ウデスパー&戦闘員「……」
ガイゼル「ミサイルの打ち上げだけに!」 ウデスパー&戦闘員「……」
ガイゼル「ミサイルの打ち……」
ウデスパー「みんな、相手しなくていいぞ」
じゃなくて、
ガイゼル「日本壊滅作戦、イナズマンの死を祝して……」
部下と一緒に祝杯を挙げてしまう。

が、さすがにそれは早過ぎだった。
戦闘員「ミサイルが方向を変えまひた」
ガイゼル「なにっ」

ガイゼル「……」
部下の報告に、思わず手をぶるぶるさせてシャンパン(?)を宙に躍らせ、グラスまで落としてしまう。
管理人が大笑いしたのは言うまでもないが、同時に、まだ4話だと言うのに、ガイゼルが実は大したことない奴だと言うことが明らかになったのは、少し寂しかった。
イナズマン、ミサイルからゴールド爆弾を取り出して投げ捨て(いいのか?)、ミサイル自体も空中で爆発させる。
そして、まだいたの? と言う感じのドリルデスパーを倒して事件解決となる。
以上、ドラマ要素ははなはだ稀薄だが、イナズマンとデスパーの攻防は、妙に盛り沢山で見応えのあるエピソードであった。
ちなみに、今回、冒頭のシーンを除けばずっと渡五郎はイナズマンに変身したままである。伴直弥さんのスケジュールの都合だろうか。
(BGM・増田未亜「おねがい!イコちゃん」)
- 関連記事
-
スポンサーサイト