第37回「時空間シンジケート 黒いココナツ」(1979年3月16日)
「黒いココナツ」と言うのは、当時世間の耳目を集めていたロッキード事件に関連して、賄賂のことを指す隠語「ピーナツ」と言う言葉が流行っていたので、そのもじりであろう。
だからと言って、今回、汚職事件のような社会派ストーリーが展開する訳ではなく、内容はいつもの「コセイドン」と同じである。
事件の発端は、21世紀の第三最近研究所で起きた。
ちょうどその時、コセイドン隊のテツは依頼されていた白亜紀の気象データを届けに、所長を訪ねていたところだった。

所長「いやぁ、ありがとう、素晴らしい研究資料です」
テツ「こういうことなら、いつでもおっしゃってください」
所長を演じるのは、管理人の好きなおじいちゃん俳優・武内文平さん。
そこへいきなり飛び込んできたのが、銃を構えた戦闘サイボーグ・B2であった。

B2「動くな、細菌F2を出せ」
所長「細菌F2? 細菌F2はない」
B2「嘘をつくな! 早くしろ、早くしないと命はないぞ!」
B2は、抵抗しようとしたテツをぶん殴り、銃口を所長に向けて脅す。

所長「……」
所長もやむなく、背後の棚に普通に置かれていたF2入りのボトルを取り出す。
テツ、サイボーグの隙を衝いて銃を叩き落し、

その銃を拾って、床に座り込んだ状態で銃を向けたのだが、

B2「おっ、ガン……テツ!」
その構えを見た途端、突然、B2が驚きに打たれたように固まり、思わず声を漏らす。
だが、テツも「ガンテツ(銃テツ?)」と言う言葉を耳にして、相手に劣らず驚いていた。
B2、ふっと夢から醒めたように我に返ると、所長からF2の容器をひったくり、テツに銃を撃たれても意に介さず、さっさと部屋から出て行く。

テツもすぐ追いかけるが、建物の外に出た時には、既にその姿は夜の闇に消えていた。
テツ「奴は俺のあだ名を知っていた……どうしてなんだろう?」
翌日の時空管理局。
テツから報告を受けたバンノは、額にガーゼを貼り、青褪めた顔で昨夜の失態を詫びるテツを「もう良い、気にするな」と温情溢れる言葉でいたわる。
だが、
ゴウ「しかし細菌F2が奪われたとなると、こりゃ大変なことですね」
バンノ「何しろ
人間2000万人を殺す量だからな。人間だけじゃない、あらゆる生物を溶かしてしまうんだ」
その直後の会話で、盗まれたF2がそんなとんでもないものだと言うことが分かり、バンノ、もう少しテツを厳しく叱った方が良くない? と思ってしまう。まぁ、別にテツは細菌研究所の護衛を命じられていた訳じゃないんだけどね。
差し当たり、F2の奪還は警察の仕事であって、タイムGメンの任務ではないので、彼らにはどうすることも出来ない。

そこへアルタシヤが入ってきて、「テツ、面会よ、ジュンさん」
テツはすぐ部屋を出て行く。
モリィ「ジュンて?」
ゴウ「ああ、あいつの幼馴染のカワイコちゃん」
モリィ「あの行方不明の兄さんを探してるって、あの子か?」

テツとジュンは、邪魔の入らない屋上へ上がる。
新宿副都心の高層ビル群が指呼の間に見えるが、まだ建設中のビルもあるのが、時代を感じさせる。
ジュン「この一年間、あらゆる手を尽くして探したんですけど見付からないんです」
最初、背中を向けたまま話していたジュン、ここで振り向くが、

「コセイドン」のゲストの中ではかなりの美少女だと言うことが分かる。
そして、なんと、演じているのは「仮面ライダーアマゾン」のりつ子役でお馴染み、松岡まりこさんであった!
管理人、一目見ただけで彼女だと気付いたが、てっきり、松岡さん、「アマゾン」終了後にすぐ芸能界を引退されたとばかり思い込んでいたので、4年後の「コセイドン」に出ていたのが結構意外だった。
ジュン「兄さんはもう生きていないんじゃないかと」
テツ「ジュン、諦めちゃいけない」
ジュン「でも、何の手掛かりも見付からないし……」

テツ「まだはっきりしたことは言えないんだが、その手掛かりが見付かりそうなんだ」
テツ、沈みがちなジュンを元気付けようと、例のサイボーグのことを話して聞かせる。

テツ「俺をガンテツと呼んだのは、リュウジしかいなかった」
ジュン「そうよ、小さい頃からガンマニアだったテツさんに兄さんがつけたあだ名ですもの」
テツ「そのサイボーグはリュウジと何らかの関わり合いがあるに違いないんだ」
ジュン「そのサイボーグから兄さんの消息も掴めるかも知れないわね」
テツの言葉に、ジュンの瞳にも生気が戻ってくる。
それにしても、このアングルから見ると、松岡さんの胸が見事なくらいペッタンコと言うことが良く分かり、ますます萌えてしまいます!
その後、F2を奪ったB2の乗るタイムマシンが、時空管理局の許可を得ずに白亜紀に向かって飛んでいるとタイムマザーから知らせが入る。
また、そのサイボーグが、ブラックココナツの一味であることも早々に明らかになる。
ブラックココナツとは、世界征服を企む犯罪シンジケートであり、平たく言えば、アホの集団である。
バンノたちは直ちにコセイドン号に乗り込んで、B2を追うが、テツはバンノに頼み込んで、ジュンを同行させて貰う許可を得る。

亜空間を飛ぶコセイドン号のブリッジの隅で、ジュンがアルタシヤに兄のことを話している。
ジュン「兄が行方不明になったのは全部私に責任があるんです」
アルタシヤ「ジュン、そこまで責任を……」
ジュン「いえ、そうなんです」

ジュン「あれは一年前でした……」
「アマゾン」から比べるとぐっと大人っぽくなった松岡さんのアップから、回想シーンに移る。

もっとも、回想シーンではりつ子みたいな、子供っぽい衣装になっているが……。
うーん、しかし、この衣装にこの髪型は似合わないなぁ。
そもそも、松岡さんは子供っぽい顔立ちなので、素朴なおかっぱ頭の方が可愛いと思うんだけどね。
ある日、ジュンは落としたコンパクトを拾おうとして道路へ出てしまい、そこへトラックが突っ込んでくる。

リュウジ「危ないーっ!」
その時、トビウオのように必要以上に躍動しながらジュンの体に飛びつき、身をもってトラックから助けたのが、兄のリュウジだったのだ。
しかし、これ、ルパンが
「ふぃじこちゅわぁ~ん!」と、飛び掛かっているようにしか見えない。
ちなみに「リュウジ」は、クレジットでは何故か平仮名の「りゅうじ」になっているのだが、分かりにくいので便宜上、カタカナで表記させて頂く。
ジュン「兄は、かろうじて命は取り留めましたが、両足を失ってしまったんです。そして入院中、消えたように行方不明になってしまって……」
一方、既にF2は、B2から白亜紀のブラックココナツのアジトに持ち込まれ、首領である黒岩博士の手に渡っていた。

黒岩「見ていろ、こいつをどんどん繁殖して細菌兵器を作り、21世紀の世界を征服してやるぞ! うっははは、は……」
F2のボトルを手に、上機嫌の黒岩博士。演じるのは灰地順さん。
彼の配下は、B2をはじめ、サイボーグばかりのようである。サイボーグなので、あくまで脳は人間のものが使われているのだろう。

B1「博士、コセイドン隊がやってきました」
黒岩「おのれ、邪魔されてたまるか、B1、B2、奴らを片付けてしまえ」
B2と同様の戦闘サイボーグがB1が来て報告すると、黒岩は直ちにコセイドン隊の殲滅を命じる。
しかし、21世紀を支配するつもりなら、何でわざわざ白亜紀に拠点を構えねばならないのだろう?
まぁ、別の時代にいる方が、当局の目から逃れやすいと踏んでのことだろうが、それが白亜紀では逆に目立つような気もする。
基本的に、「コセイドン」後半の敵って1話限りのキャラが多いせいか、あまり深く考えずに行動する奴ばっかりである。
ゴウとテツは、ジュンと共にファイタス1号で捜索に出るが、探さずとも向こうから姿を見せてくれる。
ゴウはB1にあたり、テツとジュンはファイタスから降りて、B2を追いかけることにする。

大変嬉しいことに、ジュンはレザー調のミニスカとロングブーツ着用で白亜紀を闊歩されるのです。
なんか良いよね、白亜紀をミニスカギャルが歩き回る図って……。

テツ「さ、早く」

二人が歩いていると、いきなり背後からB1が撃ってくる。
テツ「うおっ!」
ジュン「ああっ」
弾着に驚いて飛び上がるジュンの躍動するヒップが最高なのです!

テツ「撃つな、話がある!」
B2「……」
テツ「お前はどうして俺のあだ名を知ってるんだ? どうして俺のあだ名がガンテツだと知っている?」
B2、テツの叫びに撃つのをやめるが、銃口を向けたまま、無言でゆっくり近付いてくる。
テツ「俺をガンテツと呼ぶものはたったひとり、リュウジと言う友達だけだ。それをどうしてお前が知ってるんだ?」

B2「リュウジから聞いた、コセイドン隊にガンテツと言う射撃の名手がいるってな!」
しばし、テツとジュンの顔を見詰めていたB2、やがて、ぶっきらぼうな口調ながら、テツの質問に答えてくれる。

テツ「リュウジは何処にいるんだ?」
B2「……」
ジュン「教えてください、リュウジは私の兄なんです!」
B2「リュウジは……死んだ」

ジュン「え……兄さんが……」
B2の言葉に、茫然とするジュン。
テツ(奴は嘘をついている、捕まえて……)
B2、ここで再び銃撃を開始する。テツはジュンの体を物陰に突き飛ばし、自分も反対側に隠れる。
戦いの中、B2が後ろに飛んで腰を落としながら撃つ構えを見て、テツは愕然とする。それはまさに、リュウジが得意としていた撃ち方だったからだ。

ジュン「ああっ!」
テツの隠れている窪みにB2が銃撃したのを見て、棒立ちになるジュンが可愛いので貼りました。
B1「B2、いつまで梃子摺っているんだ?」
そこへ、ゴウと戦っていたB1がやってくるが、

そこへ、ファイタス1号に戻ったゴウの、おとなげない砲撃が加えられる。
テツ「ゴウ、撃つな、あのサイボーグはな……」
テツの制止もあって結局勝負はつかず、破損したB2は、仲間のB1に抱えられて撤退する。

ジュン「……」
その姿を、涙ぐんだ目で見遣るジュン。

テツ「もしかしたら、あのサイボーグはリュウジかもしれない」
ゴウ「どうして分かる?」
テツ「銃の撃ち方で分かった。学生時代、リュウジと俺は射撃部だった。その頃から、あの変形射撃の癖が身についてしまっていた。」
ゴウ「そうか、サイボーグに改造されブラックココナツの一味になっていたのか」
……
どうでもいいが、今回のストーリーって、ちょっと前にやった32話とほぼ同じだよね。
息子と父親が、妹と兄に変わってるだけで。
さて、黒岩博士、一応小さいながらも「悪の組織」の首領なのだが、「アマゾン」の十面鬼ゴルゴスのように逃げ戻ってきたB2を即処刑するどころか、

自らの手で修理してやる、なかなかイイ人なのだった。
黒岩「おお、気がついたか、エネルギー回路が狂っていた。もう大丈夫、B2、せっかくワシが改造してやった体だ、大事にしろ!」
B2「はい」
さらに、まるで青春ドラマの教師のような台詞でサイボーグを励ますと言う人情味を覗かせる。
リュウジも、その黒岩博士の温情にほだされて、今まで悪のサイボーグとして仕えてきたのだろう。
恐らく、入院中のリュウジが、「改造して歩けるようにしてやる」と黒岩に持ちかけられ、両足を失くして絶望していたリュウジは、ついその誘いに乗ってしまったと思われる。
その後、F2を銃弾の形にして撃ち込む特殊な銃が完成したので、黒岩博士は野外へ出ると、恐竜を標的にしてその実験を行う。

あわれ、F2入りの銃弾をぶち込まれた恐竜は、口から白い泡を吹いて悶絶し、その体は腐って溶けてしまう。
だが、その死体を偵察中のモリィに発見された為、アジトの位置をコセイドン隊に推測される結果を招いてしまう。
黒岩博士も、コセイドン隊の来襲を予想して、自慢のサイボーグ軍団を率いて迎撃に出る。
そんな中、テツとジュンは、再びB2と遭遇する。

ジュン「兄さん!」

B2「帰れ、21世紀へ」
B2、やはり人間としての記憶がはっきり残っているらしく、ジュンたちを見るなり、そう叫ぶ。
ジュン「兄さんは人間の心まで悪魔に売り払っていないでしょう? お願い、勇気を出してブラックココナツの悪魔と手を切って!」
B2「帰れ!」

ジュン「待って! 私たち、小さい頃から両親がいなかったけれど、私、兄さんが優しくしてくれたからちっとも寂しくなかった。今度は私の番よ、たとえサイボーグでも兄さんと一緒にいるだけで幸せなの」
B2「……」
しかし、実際問題、こんな兄貴が一緒にいたんじゃ、お嫁にも行けないよね。
まぁ、改めて手術を受ければ、もう少し人間に近い体になることも可能なのだと思うが。
と、そこへ黒岩博士が来て、ジュンがB2の妹だと知ると、
黒岩「お前のワシに対する忠誠を試す良いチャンスだ、撃て!」
B2「……」
B2、命令されて、銃口をジュンに向けていたが、結局引き金を引くことが出来ず、銃を下ろしてしまう。
ならばと、黒岩博士自らジュンを撃とうとするが、すかさずB2が黒岩を撃ち、黒岩も反撃して相討ちとなってしまう。
「悪の組織」随一のイイ人だった黒岩博士の、あっけない最期であった。黙祷!

ジュン「兄さん!」
テツ「リュウジ!」
急いでB2に駆け寄るテツとジュン。
こんな時でも、前屈みになったジュンのミニスカの下からパンツが見えないかなぁと、ダメモトでコマ送りをしてしまう管理人は、ほんと、最低の人間だと思います。
B2「ジュン、ガンテツを頼む!」
B2、サイボーグなのでF2入り弾丸を受けても致命傷にはなっていなかったが、そこへ現れたB1たちからジュンを守ろうとして、結局撃ち殺されてしまう。
こうなれば、もうあまり書くことはない。
首領より長生きした珍しい悪の戦士B1と、コセイダーとの一騎打ちとなる。
B1がリュウジと違って最後まで悪を貫いたのは、元々の素材となった人間が、ショッカーが良くやっていたように、凶悪犯か何かだったのだろう。
ラス殺陣は、いつもと変わり映えはないが、

最後、コセイダーが敵に背中を向けた状態から剣を後ろに突き立てる、少しアクロバティックな攻撃が目に付いたくらいだ。
こうしてブラックココナッツは僅か半日で壊滅し、F2も無事回収されて事件は解決する。

ラスト、変わり果てたリュウジの遺体を白亜紀で荼毘にふしているジュンたち。
ここは、ちゃんと夜になるのを待って撮影しているのがえらい。
ジュン「兄さんは人間の心を取り戻して死んでいったんです、私はそれだけで、私はそれだけで……」
気丈にも、炎を見詰めながら自分に言い聞かせるようにつぶやいていたジュンだったが、最後は涙で声を詰まらせるのだった。
以上、シリーズ後半の中ではストーリー、ゲスト共に上位にランクインする佳作であった。
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