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「赤いさそりの美女」~江戸川乱歩の「妖虫」(画像復刻版) その2



 続きです。

 明智事務所を訪ねたが、当の明智によって地下室に放り込まれた守がそこで見たのは、他でもない、明智小五郎だった。

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 守「だ、誰だ? 明智小五郎?」
 明智「そうです。あなた、確か、相川守さんでしたね」

 二人は、空き家の事件の翌日、一度顔を合わせているのだ。

 守「どうして僕を殴った?」
 明智「殴った? 僕があなたを?」
 守「とぼけるな、たった今後ろから僕を殴ったじゃないか」
 明智「そりゃ僕じゃない」
 守「嘘をつけ、確かにあんただった」
 明智「そうか、じゃ、僕に変装したんだ」
 守「ええっ、変装?」
 明智「実は僕も殴られたんですよ。夕方、助手が帰るのと入れ違いに黒眼鏡の男が入ってきていきなりピストルを突きつけ、僕も後頭部を殴られて気絶してしまったんですよ」
 守「僕が5時過ぎに電話した時には、あなたが出ましたよ」
 明智「それも僕じゃないなぁ」
 守「信じられないなぁ」

 話しているうちに、守の態度も徐々に軟化する。

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 隣に腰掛け、「そいつはあなたにそっくりでしたよ」と、しげしげと明智の顔を照らす。

 明智「よほど変装がうまいんでしょう」

 さすがに明智も、忌々しそうに視線を反らす。

 守「ここは?」
 明智「きっと僕の事務所のビルの地下室でしょう」

 自分の事務所にいてこんな屈辱的な目にあわされるとは、(美女シリーズでの)明智には珍しいドジだが、これは原作の老探偵・三笠竜介の受けた災難をそのまま再現しているのだ。ただ、原作では三笠の自宅兼事務所の中で発生しており、元々落とし穴の仕掛けは三笠本人が用意していたものだったのだが、ドラマでは近代的な高層ビルの地下に、こんな牢獄のような部屋があることになってしまい、そーとー不自然だ。

 彼らのいるところだけなら、倉庫だと説明も出来るが、壁の一方に金網の張られた覗き窓があって、その向こうに別の部屋があるというのは、どう考えても変である。

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 明智は、襟に隠しておいた小さなドライバーを取り出し、その覗き窓のネジを外しにかかる。

 守「なんです、そりゃ」
 明智「探偵の必需品です」

 美女シリーズで、明智がこういうアイテムを使うのは珍しい。これも、原作で三笠が色んな探偵道具を自慢げに見せて、その地下室から抜け出すことになっている影響だろう。後に出てくる探偵セットも、三笠がこのシーンで守に見せている探偵七つ道具の変形である。

 と、急に向こう側の部屋の照明がつき、なかの様子がはっきりする。

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 ベッドがあり、その上に京子が艶かしい下着姿で縛られていた。

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 と、階段上のドアが開き、ひとりの男が降りてくる。

 ニセ明智「はははは、ふっはははははっ」

 その顔は明智に瓜二つだった。

 彼は、隣室に明智と守がいることは百も承知の筈なのだが、一切気にせず、高笑いを上げたかと思うと、

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 顔に手をかけ、

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 掟破りの、犯人による「べりべりべり」を行う。

 ここでは既に、天知茂本人から、黒眼鏡の男役の入川保則にスイッチしている。

 しかし、明智たちのことを度忘れしていたならあまりに間抜けだし、知っていてわざと正体を見せたとすれば、何の為にそんなことをしなくてはならなかったのか? 素顔を見せても、彼には何のメリットもない筈だ。

 もっとも、二人に京子を助けさせるのは最初から計画していたことなのだけどね。

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 男の頬には、さそりのマークが入っていた。

 男はいきなりナイフを振り上げて、京子の胸に突き立てようとする。明智の「待てっ」と言う声に驚いて、一目散に階段を上がって逃げてしまう。

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 二人は金網を外して隣の部屋に飛び込み、まず京子を揺り起こす。

 京子、気がつくと、明智の胸に「怖いっ」と言って縋りつく。

 守が男を追いかけようとするが、ドアに鍵が掛かっていてダメだった。

 さて、ここでまた場面は相川邸に戻る。さぁ、全国のお父さんお待ち兼ねの入浴タイムです。

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 珠子、台本を熱心に読んでいたが、疲れたと言って浴室へ。

 野平ゆきさん、例によって景気良くお脱ぎになっておられる。

 ただ、他に誰もいないのに、脱衣所から浴槽まで、きっちり股間をタオルで隠しているのは不自然である。

 どけなさい。

 実に気持ち良さそうに湯船にからだを浸している珠子だったが、何者かが裏口から入り、換気口から生きたさそりを投げ込む。

 ゆっくりと珠子に近付くさそり(のオモチャ)。
 珠子、それに気付いて悲鳴を上げる。

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 友雄「どうした?」

 すぐ、恋人の友雄がすっ飛んできて、さそりを叩き潰す。

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 続いて親父も飛んできて、成長した娘のヌードをしっかりと目に焼き付けるのだった。

 操一「どうしたんだ?」
 珠子「さそりが……」

 この油断しきったお尻、いいですね!

 そんな騒ぎの中、女中が明智の来訪を告げる。

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 これも原作にあるとおり。つまり、三笠を足止めしておいて、ニセモノが相川邸に行くという段取り。

 よって、この明智もニセモノ。

 しかし、だとすると、黒眼鏡の男、あれから大急ぎでもう一度明智に変装したのか。大変だね。
 (そう言う意味でも、地下室でわざわざ変装を解いたのはおかしい)

 ニセ明智は口からでまかせを言い、友雄と珠子を車で連れ出す。原作では、操一と珠子。

 走り出した車の中で、明智は「どうですか、スイスの煙草です」と、友雄にすすめる。

 友雄がぷかぷか吹かすと、あっという間に眠りに落ちる。いくら睡眠薬入りでも、効き目が早過ぎだろう。

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 明智は車を停め、今度は珠子の口にクロロフォルムに浸したハンカチを当てて気絶させる。

 抵抗する珠子の手が明智の顔をつかみ、本日二度目の「べりべりべり」が発生する。

 ニセ明智に化けていた男が、珠子と友雄を連れてきたのは、原作と同じく、潰れた見世物小屋(お化け屋敷)であった。

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 そこに展示されているのは、線路に転がる轢死者のバラバラ死体や、

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 逆さ磔にされて、しかも首と腕が切断されている死体などと言う、正視に堪えないグロいものばかり。

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 ドラマでは、昔の生き人形(つまり原作に出てくるような)じゃなく、稚拙な粘土細工のような顔なのが、かえって不気味なのだ。

 男「夜になると肉体が呼び合い、霊が小屋の中で踊り狂うんだ! はっははははっ」
 友雄「私たちをどうするつもりだ?」
 男「作り物と本物を入れ替えるんだ」
 男はカマを振りかざして、二人に襲い掛かろうとする。

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 そこへ「待てっ」と颯爽と現れたのは、我らが明智さん。

 明智「さそりクン! 地下室から守君と、京子さんを助け出したぞ。京子さんを病院へ届け、守君は警察へ」

 明智は、相川邸に戻ってきて、ニセ明智の車のトランクの中に隠れていたのだ。

 しかし、さそりクンって……。

 明智「変装のテクニックは大したものだ。僕でさえどっちが私か見分けがつかなかったくらいだ!」

 明智さんが誉めるくらいだから、黒眼鏡の男の変装の腕前は、「美女シリーズ」の中でもトップクラスだろう。……ま、他に変装する人ってあんまりいないけどね。

 明智はたちまち男を取り押さえるが、そこへ同じく黒ずくめの男(どう見ても女だけど)がピストルを構えて現れる。銃口を前に、明智はじりじりとあとずさるが、咄嗟に、後ろの生首を手に取り、ピストルを持つ手にぶつける。

 二人は激しく揉み合うが、今度はさそりクンに背後から殴られ、明智はあえなくダウン。

 結局、友雄と珠子は再び車に乗せられて夜の闇へ消えて行く。

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 小屋の入り口から、悔しそうにそれを睨む明智さん。

 二回連続のドジ、明智としては信じ難い失敗だが、これはまぁ、原作の三笠竜介のドジっ子ぶりを忠実に再現しているからこうなってしまうのだ。

 ちなみに三笠は他にも、「耄碌」「役立たず」「気ちがい」「ノロマ」「頓狂」「誇大妄想」と、ありとあらゆる悪口を浴びせられるなど、乱歩の創造した探偵の中でも特にひどい扱いを受けている。一応、最後にはちゃんと事件を解決するんだけど、その際、可愛いにゃんこをギロチンで殺すと言う最低のことをやってしまい、読者からの評判も最悪なのだ。合掌。

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 その後、工場の煙突から突き出ている友雄と珠子の下半身が発見される。

 今度もマネキンかと思いきや、これは本物の死体(と言う設定)なのだった。
 (原作では、珠子の死体と取り替えられたマネキンがこんな風に都内にばらまかれる)

 とび職の人が煙突を上って覗き込むと、「あれー胴体がねえやっ」と驚く。

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 そう、無残にも、二人は体を真っ二つにされ、上半身の方は、煙突の下の焼却炉の中に、仲良く陳列されていたのだ。

 「美女シリーズ」中でも、ひときわ凄惨な場面である。

 ただ、犯人が下半身をあそこまで運ぶのは、めちゃくちゃ大変だったんじゃないかな、と。

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 波越「ひどかったねえ、真っ二つだからねー」

 波越、傷が元で入院している明智のところにそれを知らせに来る。

 今回の一件、どう贔屓目に見ても明智に責任の大半がある筈だが、明智はしれっとして特に申し訳なさそうな顔はしない。

 文代「やっぱり性格異常者の仕業よ」
 明智「いや、私はそうは思わんね、相手は二人だ。チームを組む以上、はっきりした目的がある筈だ」

 明智は波越にも、黒眼鏡の男のことを「私のお株を奪うほどの変装の名人だ」と表現している。

 波越は、珠子が死んで得をするのは、「燃える映画」のヒロインに選ばれそうな品子だと言う。つまり、品子を疑っているのだが、さすがに関係者が3人も殺されたら、映画だって中止になるだろう。

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 そこへ、小林少年が、耳寄りな情報を持ってくる。品子の同級生に「いつも黒い背広を着た虫好きの男で変質者まがいの行動が多く、しつこく品子につきまとっていた」男がいると言うのだ。

 波越「なんて男?」
 小林「笠間明です」
 波越「小林君、でかしたねえ……、洗ってくるわ」
 小林「ちょっと待って下さい、横取りしないで下さい」
 波越「気にすんな、気にすんな、俺と明智君は兄弟以上の間柄なんだ。ねー、明智君?」

 波越警部と入れ違いに、花束を抱えた京子が来訪する。

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 明智「ああ、京子さん」
 京子「近くまで来たものですから」

 京子から見舞いの花束を笑顔で受け取る文代さん。この時点ではまだ笑っていられたが……。

 京子「珠子さんと今村さんがあんなひどいことになって……」
 明智「ええ、今、聞きました」
 珠子「あんなに幸せそうだったのに……みなさん英語がとても上達してらしたのに……」
 文代「何人くらい教えてらっしゃるんですか」
 珠子「二、三人、受験生を教えてるだけです」

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 明智「失礼ですが、京子さんのご主人は」
 京子「私、まだ……」

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 明智「ほっほう、結婚なさってないんですかぁ?」

 露骨に喜色を浮かべる明智さん。そばで見ている文代さんは気が気ではない。

 明智「どうして?」
 京子「どうしてって……、あはっ、売れ残ったんですわ。縁遠い生まれつきだと思って諦めてます」

 じっと明智の目を見詰めた後、京子は帰って行く。

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 ホッとしたようにその後ろ姿を見送ってから、

 文代「先生、京子さんが独身だと聞いて急に目尻が下がっちゃって……」
 明智「バカなこと言っちゃいけないよ」

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 照れ隠しに煙草を吸おうとする明智だったが、「まだダメ」と冷たく文代さんに取り上げられるのだった。

 波越は、笠間明が品子と会っていたことを聞き込み、二人が共謀して犯行に及んだのではないかと明後日の方向へ推理を働かせていた。

 笠間のアパートを張っていると、笠間が出てきて、匹田と言う表札の掛かった空き家のようなボロ家に入って行った。その中では、蛇やトカゲやバッタや蜘蛛や亀など、色んな生物が飼われていた。

 笠間はゴム手袋をしっかり腕にはめて、さそりを入れてあるケースに突っ込んで、持参したガラス瓶に一匹のさそりを移す。そして、その足で相川邸に行き、裏手に回ったところを、波越たちに捕まってしまう。

 警察で取調べを受けている笠間明。

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 波越「品子さんと会ったんだな?」
 笠間「喫茶店で会って俺の計画を全部話した。品子をスターにする為に、邪魔者はひとりひとり消すんだ。はっはっはっはっ」

 興奮気味の笠間は、自分が珠子の浴室にさそりを放り込んだこと、さっきは品子の婚約者(守)をさそりで殺すつもりだったことなど、べらべら白状するが、珠子や友雄殺しについては否定する。

 と、その最中、偶然か、自分で開けたのか、握っていたさそりを入れた瓶の蓋が開き(そんなもん容疑者に持たすなよ)、さそりの尾の針が笠間の首にぶすっと刺さる。

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 すぐ白衣の医者が呼ばれ、テキパキと指示を出すのだが、一緒についてきた看護婦が、何もしないでボーッと立ってるのが妙に可笑しい。

 その後、品子は、笠間と会ったことは認めたが、事件への関与はきっぱり否定する。珠子に役を辞退するよう言ったのも、笠間が品子を映画に出させる為に、珠子に何かしでかさないかと不安だったからだと言う。

 波越、目の前で容疑者にあんなことをされて本来なら大失態の筈だが、明智の病室を訪れて、相変わらず太平楽で、「恐ろしいもんだねぇ、さそりの毒ってのは、ひどく痛んで腫れて痺れて熱が出るんだってさ」と、まるっきり他人事。

 文代「で、死んだんですか」
 波越「いや、やっと一命は取り留めてね、近くの共済病院に入れたんだけどね」
 明智「笠間は何処でさそりを手に入れたんです?」
 波越「それがね、明智君、世の中には妙な学者がいるもんでねー、匹田博士と言ってね……」
 明智「妖虫博士ですか」
 波越「あれ、良く知ってるね。その研究室から盗んだって言ってんだけどね」
 明智「小林君、そのファイルを」

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 明智は、小林少年が持っていた一冊のスクラップブックを波越警部に見せる。

 小林「昭和49年秋の記事です」
 明智「5年前に妖虫博士の研究室が火事で、何百匹と言うさそりが死んだと言う記事があったのを思い出して取りに行って貰ったんです」
 文代「気の毒に、一人娘を火事で亡くしてるんですね」
 明智「博士も顔に大やけどを負ったらしい」
 波越「そうなんだってさ、ひどい顔らしいよ」

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 文代さん、次の場面では、ベレー帽を被ってその匹田博士の壊れかかった門の中を覗いている。

 文代「こんにちは、どなたかいらっしゃいませんか」

 声をかけながらずかずか上がり込み、水槽の中に蠢く様々な気味の悪い生き物を興味深げに眺めている。

 と、いつの間か、背後に白衣の老人が立っていた。その焼け爛れた皮膚から覗く不気味な目を見て、文代さん、思わず「ああっ」と悲鳴を上げる。

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 匹田「誰だ」
 文代「匹田博士ですね。あたくし、四国大学の生物科の学生で石田と言います。どうしても先生にお会いしたくて……、あたくし、爬虫類の分類について論文を書いてまして、その中に是非、先生との対談を入れたいと思いまして」
 匹田「わしゃもうとっくの昔に学会を引退した男だ。そんな男との対談なんか、何の値打ちもない……」
 文代「とんでもありません。かつて妖虫博士と言われ屋敷一杯の生物を友とする先生は、あたしたちにとっては尊敬の的です。妖虫博士、かく語る! あたしの論文を呼んだら、トンボの奴、もうびっくりして飛び上がってしまいます」
 匹田「トンボ? ニックネームかね」
 文代「ええ」

 あることないことまくしたてて、トンボと言う、エア友人まで作り出して博士に取り入ろうとする文代さんが可愛い。

 しかし、わざわざ四国からアポなしで来たと言うのは、やや嘘っぽい。

 それでも、文代さんの快活さに気難しい博士も、表情を和らげて取材に応じてくれる。

 文代さん、合間にそれとなく5年前の火事のことに話題を向けると、博士も、火事の原因は過失ではなく、一人娘の自殺騒ぎが原因だったと打ち明けてくれる。

 匹田「ひどい男がいてな、新婚旅行の夜に娘を捨てたんだ」
 文代「どうしてですか」
 匹田「本当に愛していなかったからだ。娘は屈辱のあまり、その箱の中に手を突っ込んでさそりの毒で死のうとしたんだが、苦しんで、石油コンロを倒して火事になったんだ」
 文代「そうだったんですか、それでお嬢さんを助ける為にそんなひどい火傷を」
 匹田「誰よりもあの子のことを愛していたからね……」

 匹田はそこで急に感情を昂ぶらせ、文代さんを追い出してしまう。

 文代さん、門の外で、近所で聞き込みをしていた小林少年と落ち合う。

 小林少年によると、いまだに博士の助手が通って面倒を見ているらしい。しかも、そのいでたちが、「黒眼鏡の男」そっくりなのだと言う。

 二人が走り去ったのを見届けて、まさにそのスタイルの人物が現れ、屋敷に入って行く。ただし、その声や体格からして、明らかに女である。

 匹田「おかえり」
 女「今出てったのは?」
 匹田「四国から来た女子大生だ」
 女「嘘、明智の助手よ。練りに練った計画なのに、変質者がさそりを盗んだばかりにここが浮かび上がってしまったわ」

 変態的殺人者にまで「変質者」と呼ばれる笠間アキラ君でした。

 女「私が怖いのは明智よ」
 匹田「そんなに怖い奴ならやってしまおう」
 女「いけない、明智に手を付けることは許さない!」

 匹田は、「お前の復讐は終わったんだ、ここから逃げよう」と女の体に縋りつき、哀願する。

 女は、「屈辱の夜」のことを回想する。新婚旅行先の初夜で、情熱的に抱き合っていた男女。だが、男は、女の頬に浮かんださそりのような痣を見て、「さそりの呪いだぁ~」と叫んで脱兎の如く逃げてしまったという、チン事であった。

 女の顔ははっきり見えないが、男は最初に殺された吉野だった。

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 女「あの夜から、私は、女の幸せを失ってしまった。人間の心も」
 匹田「俺が幸せにして見せる。愛してるんだ、こんな刺青までして!」

 匹田は、ここで変装を解き、頬の赤いさそりを見せ付ける。

 そう、それは本物の博士ではなく、黒眼鏡の男、明智の言う「さそりクン」が化けた姿だったのだ。

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 男「お前は俺のもんだ……」
 女の首筋にしゃぶりつく男。

 二人の頬にあるさそりが、重なり合って蠢く……。

 文代さんたちは明智に調べたことを報告する。明智は更なる調査を二人に命じる。

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 病院のベッドの上で、事件の謎について考え込んでいる明智さん。

 その後、共済病院に入院していた笠間明を、医者に化けた「さそりクン」が何処かへ連れ去ってしまう。

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 波越がそのことを明智に知らせていると、文代さんが戻ってくる。

 文代「先生、分かりました。匹田博士のお嬢さんの結婚相手と言うのは……」
 明智「吉野圭一郎だろう?」
 文代「ええ、えっ? どうしてそれを?」
 明智「いや、こう考えるとさそりの呪いがあの殺人事件と結び付いて来るんだよ。それで?」
 文代「火事は新婚旅行に出かけた翌日なんです。だからフミさんがどうしてうちにいたのか、分からないって当時みんなが不思議がっていたそうです」
 明智「フミさんって?」
 文代「匹田博士のお嬢さんの名前です。あたしと同じフミなんですけど、富むという字に、美しいの富美です」
 明智「フ、ミ……、230円……」

 明智は、現場に残されていた100円2枚と10円3枚は、合計230円で、「フミ」と言う名前を暗示していたのではないかと推理する。

 文代「誰が捨てたんでしょう」
 明智「さあ、犯人がさそりの呪いを強調する為か、それとも吉野が犯人を暗示する為か」

 このダイイングメッセージ(?)、美女シリーズでは珍しい趣向だが、はっきり言って要らなかったと思う。

 文代「でも、富美さんをとても愛していた吉野さんがどうして初夜に捨てたんでしょう」
 波越「初夜に? もったいねえことするなぁ~」

 小林少年も戻ってきて、入り口のところで配膳係が持っていた食事を受け取り、中に入る。

 その配膳係、マスクで顔は見えないが、明らかに「さそりクン」であった。

 「さそりクン」、この後も、刑事に変装している。美女シリーズでも、これだけ多彩な変装を披露している犯人は、彼くらいだろう。

 小林少年は、匹田の助手が狩野五郎と言う名前だと突き止めて知らせる。ネタバレしてしまうと、その狩野五郎こそ、「さそりクン」なのだ。

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 明智の病室へ、再び殿村京子が果物カゴを抱えて見舞いに来る。

 文代「あら、殿村さん」
 京子「これ、先生に」
 文代「あ、どうもスイマセン」

 文代さん、「それじゃ、確かにお預かりしました」と素早くドアを閉めて京子を締め出そうとするが、京子はその隙を与えずするりと中に入り込む……と言うのは管理人の妄想である。

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 事件についてあれこれ話した後、

 京子「お食事なんでしょ、召し上がって下さい、あたし、果物剥きますから」
 文代「そうですか、じゃちょっと失礼して」

 文代さんが、明智の前にスライド式のテーブルを移動させようとするのを、「ああ、あたくしやります、ナイフとお皿ありますぅ?」と、強引に割り込み、病院食を明智の前に置く。

 文代「はい……」

 ここに、美女シリーズ史上、もっとも激烈な女の戦いの幕が上がる!

 京子「ねえ、先生、食後のフルーツなになさるんです?」
 明智「じゃあ、メロン頂きます」
 京子「あはっ、ちょうど良かった、今日が食べごろなんですよ」
 文代「はい」

 恋女房のようにはしゃいだ声を上げる京子に、文代さんが感情のない声と共にナイフと皿を差し出す。
 
 さらに、なんとか明智の世話を焼こうとベッドに近付く文代さんの背中に、

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 京子「ねえ、お茶を沸かしてくださらない?」
 文代「はい……」

 口の端から血がしたたりそうな表情で応じる文代さんが怖い。

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 それを見て、波越と小林少年が(後が怖いぞ~)と言うように、そっと目を見交わす。

 と、ノックの音がして、女性の配膳係が食事を持ってくる。

 文代「もう来てます」
 配膳係「おかしいねえ、あたしが1、2階の係なんだけど」

 明智、その言葉に思わず箸を止める。

 明智「この食事を届けたのは?」
 小林「男の配膳係です」
 配膳係「そんな人ぁいないよ、配膳係はみんな女なの」
 明智「小林君、僕のカバンとってくれ」

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 明智の言葉に、小林少年がテキパキとケースを開ける。

 中には、いわゆる「探偵の七つ道具」のようなものがぎっちり詰まっていた。

 美女シリーズで、明智がこういうものを使うのはこのシーンくらいだが、前述したように、原作の三笠探偵が似たようなものを使っているからだろう。

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 明智は、その中にある試薬をスポイトで味噌汁に垂らし、金属片でかきまぜる。

 その金属片をライターで加熱して、反応を注視する明智。

 結果が出るのを、波越たちが固唾を飲んで見守っている。

 やがて、金属片が青っぽく変色する。

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 明智「味噌だ!!」
 ドンガラガッシャーーーン!!(全員がコケる音)

 じゃなくて、「砒素だ!」でした。

 明智「昨夜から誰かが私を監視して、狙ってるんですよ」

 ちなみに、原作でも、入院している三笠のところへ犯人がびっくり箱のようなものに毒針を仕込んで届けて、三笠を抹殺しようとするシーンが出てくる(ホームズの「瀕死の探偵」のアイディアを借りている)。

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 文代さん、正規の配膳係が持っていたお膳を取り、明智の前に置いて少しでもポイントを稼ごうとするが、

 京子「これも危ないわ、今日はよしましょう、ね、先生、これ召し上がってください、これなら大丈夫」

 と、文代さんを押しのけ、自分が持ってきたメロンをすすめる。

 明智は、京子に言われるまま、子供のように素直に従う。

 京子「それから今日は外から何か取りましょう。先生、何がお好き?」
 明智「それじゃあ、ソバでも取りますか」
 京子(文代に)「おソバ取って頂戴」
 文代「……はい、分かりました」

 文代さん、部屋を出ながら、「明日から助手を代わって頂きたいわ」と、聞こえよがしにイヤミを言う。

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 京子、初めて気付いたふりをして、「あらー、あたくし、言い過ぎたかしら?」

 この勝負、京子の完勝であった。

 明智「いいやー、お心遣い頂いて恐縮です」

 しかも明智は、文代さんの女心など全く関心がないらしい。

 実際、明智が文代さんを異性として見ることってまずないよね。原作では結婚までしてるんだけど……。

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 京子「でもひどい奴だわ、先生に毒盛るなんて」
 明智「うん、このメロンとっても美味しいですよ」

 のんきにメロンを食べる明智さんがめっちゃ可愛い!

 その後、波越警部が、小林少年を引っ張るようにして部屋を出て行く。

 京子「あの……」

 二人きりになって、なんとも言えないぎこちない空気が流れる。

 やがて、明智に背を向けて、

 京子「先生、女って弱いものですわね」
 明智「どうしてです?」
 京子「だって、生まれつきの運命に一生左右されてしまうんですもの」
 明智「そんなにお綺麗なのに、何を悩んでらっしゃるんです」
 京子「あたくしって、恋の出来ないたちなんです。だから……」
 明智「ふっ、あなたに男が近寄らない訳がない、あなたが近寄せないからでしょう?」
 京子(振り向いて)「いいえ! 恋には憧れてます。でも、受け入れて貰えない女なんです」

 二人の会話が途切れるが、その時、事故か故意か、部屋の照明がフッと消える。

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 京子「あら、怖いわ」

 と、思わずベッドの上の明智さんに抱き付くアグレッシブ京子。

 ハッとして身を引くが、互いの目を見詰めた後、改めて明智の胸に顔を寄せる。

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 明智「京子さん……」

 さすがに明智が、京子の体を離そうと手を置くが、

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 明智の力強い手に自分の華奢な指を絡ませて離れようとしない。

 「妖しい傷あと」のような明確なキスシーンこそないものの、シリーズ中、最も明智さんが脱・童貞に近付いた瞬間である。

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 だが、二人の恋を邪魔するように、誰かの手がドアから生きたさそりを放り込む。

 多くのシーンではおもちゃであるが、ここは本物が使われている。

 さそり君、元気に床を這いまわっていたが、

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 次のシーンでは、何故か明智の布団の端に上がっている。

 病院のベッドを上がるのは、ちょっと無理だと思うが……。

 無論、役者と一緒に映っているシーンでは、おもちゃに切り替わっている。

 ただ、それと、シーツの上を歩く本物のさそりの映像とを組み合わせているので、なかなか不気味である。

 ひしと抱き合う二人のすぐそばまで這い登ったさそり君。

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 明智もやっと気付いて、京子に目で教える。
 だが、そんな状況なので、二人ともそのままの体勢で凍りついたように動けなくなる。

 明智はさっきのケースを持ち上げると、間近まで迫ったさそり君をバッコバッコ叩き潰す。さそり君、良い迷惑であった。

 京子「良かった、ご無事で……」

 改めて明智の膝にもたれかかる京子であった。

 この後の病室のシーンはないのだが、ひょっとして、二人がそのまま結ばれてしまったということもありえないことではないと思う。

 その3へつづく。
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コメント

どてらい波越

>この原作は20年後に、「鉄塔の怪人」として少年探偵団シリーズの一編に焼き直しされている。
閉じ込められた明智が「探偵の必需品」を使って少年と脱出するシーンがありました。

>波越、目の前で容疑者にあんなことをされて本来なら大失態の筈だが
逮捕前の真犯人に目の前で自殺されたりもしてますしね。どてらい!

京子と文代の掛け合いは最高ですね!

Re: どてらい波越

> 逮捕前の真犯人に目の前で自殺されたりもしてますしね。どてらい!

いつものことですが、今回は特にひどいです。

> 京子と文代の掛け合いは最高ですね!

京子さん、絶対わざとやってますよね。

女の争い

凄惨な死体に負けず劣らず、京子と文代の女の争いも盛んのようですね😅(なんでやねんな)どこか微笑ましく見えたのは、小生の錯覚でしょうか?

Re: 女の争い

あれだけ凄惨な殺人があった後なのに、そんな恋愛ごっこしてて良いのかなと言う気はします。

グロい扱い

下半身丸出しのグロい💀は今のドラマではNG(無理)ですかな😅おまけに逆さ吊りの扱いは酷いですね

Re: グロい扱い

人形とは言え、今なら絶対NGですよね。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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