第2回です。
パーティーの夜、鍾乳洞へ消えた鮎川君江を追って金田一たちが中へ入るが、依頼人である杢衛老人が何者かに殺されてしまった。その現場で、教会のニコライ神父に取り押さえられている怪しい男がいたが、それは矢部家の親戚の古林徹三だった。

当然、警察は彼を疑う。古林は、パーティー当日、つまり23年前の殺人の起きた日までに射水へ来るようにと言う杢衛からのハガキを見せて、この町へ来た経緯を説明する。もっとも、そのハガキは杢衛ではない誰かが出したニセ手紙だったのだが。
警察は、姿を消した鮎川君江を重要参考人として捜査を開始する。

金田一は依頼人が殺されたのでさっさと荷物をまとめて引き揚げようとするが、長男の慎一郎に引き止められる。
慎一郎「そんな遠慮はなさらんでください。私から、改めてお願い致します。父は誰に殺されたのか調べて頂きたい」
金田一「分かりました。全力を尽くしてみます」

その後、金田一と日和警部はニコライ神父の教会を訪れて話を聞く。
彼は、教会からの入り口から鍾乳洞を伝って、パーティー会場へ向かおうとしていたと言う。地下を通った方が近道なのだ。また、古林徹三は姿を隠す素振りは見せなかったとも。さらに、鮎川マリはこの町へ来てすぐ、鍾乳洞の中へ入ったことがあり、中の様子を知っていた筈だとも話す。
昨夜、鮎川マリは鍾乳洞内部のことは知らないと言っていたのに、明らかな矛盾であった。
ところで、前回、マリの召使カンポのことをジョン・パームと言ったが、実際はこの神父役の人がジョンなのではないかと言う気もする。今回、神父もカンポも出ているが、クレジットにあるのはジョン・パームひとりなのだ。神父は台詞もあるから、クレジットされるからには神父=ジョンと考えるのが普通だろう。ただ、前回は神父が出ていないのに、ジョン・パームと言う名前が出ていたので、混乱してしまうのだ。
……ま、どっちでもいいか。

日和警部は鮎川マリにその点について尋ねるが、マリは入ったことはあるが詳しくは知らなかったのでと言い抜けする。
あれこれと詮索する警部に対し、
マリ「正直に言えとのお言葉ですので、正直に申します」
日和「うん、それがええんじゃそれが」
マリ「私、先ほどからずっと不愉快なんです」
日和「はぁ?」
マリ「これから質問がおありのときは、必ずブラジル領事館を通してください。カンポ、カンポ、お客様がお帰りです」

マリの言葉に、アフロヘアのカンポがぬっと現れる。
マリは
竹下景子の癖に、ブラジル国籍なのだ(設定ではブラジル人と日本人のハーフ)。
さて、矢部家では家庭争議が絶えない。娘の都は康雄と一緒に東京へ行くなどと言い出して、母親の峯子を困らせる。

峯子「あなたも何か仰ってくださればいいのに……」
慎一郎「行かせればいいでしょう。私だって一人娘を手放すのは辛いが、人が死ぬよりはいいでしょう。私が朋子との仲を引き裂かれた時、弟が死んだ。多分その因縁で、今度は父が死んだ。矢部と玉造を引き離そうとすれば、必ず血が流れるんです」
慎一郎を演じる山本昌平、自分はスーパーギルーク(誰が知るか)とか悪役のイメージしかなかったが、この作品ではとっつき難いが根は温良な男性を好演している。

同じく脇で良い仕事をしている宮田文造役の植木等と金田一が、材木置場で話している。
宮田「妹(峯子)も可哀相な奴ですよ。随分尽くしちゃいるんだが、どうしても慎一郎さんに好きになって貰えなくて」
宮田兄妹の父親に、杢衛は恩義を感じていて、その為に、長男の慎一郎と峯子を婚約させたらしい。しかし、慎一郎は玉造朋子と恋に落ち、無理に引き裂かれた上で、峯子と結婚した為、今でも夫婦仲は冷え切っていた。
文造は、終戦までフィリピンで事業をやっていたが、一文無しになって帰国し、杢衛に拾われたとも話す。
金田一はその後、古林が峯子と何か揉めているのを見掛ける。峯子と別れた古林と話す。

金田一「大したもんですねえ。あそこまでするには宮田さんも随分苦労が多かったでしょう」
文造に工場を見せてもらった金田一は、文造のことを誉めるが、
古林「人間、欲と二人連れだったら誰だってやりますがね」
金田一「そんなもんですかね」
古林「あの文造ってのはとんでもない黒鼠でねえ、杢衛さんに取り入って、あっという間に矢部建材の専務サマだ。知ってますか? コレ(小指を立てて)まで囲ってる。ああいうのに限って腹の中で何考えてるか分かったモンじゃない。杢衛さんが死んで一番得をしたのは誰だと思います?」
金田一「さあ?」 古林「たよりねえ探偵さんだなぁ」 こういう衒わない、トホホな感じが金田一の魅力だよね。
古林「一番得をしたのはあいつだよ。慎一郎は浮世離れしてるし、うかうかしてると矢部建材はそのうち、宮田建材と看板塗り替えちまうぜ、きっと」
(中国)大陸から尾羽打ち枯らして引き揚げてきた古林は、とかくひがみっぽくなっていた。演じるのは松山照夫さんで、しっかりした芝居を見せる。この作品の成功は、やはり、こういう脇役の充実ぶりにあるといって良い。
なお、23年前に慎一郎の弟・英二が殺された時、彼はその死体の発見者だったのだが、英二が鍾乳洞へ入ろうとするのに行き合わせて、言葉を交わしたと言い、その時引き止めておけば、と今でも悔やんでいるとも話す。
日和警部たちの捜索にも関わらず、君江の行方はわからない。金田一は彼女は絶対に出てこないだろうと日和警部に仄めかす。
しかし、

ニコライ神父と信者の老婆が教会から出てくると、

鐘楼の上に、君江らしい黒いベールを被った姿が……

神父が急いで鐘楼へ上がるが、君江は別の入り口から下へ降りてすたすたと冬枯れの林の中へ消えていった……。
この辺の描写は実に雰囲気があって、一流のゴシックホラー顔負けの怖さである。
しかし、神父と老婆がずーっと下で見張りをしていたら、彼女、降りられなかったんじゃないかと思うが……。

日和警部からその知らせを聞き、金田一は驚く。
金田一「そんな筈はないんだ……」
また、母親の出現を金田一から聞かされたマリも「そんな……」と絶句する。
金田一「そんな筈はないと仰りたいんですか? 鮎川さん、何か仰りたいことはございませんか? 打ち明けてくだされば、お力になれると思うんです」
何か深い考えがあってこの町へ来たらしいマリに金田一は水を向けるが、マリは容易に心を開かない。

金田一は、慎一郎が絵を描いているアトリエへ入り、23年前の事件について色々と聞く。
その中で、慎一郎はさっきの古林と金田一の会話がふと耳に入ったが、古林が嘘を言っていると教える。23年前のあの夜、慎一郎はそのアトリエに閉じ込められていたのだが、その窓からは鍾乳洞の入り口がはっきり見え、彼は英二が入っていくのも目撃しているのだが、古林が証言したような、その前に古林と英二が会ったと言う事実は無かったと言うのだ。
金田一は興奮して、
「僕は23年前の事件を徹底的に調べました。あなたの弟さん殺したのは男です。肺を突き破るほど鍾乳石を突き刺せる力は女にはありませんからね。ところが関係者には全部アリバイがある。今のあなたの一言で、古林のアリバイは吹っ飛んだんですよ!」
俄然、23年前の事件について古林の容疑が濃くなるが、鍾乳洞を捜索していた警察と金田一は、その中で鍾乳石で刺し殺された古林の死体を発見する……。
また、そこに居合わせた文造の証言で、古林は君江と思しき黒衣の女性に殺されたらしい。
金田一「そんな筈はない。どこかが違う。何かが間違ってるんだ!」 頭を掻き毟る金田一のアップで「つづく」のだった。