第2話「タッコング大逆襲」(1971年4月9日)
一応、第1話の続編であるが、ストーリー的なつながりは特にない。
冒頭、新たに加入した郷の実力を試すとともに、隊員たちとの親睦を深める意味も込めて、全員で剣道の練習試合を行っているMATメンバー。
だが、もともと並外れた身体能力を持っているところに、ウルトラマンと合体することでさらなる飛躍を遂げた郷の前には、MATの猛者たちも全く歯が立たない。

南「どうした、上野、お前それでもMATの一員か?」
上野「ちきしょう」
南「郷は新入生だぞ」
上野「強いな、こいつ」
南「馬鹿言え、郷は今日初めて竹刀を手にしたんだぞ」
と、二人の会話を聞いていた丘ユリ子姫が、

丘「私がお相手します」
静かに申し出て、手ぬぐいを頭に巻き始める。
前回も書いたけど、やっぱり丘隊員はロングヘアの方が断然良いよね。
上野「丘隊員は4段の腕前だ。俺に勝ったようにはいかんぞ」

白い防具をつけ、うなじから栗色の髪を垂らしたところは、まるっきり、「リアルはいからさん」と言った趣であった。
「いやーっ、いやーっ、はぁああっ」などと、腰が抜けるようなトホホな気合を発していた郷だったが、あっさり丘隊員を負かしてしまう。
丘「はじめて竹刀を持ったというのは嘘ね」
郷「本当です」

続いて、柔道の練習試合。
ここでもちゃんと丘隊員が柔道着を着て参加しているのが嬉しいのです。
南隊員に投げられるが、空中で回転して見事に着地する郷。

その、ほとんど人間離れした動きを目の当たりにして、隊員たちは驚きのあまり声も出ない。

郷(全く負ける気がしない……そうか、俺はウルトラマンなんだ。ウルトラマンとしての超能力が俺の力になってるんだ)
それに気付いた郷、ウルトラマンの力を自分自身の力と同一視して、自分は特別な人間なんだと、その心に万能感に似た自信を生じさせる。
ひいてはそれが驕りとなり、後のトラブルにつながってしまうのだが……。
ひときわプライドの高い岸田は、ならばと射撃の勝負を挑む。

無論、射撃技術においても、郷は機械のように正確に的を射抜いて岸田隊員を圧倒する。

加藤「テストの結果、郷隊員は全ての面において相当な実力を持っている。私の目に狂いはなかったわけだ」
会心の笑みを浮かべ、改めて郷を激励する加藤隊長。

その後、海上の石油プラントが爆発炎上し、

真下の海中から、前回登場したタッコングが急浮上するという事件が起きる。
MATは直ちに出撃するが、タッコングは攻撃されるとすぐに海中に潜って逃げてしまうので、なかなか決定打を与えられない。

南「奴は東京湾を棲み家にし始めた。MATサブで海底攻撃を加えるべきだと思う」
六角形のテーブルを囲んで、作戦会議を開いているメンバー。
岸田「もし攻撃に失敗したらどうなる」
南「じゃあ、このままほうっておけって言うのか」
岸田「しかし、確実に撃退できる可能性がない限り、海底まで追う必要はないと思う」
南は、潜航艇による積極的攻撃策を提案するが、慎重な岸田隊員が反対する。
が、結局、加藤隊長の鶴の一声で、二隻のMATサブによる挟撃作戦が行われることになる。
加藤「分かったな、郷」
郷「分かりました、安心して見ていて下さい」
郷の口調には、早くも敵を……任務を甘く見ている節が見られた。
上野「こいつ、いやに自信満々だな」
加藤「作戦はあくまで冷静沈着に、協力してな」
新入りの郷がいるので、加藤隊長はことさらに念を押してから部下を送り出す。
南と郷、岸田と上野がペアになって二隻のMATサブに乗り込み、MAT海底基地から出航、海底近くを進んで、タッコングの所在地を探索する。
途中で別行動となるが、

それぞれのメカに備え付けられた水中カメラで、本部の加藤隊長たちも海底の様子が手に取るように見えるのである。
これは、さすがにハメコミ画面じゃない……よね?

意味もなくユリ子姫の画像を貼ってしまう管理人。
やがて、郷たちの1号が付近にタッコングが潜んでいることを探知する。

郷「南隊員、見つけ次第やっつけちゃいましょうよ」
南「作戦は、あくまで忠実に守るんだ。俺たちだけでやって失敗したらどうするんだ」
郷「はぁ……」
南にたしなめられて、郷はいかにも不満そうに引き下がる。

岩の間を縫って、潜伏しているタッコングに近付くMATサブ1号、と言う素晴らしい特撮。
南は、あくまで2号が到着するのを待つべきだと言うが、自信過剰に陥っている郷は、その命令も無視していきなり魚雷発射レバーを引いてしまう。
が、何の策もなく攻撃したところで怪獣を倒せる筈もなく……まぁ、仮に作戦通りに攻撃していたとしてもたぶん、倒せてなかったと思うが……、逆に反撃されてMATサブが激しく海底に叩きつけられ、南が頭と腕を負傷してしまう。
郷「よし、こうなったらウルトラマンになってやる!」
南が気絶したのをさいわい、急いで変身しようと目をつぶって両手を広げる郷であったが、何故か何も起きない。
タッコングは、MATサブにはそれ以上興味を持たず、さっさと何処かへ行ってしまったので、郷たちはなんとか生還することが出来た。
基地に戻った岸田たちが、郷たちをこっぴどく非難したのは言うまでもない。

岸田「どうして俺たちが到着するのを待てなかったんだ。勝手に攻撃して、その上逃がすなんてなってないぞ」
南「すまん」
ソガ隊員なみに優しい南隊員は、あえて郷がやったとは言わず、責任を自分で被ろうとする。
……なんてことはどうでもよくて、管理人の目は、ユリ子お姉様の股間に釘付け。
南「1号の艇長は俺だ。俺が撃てといったから郷が撃ったんだ」
郷「ほんと、勘弁してくださいよ、パイセ~ン、お陰で俺まで悪者扱いじゃないすか~」 南(てめえ……)
じゃなくて、
郷「そんな……」
南「お前は黙ってろ! 隊長、全て私のミスです」
偽りまで言って、郷を庇おうとする南隊員の優しさに、全米が泣いたと言う。
ここで、郷が自ら非を認めて謝罪していればまだどうにかなったかも知れないが、それより先に、加藤隊長がテープの再生ボタンを押し、MATサブの中でのやりとりをみんなに聞かせ、命令を無視したのが紛れもなく郷であることを暴露してしまう。
幸か不幸か、タッコングに殴られたショックで録音が停まったので、郷がウルトラマンであることまではバレなかったが。

郷「すみません」
加藤「坂田さんが君の入隊を許してくれた時、私は正直、心の中で手を合わせた。それほど君が欲しかったんだ。だがどうやら私の目は狂っていたようだ。君は作戦を無視して勝手な行動を取った。従って隊員としての資格はない。直ちにやめてもらう」
郷「隊長!」
加藤「坂田さんとこへ帰りたまえ」
加藤隊長が下したのは、いきなりのクビと言う、極めて厳しい処分であった。

南「隊長、郷は初めての出撃で気が動転していたんです。誰にでもあるミスじゃないですか」
加藤「郷の取った行動はミスではない、身勝手な思い上がりだ!」
郷「……」
なおも南隊員が郷をとりなそうとするが、加藤隊長は厳しい表情を崩さず、郷の行動を断罪する。
郷「わかりました。……それで、給料は日割りで貰えるんでしょうか?」
じゃなくて、
郷「わかりました、坂田さんのところに帰ります」
CM後、アキが勤めている服飾店の前を私服の郷が通り過ぎ、気付いたアキは急いで追いかける。

郷「俺、MATやめてきちゃったよ」
アキ「ほんと」
郷「うん」
アキ「……」
郷「アキちゃんまでがっかりすることないだろ」
アキ「うん、半分はがっかりだけど、後の半分は嬉しいの。だって郷さんが帰ってきたんですもの」
郷「『帰ってきたウルトラマン』だけに?」 アキ「うるせえ」
坂田のところに戻ってきた郷、サバサバした表情で、流星2号を作りませうと提案するが、坂田の態度は予想に反して別人のように冷たかった。

郷「坂田さん、一体どうしたんです。マシンのことになると夢中になったあんたが」
坂田「俺はもう、お前と組むつもりはないんだよ」
郷「なんですって」
坂田「これから5年としてお前は一体いくつになるかな。レーサーとしてはトウが立ちすぎてる。組むんなら、俺はもっと若い奴と組むね」
郷「それ、ほんとうですか、坂田さん?」
坂田の冷酷な物言いに、声を震わせる郷。

坂田「ふっ、鈍いなぁ、お前も、その気がないんならなんでお前をMATへなんかにやるか」
郷「ちくしょう!」
タバコを吹かしながら嘲るように笑う坂田に、郷は罵声を吐いて事務所を飛び出す。
アキ「ひどいわ兄さん、あんまりよ」
アキが慌てて追いかけようとするが、

坂田「アキ!」
アキ「……」
坂田「今、一番郷に必要なのは一人で考えることだ」
アキ「……」
無論、坂田は本心でそんなことを言ったのではなく、あえて厳しい言葉を掛けて突き放すことで、郷をMATに復帰させようとしているのだ。
そして、兄のそんな気持ちが分からぬアキではない。
岸壁の上に寝転がり、ウルトラマンごっこをして遊んでいる子供たちの喚声を遠くに聞きながら、ひとりで考え込んでいる郷。

郷(俺は確かに思い上がっていた。ウルトラマンであることを誇らしく振り回そうとして……その前に郷秀樹として全力を尽くし努力しなければならなかったんだ)
その時、郷の鋭敏な聴覚が、海底の石油パイプラインを噛み砕くタッコングの暗躍をキャッチする。
起き上がった郷の顔は、既に戦士の顔に戻っていた。

川崎のコンビナート上を偵察飛行するMATアロー。
いやぁ、溜息が出るほど精巧なミニチュアセットである。
ちゃんと煙突から煙まで出てる……。
案の定、タッコングはMATアローの直下に出現し、あっさりコンビナートに上陸してしまう。
加藤隊長と丘隊員、南隊員は地上からコンビナートに入るが、地下の機関室に作業員が閉じ込められていると聞いて、南隊員が怪我をおして救出に向かう。

だが、頭上ではタッコングが暴れ回っており、機関室にも火と煙が回ってきて、南隊員は作業員ともども窒息死しそうになる。
そこへ颯爽と駆けつけたのが、復活した郷であった。

丘「隊長、郷さんです」
加藤「必ず来ると思った」
やはり自分の目に狂いはなかったと、会心の笑みを漏らす加藤隊長。
加藤隊長も、本気で郷をクビにするつもりはなく、あえて厳しい態度で臨んだのは、郷自らに立ち直って欲しかったからなのだ。
ま、そりゃそうだよね。
あのくらいのことでクビになるんだったら、42話で暴走して村に空爆しまくった岸田隊員なんか、クビどころか銃殺刑にされてもおかしくないもんね。
それはともかく、郷は果敢に機関室に降りて、作業員を一人ずつ背負って救出していく。
その死に物狂いの苦労が結実したのか、漸く郷はウルトラマンに変身することが出来た。

燃え盛るコンビナートの奥で、タッコングと殴り合うウルトラマン。
しかし、今回はセットがあまりに立派なので、むしろウルトラマンとタッコングの方が背景みたいな扱いになってるなぁ。
やっぱり、コンビナートの上で戦わせるのは無理があったか。

ウルトラマンとタッコングの戦いを見上げる丘隊員。
二人の周りには他の作業員や南隊員の無事な姿も見えるので、郷がウルトラマンに変身すると同時に、彼らを助け出したのだろう。
スペシウム光線を受け、タッコングは意外と見せ場のないまま倒される。
ラスト、坂田の自動車工場にMATビハイクルが乗り付ける。

加藤「今日はお礼に伺いました、あなたのところから戻った郷は、立派に立ち直ってました」

坂田「そりゃ良かった。ところで、私の方からもお願いがあるんですが」
加藤「ほう、なんでしょうか」
坂田「休暇の時で結構です。郷を貸してください。流星2号を作りたいんです」
郷「坂田さん、本当ですか、それ」
坂田「うん、俺たちの夢なんだ、大事に育てよう」
坂田の提案に、思わず涙ぐむ郷であった。
郷「じゃあ、僕は一体いつ休めばいいんですかぁ!?」 アキ(気の毒に……)
じゃなくて、
坂田「馬鹿、泣く奴があるか」
郷「だって嬉しいんだ、嬉しいんですよ」
郷たちを見送った後、アキは一番星を見付けたからと言って、次郎にお小遣いを上げる。

坂田「幸せなんだなぁ、アキは」
アキ「あらぁ、どうして?」
坂田「一番星は幸せな人間にしか見えないと言われてるんだ」(嘘をつくな、嘘を)
うっとりした目で西の夕空を見上げるアキであったが、

宵の明星のそばに、郷の晴れやかな笑顔も浮かび上がるのだった。
郷「はっはっはっ……って、あれ、俺、死んだのぉーっ?」 以上、子供向け特撮ドラマとは思えないハードな人間模様が展開する佳作であった。
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