第38回「戦慄 フランケンシュタインの復活」(1979年3月23日)

倉持「うーはっはっはっはっ、遂に完成したぞ、恐獣フランケン、今に見てるが良い、21世紀の科学者ども目、ワシの研究に反対した者に復讐してやるわっ、うはははははっ……」
冒頭から、怪しげな洋館の一室で、怪しげな稲光の轟く中、怪しげな男が狂ったように喚いていると言う、「コセイドン」らしからぬ、いかさま、ハマー・フィルムの怪奇映画のような幕開け。
もっとも、これは、劇中では後半に出てくるシーンを別テイクで頭に持ってきているだけで、OP後のシーンとは時間的な繋がりはない。
ついで、寝台に横たわる不気味な怪物がむっくらと起き上がり、
フランケン(……やべぇ、今日、仕事だった) OP後、一転して華やかな夜の東京の様子が映し出され、こちらも普段の「コセイドン」とは程遠い雰囲気。

そして、ジープにアルタシヤとビックラジィーを乗せてドライブを楽しんでいると言う、これまた滅多に見られないリラックスしたオフタイムを過ごすゴウの姿が映し出される。
と言うか、これが劇中唯一、ゴウとアルタシヤがデートらしきことをしているシーンなんだよね。ビックラジィーと言うお邪魔虫はいるけれど。

ところで、談笑するアルタシヤの左の薬指に、指輪が光っているのだが、アルタシヤ、いつの間に結婚したのだろうか?
今まで、アルタシヤが指輪してるの見たことなかったと思うのだが……。
撮影中、村野さんが結婚(or婚約)したのだろうか? しかし、撮影の際には外すよね、普通は。
……で、いま、ちょっと37話と36話をチェックして見たのだが、良く考えたら、アルタシヤは仕事中は手袋を嵌めているので、指輪をつけているかどうか分からないのだった。
そこで正式に隊員になる前の28話および、私服姿が見られる30話まで遡ってチェックすると、やはり指輪はつけていない。
つまり、31話からこの38話までの間に結婚されたというのことなのか?
あるいは、最初から既婚者だったが、いつも撮影中は外しており、たまたまこの38話だけ外すのを忘れていたとか?
まぁ、そもそも、薬指にしてるからって、結婚指輪とは限らないんだけどね。
話が横道に逸れたが、ゴウの車が人気のない路地に差し掛かったところ、道路にばら撒かれていたマキビシのようなものでタイヤがパンクしてしまう。

ゴウ「誰だ、こんなことをするのは、ちくしょう」
アルタシヤ「どうなることかと思ったわ」
アルタシヤの貴重なジーンズ姿なのだが、夜のシーンでろくに見えないのが口惜しい。
ゴウ、それを、よくある忍者の悪戯(註1)だろうと軽視して、アルタシヤをそこに残して近くの自動車修理工場へ向かって歩き出すが、それが痛恨の判断ミスとなってしまう。
(註1……ねえよ)
と言うのも、ゴウが車から数メートル離れたところで、

闇に潜んでいた銀の仮面をつけた怪人が現れ、アルタシヤを捕まえ、ナイフで斬りつけて来たからだ!
ゴウがなんとかその怪人を追い払うが、アルタシヤは逃げようとした際に右太腿を深々と抉られ、地面に仰向けに倒れて、呻きながら大量の血を流す。

バンノ「バカモン、お前がついていながら何たることだ!」
その後、バンノ隊長がいつになく険しい顔でゴウの軽率な行動を叱っている。

ゴウ「すいません」
ゴウも、いつになく沈んだ面持ちで言葉すくなに謝る。
バンノ「今は我々と一緒に働いているとはいえ、アルタシヤは大切な客人なんだぞ!」

テツ「隊長、相手は東京中を騒がしてる誘拐魔なんです、そんなにゴウを責めなくたって」
モリィ「ゴウが悪い訳じゃありませんよ」
見兼ねて、テツとモリィがゴウを庇い、とりなすが、
バンノ「そんなこたぁわかったとる! だが、俺はアルタシヤの足が永久にダメになってしまうことを考えるとだな……」
バンノが思わず漏らした言葉に、ゴウとテツの顔が一気に青褪める。

ゴウ「なんですって」
テツ「ほんとなんですか?」
バンノ「言っちまったか……いや、まぁその、はっきりした結果が出たわけではないんだが、アルタシヤの足は永久に動かなくなる可能性があるらしいんだ」
腕を組んで沈痛な顔付きでアルタシヤの怪我が存外に重いことを打ち明けるバンノ。
バンノは年齢的にも立場的にも、アルタシヤを実の娘……とまでは行かないまでも、身寄りのない姪を預かっているような気持ちでいて、それで思わずゴウを怒鳴りつけてしまったのだろう。

アルタシヤ「助けて、ゴウ……」
ビックラジィー「先ほどから、姫の口にする言葉はあればかりじゃ」
ゴウ(俺がドライブに誘いさえしなければ、こんなことには……)
病室のベッドに横たわり、うわごとのように同じ言葉を繰り返すアルタシヤの痛ましい姿に、ゴウは慄然と立ち尽くし、心の中で己の迂闊さを責めるのだった。
ゴウ「俺はこの手で犯人を捕まえて見せる」
ゴウは正体のないアルタシヤに向かって誓うと、早速、ビックラジィーと共に誘拐魔探しを開始する。
テツの言う誘拐魔については、それ以上、具体的な説明はなく、どれくらいの人間が被害に遭っているのか不明だが、恐らく、倉持博士が人造人間の製造・研究の為に狩り集めているものと考えられる。

21世紀の住宅街を、ゴウとビックラジィーの乗ったジープが駆ける、これまた珍しいシーン。
誘拐魔の手掛かりは、事件の際、猛スピードで走り去った車の車種・色だけで、広い東京でそれを探し出すのはほとんど不可能と思われたが、捜査開始から三日後、たまたま擦れ違った車がそれだと、ビックラジィーが気付く。
ゴウは抜かりなくその車を追跡し、遂に、それを運転していた銀仮面の怪人が、倉持研究所と言う、昔の特撮に良く出てくる、たくさんの柱のあるクリーム色の建物に入っていくのを見届ける。

ゴウは単身、その内部に潜入し、あれこれ調べまわっていたが、いきなり出て来たフランケンシュタイン(の怪物)風の化け物に襲われる。
それは、銀仮面こと倉持博士が作ったフランケン1号と言う人造人間なのだが、その体に、誘拐された女性(男も混じってるのかも知れないが、劇中で倉持博士が狙うのは女性だけである)のパーツが使われているのかと思うと、あまり良い気持ちはしない。

倉持「ふふふ、フランケン1号、このワシの計画に水を差した、その男を絞め殺せ!」
その凄まじいパワーに手も足も出ないゴウであったが、そこへテツとモリィが救援に駆けつけたので、なんとか命拾いする。
三人がフランケン1号と格闘している隙に、倉持博士はさっさと小型タイムマシンに乗り込み、離陸する。
フランケン1号「待ってくれぇ! 待って下さい!」
倉持「死ねえっ!」

自分も連れて行ってくれと嘆願するフランケン1号を、自らの手で撃ち殺してしまう、意味不明の行動に出る倉持博士であった。
やっぱり、バカなのかな……。
倉持博士はそのまま何処かへ飛び去ってしまう。
その後の調べで、怪人の正体が世界的な解剖学者として知られた倉持博士だということが判明する。
驚いたことに、ここで早くもAパートが終わってしまう。
アルタシヤを欠くコセイドン隊は、白亜紀のある地区で大量の恐竜の死体が発見されたとの知らせを受け、白亜紀へ急行する。
確かに、その地域には、既に白骨化した恐竜の死体や、角を切り取られた恐竜の死体などが散乱し、さながら地獄絵図のような様相を呈していた。

バンノ「それぞれの恐竜の最も特徴的な部分ばかりが見当たらないという訳か」
ゴウたちの撮って来た写真を見ながら、渋い顔でつぶやくバンノ。
テツ「ええ、我々の調査区域でも無くなってる部分をあわせると、ちょうど一頭分の新しい恐竜が出来る計算になります」
バンノ「なにぃ?」
ゴウ「まさか、あの、倉持博士が……」
ここで急に白亜紀の世界が荒れ狂う嵐の夜に早変わりし、冒頭に出て来た洋館が映し出される。
そう、意外にも、洋館は21世紀ではなく、白亜紀に存在している建物だったのだ。
倉持「神よ、新たなる命を与えたまえ、うう……この人造恐獣フランケンに、新たなる命を!」
時折、激しい雷光に切り裂かれる闇の中、銀仮面の下から現われた倉持博士が、何かに憑かれたようなイッちゃった目で神に祈りを捧げていた。

洋館の尖塔は、特殊な形をした避雷針になっていて、落ちてくる稲妻をそこで受け、人造恐獣フランケンなる怪物の生命エネルギーに転化する仕組みになっていた。
倉持「いざ、フランケン、誕生の時だ!」
やがて一際大きな雷が尖塔に落ちたかと思うと、その莫大な電気エネルギーが寝台に横たわるフランケンの体に流れ込み、激しくスパークを起こし、その赤い二つの目に生命の光が宿る。
ここが、冒頭のフランケン誕生のシーンに繋がる訳なのだ。
もっとも、フランケン1号と違って、恐獣フランケンは倉持博士の持っているリモートコントロールで操られるだけの生物で、自我のようなものは持っていないようだ。
フランケン1号が人間から、恐獣フランケンが恐竜から作り出されていることにより生じた違いだろう。

それはさておき、倉持博士、寝起きのフランケンに、至近距離からいきなりバズーカ砲をぶっ放すという、高田純次みたいなことをする。フランケンの装甲強度を試したのである。
倉持「よし、プロテクターは万全だ。これでワシの研究を非難した21世紀の科学者を皆殺しにしてやるぞ!」
倉持博士の動機は、「復讐」らしいが、博士が具体的にどんな研究をしていたのか、どんな風に学界から追放されたのか、その辺が一切説明されていないので、いまひとつ共感出来ないのが難点である。
倉持博士の場合、今まで出て来た他のマッドなサイエンティストのように白亜紀に特別に思い入れがある訳ではなく、単に頑丈な肉体の素材となる恐竜の死体が欲しかったからこの時代にタイムスリップしただけらしい。
しかし、いくらフランケンが頑強でパワフルでも、白亜紀ならともかく、21世紀にはハイテク装備で固めた警察や自衛隊がいるだろうから、仮に21世紀へ戻れていたとしても、所期の成果を挙げられていたかどうかは、甚だしく疑問である。
恐竜を21世紀に連れ帰って見世物にして儲けようとした30話のサバタ博士と言い、どうしてマッドサイエンティストと言うのは、頭(成績)は良いのに、揃いも揃ってバカばっかりなのだろう?
だが、倉持博士のアジトは、あっという間にコセイドン隊に発見される。
何故なら、

原始林のど真ん中にこんなもんが建ってたら、目立って目立ってしょうがなかったからである!
ああ、ますます「倉持博士、底抜け一番のアホだった」説が真実味を増していく……。

徒歩で洋館に近付こうとしたゴウ、何の前触れもなく出て来たフランケンに襲われ、一方的に痛め付けられる。
テツが救援に駆けつけるが、全く歯が立たない。
不意打ちとはいえ、コセイドン隊の誇るツートップを圧倒してしまったフランケンの膂力は、確かにずば抜けたものがあった。

倉持「これくらいでよかろう、さあ、いよいよ21世紀へ旅立つぞ」
だが、倉持博士が二人のトドメを刺さなかった為、結局それが彼の命取りとなってしまう。
倉持とフランケンは仲良くタイムマシンの操縦席に乗り込み、21世紀へ戻ろうとするが、ゴウから知らせを受けたモリィ、ビックラジィーの妨害により、亜空間に入る前に叩き落されてしまう。
この辺の空中戦のミニチュアワークス、確かに見事ではあるのだが、もうこれまでに何度も見せられてきたものだし、無駄に長くてドラマ部分を圧迫しているだけのような気がするのである。
その後も、地上に降りて倉持たちを探すモリィとビックラジィーがフランケンに襲われるシーンとか、どうでもいいようなシーンが続き、最後はいつものようにゴウがコセイダーに変身して、フランケンとの一騎打ちになる。
テツとモリィ、フランケンを遠隔操作している倉持の身柄を押さえようとするが、
倉持「ワシの邪魔をするなーっ!」 二人を押し退け、物凄い形相で叫ぶ倉持博士。
はっきり言って、ただの操り人形に過ぎない恐獣フランケンより、博士の方がよっぽど怖い。
言い忘れていたが、倉持博士を演じるのは、毎度お馴染み、梅津栄さん。
フランケン、パワーはあるし、タフだし、部分的な再生能力も有している強敵だったが、色んな恐竜のパーツを組み合わせて作られたというキモの設定は全く生かされておらず、

そのうち逆転されて、コセイダーにパイルドライバーのような技で何度も脳天を地面に打ち付けられて、惨めな姿を晒す。
そしてあえなく爆死。

倉持「ああーっ! ワシの、フランケン、おおお……」
茫然とする倉持博士、

倉持「ああーっ! うんがーっ! うう、おおーっ!」
丘の上で、「ヤングマン」の振り付けみたいな珍妙な動きをしながら奇声を発していたが、遂にそこから転がり落ちる。

倉持「ああっ、ああっ、はっはっはっはっ、あーああっ、ああーっ!」
そして狂ったように……と言うより、完全に発狂したのだろう、ケタケタと笑ったかと思うと泣き叫び、あらん限りの狂態を演じて見せるのだった。
しかし、自分の手で作った人造生物と言う点なら、フランケン1号も同じだと思うのだが、一方は自らの手で特に理由もなく殺して平気な顔をしておいて、他方はその死を発狂するばかりに嘆き悲しむというのは、いささか釣り合いが取れていないように思えるのだが……。
それにしても、最後までコセイダーに殺されず、生きたまま捕まった悪役と言うのは、「コセイドン」ではこれが初めてになるんじゃないかなぁ?

ゴウ「いたたたた、いてえなぁ、もうっ! 丁寧にやってくれよ」
モリィ「アルタシヤみたいに上手く行かないよ」
戦いを終えてコセイドン号に戻った三人、仲良くフランケンにメタメタにされた顔を並べて、お互いの傷の手当てをしている。
ゴウ「アルタシヤ、どうしたかな」
モリィ「あ、どうしたのかな」
テツ「もう結果が出てる筈だがな」

バンノ「おい、実はそのアルタシヤのことなんだが……あ、まあ、これを見ろ」
不意に、バンノが何やら仔細ありげに切り出すが、説明の変わりに操作盤のボタンをひとつ押す。

アルタシヤ「いいこと、良く見てて」
と、モニターに21世紀のアルタシヤの笑顔が映し出され、

アルタシヤ「うふふ、うふふふっ!」
嬉しそうに笑いながら、その場でフィギュアスケートの選手のように、かろやかに一回転して見せるのだった。
そう、彼らの心配は杞憂に終わり、アルタシヤの足はすっかり元通りに回復したのだ。
それにしても、もうちょっと大きくて鮮明な映像だったら、ふわっと浮き上がったスカートの奥に、白いもやもやしたもの(註2)が見れたかもしれないのにと、そこがとても残念である。
(註2……我々はそれを、パンドラの箱の底に残った「希望」と呼んでいる)
それを見て、ゴウたちが大喜びしたのは言うまでもない。
とりわけ、責任を感じていたゴウは、肩の荷が下りたようにホッとしたことだろう。
以上、梅津さんの熱演とアルタシヤの私服姿以外、あまり見るべきところのない凡作であったが、これもシリーズ後半の中ではマシな方である。
今回のストーリーがいまいち弾けなかったのは、アルタシヤの怪我の回復と、白亜紀での探索&戦いとの間に、直接の関係がなかったからではあるまいか。
たとえば、アルタシヤが毒を注射され、それを治す為には倉持博士の持っている解毒剤を手に入れねばならないとか言う設定だったら、ゴウたちも俄然やる気が出たことだろう。
もっとも、そうなればそうなったで、アルタシヤが毒蛇に噛まれた17話とそっくり同じになってしまうのだけれども。
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