第41回「人間大砲コセイダー 発進せよ」(1979年4月13日)
ちなみに、この41話から、番組の正式タイトルが
「恐竜戦隊コセイドン 戦え 人間大砲コセイダー」となるのだが、長ったらしいし、ややこしいので、当ブログでは引き続き「恐竜戦隊コセイドン」と表記することにした。

21世紀の東京、複座式の輸送機FX-7が、下部に巨大な爆弾のようなものをぶら下げて、科学省兵器格納基地へ向かって飛んでいる。
だが、突然激しく機体が揺れ動きだし、操縦不能になったかと思うと、FX-7は空中で忽然と姿を消してしまう。あたかも、次元の裂け目に吸い込まれたかのように。

バンノ「だいたいこのあたりらしい」
テツ「何か突発事故でも?」
事件の知らせを受け、コセイドン隊のバンノが、機体の消失地点に赤いチップのようなものを置いて説明している。
このプラスティック製の地図のデザインと言い、赤いチップの質感と言い、いかにも近未来と言う感じがして好きである。
本筋には関係ないが、この番組の美術やプロップのセンスには、毎回感服させられる。

バンノ「それがなぁ、マザーの計算によると、その疑似空間に吸い込まれたらしいんだ」
モリィ「疑似空間ってえ?」
テツ「ああ、人工的に作られた亜空間だ」
科学省からもFX-7の捜索依頼を受けていると話すバンノに、
ゴウ「でも、たかが科学省所属の飛行機が消えたくらいで、随分大袈裟ですね」

バンノ「バカモン! FX-7はただの飛行機じゃないんだ。実はな、完成したばかりのエンゼルを搭載してるんだ」
ゴウ「エンゼル?」
アルタシヤ「なんです、それ」
バンノ「最近、科学省の技術陣が開発に成功したスーパーウェポンでな、これ一発で地球上の半分近くの人間を殺すことが出来るんだ。科学省の方では、実に素晴らしい兵器だと自画自賛しておるんだ」

ゴウ「素晴らしい?」
バンノの言葉に、露骨に不愉快そうな顔になるゴウ。

バンノ「この兵器が万一、悪い奴の手に渡ったら大変なことになる」
バンノも険しい顔で応じ、ただちにコセイドン隊を出動させる。
亜空間の中を航行中のコセイドン号。

ゴウ「何が素晴らしい兵器だ。エンゼルか、平和の天使の名が聞いて、呆れますよ」
アルタシヤ「ほんとね、一発で地球上の半分近くの人間が殺されてしまうなんて考えただけでもゾッとするわ」
操縦しながら、ゴウは、エンゼルという悪魔のような兵器について嫌悪感をあらわにし、アルタシヤも同調する。
しかし、人口の半分を殺してしまうと言うのは、具体的にどんな種類の兵器なのだろう? 劇中では、核兵器とも生物兵器とも分からずじまいなのだが、核兵器だと、要するに地表の半分を覆い尽くすほどの大爆発を起こすことになり、あまりに非現実的である。と言うことは、37話にも出てきたF2と同じく、細菌兵器である可能性が高い。
劇中における21世紀の日本は、次々と恐ろしい兵器を作り出しては悪人に盗まれている、極めて物騒な国だと、諸外国から見られているのではないだろうか。
アルタシヤ「隊長、R-7、K-3の方向に飛行物体です!」
バンノ「なにぃ」
と、不意に、レーダーを見ていたアルタシヤが緊迫した声を上げる。
コセイドン号が接近すると、その姿がはっきりする。
果たしてそれはFX-7であった。正確には、正体不明の飛行機がネットでFX-7を機体の下部にぶら下げて飛んでいるのだった。
要するに、FX-7はその飛行機にエンゼルごと拿捕されてしまった訳である。
ほどなく謎の飛行機は亜空間から三次元にワープアウトするが、例によってそこはコセイドン隊のホームグラウンド、白亜紀の時代だった。
当然、コセイドン号も白亜紀に実体化してなおも追跡する。

バンノ「FX-7の乗務員、聞こえるか、我々はコセイドン隊だ!」
パイロット「こちらFX-7、どうぞ」
パンノ「そっちの様子はどうだ?」
パイロット「疑似空間に吸い込まれた時のショックで副パイロットは死亡、ごふっごふっごふっ、自分もかなりの重傷です」
バンノ「操縦は出来るのか」
パイロット「はい、なんとか」
バンノが通信回線を開いて呼びかけると、さいわい、生き残ったパイロットが応答してきた。
バンノはパイロットと打ち合わせてから、ネットと謎の飛行機をつないでいるロープを撃って切り、FX-7を自由にする。
解放されたFX-7は、錐揉み回転しながら地上に激突しそうになるが、ぎりぎりでパイロットが機首を上げて回避する。
後は、謎の飛行機を撃墜するだけだったが、飛行機は攻撃を受けるとパッと姿を消してしまう。
亜空間に逃げたのではなく、基地に瞬間移動したらしい。
どっちにしても、コセイドン号と同等か、それ以上のハイテクを備えた侮りがたい相手だった。
パンノは、テキパキと指令を下し、ゴウとテツにファイタス1号で敵基地の捜索をさせ、モリィとビックラジィーには、ファイタス2号、ハクアス2号でFX-7の誘導をさせる。

バンノ「アルタシヤ、円盤を映したビデオテープをコンピューター分析器にかけるんだ」
アルタシヤ「はいっ」
モリィは、まずFX-7の高度を下げさせようとするが、FX-7、既にかなりのダメージを受けていて、細かい操縦が不可能になっていた。
さらに、
ビックラジィー「モリィ、大変じゃ、エンゼルがーっ! エンゼルが落ちる、落ちる」
ビックラジィーがけたたましい叫び声を放つ。
見れば、エンゼルを支えている四つのアームのひとつが外れ、極めて不安定な状態になっていた。
風圧で、今にもFX-7からもぎ取られそうであった。

バンノ「なにぃ、投下装置からエンゼルが外れかかってるだと?」
モリィ「そうなんです、FX-7の方も故障で、操縦できません」

緊急事態の発生に、思わず振り返るアルタシヤ。
バンノ「冗談じゃない、白亜紀が全滅してしまう」
バンノの脳裏に、落下したエンゼルが大爆発を起こすビジョンが浮かぶ。
と言うことは、やっぱり核兵器なのかなぁ?
ただ、普通はちゃんと安全装置が付いていて、落ちただけでは起爆しないようになってるものだけどね。
ゴウとテツは、直ちに付近のコロニーの住民を退避壕に避難させる。
テツ「こちらテツ、コロニーの住民も恐竜も続々退避壕に避難してます」
バンノ「ようし、わかった、しかしなぁ、
エンゼルの威力には退避壕など役に立たんぞ」
テツ「……あの、そう言うことは避難する前に言って貰えますか?」 
アルタシヤ「隊長、コンピューター分析の結果が分かりました。地球で作られたものですが、中央航空管理センターには登録されていません」
バンノ「なにぃ」
バンノはタイムマザーに、その情報から犯人を割り出してくれと依頼する。
バンノ「モリィ、ジイ、マグネットワイヤーを使ってFX-7を吊るし、一刻も早く安全な場所に下ろすんだ」

モリィたちは直ちにマグネットワイヤーを射出して、FX-7の両翼に固定させる。

ファイタス2号とハクアス2号が、ワイヤーでFX-7を吊るして飛んでいる繊細なミニチュアワーク。
だが、エンゼルの状態はますます不安定になり、そのままではどんな平坦な場所にも安全に降下させられそうになくなり、モリィたちも困り果てる。
さしものバンノも妙案が浮かばず、「モリィ、待て、そのまま、頑張るんだ!」と、役に立たないアドバイスを送ることしか出来ない。
一方、テツは急いでファイタス1号に引き返すと、一心不乱にキーボードを叩いてなにやら複雑な計算を始まる。

その数式がモニターに表示されるのだが、これがまた、いかにもそれらしい高等数学式なのがリアルで良い。
もっとも、手袋を嵌めたテツの手で、そんな複雑な数式を打ち込めるのだろうかと言う疑問が湧く。
テツが計算していたのは、例によって、人間大砲でFX-7の高度まで到達できるかと言う命題だった。
困ったらコセイダーに頼もうと言うは、いささか芸がないが、さしあたり、現下の状況では他に方策がないことも事実だった。
この辺の、(いわば)幼稚な変身ヒーロー万能路線は、第1クールの、ハードSF風味濃厚な、コセイダーに頼らずにタイムGメンのチームワークと人知で問題を解決していく作風とは雲泥の差である。
今回のエピソードも、第1クールならば、悪人(後述)を絡ませずに、単なる輸送中の事故にしておけば、エンゼルをどうやって無事に回収すればいいのか、バンノたちが知恵と勇気を絞って対処する、ソリッドシチュエーション的なSFドラマにすることも可能だったのではないだろうか。
それはともかく、テツに、コセイダーになってエンゼルを直接回収してくれと言われ、さすがのゴウも怖気づくが、テツに強く説得されて、遂に引き受ける。
一方、焦燥のバンノたちにマザーから連絡が入る。
強奪犯人は、武器密輸で指名手配中の実業家、キシダ・ゴウノスケだと言うのだ。

バンノ「キシダ・ゴウノスケ、聞いてるか? キシダ、答えろ!」
バンノが通信機でキシダに呼びかけると、直ちに反応があった。

キシダ「はっはっはっ、さすがはコセイドン隊、私のことを掴んだようですな」
バンノ「貴様、エンゼルを奪ってどうするつもりだったんだ?」
白亜紀の岩山の中に建設された秘密基地の奥深く、たくさんのサイボーグ兵士に守られて王侯気分を満喫しているキシダ・ゴウノスケ。
キシダ「決まってるでしょう。戦争したがっているものは、いつの時代にも、どこの国にもいるものです。その中で一番高くエンゼルを買ってくれる相手に売るつもりですよ」
バンノ「貴様、馬鹿なことはやめろ、エンゼルを使えば地球の歴史が変わるほどの大変な事態が起こるんだぞ!」

キシダ「そんなことは私の知ったことではありません、金にさえなるのなら私は自分の肉親だって売る男ですよ、はっはっはっはっ」
バンノが必死で訴えるが、倫理と良心を母親の胎内に置き忘れてきたような死の商人キシダには無意味だった。
もっとも、戦争したがってる国だって、そんな非現実な兵器など使い道がなく、買う奴はいないだろう。
むしろ、キシダ自身がそれを使うと脅して、国連や各国政府に金を要求する……と言うのが、エンゼルの一番有効な使い道ではないかと思うのだが。
キシダはまた、コセイドン隊の通信を傍受しているのでテツとゴウの計画も知っていると明かす。
それを聞いたバンノはテツに作戦を中止するよう命じるが、テツは構わず人間大砲を発射させる。

モリィの合図でFX-7のパイロットがエンゼルの投下装置を切り離し、それをコセイダーが見事に空中で受け止め、安全な場所に着地する。
キシダは、自慢のサイボーグ部隊でコセイダーからエンゼルを奪い取るつもりだったらしいが、

エンゼルを抱いて走るコセイダーに、サイボーグたちが豪快に銃を撃ちまくっているのはどうかと思う。
下手したらエンゼルが起爆して、キシダもろとも白亜紀が壊滅してしまうではないか。

その後、コセイダーとサイボーグ軍団との戦いになるが、キシダはコセイダーの力を見誤っていたようで、自慢のサイボーグ軍団もあえなくコセイダーに全滅させられてしまう。
キシダ、どうも、
ただのアホだったらしい。
ま、それ以上にアホなのは、エンゼルなどというキチガイ兵器を開発した科学省の技術者なのだが。

キシダ、あの飛行機で脱出しようとするが、待ち構えていたテツに撃墜され、死亡する。
この飛行機の離陸シーンとかも、実に素晴らしい。
さて、事件を無事解決して安堵の表情で21世紀へ帰還中のバンノだったが、

ビックラジィー「た、大変ですじゃ、エンゼルがなくなりましたぞ!」
バンノ「なにぃ?」
貨物室から戻ってきたビックラジィーの報告に、バンノが目玉をひん剥いて騒ぎ立てる。

それを聞いたテツとゴウが、「してやったり」と言う顔で互いの顔を見やる。
モリィ「隊長、エンゼルらしい物体が亜空間の渦に吸い込まれていきます」
パンノ「なにぃ」(今回、こればっかり)
慌ててモニターに映し出すが、もうどうすることも出来ず、手遅れであった。

テツ「エンゼルは消えたか」
ゴウ「あんな物騒な兵器は持って帰んないほうが世の中のためだ」
テツ「そのとおり、これでいいんだ」
二人の会話を聞いていたバンノ、にやりと笑って二人の前に立ち、
バンノ「そうか、分かったぞ、お前たちの仕業だな」
ゴウ「そういうことです」

バンノ「これはシンの分!」

バンノ「これはユリアの分!」
悪びれずに認める二人を、いきなり「北斗の拳」ごっこしながら殴り飛ばすバンノであったが、嘘である。
正解は、
バンノ「くぉんのやろぉーっ!」
でした。
バンノらしからぬ乱暴な態度であったが、これは、隊長として、勝手な行動を取った隊員へのケジメなのである。
無論、ゴウもテツも、殴られるくらいのことは覚悟の上での行為だった。

テツ「すいません、どんな罰でも受ける覚悟は出来てます」
ゴウ「俺もです」
本来なら、クビにされても文句は言えないところであったが、花も実もあるバンノは、
バンノ「エンゼルはコセイドンの故障が原因で永遠の時間の渦の中に消えた。科学省にはそう報告しとこう、いいな」 テツ「はい、わかりました」
ゴウ「隊長、ありがとうございました」
温情溢れる言葉で、あっさり不問に付すのだった。
ま、バンノ自身、そんな恐ろしい兵器に対する嫌悪感があって、本心では、ゴウたちの行為に快哉を叫びたい気持ちだったのではないだろうか。
しかし、そんな物騒な兵器を亜空間に放り出して大丈夫なのだろうか。いつまた、別の時代に漂着するとも知れず、かなり危険なようにも思えるのだが、恐らく、放り出す前にテツが絶対に起爆しないように細工をしておいたのだろう。
ラスト、救出されたFX-7のパイロットがバンノたちひとりひとりと笑顔で握手を交わすシーンで幕。
こうやって、ちゃんと脇役にも光を当ててやる気遣いが、この番組のトレビアンなところなのである。
以上、不満もあるが、シリーズ後半の中ではなかなかの力作であった。特にラストのバンノとゴウたちのやりとりは、ハードな第1クールのテイストが蘇ったようで嬉しかった。
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