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「エマニエルの美女」~江戸川乱歩の「化人幻戯」(画像復刻増補版) その1

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 ※今回の記事は、2016年の正月に公開した記事を加筆・再構成したものです。時節はずれとなりますが、あえて冒頭の挨拶などもそのまま再掲してあります。

 新年明けましておめでとうございます!

 ……なんで新年が明けておめでたいのだろう?(いきなり悩むなよ)

 旧年中は読者の皆様方には大変お世話になりました。

 今年もこの「読んでも全く頭が良くならない」ブログにお付き合いの程、宜しくお願い致します。

 さて、正月恒例、一発目のネタは「美女シリーズ」と昔から決まっているのです。
 (ほんとは12月初旬だというのに、お正月気分になってこんなリードを書いている管理人はかなりつらい)

 さて、今回取り上げるのは「エマニエルの美女」である。

 タイトルは勿論、1974年公開の「エマニエル夫人」シリーズから勝手に取ったものだ。

 原作の「化人幻戯」(けにんげんぎ)は昭和29~30年に書かれた長編である。乱歩作品としては、極めて珍しい本格ミステリー長編で、作品としての質は決して低くない。だが、戦前の作品に見られたような熱っぽさや妖しさが決定的に欠けていて(愛欲描写だけ妙に力が入っている)、傑作とは言い難い。複数のアリバイトリックや、密室トリックも盛り込まれているが、所詮、実作の上では、乱歩と本格ミステリーは水と油のように相性が悪いことを証明したに過ぎない。

 しかし、作者も自負しているように、確かにこの殺人の動機の特異性は認めねばなるまい。

 それに加えてヒロイン由美子のそれまでの乱歩作品には見出せない強烈な存在感が光っている。強いて言えば、「黒蜥蜴」の緑川夫人をより淫蕩にしたようなキャラクターである。

 前置きが長くなった。ドラマは1980年10月4日放送で、シリーズ第12弾。

 信じがたいことだが、この1ヵ月後には、13作目「魅せられた美女」が放送されてるんだよね。
 (更に言えば、その2ヵ月後には14作目が放送されている。ほとんど初期の「男はつらいよ」状態である)

 では参る。

 冒頭、早くも明智が波越を助手席に乗せて、自らハンドルを握ってある場所へ向かっている。

 明智の声「私と波越警部は妙な会合に招かれた。招待主は推理小説界の大御所・大河原義明、特別親密な間柄でもなかったが、相手が著名の作家だけに月に1度開かれる犯罪研究愛好会のゲストとして是非との招きを受けて断る訳には行かなかった……」

 波越「明智君、さっきから何ひとりでブツブツ言ってるの?」
 明智「いや、ちょっと……」

 車は、三浦半島の岬の上に建つ大河原の別宅に到着。

 
 既に、他のゲストは揃っており、テーブルには豪華な夕食が並べられていた。

 大河原「皆さん、名探偵・明智小五郎氏、名警部・波越さんの登場です」

 大河原が、妻・由美子(夏樹陽子)以下、参加者を二人に紹介して行く。

 ゲストとしては、

 
 姫田「日本の推理小説の中で世界に通用するのは大河原作品だけだと思ってます……って大河原先生が言ってました」

 若手評論家の姫田(中条きよし)、

 テレビでミステリードラマを多く手掛けているプロデューサーの讃岐に、犯罪心理学の福本教授、

 
 福本「私は犯罪の中に美学を見付け出すことに限りない楽しみを感じております」
 波越「明智くんも完全犯罪は一種の美学だと言ってますよ」
 明智「言ってませんが……」

 そして、

 
 大河原の助手・杉本を演じるのは、フォーリーブスの江木俊夫さん。

 
 そして、大河原の小説「悪の華」の映画で主役を務めた女優・山村弘子。

 演じるのは、そう、「シャリバン」のドクター・ポルターでお馴染み、吉岡ひとみさん。

 ちなみに、原作には大河原夫妻、姫田以外のキャラは出てこない。

 原作は助手の庄司(ドラマでは杉本に該当する)の視点で物語が始まるが、原作の大河原は元侯爵の資産家で、推理小説ファンではあるが、作家ではない。

 食事の後、グラスを片手に和やかに歓談するゲストたち。

 
 波越「『悪の華』ってあれは、面白かったですね。私はね、あの映画が始まった瞬間にね、これはあなたが犯人だなってばすぐ分かりましたよ、ま、職業的な勘って奴ですかなぁ、へっへへへへへっ」

 弘子を相手に自慢げに話した後、見る前に原作を3回読んだと言って、きっちり笑いを取る波越警部であった。

 
 明智はひとりテラスへ出て、月の光が美しい模様を作る海面を、いかにも好ましそうに眺めていた。

 と、由美子がめざとくやってきて、背中から声をかける。

 
 由美子「あまりお飲みになりませんのね」
 明智「あ、いえ、十分頂きました。素晴らしいお宅ですねえ」
 由美子「ここに住むと、とても東京に戻る気がしませんの……夜眠れないとあの岩場を歩くんですのよ。磯の香りがとっても新鮮で、人の世の悩みを忘れさせてくれます……」
 明智「奥さんのようなお美しい方にも悩みがおありなんですか」
 由美子「あら、あたしだって人間ですもの」

 親密そうに話す二人の姿を、姫田、杉本が気になる目付きで見ている。そしてそんな二人の様子を大河原が楽しそうに観察しているようであった。

 大河原「さあ、そろそろ皆さんに私のコレクションを見ていただきましょうか」
 讃岐「待ってました、いや、それを楽しみに来たんですから」

 ほどよいタイミングで、大河原がゲストたちを地下の犯罪コレクション室へ案内する。

 その途中、由美子が、柱にくっついているカマキリを見て異様なほど怯えるシーンがある。

 
 由美子は咄嗟にそばにいた明智にしがみつく。

 かわいそうなカマキリは、杉本に払い落とされて踏み潰される。合掌。

 姫田「どうしてこんなところにカマキリが?」
 大河原「由美子は大のカマキリ嫌いでしてね」

 なんてことのないシーンだが、これが後の重要な伏線になっているのだ。

 
 さて、地下室に保管・展示されている大河原自慢のコレクションだが、第3作「死刑台の美女」の宗方博士のトホホな処刑コレクションと大差のない品揃えであった。

 大河原「あれは人間の刺青です。明治の死刑囚の物です」
 大河原「これはフランスのギロチンです」
 大河原「これは魔女狩りの処刑台」
 大河原「これは日本のもので、逆さ吊りの股裂き台」
 大河原「これは隠れキリシタンのハリツケ柱」
 大河原「人間の皮膚を使ったスタンド、刺青が模様になっている」
 大河原「そしてこれが、パーフェクトガンダム(1/100)です!」

 次々と紹介される、おぞまくしも不気味な代物に、弘子は「気味悪い」と波越警部に抱き付く。

 他のゲストも、いちいち嘆声を上げているが、彼らは何度もこの家に招かれて何度もここに足を踏み入れてる筈なんだけどね。

 
 大河原「これは面白い拷問台です。この皮に水をかけて縛り付ける。乾くに従って段々首が絞まる。しまいには目の玉が飛び出す!」

 
 その夜は、ゲスト全員、大河原邸にお泊りすることになる。

 明智さんは、波越警部とツインの部屋をあてがわれる。

 くーくー寝息を立てて正体もなく眠りこけている波越警部が可愛い……。

 明智はなかなか寝付けず、やがて、上着を羽織って再びテラスへ出る。

 
 珍しくノーネクタイの明智さん。

 案の定というか、テラスから見下ろせる磯の上に、由美子夫人が美しい彫像のように立っていた。

 
 明智は、すぐ彼女のところへ降りて行く。

 由美子「あら、明智さん」
 明智「あまり夜が素晴らしいので神経が冴えましてね」

 由美子は、昼間のカマキリ騒動は、主人の大河原が自分を怖がらせようとわざと置いたものだと腹立たしげに断言する。

 大河原の中には、ある種のサディスティックな性質があると由美子は言う。

 由美子「なんだか怖くて……」
 明智「え、何が怖いんですか?」
 由美子「恐ろしいことが起こりそうな予感がするんです」

 翌日、波越警部が寝坊して最後に食卓に現れる。

 階上から弘子の弾くピアノの音が聞こえてくる。

 また、姫田の姿も見えなかったが、大河原は「散歩でしょう」と気にしていない。

 由美子「皆さん、コーヒーはサンデッキでどうぞ、波越警部もお食事お持ちしますから」

 
 由美子の提案で、みんなテラスへ移動する。爽やかな朝日の下、いかにも和やかな雰囲気であった。

 由美子「あらー、姫田さんじゃない?」
 大河原「あの服はそのようだね、彼はあの岬からの景色が一番だと言ってるからね」

 由美子の声に、みんなもなんとなく岬の方に視線を向ける。確かに、姫田らしき人物が、岬への小道を登っているのが小さく見えた。
 
 備え付けの望遠鏡から熱心に覗いていた由美子、「レンズが曇ったわ」と、夫にハンカチで拭かせる。

 どちらかの手が滑ったのか、その白いハンカチがひらひらと落ちて行く。

 その直後、

 
 由美子「様子がおかしいわ……あっ!」

 由美子の叫び声と共に、姫田の体が岬のてっぺんから宙へ投げ出される。そのまま海へ。

 当然、大騒動になるが、波越の知らせを受けた警察による捜索が行われ、割と簡単に姫田の死体が引き揚げられる。状況から見て、自殺としか考えられなかったが……。

 地元警察署の死体安置室で、姫田の死体を見下ろしている明智たち。

 地元のぼんくら刑事たちは、検視も済んでないのにインテリの自殺だろうと簡単に決め付けてしまう。

 
 だが、姫田の所持品の中に、奇妙な物が混ざっていた。白い鳥の羽根である。それを見た杉本の顔色が明らかに変わる。

 杉本「ああっ」
 明智「どうしました?」
 杉本「いや、その……」

 
 明智「やはり奥さんの予感が当たりましたね」
 由美子「私、怖い」

 その晩、大河原邸にて、姫田の自殺の原因はなんじゃらホイとみんなが話していると、

 明智「いえ、姫田さんは自殺じゃありません、誰かに殺されたんですぅ!」

 名探偵ならではの台詞を放つ明智さん。

 
 由美子「なんですって?」
 大河原「妙なことを言うね、明智君」
 讃岐「誰かが後ろから突き落としたとでも言うんですか?」
 大河原「加害者が居れば見えた筈だ」
 明智「仰るとおりです、あそこには誰も居ませんでした」
 大河原「加害者の居ない殺人事件?」
 弘子「どういう意味ですの?」
 明智「たぶん、何らかのトリックですよ」
 一同「たぶんーっ?」

 これっきり、明智さんは大河原邸出入り禁止となったと言う(註・言いません)

 明智は、1年前、この近くで大河原の愛弟子で新進の推理作家・庄司武彦なる人物が、江戸川乱歩賞を受賞した数日後、首吊り死体となって発見されたこと、彼が死の直前、白い羽根を送り付けられてひどく怯えていたことなどを話す。それらは全て杉本から聞き出した情報だった。

 最初に書いたように、この庄司武彦こそ、原作における語り手(あくまで三人称だけどね)なのだ。

 
 明智「つまり、白羽の矢です」

 結局、明智の他殺説の根拠は、同じ羽根を姫田が持っていたことだけなので、

 弘子「たったそれだけのことで他殺だなんて」
 福本「いささか論理に飛躍がありすぎるね」
 讃岐「名探偵らしくありませんな」

 と、みんなの反応も芳しくない。

 だが、明智は、姫田の死体が、死後5、6時間経過しているようだと言う確かな事実を握っていた。姫田の死体が発見されたのは飛び込んでから2時間後で、明らかに矛盾する。

 明智は更に、この中にいる誰かが犯罪に関わっていると踏み込んだ発言をする。

 
 大河原「遠慮しないでズバリ言ったらどうだ? 君の考えてる犯人は誰なんだ?」
 明智「正直言って、まだ分かりません」
 一同「分からんのかーい!」

 これっきり、明智さんは大河原邸出入り禁止となったと言う(註・言いません)

 明智は1週間後にもう一度集まって、事件について話し合おうじゃないかと提案する。

 明智は帰りかけるが、ふと立ち止まって「ああ、山村さん……」と弘子に声を掛ける。

 
 弘子は何か後ろめたいことでもあるかのように、露骨に身構えるが、

 明智「波越さんに頼まれたんですが、サイン入りのブロマイドが一枚欲しいそうです」

 と、他愛のない用件だったので、「は、はい」と安堵の溜息を漏らす。

 これは、明智さんの珍しい「コロンボ的訊問術」だったのだろうか? 天然の明智さんのことだから、何の下心もなかったのかも知れないが。

 さて、東京に戻った明智と波越、明智の事務所で事件について話し合っている。

 
 オセロの石を事件当時、大河原邸にいた人物に見立てて、容疑者を絞り込む。

 明智「讃岐も福本も白と考えて良いでしょう」
 小林「残るは4人か」
 明智「大河原夫妻に杉本、山村弘子……」
 波越「山村弘子はスターだから白」

 波越警部の冗談とも本気ともつかない独断に、文代さんと小林少年が反対する。

 小林「ちょい待ち!」
 文代「そんなのないわよ」
 波越「でもねえ、あの朝、ピアノを弾きっぱなしなんだよ」
 明智「しかし、2階で弾いていて誰も見たものはいない……」
 文代「スターだからって人を殺さないって保証はないわ」

 だが、波越は一顧だにせず、大河原が犯人だと決め付ける。動機は「難しいトリックを発明して明智に挑戦した」と言う、めちゃくちゃなものだった。

 明智は、姫田の手帳に記してあった6桁の数字の羅列を見て、即座に「日付です。706300は7月6日3時……」と見抜き、その時刻、姫田が何をしていたか波越に調べてくれるよう頼む。

 明智は、とりあえず明確なアリバイがない弘子に目を付け、身辺をマークする。

 
 撮影所から出てきた弘子に、文代さんたちがミーハーなファンを装ってサインを求め、それから後方に控えていた明智が車で尾行する段取り。

 でも、このシーン、二人がサインをねだる必要はなかったような気もする……。

 
 弘子は線路沿いのマネキン工房に入った後、すぐ出てきてそばの公衆電話から誰かに電話する。

 弘子が去った後、明智は工房に入り、たくさんあるマネキンを見て、あっさり姫田殺しのトリックを見抜く。

 
 そして「山村弘子さんのことでちょっとお聞きしたいことが……」と、ストレートに主人に尋ねる。

 工房の主人を演じる茶川一郎氏は、美女シリーズでちょいちょい顔を出している味のある俳優さん。

 口止め料を貰っているらしい主人は、下手な嘘を並べて知らぬ存ぜぬで通そうとするが、明智に揺さぶりをかけられ、あっさり口を割る。

 もっともその内容については後で明智の口から語られることになる。

 
 明智が事務所に戻ると、杉本が訪ねて来ていた。杉本は持参した白い羽根を見せて助けを求める。

 杉本「私にも、これが……どうか助けて下さい、次の犠牲者は私です」
 文代「この羽根はどういう意味なんでしょう?」
 杉本「白羽の矢です、つまり殺人の予告です。犯人は大河原義明です! 庄司武彦を殺し、姫田を殺し、そして今度は私を殺そうとしてるんです!」

 杉本によると、才能の枯渇した大河原義明は、実はもう何年も前から小説を書いておらず、最近の作品は弟子の庄司武彦が代作していたと言うのだ。

 だが、ゴーストライターの地位に甘んじていた庄司が遂に大河原にたてつき、自分の名前で作品を発表し、それが乱歩賞を獲ったのだった。

 杉本「怒り狂った大河原義明は、自殺と見せかけて庄司武彦を……」
 文代「ありそうな話ですね」

 姫田のほうは、代作のことを嗅ぎ付けた為に、口封じで殺されたのだと杉本は主張する。

 杉本「そして、次は私の番です!」

 だが、杉本ではなかった。

 
 ほどなく、海浜ホテルの屋内プールで、弘子が全裸死体となってぷかぷか浮いているのが発見される。

 
 死因は絞殺だった。

 ドクター・ポルターの乳首を思う存分鑑賞しつつ、その2へ続く。
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コメント

吉岡ひとみさん

ドクターボルダーこと吉岡ひとみさんも出演されていたのですね😅杉本に踏み潰されたカマキリが哀れですね(どういう意味だよ)

Re: 吉岡ひとみさん

お綺麗ですよね。

画像復刻増補ありがとうございます

今更だけど、夏樹陽子さんあってこその本作ですね。
ただ単に綺麗じゃなくて(上手い言葉じゃないですが)ミステリアスな雰囲気が。
現在では、こうした女優さんが思い当たらないです。

Re: 画像復刻増補ありがとうございます

> 今更だけど、夏樹陽子さんあってこその本作ですね。

ほんと、美女シリーズのヒロインでも一番でしょうね。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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