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「気分は名探偵」傑作選 第7話「ヤァ!と言った男」

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 第7話「ヤァ!と言った男」(1984年11月17日)

 随分公開が遅くなってしまいましたが、「気分は名探偵」の厳選レビューの始まりなのです。

 ま、ほんとは去年のうちに全話(と言っても6話ほどだけど)書いていたのだが、なかなか公開のタイミングが掴めなくてね……。

 さて、「気分は名探偵」は、日本テレビ系列で1984~1985年にかけて放送された、水谷豊主演のコメディタッチのミステリードラマである。全26話。

 まぁ、ミステリーと言っても、刑事ドラマやホームドラマ、さては社会派ドラマの要素もあり、一口でジャンル分けするのは難しい。

 初回と言うことで、最初にレギュラーについて簡単に説明しておく。

 ・夢野圭介(水谷豊)……元予備校講師で、現・吉原探偵事務所の探偵。

 ・吉原聖子(朝丘雪路)……1話で死んだ夫の後を継いで探偵事務所を経営している女傑。

 ・吉原かおり(佐野量子)……聖子の娘。

 ・草間緑(岡江久美子)……圭介の恋人で、小学校教師。

 ・津村浩三(西岡琢也)……吉原探偵事務所の隣で漢方薬局だか、接骨院だかを経営している元刑事。途中で聖子と再婚し、吉原探偵事務所の所長になる。

 ・津村明子(一氏多佳美)……津村の娘。父親の店を手伝っている。

 ・加納礼(草野大悟)……メゾン池田の1階で喫茶店を経営している。通称マスター。

 ・マリー池田(順みつき)……加納の妻。メゾン池田のオーナー(?)。喫茶店を手伝う傍ら、店で占い師をしている。

 ・荒木紀信(船越英一郎)……最初は喫茶店で働いていたが、途中から吉原探偵事務所の見習い探偵になる若者。

 ・八田利男(ケーシー高峰)……万年坂署の警部で、津村の後輩。恐妻家。

 ・大藪邦彦(片桐竜次)……八田の部下のハードボイルド刑事。

 ・吉原良平(財津一郎)……聖子の亡夫の弟で、弁護士。聖子に気がある。

 ・菊丸……加納夫妻が飼っている白猫。

 以上である。

 もっとも、全員が毎回必ず登場する訳ではない。

 さて、冒頭、探偵事務所の下の喫茶店で、マリーとマスター(加納礼)が激しい夫婦喧嘩をしている。

 喧嘩と言うより、マリーが一方的にマスターを「浮気したでしょ?」と責め立てているのだ。

 
 マスター「ね、マリー、僕を信じてよ、この目を見て、ほら、嘘ついてる目じゃないでしょ」

 
 マリー「……嘘ついている目よ、汚れきってるわよ」
 マスター「汚れきってる? そ、それはないよ……」

 「コセイドン」では男らしい隊長を演じている草野さんだが、このドラマでは女房にからっきし頭が上がらない、ちょっと情けない感じの中年を好演している。

 ぶっちゃけ、管理人がこの作品をレビューしようと思い立った理由は、草野さんの存在によるところが大きい。魅力的な女優さん以外でそんな気持ちにさせてくれる俳優は、草野さんと天知先生くらいだなぁ。

 
 荒木「マリーさん、マスターも反省してるんですから、今日のところは……」
 マスター「そう……なんで俺が反省しなきゃいけないんだ! 俺がいつ浮気したんだ?」

 荒木が見兼ねて仲裁に入るが、マスターも頑強に、容疑を否認する。

 マリーはマリーで夫の言葉に耳を貸そうとせず、怒り狂って店内を追い掛け回す。

 
 マスター「夢野さん!」

 マスター、店にいた圭介に助けを求めるが、マリーは圭介ごしに夫の襟首を掴み、

 マリー「昨夜私に嘘をついて若い女とラブホテルで浮気してたの」
 マスター「人違いだって言ってるでしょ!」
 マリー「あーた、往生際が悪いわね、私の占いのお客さんがね、あなたたち二人が7時にラブホテルから腕を組んで出てくるのを見てるって言ったでしょう?」

 マスター、以前にも浮気の前科があるので、マリーは頭から夫が嘘をついているのだと決め付け、とうとう店から叩き出してしまう。

 
 台風が過ぎ去るのを見るように、二人の狂態を見ている圭介と荒木。

 荒木「いいんですか、ほっといて」
 圭介「まあ、夫婦の問題だからな。変に関わらない方がいいだろう」
 荒木「はい」

 
 圭介「でも、ちょっと面白くなりそうだな」
 荒木「はい」

 しかつめらしい分別顔でそう言った後、ひとの悪い笑みを浮かべて顔を見合わせる二人。

 
 このタイミングで、メインタイトルが表示され、映像がポスタリゼーションされたようになり、OPとなる。

 OP主題歌は、水谷豊の歌う「人魚の誘惑」。これがなかなか良い曲なのだ。

 OPタイトルバックは、時期によって多少異なるが、その回のハイライトシーンを上記のように映像処理したものが使われている。

 その夜遅く、何者かが探偵事務所に忍び込むが、それは泥棒ではなく、家を追い出されたマスターだった。圭介に、自分の無実を証明してくれと頼みに来たのだ。

 圭介とマスターが騒いでいると、この家に寝泊りしている吉原聖子も起きて話に加わる。

 ちなみに、この家は3階建てのメゾン池田と言うアパートと言うか、雑居ビルのようなもので、オーナー夫婦は勿論、吉原親子、津村親子もその中の部屋を間借りしているのだ。圭介は、前半は事務所の隣の部屋で寝泊りしていたが、途中から恋人の草間緑と同じ建物の別の部屋で同棲するようになる。

 マスターの必死の頼みを聞いても、しょせん、他人事なので、聖子などは「男らしく離婚したまえ」などと無責任なことを言う。

 圭介「でも、マスターはラブホテルから出てくるところをマリーさんのお客に見られたんでしょ」
 マスター「だから、それが人違いだって言うんだ。だってね、俺は昨夜は神宮坂行ってたんだから」

 
 聖子「神宮坂のラブホテル?」
 マスター「あそこ、ラブホテルありません」
 圭介「ありますよ」
 マスター「僕はね、神宮坂の喫茶店で、ヒマラヤ密教の研究会ってのがあって……」
 聖子「ふぁーふぁふぁ」

 マスター、テーブルの上にちょこんと正座して(可愛い)、アリバイを説明するが、いかにも嘘っぽいので聖子はこれみよがしに欠伸する。

 マスター「ほんとなの、いったんだけども、うっかり日付間違えてさ……そいで引き返してきた訳よ。だから7時ごろっていうと、ちょうど僕がその引き返す途中だった訳よね、それを言ってもマリーが信じてくれないの……ねえ、だから僕が帰り道だったってこと証明してよ」

 
 話を聞いていた圭介、半ば呆れたように、

 圭介「仮にさぁ、マスターの言うことが本当だとしてもさぁ、帰り道に誰か知ってる人に会ったとかそう言うことでもない限り、証明なんか出来ないよー」

 と、マスター、圭介の何気ない言葉に、急に何か思い出したように大きな声を出す。

 
 マスター「あっ! 夢野さん、会った、会った、タバコ屋の隣のマンションに住んでる、あの、独身の変人で通ってる、あの、東西大学の教授で、え、え……ええと、なんつったかなぁ」
 聖子「変人? ああ、この町内で変なの二人っきゃいないよ」
 マスター「え?」
 聖子「あんたと小林さん」

 このドラマ、キャストの魅力もだが、こう言う細かい会話の楽しさも、その面白さの要因のひとつになっている。特に、今回のシナリオも担当しているメインライター宮田雪さんの才能によるところが大きい。

 
 マスター「そうそう、小林さん、その小林さんと偶然会ったんだ、あれは駅の近くの橋の上……」

 マスター、橋の上で、向こうから歩いてきた小林教授に気付いて右手を上げ、「ヤァ!」と挨拶すると、小林教授も同じように挨拶して擦れ違って行ったのだと言う。

 圭介「ヤァ、だけ?」
 マスター「そう、ヤァだけ、だって近所同士ってもさ、顔合わしたときに挨拶するくらいの関係だしね」
 圭介「じゃあ良かったじゃないの、そのことを小林さんに言って貰えば、マスターの身の潔白は証明されるじゃない、なぁーにを言ってんだ」
 マスター「あはは、そうかー」

 圭介に指摘されて、初めてそのことに気付いてホッとしたように笑うマスター。

 これで万事解決と圭介がベッドに引き揚げようとするが、マスターは明日、一緒に小林教授に会いに行って欲しいと懇願する。以前、ちょっと喧嘩したことがあって、ひとりじゃ行きにくいというのだ。

 圭介「一人で行きなさいよ、子供じゃないんだから」
 聖子「夢野君、子供とおんなじだ、行ってあげなさいよ」

 そう口添えしてやる聖子だったが、それを探偵の仕事として、きっちりマスターから料金をせしめようとするガメツサを発揮する。

 
 翌日、圭介は、マスターとついでに荒木を引き連れ、教授のマンションを訪ねる。

 ちょうど教授が外出しようとしているところだったので、ロビーで掴まえ、

 圭介「私、マスターの喫茶店の2階の探偵事務所にいる夢野圭介と申します」
 小林「探偵?」
 圭介「はい、実はマスターが一昨日の夜7時ごろ、駅の近くの橋の上で先生に会ったと言ってるんですが、それは本当のことでしょうか?」

 圭介、丁寧に自己紹介して単刀直入に尋ねるが、

 小林「なんのことでしょう?」
 マスター「ほ、ほら、会ったじゃないですか」
 小林「知りませんよ」
 マスター「だって、ほら、擦れ違ったじゃないですか」
 小林「人違いじゃないですか」

 小林教授、物腰は穏やかだが、きっぱりとそれを否定する。

 圭介は、マスターの浮気騒動のことも説明し、重ねて尋ねるが、

 
 小林「そんな出鱈目言って、何の関係もない私を巻き添えにしないで下さい」
 マスター「巻き添えじゃないですよ、だって、先生、ヤァって言ったじゃないですか」
 小林「言いません、私、急ぎますから」

 小林教授を演じるのは、これまた芸達者の桜井センリさん。

 三人は今度は、マリーの占いのお客だという主婦の家を訪ね、改めてマスターを目撃した時のことを確認する。

 主婦は、ド近眼のうえに思い込みの激しいタイプのようで、あまり信用も出来そうもない目撃者だったが、マスターが反論すると、意固地になってマスターを見たと主張する。

 
 なおも玄関先で主婦と言い争ってるマスターを尻目に、

 荒木「マスターの言ってることほんとなんですかね」
 圭介「マスター、嘘を言ってるようにみえねえしなぁ」
 荒木「すると、あのおばさんが見たのは人違いってことですか」
 圭介「そう言うことになるなぁ」

 ならば、何故小林教授がマスターと会ったことを頑なに否定するのか、それが謎だった。

 
 三人は、マスターが小林に会ったと言う跨線橋に行き、その時の様子を再現してみる。

 マスター「ヤァ!」
 圭介「ヤァ」
 マスター「……」
 圭介「で、教授は、そのまま向こうへ歩いて行った訳ね」
 マスター「そうそう、向こうの方へね、なんか、教授ね、チョコマカとなんか急いでたみたいだなぁ」
 圭介「チョコマカとねえ」

 
 何か確たるものがあったわけではないが、三人はそこからぶらぶら歩き出し、教授のやってきた歩道を逆に辿ってみる。

 だが、犬も歩けば棒に当たる、その細い道を抜けた先に、真新しいマンションがあり、そこから、八田と大藪が出て来たではないか。

 
 いいなぁ、片桐さんのこのタバコの咥え方……。

 圭介は、すぐ道路を横切って二人に駆け寄る。

 
 圭介「八田さーん」
 八田「よぉ、圭ちゃん」
 大藪「何やってんだよ、こんなとこで」
 圭介「なに、給料でも上がったのか?」
 大藪「クレジットだよ」

 大藪の着ている高そうなコートを見て、とりあえず軽口を飛ばす圭介。

 このやりとりは、後の17話の会話にも生かされている。

 最初、大藪は、事件に首を突っ込む圭介を邪魔者扱いして、犬猿の仲と言う感じだったのだが、段々と親しくなっていき、遂には親友と呼べる間柄になる。

 ちなみに荒木紀信と言う名前もだが、この大藪邦彦と言う名前も笑える。

 圭介「事件ですか」
 八田「知らなかったのか、このマンションで女子大生が殺されたんだ」

 その後、マスターと別れ、喫茶店で話している圭介と荒木。

 圭介は、その事件の詳細を記した昨日の新聞記事を荒木に見せる。殺された女子大生・礼子が、奇しくも小林と同じ東西大学、しかも教授のゼミの生徒だと知って、驚く荒木。

 圭介「まだわかんねえけどな、マスターに会ったことをあんなに隠そうとするんだからなんかありそうだな」

 圭介、今度は一人で万年坂署へ行き、八田にねだって、事件の詳しい経緯を教えて貰う。

 無論、八田は「ここだけの話」と断りつつ、礼子と付き合っていた加藤と言う大学生が容疑者として取り調べられていること、しかし本人は犯行を否認していること、礼子が自分の赤いスカーフで首を絞められて殺されたこと、などが分かる。

 その夜、圭介は東西大学の小林教授の研究室を訪ねる。

 
 圭介「あの、小林教授はいらっしゃいますか」
 斉藤「あなたは、新聞記者?」
 圭介「いえ、吉原探偵事務所の夢野です」

 助手の斉藤を演じるのは、「宇宙刑事シリーズ」の小次郎さんでお馴染み、鈴木正幸さんである。

 圭介、教授が帰るのを待ちながら、殺人事件について斉藤に水を向けてみる。

 
 圭介「ところで、ゼミの女子学生があんなことになって学校も大変でしょう」
 斉藤「ええ、全く迷惑な話ですよ、ろくに勉強もしないで男と遊ぶようなことばかり考えてるような学生でしたからねえ。異性関係もかなり乱れてたって言うし、嫌な女でしたねえ。ま、言ってみれば彼女があんなふうになったのも自業自得じゃないですか」
 圭介「あ、そうですかー」

 などとやってると、講義を終えた小林教授が戻ってくる。

 入れ替わりに斉藤が帰っていったので、圭介は教授に思い切って事件のことをぶつけてみる。

 
 圭介「先生」
 小林「しつこいなぁ、会ってないものは会ったとはいえんよ」
 圭介「でしたら、先生は7時ごろどこにいらっしゃたんですか」
 小林「うちにいたに決まってるじゃないか」
 圭介「あ、そうですか、てっきり先生は女子大生のマンションに行ってたとばかり思ってましたよ」

 
 小林「バカなことを言いたまえ、何故私が殺された女子大生のマンションに行かなければならないんだ」

 圭介がカマをかけると、小林教授は声を荒げて言い返す。

 圭介「先生、僕はただ、女子大生のマンションって言っただけですよ」
 小林「……」
 圭介「殺された女子のマンションだなんて言ってませんよ」

 だが、それは、同時に圭介の仕掛けた巧妙な罠だった。

 
 小林「……」
 圭介「先生、やっぱりマスターに会ったんですね」

 本物の悪人なら、適当に誤魔化して言い抜けするところだが、元々善人で気の小さい小林教授は、押し黙ったまま俯いていたが、不意に圭介の体を突き飛ばして部屋から逃げ出す。

 だが、近くの公園まで逃げ込んだところで、圭介と荒木に取り押さえられる。

 観念した小林は、公園のベンチに座って、自分が礼子を殺したのだとあっさり白状する。

 あの夜、小林は卒論のことで相談があるからと礼子にマンションに呼び出されたが、礼子は最初から強引に小林と関係を持ち、卒論を書く手伝いをして欲しいと頼むつもりだったのだ。

 無論、謹厳な小林はそれを拒絶し、激しく揉み合っているうちに礼子の体を突き飛ばしてしまい、礼子は家具に頭をぶつけて動かなくなったのだと言う。

 つまり、橋の上でマスターと会ったのは、教授が礼子のマンションから逃げ帰る途中だったのだ。

 しかし、八田によると、礼子は絞殺されていたと言う。圭介は納得のいかない顔で、人を殺してしまったと絶望する小林教授を見詰めていた。

 
 さて、家を追い出された流浪のマスター、自分の喫茶店の外から窓を叩いて中の人間に合図を送る。

 
 かおり「マスター!」

 聖子の娘、かおり、まだ中学生だったと思うが、新人の佐野量子さんが初々しく演じている。

 隣の女の子が津村の娘・明子で、演じるのは一氏多佳美さん。

 一氏多佳美さん、れっきとしたレギュラーの筈だが、役者としては一人前に扱って貰えず、たいてい、クレジットでも終わりの方に、エキストラなどと同じところに表示されている。

 だからと言う訳じゃないが、管理人のイチオシ女性キャラが、この明子なのである。

 二人は、身振り手振りで呼ばれて、こそこそと店の入り口に移動する。

 
 マスター「あのさぁ、菊丸をちょっと連れて来て欲しいんだけど」
 かおり「菊丸?」
 マスター「マリーに内緒だよ」

 かおりが店の中に引っ込むと、マスターは水を一杯、明子に所望する。明子はすぐ水を持ってくる。

 
 明子「ねえ、浮気したこと素直に認めてさ、マリーさんに謝っちゃいなよ」
 マスター「うぷっ! 僕ぁ浮気なんかしてないんだってば」

 
 と、かおりが菊丸を連れてくる。

 マスター「うわ、菊丸、菊丸、会いたかったよーっ」
 菊丸「うなぁー」
 マスター「ううーん、俺がいない間、お前、いじめられなかったか?」

 かおりから菊丸を受け取り、いとおしそうに頬擦りするマスター。

 猫も可愛いけど、猫を人前で臆面もなく可愛がる草野さんがまた可愛いのである!

 管理人がこのドラマに好感を持つのは、スタッフの中に猫好きがいたのか、菊丸以外にも、やたら猫の出てくる話が多いからでもある。

 マリー「菊丸?」
 マスター「出たぁー」

 だが、マスター、菊丸を呼ぶ妻の声が聞こえたので、菊丸を抱いたままピューッと逃げ出してしまう。

 一方、圭介は、探偵事務所に小林と恋人の緑を上げ、事件の……と言うか、小林教授の体験したことを再現しようと言い出す。

 
 小林「何故そんなことするんだ、殺したのは私だと言ってるじゃないか」
 圭介「先生が本当に殺したのかどうか、ちょっと再現してみたいんですよ。警察に行くのはそれからでも遅くないでしょう」

 小林教授、いかにも気が進まない様子だったが、渋々同意する。

 圭介から何も聞かされていなかった緑は、そこで初めて殺された女子大生の役をするのだと知り、猛烈に拒否反応を示すが、圭介に強引に説き伏せられ、結局引き受けることになる。

 で、小林教授の記憶を頼りに、教授が礼子のマンションに入るところから、事細かにその時の情景を再現させる圭介。

 緑も、圭介の指示を受けながら、適当にアドリブもまじえて礼子の役を演じる。

 礼子が出したというブランデーを一緒に飲むふりをしてから、

 
 荒木「それで彼女は先生に迫ってきたんですか?」
 小林「そうだ」
 緑「ね、先生、あたし、先生のこと好きなの」
 小林「あなた、お上手ですねえ、お芝居やられる方ですか」
 緑「いいえ、小学校の教員です」
 小林「道理で上手いと思いました」

 緑が妙に芝居が上手いので、途中、素に戻ってしまう小林教授。

 しかし、なんで小学校の教師だと納得できるのだろう?

 大学時代、演劇部にいました、なら分かるけど。

 圭介「それで、どうしました」
 小林「彼女は私の手をとって、胸を摺り寄せてこともあろうにキスしようとしてきたんだ」
 荒木「胸を摺り寄せてキスですか」

 
 緑「……」

 緑、「それもやるの?」と、圭介を見て目で問い掛けるが、

 
 圭介「……」

 圭介は、無言で顔を動かして、「やれや」と目で語るのだった。

 緑、ムカッとするが、言われたとおりのことを再現してみせる。

 
 緑「うふっ、せんせぇ~」
 小林「やめたまえ、こんな手で卒論の単位を貰おうなんて私をバカにするんじゃない」

 さらに、帰ろうとする教授を、礼子が強引に引き止め、遂にはその上に覆いかぶさってきたと言うシーンまできっちりやらされる緑。

 
 最後は、物の弾みで教授が礼子の体を突き飛ばしたところまで、文字通り体当たりで演じさせられることになる。

 小林「私は思わず突き飛ばしたんだ」
 緑「あいっ、あいたっ」
 小林「失礼、つい本気になってしまって」
 緑「いいんです、あいたぁ」

 襟からチラッと見える白い下着がそこはかとなくエロいのです!

 
 圭介「で、どうしました」
 小林「私は思わず駆け寄って、『大丈夫か?』」

 教授は、その衝撃で礼子が死んだと断言するが、

 圭介「先生はそのまま外へ飛び出したんですね」
 小林「ああ」
 圭介「先生、あなた殺してませんよ」
 小林「え?」
 圭介「新聞には出てませんでしたがね、彼女は赤いスカーフで首を絞められて殺されてたんですよ」
 小林「しかし、彼女は死んでいたんだよ」
 圭介「多分、それは彼女が一時的に気を失ってただけでしょう」

 圭介の説明を聞いても、小林はまだ自分が殺したのだと信じ込んでいた。

 それはひとまずおいて、圭介はさらにその後の教授の行動を再現させる。

 教授は一度マンションから離れかけるが、忘れ物をしたのを思い出して引き返したのだという。

 
 実際に一度外へ出てから、また探偵事務所の建物に入り、階段を登っていると、教授が重要なことを思い出す。

 小林「階段の途中で、いきなり上から降りてきた男とぶつかったんだ」
 圭介「どんな男ですか」
 小林「顔は見なかったよ、コートで顔を隠してるようだったから……確かがっしりした男だったなぁ」

 ちなみに散々な目に会った緑は、再現が終わった途端、圭介の顔をビンタするのだった。

 翌日、圭介と荒木は、東西大学へ行き、教授の見た「がっしりした男」が、礼子の周囲にいなかったか、礼子の友人たちに聞き込みを行う。

 教授がぶつかったその男こそ、礼子を絞殺した真犯人ではないかと考えたのだ。

 さて、ここで、ちょっとしたサプライズ。

 彼らに話しかけられる女子大生役で、後に全国的に有名になる芸能人が出てくるのだ。それも二人。

 
 ひとりは、財前直見(美)さん。

 こちらは言われないとちょっと分からないだろうが、

 
 こちらは一目見れば分かりますね。そう、野沢直子さんです。

 しかも、

 女子大生「私さー、彼女がさ、小林先生の助手の斉藤さんと二人で六本木のカフェバーでお酒飲んでるの見たわー」
 圭介「先生の助手?」

 彼女の口から、重要な新事実が明らかになるのだった。

 ま、今回は他にゲストもいないので、割と分かりやすかったのではないかと思うが、真犯人はあの斉藤助手だったのである。

 そう言えば、これと同じ枠で1年前に放送された「事件記者チャボ!」でも、鈴木さんは犯人役でゲスト出演していたなぁ。厳密には犯人の事後共犯者だが。

 小次郎さんのイメージとは遠いけど、鈴木さん、意外と犯人役が似合うのだ。

 さて、圭介、再び小林教授の研究室へ行き、斉藤に会う。

 圭介「それが、あなたと彼女とがね、六本木で仲良く酒を飲んでるのを見たという人がいるんですよ」
 斉藤「いや、それは……私ひとりじゃなくて他に学生がいたんじゃないですか」
 圭介「あ、そうですか、いや、そうでしょうねえ。嫌な女と二人だけで酒なんか飲む筈ありませんよね」
 斉藤「なんですか一体?」
 圭介「いやいや、ちょっと調査の参考までですから、気にしないで下さい」

 圭介、そう言って軽く揺さぶりをかけてから、一旦部屋を出て行き、そしてすぐまた戻ってる。

 圭介「ちょっとね、肝心なことを聞くのを忘れてましたよ。彼女が殺された日ね、夜7時、あなた、どこにいらっしゃいました?」
 斉藤「な、何を突然言い出すんですか、あなたは?」
 圭介「いや、実はね、あなたが、7時過ぎにあなたが彼女の部屋から出て来たのを見てたという人がいるんですよ」
 斉藤「いや、そんなバカな、誰かそんなことを言うんですか、それは僕じゃないですよ、それは小林教授だ!」

 
 圭介「あぁれえ、おかしいねえ……どうして小林教授が彼女の部屋に行ったのを知ってるんですか?」

 教授の時と同じなのはいささか芸がないが、圭介は相手のちょっとした失言を捉えて鋭く追及する。

 
 斉藤「いや、それは……」
 圭介「教授と階段のところでぶつかったのはあんただろ?」
 斉藤「……」

 教授の時と同じなのはいささか芸がないが、斉藤、いきなり圭介の体を突き飛ばすと、部屋から逃げ出す。だが、今度は大学の敷地内で、圭介と荒木に取り押さえられる。

 
 圭介「おい、先生が、彼女の部屋を出て行った隙に、部屋に入り込んで彼女を殺したのはあんただな」
 斉藤「あいつが悪いんだよ、卒業したら結婚するって約束したのに、う、裏切ったんだよ。田舎へ帰って市会議員の息子と結婚するって!」

 やはり小林教授に突き飛ばされた礼子はまだ生きていて、入れ替わりにやってきた斉藤が、ひとおもいにスカーフで絞め殺したのだった。

 この後、圭介たちが斉藤が逮捕されたことを知らせに小林教授のマンションを訪ねると、ちょうど教授が悲観してガス自殺を図っているところで、二人によってなんとか助けられると言う一幕もあるが、これは蛇足だろう。

 圭介の口から、改めて殺害の状況が教授に語られる。

 ところで、管理人がひとつ納得いかないのは、あえて画像は貼らないが、礼子が割と不美人だということである。

 なんでこんなのに、加藤と言う学生や斉藤が引っ掛かったのか、それだけが解せないのである。

 それはさておき、やっと、マスターから頼まれた本来の仕事を解決した圭介、早速、それを果たすべく、マリーのところへ教授を連れて会いに行く。

 
 圭介「こちら、東西大学の小林教授です」
 マリー「あ……」
 小林「どうも」
 圭介「えー、教授は三日前の夜7時、駅の近くの橋の上でマスターに会って、ヤァって言いましたよね」
 小林「確かに会いましたよ、マスターはヤァって声かけてきたんで、私も思わずヤァって言いました」
 マリー「ああ……」

 
 圭介「11月15日夜7時、マスターは丸山町にいませんでした。これでマスターが浮気をしてないと言うことがはっきりしたでしょう」
 マリー「すると、あの、ラブホテルから出て来たのは?」
 圭介「ですから、人違いですよ」
 マリー「あらーっ」

 
 荒木「マスターが浮気なんかする筈ないじゃないですか」

 荒木が外野から発言すると、

 
 かおり「調子いいんじゃないの、荒木君」
 明子「そうよ、あなたが一番疑ってたのよ!」

 そのいい加減さを、女性軍にこっぴどくやり込められる。

 自分の誤解だと分かって、一転してマリーはおろおろとマスターのことを心配しだす。

 マリー「あの人、もしかして絶望して自殺でもしたらどうしましょう?」
 圭介「そしたら代わりのひと探しましょう」
 マリー「嫌だ、嫌だ、嫌だぁっあああっ」

 普段は尻に敷いていても、心の底ではマスターのことを愛しているマリー、圭介の冗談に思わず悲鳴を上げる。

 
 菊丸「なーう」

 と、店の入り口の床に、何処からともなく菊丸が現れる。

 
 かおり「あ、菊丸」
 明子「あ、菊丸、どうしたのー? あらあらあら」

 荒木たちが慌てて駆け寄り、かおりが抱き上げる。

 荒木「あれ、どうして菊丸だけ帰ってきたのかな?」
 明子「おかしいわね」

 と、圭介が窓の外を見ると、まるで「寅さん」の序盤で寅次郎が、入りづらくてとらやの店先を行ったり来たりしているような感じで、カバンを持ったマスターが前の道を、右へ行ったり左へ行ったりしているではないか。

 気付いたマリーが慌てて外へ出てマスターを捕まえるが、マスターはまだ容疑か晴れていないのかとおどおどする。

 
 圭介「マスター、マスターの潔白は証明しましたよ」
 マスター「ほんと、夢野さん?」
 圭介「教授がヤァって言ったのを認めてくれましたから」
 マスター「そうですか!」

 
 マリー「あなた、あなたを信じなかったばっかりにごめんね」
 マスター「いいんだよ、マリー、僕も色々考えたんだけどさ、やっぱり僕、あそこしか住む所ないから今までどおりあそこに住んでいいかな」
 マリー「いやぁ、当たり前じゃない、やだぁ、あなた」

 人目も憚らずいちゃいちゃする二人を、圭介や教授が少し羨ましそうに眺めている。

 
 小林「それじゃ私はこれで、どうも色々ありがとうございました」
 圭介「どうも」
 小林「ヤァ!」
 マスター「ヤッ! うふふ」

 別れ際、全ての発端となった挨拶を、マスターと交わして去っていく小林教授であった。

 以上、同じパターンが繰り返されたり、謎解きがすらすら進み過ぎたりする憾みはあるが、なかなか面白いエピソードであった。
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コメント

マスター役の草野さんがいい味を出していますね😅

Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。

ま、こればっかりは実際にドラマを見てもらわないと伝わらないんですけどね。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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