第13話「アンドロメダの恋人たち」(1971年12月26日)
71年最後の回は、シリーズ中、もっともロマンティックなサブタイトルが付いている。
と、同時に、管理人にとっては、秀作・傑作揃いのシリーズの中でも、ベスト5に入るひときわ大好きな作品なのである。
だから、前からこのエピソードをレビューするのが楽しみで仕方なかったのだ。

冒頭、拍子木の音が響く中、
バル「このあたりのものでござる。かようなむさぐるしい部屋で毎日ゴロゴロしておるのは退屈じゃによって、本日は姫の学校へ行ってみようと存ずる」
蜘蛛の巣だらけの離れの隠し部屋の中から、バルが狂言の決まり文句をもじりながら出発する。
バル「まずは、そろりそろりと参ろう」

バル「いや、何かと言ううちにこれじゃ。もし、月先生は何処かな?」
山辺「ああ、ミス・ひかるなら理科の授業中……」
バル、学校のブランコの上に瞬間移動すると、サボって新聞を読んでいた山辺に尋ねる。
上の空で答えた山辺、ふと気付いて横を見ると、既にバルの姿は消えていた。幻覚でも見たのかと、泡を吹いてブランコの上に倒れる山辺。
このバルの時代がかった台詞は、全部狂言の言い回しなのだろう……か?
それはさておき、大きな足を上げながら、ブランコを揺らしているバルが可愛いのである!
さて、その理科室では、ひかるがスライドでみんなにアンドロメダ星雲の写真を見せていた。

ひかる「あの渦巻きは無数の星の集まりから成り立っています」
正夫「あれえ、もっとはっきり見てえなぁ、ねえ、先生」
ひかる「でもね、どんな望遠鏡使っても、地球からはこれ以上はっきり見えないのよ」
正夫「だからさー、ロケット飛ばして写してくりゃいいじゃん」
ひかる「アンドロメダはみんなが想像するよりもっと遠いのよ」
ぶーぶー不満を訴える正夫に、ひかる、1秒で地球を7周半できる光でさえ、アンドロメダ星雲に届くのに150万年かかると説明してやる。

ひかる「どう、オトシゴ君、ロケットで行けそう?」
正夫「へへ、先生、俺、気持ち悪くなっちゃった」
悪戯っぽく聞かれて、車酔いでもしたかのように力なくつぶやいて俯く正夫を見て、ひかるやクラスメイトたちがどっと笑い声を上げるが、それと同時にバルの姿が、ひかるの横にパッと現れる。

バル「おお、なつかしのアンドロメダ!」
ひかる「シッ、何しに来たのよ?」
バル「怒らない、怒らない……なつかしの~♪」
ひかるが小声で呼び止めるのも聞かず、適当な歌を歌いながら前に進み出るバル。
と、その姿がスライドで投影されて、アンドロメダ星雲の写真に重なる。

正夫「うわーっ、バケモンだぁっ!」
突然変な生き物が見えたので、悲鳴のような叫び声を上げる正夫たち。
しかし、バルの巨大な図体がすぐそばにあるのに一切気付かないと言うのは、さすがに嘘っぽい。
まぁ、撮影の便宜上、見た目は薄暗い部屋になっているが、実際は真っ暗な部屋で授業している設定なので、バルの姿も闇に紛れて見えなかったのだろう。
ひかる「なんだか変なスライドが混じってたようね、ちょっとごめんなさい」
ひかる、適当に誤魔化しながら、バルを無理矢理教室の外へ押し出す。

ひかる「パル、あれほど学校へは来ちゃ行けないって言ったでしょう」
バル「いやー、しかし、ひとりで留守番なんて寂しくってなぁ」
ひかる「男は孤独に耐えるもの、これだけは地球でも何処の世界でも同じことよ。バルも男の端くれだったら、さあ、帰った帰った」
ひかる、厳しく言いつけると、バルのお尻をポンと叩いて理科室に戻ろうとする。
が、戸が閉まらないので不思議に思って下を見ると、まだバルがいて邪魔をしていた。

バル「えへへへ」
ひかる「まだなんか用?」
バル「うん、いや、その、晩御飯のおかず、何にしようかと思って」
ひかる「メンチカツで良いわよ!」 ひかる、憤然と言ってピシャリと戸を閉める。
はるばるアンドロメダからやってきた宇宙人が、晩御飯のおかずにメンチカツを食べると言うのが、生活感が溢れていて実におかしい。
セブンの「狙われた街」の、ダンがメトロン星人と卓袱台で話すシーンに、なんとなく通じるものがある。

バル「怖いねえ、何処の世界の女も、ほんとに……」
立ち上がると、しみじみそんなことをつぶやきながら帰っていくバル。
きついことを言うひかるだったが、そんなバルの後ろ姿を見送りながら、
ひかる「バルの奴、学校が好きなんだな……ちょっと可哀想なことしちゃったかな」
学校が終わり、ひかるが歩いて帰っていると正夫たちが群がるように集まってくる。

正夫「先生、こいつがさ、なんだかしらねえけど、アンドロメダ星にいやに興味持っちゃってさ、俺に色々聞くんだよ。おい、お前から言えよ」
ひかる「タケシ君、質問ってなんなの?」
タケシ「先生、アンドロメダにも人間いるんですか?」
ひかる「うん、どうして?」
タケシ「どうしてって、さっきスライド見てたらなんだかそんな気がしてきたんだ」
正夫、タケシの額を小突くと、

正夫「だからお前は馬鹿だっつんだよ、あんなところにな、人間様がいる訳ねえだろ」
右端の、ハルコちゃんの真っ白なタイツが可愛いのである!
彼女、特別寒さに弱かったのか、別の回では短パンとタイツの組み合わせで体育の授業を受けているシーンが出てくる。ま、彼女だけじゃないけどね。

ひかる「そうかしら、もしかしたらタケシ君の言う通りかもしれなくてよ」
正夫「へー、それじゃ、先生、アンドロメダにも俺たちみたいな子供がいるっつうの?」
ひかる「そりゃいるわよ、あんたみたいなガキ大将もいれば、進君のような勉強家もいる。大きな学校があってね、5年からはロケットの運転も教えてて……」
歩き出しながら、昔を懐かしむような口調で、つい「実体験」を話してしまうひかる。
ハルコちゃんのタイツも可愛いが、ひかるの黒いブーツがまた堪らんのです!
タケシ「先生、まるでアンドロメダに行ったことがあるみたいだね」
ひかる「えっ、うふっ、だって先生、ほんとはアンドロメダから来たんだもん」
タケシの鋭い指摘に、冗談っぽく、自分の素性を打ち明けるひかる。

正夫「先生、いくら俺たちがガキだからってからかわないでよ、もしねえ、先生がアンドロメダの女だったらねえ、雨がふらぁ!」
馬鹿にされていると感じた正夫が豪快にタンカを切るが、その途端、空は晴れているのにほんとに雨が落ち始めたので、みんな慌てて走り出す。

同じ頃、買い物籠を提げたバルが、住宅地の裏山を登っていた。
ひかるに言われたとおり、メンチカツを買い求めた帰りらしいが、宇宙人がメンチカツ買って帰宅中と言うのが、実に楽しく、可愛らしい。
そのバルの耳にも雷鳴が聞こえてきて、
バル「はー、なんたる天変地異、この天気に雷とは?」
さらに本格的な雨が降ってきたので、急いで傘を差してメンチカツが濡れないようにする。
と、再び歩き出したバルの目の前、松の根っこに、いきなり雷が落ちて白煙が上がる。

バル「おおっ、あらっ、こらっ……なんたる、こと」
肝を潰して地面に伏せ、耳を覆っておののくバル。
バルの可愛らしさも、このドラマの魅力のひとつだと思うが、それを、変に媚びずにおっさん(牟田悌三)に演じさせているのがイイのである。
バル「おおお、おそろしや」
落雷に続いて、リズミカルなドラムの音が聞こえてきたので、何の天変地異かとますます怯えるバルだったが、おそるおそる顔を上げると、それは本物のドラムを、ひとりの人間が叩いている音だった。
その手があったか!

光源氏「よお、バル!」
バル「おお、光源氏様」
光源氏「しばらくだな、ひかるは元気かい?」
そして、その笑顔が爽やかな男性こそ、バルも良く知っているひかるの兄・光源氏だった。
演じるのは、歌手・声優としても活躍されている佐々木功さん。

バル「姫なら相変わらずですけど、光源氏さん、あまり脅かさないでください。アンドロメダから飛んできたんですかい?」
光源氏「ああ、こいつでな」
首に巻いた黄色いマフラーを手にとって笑顔で応じる光源氏。
要するに、長距離を瞬間移動するための超能力アイテムなのだろう。
ちなみに彼は、恐怖のアンドロメダ帝王(堀田真三)の息子でもある訳だが、父親とは正反対の、穏やかな好青年であった。

ひかる「まあ、それじゃ小町さんがアンドロメダから旅へ出て行方不明だって言うの」
光源氏「ああ、地球の日本というところで海水浴をしてくると言って出掛けたきりなんだ」
早速ひかるの下宿先へ行き、はるばる地球にやって来た用件を話している光源氏。
小町と言うのは、光源氏の恋人の名前である。
光源氏「おい、ひかる、このメンチやけにふやけてるじゃないか」
ひかる「仕方ないでしょ、兄さんが雨でふやけさせたんだから」
以前、旗野先生も使っていたマジックハンドでバルの買ってきたメンチカツを齧っていた光源氏、そう言って食べるのをやめる。
光源氏もメンチと略して言ってることからして、メンチカツはどうやら全宇宙共通のおかずらしい。
ひかる「そんなことより小町さんが向こうを出たのは何時?」
光源氏「二、三日前だ」
こともなげに言う兄に、ひかるは呆れたように、

ひかる「兄さん、アンドロメダでの一日は、地球では500年に当たるのよ。二、三日前って言ったら1000年から1500年も前になるのよ。一体どうやって小町さんを探す気なの?」
はい、今回のストーリーで一番引っ掛かる点がここである。
ひかるが言うのは、アンドロメダと地球との距離があまりに離れているので、光速に近付くほど時間の経ち方が遅くなるというウラシマ効果で、移動中に途轍もない時間差が生じることなのだろうが、その場合、宇宙船の外の世界は、1000年前じゃなくて、1000年後になってないとおかしいのではないだろうか。
感覚的に見ても、(アンドロメダで)ひかると一緒の時間を生きていたであろう小町が、ただアンドロメダから地球へ移動しただけで、はるか過去の世界に飛ばされてしまうと言うのは明らかに変である。
それに、小町も光源氏と同じアイテムで移動したのなら、光源氏が現在の地球に到着したとの同様に、そもそも時間的なズレは生じないと思うんだけどね。
だから、ここは、小町が地球に来てからタイムマシンで昔の時代に遊びに行った……と言う風にしておいたほうがスッキリしていたと思う。
ま、管理人、物理に弱いので、あまりこの点については深入りしたくないので、とにかく話を進めよう。
光源氏、慌てず騒がず、あのドラムセットのドラムの蓋を開いて、複雑なメカを披露する。

ひかる「タイムマシン!」
と言う発音が、ジンマシンの発音と一緒である。

光源氏「これさえあれば何時の時代でも飛んでいける。なぁ、ひかる、俺と一緒に小町を探してくれないか。頼むよ」
ひかる「困ったわねえ、兄さん、私も何かと忙しいのよ、学校もあるし」
光源氏「この際、学校なんて何だよ、バルに代わりに行って貰えばいいじゃないか」
どうしてもひかるに協力して欲しい光源氏、不意に突拍子もないことを言い出す。

ひかる「バルに?」
光源氏「そうさ、バルにお前の姿になって貰って、一日だけ先生を務めて貰うのさ」
ひかる「そんなこと、バルには無理よ」
バル、隠れ部屋のベッドで寝ていたが、彼らの会話を耳にすると千載一遇のチャンスとばかり、いそいそと起き出してきて、

バル「無理とはなんですか、姫、私をさっさとあんたの姿に変えて、早く小町さんを探しに行きなされ」
ひかる「まぁ、バル、本気なの?」
バル「このバルを見損なってもらっちゃあ困るなぁ、うー、私は元々子供たちは大好きだ。あーした一日先生の仕事ぐらいなんだ、簡単、さ、早く」
かつては子供嫌いを公言していたバル、えらい変わりようであるが、地球人が宇宙平和にとって有害か否かを調べるのが平和監視員のひかるたちの仕事だったのが、いつの間にか、子供たちを危険から守ることに変わったのと同じく、バルの嗜好もいつの間にか変化したのである。
ひかる「じゃあそうさせて貰うわ、パワー!」
指輪をかざしてムーンライトパワーを発動させるひかるだったが、何故か「ムーンライトパワー」の「ムーンライト」が抜けている。

両手を構え、上半身をくるっと回転させるバルの動きに続けて、

ひかるに変身したバルと言う設定で、菊容子さん本人の姿に切り替わる。
バルの手の形に合わせて、両手を丸めているひかるが可愛いのである!
光源氏「はぁー、なるほどそっくりだ、ひかるの腕はいつも大したもんだな」

ひかる「じゃあバル、後はよろしく頼むわね」
ニセひかる「私はもう月ひかるです」
手を握ったまま、右手を上下に動かす仕草がめっちゃ可愛いのである!

ひかる「ちょっとぉ、そんな声じゃ駄目よ、もっと女っぽくしなきゃ」
ニセひかる「あら、そうでしたわ、こんな調子でどうかしら、ほほほほほほ」
手を口に当て、精一杯おしとやかな声色を作るバル。
ちなみにニセひかるは、声も牟田悌三さんになるのだが、ここは是非菊さんに、バルっぽい喋り方で演じて欲しかったところだ。
だいたい、ひかるとバルの声では違い過ぎて、子供たちに怪しまれるだろう。
ひかる「なんだか気持ち悪いけど、ま、良いでしょ」
光源氏「それじゃひかる、行くぞ」

ひかる「バル、向こう向いてて、タイムマシンの光が目の中に入ったらあんたまで昔の世界行っちゃうのよ」
ひかるがバルに忠告する。

ニセひかる「あ、ほいきた」

バルっぽい動きで、急いで後ろを向いて両手で顔を覆うひかるが可愛いのである!
さて、タイムマシンの発する眩い光に包まれて、ひかると光源氏の姿がパッと消える。
しかし、なにしろ金もテクもない番組なので、タイムトラベルの描写も、

こんなチープな歴史絵巻の上に、氷の上を滑っているようなひかるたちの映像をそのまま二重写しするという、トホホな手法が採られている。
二人は一気に天平時代(729~749)の奈良の都に飛び、貴族っぽい衣装に着替えて小町の姿を空から捜し求める。
なんで奈良かと言うと、古都・奈良なら、現在の町並みをそのまま奈良時代の映像として使うことが出来るからである。
しかし、小町は海水浴に行くと言っているのだから、嘘でも海の近くに行かないと駄目なのでは?
後編に続く。
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