第13話「アンドロメダの恋人たち」(1971年12月26日)
の続きです。
さて、ここから今回の一番の目玉、ひかるに化けたバルの奮闘ぶりを描いた場面となる。
シリーズ全体の中でも、極め付きの爆笑シーンで、管理人は大好きである。

まず、朝、鏡台に向かって熱心にメイクをしているニセひかる。
ニセひかる「どうもうまくいかんな、果たして、ワシに無事、代役が務まるかなぁ」
慣れない化粧で顔をパレットのようにぐちゃぐちゃにしながらぼやくバル。
ひかるにはあんな大口を叩いたが、早くも自信がなくなってきたご様子。
この、バルっぽい口調で台詞を言う菊さんの声、是非聞きたかったところだ。

正夫「先生、お早うございまーす!」
ニセひかる「おはよう」
タケシ「先生、どうしたの、風邪引いたの?」
正夫「ものもらいできたの?」
サングラスにマスクで顔を隠し、声もいつもと違う、不審者めいたひかるに、子供たちが質問するが、

ひかる「ううん、別に……」
言いながらサングラスとマスクを外し、

誇らしげにクルッと一回転して、子供たちにその化け物みたいな顔を見せ付ける。
正夫「あ、あ、ああ……」
進「あーーー」
正夫「うぇえええーっ!」
その不気味さに、子供たちも唖然として、正夫などは嘔吐まで催すほどだった。
いやー、もう、爆笑もんだね。
菊さんも、演じてて楽しくてしょうがなく、笑いを堪えるのが大変だったのではないだろうか。
その後、5年D組ではなく隣のC組の教室で授業をしているニセひかる。
旗野先生、入り口のガラスから覗き込んで、てっきりひかるのD組だと思って通り過ぎる。

ニセひかる「いい? 三角形の内角の和は二直角、ね、分かるでしょ?」
バル、一見、快調に算数の授業を進めているようだったが、子供たちがやけにざわついている。
と、ひとりの男子が立ち上がり、
男子「先生!」
ニセひかる「ふん、なあに、あ、質問なら遠慮なく受けるわよ」

男子「あのー、ここはC組です、先生のクラスは隣なんですけど」
その男子を演じているのは、高野浩幸さんで、後ろに見える女の子は、「仮面ライダー」44話でカビビンガにさらわれた双子の女の子の片割れですね。

ニセひかる「は? はあ……」
肝心なことをうっかりしていたバル、バツの悪い顔になってチョークを取り落とす。
ちなみに、ニセひかるのメイク、さっきよりだいぶ控え目になっているが、これは、セット撮影とロケ撮影を別の日に撮っているから、そのせいだろう。
ロケ撮影のメイクがあまりに派手だったので、後日のセット撮影ではおとなしめにしたのか、それとも、その逆なのかは不明だが。
あと、黒板に書いてある文字も、普段のひかるの字と違って、妙に子供っぽい字になっているが、これも、バルが書いているからと言うことで、あえて下手に書いているのだろうか?
一旦通り過ぎた旗野先生が教室の前まで戻ってきたところに、子供たちの笑い声から逃げるようにニセひかるが出てきて鉢合わせする。

旗野「あ、あ、月先生、うわっ、どうしたんですか、その顔は?」
ニセひかる「あっ……」
バル、いたたまれなくなって自分の教室の方へ駆け出す。
ね、教室の中の顔と明らかに違うでしょ。つまり、教室の中はセットだが、廊下は実際の学校を借りて撮影しているということなのだ。
旗野「最近は、ああいう化粧法が流行ってるのかな」
旗野先生、まさか偽物とは思わず、そんなとぼけた感想を漏らす。
どうせなら本来のクラスでの授業風景も見たかったところだが、次のシーンでは休み時間になっている。
旗野先生が清々した顔でトイレから出てきたところへ、ニセひかるが走ってきてまたもや鉢合わせする。

ニセひかる「あっ……」
旗野「先程はどうも失礼しました。しかし、月先生でもああいう間違いをなさることがあるんですねえ」
ニセひかる「すいません、ああ、あたし、ちょっと」
話しかけてくる旗野先生の声にも上の空で、そわそわと足踏みしていたニセひかる、とうとう我慢できなくなって旗野先生の脇を通って男子トイレへ駆け込む。
旗野先生、何気なく行きかけて、

旗野「あ……うん?」
目の前の「女子トイレ」と言う表示と、背後のドアを二度見して、とんでもないことに気付く。
旗野「先生、月先生、ここは男用になってるんですけれどもね!」

ニセひかる「うん……? あ、しまった!」
ここでちゃんと菊さんが男子トイレの中でおしっこしている様子が映し出されるのが爆笑なのである。
映画・ドラマは数多いが、さすがに、男子トイレの小で用を足した女優さんと言うのは、彼女くらいではないだろうか?

さらに、ちゃんと前のチャックを閉めるような仕草までして見せてから、慌ててトイレから飛び出す菊さん。
もう、ほとんど女を捨てているようなこの熱演には、頭が下がる思いである。
あんな事件さえなければ、日本有数のコメディエンヌとして活躍されていただろうにと、いまさらながらその早逝と才能が惜しまれる。

ニセひかる「あ、ああ……」
旗野「月先生、今日はどうかなさってますねえ」
ニセひかる「すいません、私、気分が悪くって、今日は早引けさせていただきます」
結局、バル、ひかるの代役を果たすどころか、途中で尻尾を巻いて逃げ出す羽目になってしまう。

バル、疲れ果てた様子で下宿に戻ってくると、透明なビニールソファに腰を下ろし、

ニセひかる「あー、疲れたー」
お行儀悪く両足をテーブルの上に乗せ、心底疲れきったような声を出す。
もう、はしたない、もう少しでパンツが見えてしまうではないかっ!

自分の股間に視線を注ぎ、
ニセひかる「肝心の部分を変え忘れるとは姫の迂闊さにもほどがある。しかし、姫は遅いな、何をしとるんじゃ」
つまり、うっかり、バルの局部を女性のそれに変えるのを忘れていたらしい。
しかし、ひかる、バルを自分そっくりの姿に変えれば済むことなのだから、女性の体にわざわざチ○コなんか付けるだろうか?
放課後、フルーツかごを提げてひかるの下宿に向かっていた旗野先生、花屋の前で、正夫やハルコちゃんたち数人の子供たちと出会う。

旗野「みんな、何してんだ、こんなところで?」
ハルコ「みんなで月先生のお見舞いに行くんです」
旗野「なんだそうか、みんなも行くのか、じゃ、一緒に行こう」
ちょっと早引けしただけで、どっと子供たちがお見舞いに押し寄せる、ひかるの人気も大したものである。
ま、人気が出て当たり前だけどね。
がやがや話しながら歩き出す旗野先生と子供たち。
その中には、まだ幼稚園児だが、美人と噂の高いひかるの顔を一目見たいという、ませた子供、タケシの弟タケゾウも混じっていた。
ちょうどその頃、ひかると光源氏が漸く過去の世界から戻ってくる。

ニセひかる「お、姫、お帰りなさい、どうでした?」
隠し部屋で待っていたバル、息を弾ませて首尾を問う。
この、ニセひかるの子供みたいにテカテカしたほっぺが可愛過ぎる……。

ひかる「それがどうしても小町さんが見付からないのよ。バルの方はうまく行って?」
ニセひかる「いやー、先生と言う仕事がこんなにへとへとになるとは、思いませなんだ。姫、早くワシを元の姿に戻してくだされ」
合成画面で会話するひかるとニセひかる。
ただ、ここは、バルの物凄いメイクを見たひかるが、「まあ、ちょっと、何よ、その顔は!」と、一言驚くシーンが欲しかったところだ。

ひかる「ムーンライトパワー!」
実際は、ひかるはバルの顔を見ても何の反応も示さず、即座にムーンライトパワーを発動させている。
ニセひかる、体をぐるっと回すような動きをして、

その動きに合わせてバルの姿に戻る。
バル、心底清々したように、
バル「あー、もう、やれやれ、あんな役目はもう懲り懲り」

バル「ワシはあっちで休ませていただきますよ、おっこらしょっと」
真実、疲れ切っていたのだろう、バルはさっさと自分の部屋に引っ込んで寝てしまう。
ひかる「バルったら、馬鹿にくたびれたようね」
光源氏「ああ」
旗野「ごめんください」
玄関から旗野先生の声がしたので、ひかるは「はーい」と応対に出る。

ひかる「みんな、どうしたの?」
旗野「あ、月先生、起きちゃいけませんよ、もっと安静にしてなきゃ」
ひかる「ま、まるで私、病気みたいね」
旗野「いや、明らかに病気ですよ、さっきの様子じゃ」
ひかる「さっきの? なんのこと?」
バルから何も聞いていないので、ひかると旗野先生の会話は全く噛み合わない。

旗野「あー、あれを覚えてないとは、こりゃ、かなりの重症だ」
ひかる「は?」
旗野「い、いえ、みんな、先生のご病気に障るといかん、早く失礼しよう」
無論、さっきのひかるが偽物だったなどと気付く筈もなく、かえってひかるの体を気遣って、子供たちを促す優しい旗野先生だった。
生徒たちも素直に従い、順番に「お大事に」と言いながら見舞いの品を渡して、さっさと帰っていく。

ひかる「あっ、あっ、ちょっと待ってよ、ねえ、待ってよー」
何がなんだか分からず、みんなを呼び止めるが、誰も耳を貸そうとしない。
そして最後に、ひかるの目を盗むようにして、タケゾウが一冊の本を上がり框に置く。

「天人の羽衣」と言う、有名な昔話の絵本だったが、これが小町を見付け出す手掛かりとなるのである。

ひかる「はぁ~」
不満そうに頬を膨らませてため息をつくひかる。
ふと、横に立っている子供に気付くが、タケシが戻ってきてひかるが何か言う間も与えず、素早くタケゾウを連れて行ってしまう。
タケル「タケゾウ、行こう!」
ひかる「あ、ああ……」

とりあえず、山積みのプレゼントを胸に抱えて戻ってくるひかる。
光源氏「なんだい、そりゃ」
ひかる「バルの奴、またなんかドジ踏んだに違いないわ、後でとっちめてやらなきゃ」
何の気なしに、一番上にあった絵本を開いて見る光源氏。

光源氏「あっ」
ひかる「兄さん、どうかしたの」
光源氏「小町だ、僕の恋人がこんなところに」
ひかる「ええっ?」
見れば、確かにその絵本に出てくる天女は、小町そっくりの顔をしていた。

ひかる「分かったわ、兄さん、地球人はアンドロメダから来た小町さんを天女だと思ったのよ。だから絵がそっくりなのよ」
光源氏「しかし、おかしいな、この本には天女は漁師に羽衣を返して貰って帰って行ったと書いてある。けれど小町は帰らないぜ」
ひかる「きっと小町さんに何かあったのよ」
ま、仮に小町が天女と間違われたとしても、1000年以上後に描かれた絵本の絵が、小町そっくりになる訳はないのだが、その辺はおおらかな気持ちで見て欲しいのである。
二人は再びタイムマシンで、1200年前の三保の松原へ向かう。
だが、ちょうどその時、あの絵本を返して貰おうとタケシが引き返してきて、中庭の方から部屋の中を覗き込んでいたのである。
さっきひかるが注意したように、タイムマシンの光を見てしまったタケシも、二人と同じく1200年前の三保の松原へ転送されてしまう。

何が起きたのか分からず、戸惑うタケシの目に、松林を進む光源氏とひかるの姿が飛び込んでくる。
光源氏「向こうへ行ってみるか」
ひかる「ええ」
タケシ「先生だ。あんな格好で何処行くのかな」
いわゆる十二単、要するに平安貴族っぽい装束をまとったひかるは、タケシが一緒に転送されたとも知らず、小町を探しに行ってしまう。

女「大嘘じゃ、この本に書いてあることは」
ひかる「でも、小町さん、じゃない、天女様がこのあたりに舞い降りたというのは本当なんでしょう」
女「そうじゃ、この本に出てくる漁師はサメ六っちゅう、この村のろくでなしでな」
二人は、浜辺で網の繕いをしていた女性を見付けてあの絵本を読ませ、事情を聞くが、

その女性によると、サメ六と天女が会ったのは事実だが、サメ六は天女に羽衣を返してやらず、それどころかその目の前で燃やしてしまったのだと言う。
で、その回想シーンに出てくるサメ六が、ろくでなしの割に妙に筋肉ムキムキで、まるで木村政彦みたいに腕組みしているのが笑えるのだった。
サメ六役は、倉田爽平さん。
ちなみに、これは、実際に静岡の三保の松原でロケをしているようである。
こうしてサメ六は、強引に小町を自分の嫁に決めてしまい、しかも、ちょうどこれから二人が祝言を挙げることになっているのだと言う。
ここまで来れば後は詳しく書くこともない。
花嫁行列を作って運ばれていく小町を、ひかるたちが助け出す。
と、そこへ紛れ込んだタケシが、異様な服装をしているので怪しまれて村人に捕まってしまう。

それに気付いたひかる、慌てて戻ってくると、

十二単もなんのその、村人に蹴りを入れてタケシを救い出し、

再び大空へ舞い上がる。
ひかる「タケシ君、もう大丈夫よ」
タケシ「先生、先生って凄いんだなぁ」
20世紀に戻ってきたひかるは、タケシに今の出来事が夢だったと思い込ませて、早々に帰らせる。

ひかる「幸せに、兄さん、小町さん、さようなら、アンドロメダの恋人たち」
平安貴族と天女様の衣装のままアンドロメダへ旅立つ二人に、ひかるが別れの言葉を送るところで幕となる。
以上、最後のタケシまでタイムスリップするくだりは蛇足の感じもするが、ひかるの兄の登場、ひかるに扮したバルの奮闘、タイムスリップしての人探し、昔話と絡めた小町の救出劇と、異様にドラマの充実したエピソードであった。
しかし、今回の菊さん、めっちゃ大変な撮影だったのではないだろうか。
通常のロケ撮影、セット撮影のほかに、ニセひかるも演じねばならず、他にもニセひかるとの合成シーン、平安貴族の衣装をまとってのロケや合成用のシーンの撮影など、寝る間もなかったことだろう。
おまけ 
折角の平安貴族風のコスプレを披露している菊さんだが、本編ではあまり大きく映しているシーンがなかったので、予告編の、背景と合成する前のカットがあったので貼っておく。
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