第14回「これが今の私です」(1985年7月23日)
の後編です。
夕暮れ時、しのぶがアルバイトニュースを手に歩道橋の上に立って電車が走るのを眺めていると、

向こうからいきなり静子と耐子が走ってくる。
この、岩本多代さんの、シャツ越しにかすかに透けて見える白いブラに「おおっ」となったら、あなたは立派な熟女マニアです!
久しぶりに親子三人揃って、三人が感動の涙を溢れさせたのは言うまでもない。
若山のはからいであった。
三人は、ひとまず静子の借りているアパートへ行き、少し照れくさそうに顔を合わせながら心づくしの夕食を取る。
場所を除けば、一見、数ヶ月前まで真鶴で過ごしていた日常とまったく変わらないようであったが、

静子「しのぶさん、どうぞ」
耐子「あら、どうしたの、お母さん、しのぶさんだなんて」
静子「大丸様のお嬢様ですものね」
しのぶ「やめて、お母さん、前みたいにしのぶって呼んでちょうだい」
耐子「そうよ、水臭いわよ」
血のつながりのないことが分かった静子のしのぶへの態度は、やはり以前とは違わざるを得なかった。
さらに卓袱台の無人の席に千鶴子の為の陰膳を置いては、急に泣き出す静子を見ては、もうあの頃の自分たちには戻れないのだと、なんとも言えない切なさが込み上げてくるしのぶであった。
その後、耐子は大丸家に戻るが、しのぶはそのまま静子の部屋に泊まり、久しぶりに親子で布団を並べて寝物語を交わす。

しのぶ「千鶴子さん、今頃どうしてるのかな、もう一度、家に帰るように行ってみようかしら?」
静子「やめなさい、恐ろしい不良の世界に近付いちゃいけないわ。千鶴子のことはお母さんが気にします。あんたは随分苦労してきたんだもの、自分の幸せだけを考えなさい、しのぶ」
しのぶ「しのぶさん、だろ?」 静子「……」
すいません、書こうか書くまいか迷ったんですが、途中から嘘でした。
一方、路男の怪我は大したことなかったようで、その夜、既に路男はベッドの上に起き上がって、なぜ自分が猛に負けたのかを考えていた。

で、それを、
上半身裸になって、「怨」と書かれた色紙を睨みつけながらやっていたので、周りにいた同室の患者さんたちは、話しかけられないよう、必死に寝たふりをするのだった。
路男、負けたのはマヤに邪魔されたからだとはっきりしているのに、何故か「剛造に対する憎しみが足りなかったから」だと言う結論に達し、病院から姿を消すのだった。

そしてどうやって見つけたのか、ほとんど警察犬かエスパー並みの能力だと思うが、ひとりで街をぶらついていた千鶴子の前に現れ、人気のないところへ連れて行く。
路男「大丸家を飛び出したお前なぞモノにするのはいつでも出来る。だがその前にひとつだけ聞きてえ、お前は家を飛び出して不良になった。続いてしのぶも家を出た、こらどう考えても普通じゃねえ、裏にはどんな事情があったんだ?」
千鶴子「知らないね」
路男「嘘をつけ、言わせて見せるぞ」
千鶴子、もう自分が剛造の娘ではないと言う現実は受け入れてはいるのだが、かと言って、赤の他人の
路男に話す筋合いもないと、にべもなく断るが、

路男は容赦なく千鶴子を何度も何度も殴りまくる。
それも、平手打ちオンリーじゃなく、顔にパンチまでお見舞いしたり、馬乗りになってボコボコにしたりしているので、見てる方は結構ひく。
あと、路男って、確か女は殴らない主義じゃなかったっけ? 宗旨替えしたのかしら?
どっちにしても、男気に関しては「不良少女~」の朝男とは雲泥の差であることは確かである。
と、そこへ通りかかったのが、静子であった。
当然、静子は、身をもって実の娘である千鶴子を路男から守ろうとする。
……って、いや、あんた、しのぶと一緒に寝てたんじゃないの?
どうも、あの夜から数日後のことらしいが、ドラマを見ている限り、すべて同じ夜に起きたことのようにしか見えないんだけどね。
あと、冷静に考えたら、この現場に静子が通りがかるって、これまた物凄い偶然だよね。
路男「おばさん、どいてくれ、なぜそいつを庇うんだ?」
静子「千鶴子さんはしのぶと乳姉妹だからさぁっ! あたしには二人とも子供のようなものなんだ!」
静子も、真実を言う訳にもいかず、そんな苦しい説明をして路男に縋りつくようにお願いする。
路男も、さすがに静子に手を上げることは出来ず、やむなく引き下がる。

ホッとしてその場に座り込む静子だったが、ふと背後に視線を感じて振り向くと、

千鶴子が物凄い目付きで自分を睨んでいた。
静子「千鶴子……」
千鶴子「気安く呼ばないで、あんたは私の母親のつもりかもしれないけど、私はそうは思わないからね」
千鶴子、礼のひとつも言わず、そう叫んでさっさと走り去ってしまう。
残された千鶴子は、しゃくりあげる涙を堪えきれず、両手で顔を覆ってむせび泣くのだった。
その後、静子はどうすればいいのかしらんと、教会の若山に縋り付いて助言を求める。
例によって若山のアドバイスは抽象的で、千鶴子はいわば心を病んだ病人だから、その心に付き添ってやりなさいと言うものだった。
静子「先生、あの子の心に付き添います!」
が、付き添いのプロを自任する静子は、それを聞くと水を得た魚のように目を活き活きと輝かせるのだった。
同時に、そんな二人の会話を立ち聞きしたしのぶも、これからはたとえ不良の世界に足を踏み入れることになっても、自分も千鶴子に近付いてその心に付き添おうと誓うのだった。
一方、雅人は、その後も千鶴子のところへ通い続け、必死に説得を試みていた。
しかし、そんな芸のない方法では、百万遍繰り返したところで千鶴子の凍った心を溶かすことは出来ず、いつもせせら笑われて追い返されるのがオチだった。

その日は、ちょうどその場に島田もいて、
島田「お坊ちゃん、千鶴子はもういい顔なんだ、妙な真似されちゃ困るんですよ」
そう言うと、いきなり右拳を雅人の腹に叩き込む。

雅人「あっ! ……動いた」
島田「やかましい!」
じゃなくて、
雅人「あっ!」
一瞬うずくまった雅人だったが、立ち上がりながら、強烈なフックを放って島田をぶっ飛ばす。

凄んで格の違いを見せ付けた直後、カタギの若い衆に見事にぶっ飛ばされて部下に気遣われ、面目丸潰れとなる島田さん(38才・自営業)。

雅人「金持ちのボンボンは喧嘩が嫌いらしいが、僕は好きだぞ!」
意外にも雅人、ここで猛然と反撃に出る。
当然、猛たちが次々と向かってくるが、武道の心得があるのか、

雅人は群がる相手を蹴飛ばしたり投げ飛ばしたり、路男なみの大活躍を演じるのだった。
ま、以前、路男と互角に殴り合っていたほどだから、腕っ節は相当強いのだろう。
それ以上に、素人の兄ちゃん一人に翻弄される鬼神組の皆さんが、とても情けなく見えるのだった。
今までの鬱憤を晴らすように鬼神のように暴れまわる雅人には、当の鬼神組も手を焼き、

結局、最後は猛が背後から後頭部を一撃して昏倒させ、なんとか大人しくさせるのだった。

雅人の痛々しいまでの奮闘ぶりに、つらそうに目を反らす千鶴子。
そのまま事務所から叩き出された雅人が、近くの公園の水道で頭を冷やしていると、しのぶが通りかかる。

しのぶ「私、これからずっと千鶴子さんのそばに付き添います」
雅人「不良の仲間に飛び込もうって言うのか? よすんだ、千鶴ちゃんに付き添うのは僕の仕事だ。僕に任せて……いいね?」
雅人は最近、剛造が心身とも参っていると告げ、

雅人「そこで君に頼みがあるんだ」
しのぶ「すみません、今はどうしても家に帰る気には……」
雅人「そうじゃないんだ、今夜多摩川で花火大会がある、その席にお父さんもお見えになる。君にちょっとだけ顔を出して欲しいんだ」
しのぶ「お父さんに会えと仰るんですか?」
雅人「話したくなければしなくてもいい、ただ、遠くからでも一目、君の元気な姿をお父さんに見せて欲しいんだ。そうすればお父さんもきっと安心して気力を回復してくださる」
密かに思いを寄せている相手にそこまで言われると、しのぶも断れず、承知するのだった。
だが、その雅人の気遣いが新たな問題を生み、ますます剛造を苦しめることになってしまう……。
千鶴子が、歩道橋の手摺にもたれてぼんやり電車が走るのを見下ろしていると、その横に優子がやってくる。

千鶴子「優子さん、弱音吐いてもいいかい?」
優子「私は酒場のママよ、人の弱音を聞くのが商売さ」

千鶴子「屋敷にいた頃、私は自分が最高の女だと自惚れてたよ……」
千鶴子がぽつりぽつり心境を語り出すが、ほぼ同時に、彼らの後方に猛が現れる。
千鶴子「私ねえ、そのたびに(雅人さんを)追い返しながらつらいんだ。雅人さん、許してって言葉が、ここんところまで込み上げてきて……だけど、今更こんな姿を見られたくないし、仲間の手前もあるし、口から出るのは雅人さんを罵る言葉だけなんだ」
……ふと思ったのだが、雅人って、実は
ドMだったのではないだろうか? ああやってしつこく通って、千鶴子に激しく罵られるのが何よりの快感になってたりして。
と、ここで、優子が彼らの背後に立って聞き耳を立てている猛に漸く気付く。

優子「大変だ、あいつ聞いてたよ、猛の奴、場合によっちゃあ雅人さんを殺すよ」
優子、慌てた様子で言うのだが、

優子の立ち位置から言って、猛が現れた時点で気付くよね、フツー。
猛が迷彩服を着ていたので気付くのが遅れたとも考えられるが、ここは森の中じゃなくて、東京だしね。
優子「止めてきなさい、早く」
それはさておき、優子はいつになく厳しい口調で命令するが、千鶴子は一向に動こうとしない。

千鶴子「あたしのせいじゃないさ」
優子「バカヤロウ!」 優子、千鶴子を振り向かせるとその頬を音高くビンタする。

優子「たった今、雅人さん、雅人さんとほざいたのは誰だい? ぐれるのもいいが、魂の底まで腐っていいのかい? 私が不良だった頃は、半端な真似はしなかったよ、好きな男のためには、一途に体を張ったもんだ!」
そして、不良の先輩として、魂の叫びを迸らせて千鶴子を叱咤すると、

精一杯の凄みを利かせて千鶴子を睨み据える。
千鶴子「わかった、猛を止めるよ、なんとしても」
そこまで言われて動かなかったら女が廃るとばかり、千鶴子も目に生気を取り戻して走り出す。
しかし、岡田さんの熱演は認めるけど、やっぱり岡田さんにこういう役は似合わないよね。
さて、いよいよ運命の花火大会が始まる。
しのぶは雅人との約束を守って会場へ足を運び、猛たちもしつこくしのぶを尾行して同じく会場に紛れ込んでいた。そして、花火大会に南部開発が噛んでいると知った路男も木刀を背中にくくりつけたバトルスタイルで、会場に向かっていた。
早くも夜空に打ち上げられる花火を見上げながら、
路男「パッと花開いてあっさり消えちまう。(俺も)殴り込みであんな風に散りたいぜ」
剛造は、則子と雅人と共に眺めの良い超高級料亭を借り切って、政財界のVIPと、花火を鑑賞しながらなごやかに談笑していた。
と、雅人が席を外して下に降り、料亭の庭園でしのぶを出迎えていたが、そこへぬっと現れたのが、猛たちであった。

猛「今後一切、千鶴子につきまとうんじゃねえ」
雅人「なにぃ」
猛「頼んでるんじゃねえ、命令だ」
雅人「断る。千鶴ちゃんは僕の婚約者だ」
猛「殺してやる!」
弱いくせに喧嘩っ早い猛、いきなりナイフを取り出して襲い掛かってくる。
もっとも、さすがの雅人も素手では分が悪く、あっという間に追い詰められてナイフを突き立てられそうになるが、

咄嗟にしのぶが、猛を背後から突き転がし、さらにナイフを持つ手にむしゃぶり飛びつく。
そしてその際、スカートがめくれて黒い下着が丸出しになる!
……と言いたいところだが、これはどうも見てもブルマのような下穿きのようである。

しのぶがナイフごと猛の右手を何度も地面に叩きつけ、そのたびに猛も顔を上下にガクガクさせることになり、管理人は大笑い。
遂に猛がナイフを取り落とすが、

その直後にやっとしのぶの体を押し飛ばし、

尻餅をついたしのぶの股間が全開になって二度目のチラが発生する。
ただ、今度は、ブルマじゃなくてしっかり白いパンツが確認できるんだよね。
わざわざ、撮影の途中に、ブルマを脱いだり穿いたりしながら撮影していたのだろうか?
激怒した猛、手近にあったシャベルを振り回してしのぶを殺そうとするが、

しのぶが落ちていたナイフを拾って、まるで、「あしたのジョー」のジョー対ウルフ金串戦のクロスカウンター合戦のような絶妙のタイミングで、猛の足に深々と突き刺す。
……
ここにいたって、管理人は、遺憾ながら
「猛、実は最弱だった」説を唱えなくてはならなくなる。

ナイフをかざしたまま、返り血を浴びて茫然としているしのぶ。
そこへ千鶴子がやってきて、「何故こんなことをしたんだい?」と、しのぶに非難の目を向ける。

雅人「違う、しのぶさんは僕を助けようとしただけなんだ!」
慌てて雅人が割り込んでしのぶを弁護するが、千鶴子は険しい顔のまま、

千鶴子「そうかい、そんなに雅人さんが好きなのかい、あんたは私からお父様を奪い、今また雅人さんを奪おうってのかい?」
ついカッとなって、思わず本音を漏らしてしまう。
なんだかんだ言って、千鶴子、まだ雅人に未練があるのだった。
しのぶは乱暴に千鶴子の手を振り払うと、
しのぶ「好きです、私は雅人さんが好きです!」 絶叫するように、胸の奥に秘めていた思いをぶちまける。
しのぶも、初めて人を刺して気が昂ぶっていたのだろう。
千鶴子「よく言ったよ、それでこそあんたは正真正銘、あたしの敵だ。雅人さんは私のものでもないが、あんたにも渡さないよ!」
千鶴子、仲間に命じてしのぶを襲わせる。
しのぶは彼らから逃げながら、はからずも、剛造たちのいる桟敷の真下に近付いてしまう。
騒ぎに気付いて剛造と則子が露台から下を見ると、

服を赤く染めたしのぶが、じゃっかん楽しそうにナイフを振り回していた。

剛造「ポカーン」
則子「ボカーン」
それを見た二人が、ポカーンとしたことは言うまでもない。
剛造、すぐ庭に下りて、しのぶの前に立つ。

剛造「しのぶ、お前まで不良に!」

しのぶ「お父さん!」
頭を激しく振って何か言おうとするが、極度の混乱状態にあるしのぶの口から出たのは、その一言だけだった。
剛造「出て行け、出て行きなさい、お前のような娘など、持った覚えはない!」 いくらなんでも短絡的過ぎる剛造の反応。
ま、千鶴子のときと同じく、VIPを招いての席だったので、余計怒りが込み上げてきたのだろう。
その後も襲い掛かるチンピラどもを、握り締めたナイフで寄せ付けないしのぶ。
いい加減、ワンパターンだが、そこへ飛び込んでしのぶを助けたのが路男であった。
路男は木刀でチンピラたちをぶちのめすと、しのぶをバイクの尻に乗せてそこを脱出する。
路男はすぐバイクを止めると、

路男「しのぶさん、あんた、何か間違ったことをしたのか?」
しのぶ「してない! でも、でも……」
強く否定したしのぶ、不意に涙を溢れさせて路男の広い背中に顔を押し付ける。

路男「だったらもう泣くな、人を傷つけたからには、世間はこれからあんたをまともには扱ってくれないだろう。だけどなぁ、負けるなよ、勇気を掻き集めて生きるんだ。
俺がそばについていてやる」
路男の最後の言葉を聞いた途端、
しのぶ(やりぃ~! 路男のハート、ゲットだぜぇっ!) と、カメラ目線で会心の笑みを浮かべるしのぶであったが、あくまで管理人の妄想である。
実際は、しゃきっと顔を起こすと、
しのぶ「戦って生きていくよ、花火のように命を燃やして!」 早くも不良っぽい口調で逞しく宣言すると、手にしたナイフを勢いよく投げ捨てるのだった。
しかし、この流れだと、路男としのぶがくっつくという展開もありえたと思うが、やっぱり、渡辺桂子さんでは、松村さんとは釣り合わなかったかなぁ。
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