第16話「疑惑の教授選につけ入るニセ処刑人」(1983年11月25日)
冒頭から、ETたちが、遠藤と言うスケベ教授に対してハンギングを仕掛けようとしている異色の幕開け。
ちなみにスケベ教授を演じているのはゲバコンドルの谷津勲さんである。
どうせなら、具体的なスケベ描写も入れて欲しかったところだが。
ETとチャンプは、講師の篠原が運転する車で移動中の遠藤を追跡しつつ、前方にいるマリアとヌンチャクに連絡して挟み撃ちにしようとする。
だが、バイクで走っていたヌンチャクが転倒して、脱落してしまう。
おまけに、いつの間にか別の車がターゲットとETの車の間に割り込んでいた。
チャンプ「一般者車らしいな」
ET「まずいなぁ、ヌンチャクも来ないし……ようし、今日は中止だ」
今回は別に急ぐ必要もない事件だったので、慎重なETはあっさり中止を宣言して、途中で道を変える。

チャンプ「どあほっ、お前のおかげでハンギングの段取りがすべてパーやないか! おい、ええか、かかった経費お前のギャラからきっちり引かしてもらうぞ」
ヌンチャク「そんなぁー」
チャンプ「そんなやあるかいっ!」
翌日、チャンプが、へまをしたヌンチャクをこっぴとく叱りつけたのは言うまでもない。
だが、出先から戻ってきた加代子に、その遠藤教授が車ごと海へ転落して死んだことを知らされ、愕然とするハングマン。

マリア「京浜運河に車ごとダイビングか……」
チャンプ「午前8時か、わしらが遠藤から離れたすぐあとやないか」
マリア「残された遺書から、恐るべき悪事が明らかになった」
アジトに移動して、加代子の持ってきた新聞を真剣な表情で読むETたち。
遠藤は、ワイロを受け取ったり、教授の地位を利用して女子大生をレイプしたりと、大した悪党だった。
ヌンチャク「どうして講師の篠原も一緒に死んだんだろ?」
マリア「他の大学から移ってきた篠原は講師から助教授になりたくて、遠藤教授に便宜を図らうために、金品を贈っていた」
チャンプ「遠藤の悪事がばれたもんやから、自分も終わりや思いよったんやろな」
しかし、車を運転していたのは篠原なんだから、遠藤が自殺して篠原が巻き添えになると言うのは、なんか変なのでは?
それとも、遠藤が「かくかくしかじかだから一緒に自殺しよう」と言い出して、篠原が「はい、よろこんで!」と、居酒屋の店員のように快活に返事をして海へダイブしたとでも言うのだろうか?
記事を読んだだけで、ハングマンならおかしいと勘付くところだが、何故か今回はET以外、新聞を鵜呑みにして誰も疑義をはさまない。

ET「飛び出してきた車、紺のセダンだったな? あのまま、紺のセダンが遠藤をつけていた」
チャンプ「ほな、その車がやったちゅうのか?」
ETが気になったのは、あの割り込んできた車だった。
さすがET、一瞬見ただけだが、そのナンバーを正確に記憶していた。そしてそのナンバーから、車の所有者を割り出し、マリアと一緒にその住所へ向かう。

マリア「確か、このあたりよ。ああ、あのビル、あのビル」
ET「え、あのビルは、設計事務所だったはずだがな」
マリア「そうね、最近変わったのかしら」
それは、野村興信所と言う会社で、確かにビルの前に止めてある車は、あの紺のセダンだった。
やがて折り良く建物から三人の男が出てくる。マリアは急いでカメラのシャッターを切る。
代々木競技場で園山とチャンプが会っている。
あろうことか、園山は、遠藤たちを自殺に見せかけて殺したのはチャンプたちではないかと疑いの目を向けてくる。

チャンプ「な、あほな、殺してな野暮なことやりますかいな」
園山「君たちならやりかねん」
チャンプ「くどいなぁ、やってへんちゅうのに」
園山「しかし、遠藤は自殺するような男じゃないぞ。
ハンギングのアイディアにつまって手を抜いたんだろう?」
この園山のきつい一言、実際、マンネリ傾向にあるハンギングに対する番組スタッフの自虐的な台詞とも取れて面白い。
園山「ゴッドも立腹されておる」
チャンプ「疑い深いお人やなぁ、そりゃどない思おうとそっちの勝手やけど」
園山「最悪、解散もありうる」
チャンプ「解散? ははっ、結構だっせ、世の中他にゼニ儲けはなんぼでもありまっさ」
園山の脅しに軽く応じるチャンプであったが、
園山「ハングマンを甘く考えてもらっちゃ困るね、解散と言うことは君たちもこの世から消えてもらうと言うことだよ。ゴッドは秘密保持のためには情け容赦ない人だ」
チャンプ「そんな水臭いこと言わんと……」
人が死んでいるだけに、今回の園山は厳しい態度を崩さず、チャンプがエッチな店に行こうと持ちかけても、相手にせずにさっさと帰ってしまう。
当然、追加の調査費など出ず、ハングマンは遠藤分のギャラだけで事件の調査を継続することになる。
マリアの調べで、野村興信所は、所長で、元警視庁4課の刑事・野村、部下の調査員の松田と小林の三人で経営している、表向きは普通の興信所であることが分かる。
そんな中、園山から電話があり、また別の事件を調べて欲しいと言う依頼が来る。
それは、ゴルフ場開発に絡む詐欺事件を担当している地検の春川検事の調査だった。
ハングマンがざっと調べただけで、春川が、事件に関与している梅沢代議士と友人であることから、詐欺事件をうやむやにしようとしているらしいことが分かり、他にも、検事の地位を利用して様々な悪事を働いているようで、ハンギングの対象に十分なりうる悪党であった。
しかし、ストーリーの都合とはいえ、まだ(ゴッドが)ハングマンのことを疑っている段階なのに、園山が新たな仕事を依頼してくると言うのは変だよね。
それはともかく、チャンプたちは春川のマークを開始するが、ETだけは遠藤の事件が気になると言って、ひとりで再度野村興信所に向かう。
ETが興信所のビルに来ると、ちょうどパトカーが一台前に停まっていて、事務所から若い女性が騒ぎ立てながら警官に連行されていくところだった。
どうやらその女性、何かクレームを付けに来て、もてあました野村が110番通報したらしい。

で、その女性、井口真紀を、大好物の高沢順子さんが演じていたので、俄然、やる気が沸いてくる管理人であった。
ET、その女性がバーでひとり飲んでいるところにさりげなく近付く。

ET「バーボン、彼女と同じ奴……名前は?」
真紀「次は電話番号、最後にホテルに行かないか……男の言う台詞はみんなおんなじだわ」
ただのナンパだと思ってうんざりする真紀。
ET「おあいにくだが、はずれだな、大学の事務局に勤める真面目なOLが、ひとりでヤケ酒とはね。その訳が知りたいんだ」
ET、いつも使っているフリーのルポライター結城の名刺を取り出して見せる。

真紀「フリーライター?」
ET「トップ屋だ、いま、野村興信所を調べている」
名刺を見る高沢さんの横顔が綺麗なので貼りました。

ET「君が警官に引っ張り出されるところを見たもんでね。何をやろうとしてるんだ」
真紀「復讐」
ET「さてはその美しい肉体を奪われた?」
真紀「うふっ、そんなロマンティックな話じゃないわ、人殺しよ」
いや、レイプもあんまりロマンティックな話題じゃないと思うんですが……。
そして、その恋人と言うのが、あの篠原講師だったのだ。
もっとも、ETはそのことも調べた上で接近したらしく、それを聞いても眉一つ動かさない。
同じ頃、ヌンチャクはバイクで春川検事を尾行していた。
ところが、農政会館に行き、梅沢代議士に会おうとした春川は、エレベーターの前で二人組の暴漢に襲われ、地下駐車場へ連れて行かれる。
ヌンチャクが急いで追いかけると、意識を失った春川が、車の後部座席に閉じ込められていた。
ヌンチャク、暴漢と格闘するが、銃で左肩を撃たれてしまい、まんまと逃げられてしまう。おまけに、二人はホッケーマスクのようなものをつけていたので、相手の顔も分からずじまいであった。
仲間がそんな目に遭っているとも知らず、ETは引き続き真紀と一緒に飲んでいた。

真紀「篠原は確かに助教授になりたがってたわ、だけど、遠藤にお金を渡したこともないし、一緒に自殺する理由もないわ」
ET「恋人が知らない一面もあるだろう」
真紀「私たち、一緒に暮らしてたのよ!」
ET「殺されたと言う理由は?」
真紀「保険金よ」
真紀によると、昨日、二人の男が篠原の実家の母親を訪ねて来て、借金の返済を求めたのだと言う。

母親「3000万? 息子が、こんなに?」
松田「○○金融から借りてたんですよ。我々はその金融会社から委託されて取り立てにあがったわけなんですよ」
息子が死んだ直後に、いきなりそんなことを言われて狼狽する母親だったが、二人は篠原が3000万の保険金に入っていたことまで調べていて、それを借金の返済に充てろと言い出す。

真紀は、ちょうどその時篠原の実家にいて、そのやりとりをすっかり聞いてしまったのだ。
真紀「その人たちが、野村興信所の社員だったのよ。それで今日、野村興信所に押しかけて行ったの」
真紀は野村に借用書を見せろと要求するが、配偶者でもない人間に見せる必要はないと突っぱねられ、3000万も、遠藤へのワイロに使ったのだろうとあしらわれる。
真紀がしつこく食い下がって帰ろうとしなかったので、営業妨害だといって野村が警察を呼び、さっきの騒動になったと言うわけなのだ。
なにしろ相手は警視庁の元刑事である。一筋縄でいくような男ではない。
ET「分かった、動いてみよう。俺も自殺じゃないと思ってる」
真紀「警察の手を離れてるのよ。ほんとにペンの力で叩けるのかしら」
ET「ペンは剣よりも強し、まぁ、見ててよ」
自信たっぷりに請け負ってバーボンを飲むETだったが、

真紀「……」
ET「あんまり信用してない顔つきだな」
真紀「そっ、今の私は何にも信用してないの……この世の何も、そして誰も……」
寂しそうにつぶやいて、グラスを口に運ぶ真紀だった。
なんとなく楽しい気分になって自宅マンションに帰ったETだったが、マリアから電話でヌンチャクが撃たれたと知らされ、浮かれ気分もたちまち吹っ飛ぶ。
ヌンチャクは、園山の手配した病院に担ぎ込まれていた。

三人が深刻な顔を、眠っているヌンチャクの傍らに並べていると、異例なことに園山が入ってくる。
チャンプ「園やん」
園山「地検の春川が死んだ」
チャンプ「……」
ショッキングな知らせに、さすがのチャンプも声が出ない。
園山「酔払い運転で、土手のコンクリートに激突した。一度ならず二度までターゲットに死なれた、私はもう君たちを庇うことは出来んな」
チャンプ「どういう意味や、園やん」
マリア「解散?」
ニコリともせず、最悪の事態まで仄めかす園山。
ETは、自分たちが真犯人をハンギングすると約束し、園山に猶予を請う。
翌日、ビルの屋上から、向かい側の遠藤の未亡人の部屋を監視・盗聴しているチャンプとマリア。
未亡人は、夫が死んだばかりだというのに若い男を連れ込んで楽しんでいた。

チャンプ「おい、マイクちゃんとセットしてや、わしらの首がかかっとんのやから」
マリア「分かってるわ」
チャンプ「まだまだやり残したことがいっぱいあんのやから、しのぶやろ、明子やろ、幸子やろ、レイコやろ……」
葉巻を咥えて太平楽なことを言いながら、

どさくさにまぎれてマリアのお尻を思いっきりタッチするチャンプ。
マリア「キャアッ!」
チャンプのセクハラには慣れているマリアが思わず叫んで立ち上がったほど、実にねっとりした手の動きであった。
さすがセクハラ大王・チャンプである。
一方、ETは真紀のマンションを訪ねていた。

ET「遠藤夫人は男を咥え込んでる」
真紀「ほんとに?」
四方山話の末、仕入れてきたばかりの情報を披露するET。
ET「遠藤が死んだことで、かなりの額の遺産が彼女のものになる」
真紀「やっぱりお金のことで?」
ET「野村興信所に殺しを頼んだ可能性があるんだ」
ETは真紀に頼んで、その場で野村に電話を掛けて貰う。

真紀「篠原は自殺ではなく、あなたたちが殺したんじゃないかと思って」
野村「なにぃ」
真紀「遠藤教授を殺すついでにね。依頼人は教授の奥さんかしら」
野村「馬鹿なことを言ってんじゃない。切るぞ!」
野村を演じるのは、シリーズではお馴染みの入川保則さん。

真紀「待って、週刊誌のトップ屋が私のところに来たの。トップ屋も自殺じゃないって疑ってるの……話したわよ、あなたたちのこと、いけなかったかしら?」
野村「別に、我々にやましいところはない」
そう言いつつ、トップ屋の名前を知りたがる野村に、真紀は結城二郎と言う名をズバッと教えてやる。
ET「主演女優賞ものの演技だったよ」
真紀「助演女優賞でしょ、主演はあなた……必ず、真相突き止めて」
真紀の真剣な眼差しに、日に焼けた気さくな笑顔で応えるETだった。
その後、遠藤未亡人のところに野村から電話がかかってくる。夫殺しの報酬は3000万の約束だったらしいが、野村たちが更なる金を要求してきたのだ。
彼らのやり取りの音声は勿論、未亡人が銀行から金を引き出して、

公園で松田たちに渡すところまで、あますところなく写真に収められていた。
しかし、普通、金の受け渡しはこんな外から丸見えの場所ではやらないよね。

ET「亭主殺しを依頼したは良いが、そのあと強請られたって訳か」
チャンプ「そういうこっちゃ」
マリア「死んだ遠藤教授は、奥さんの浮気調査を野村のところに依頼してるわ」
チャンプ「つっ、女ってのはしたたかなもんやな、わいもこれからは気ぃつけよ」
野村たちが、とあるクラブで額を集めて、悪事の成果をヒソヒソ嬉しそうに話していた。
小林「遠藤と篠原」
松田「それに春川検事」
野村「合わせて1億2千万」
松田「良い商売ですね」
小林「ワルを始末してすぐ金になるんだから」
さすがに、そんな風に自分たちの悪事を分かりやすく説明する、時代劇の悪代官と悪徳商人みたいな奴はいないと思うんですが……。

有頂天の彼らの前にスッと立ったのが、ETであった。
ET「野村興信所の皆さんですね、興信所ってのは儲かるんですね」
野村「何だね、君は」
ET「私も探偵に鞍替えしますかね、トップ屋から」
小林「トップ屋?」
野村「あんたが、結城さんかね」
ET、さっさの金の受け渡し現場の写真を三人に見せてから、「近いうちに伺いますよ、商談にね」と、脅迫を示唆してから、風のように立ち去る。
その後、チャンプの調べで、春川検事殺害の依頼主が、ほかならぬ梅沢代議士だということが判明する。現在の日本ではまずありえないことだが、警察が、二人の癒着を内々に捜査中で、それが露見するのを恐れた梅沢が春川を始末させたのが真相だった。
ETは、時を移さず野村の事務所を訪ね、ネガと電話のテープと交換に、5000万の大金を要求する。
野村「拒否したら?」
ET「あんたの顔が週刊誌のグラビアを飾ることになるな」
ETはここに振り込んでくれと口座番号を書いたメモを残して、さっさと帰っていく。
だが、ハングマンが真に期待するのは、彼らが暴発してETを始末しようと動いてくれることであり、素直に取引に応じられては困るのである。しかし、利に敏い野村たちは、大人しく5000万を払って穏便に話をまとめようとする可能性があった。

チャンプ「依頼者が来る、ゼニになる、そして悪党をやっつけるという大義名分が立つ。そしたら必ず出てきよる」
ET「今度はチャンプの出番だな」
ヌンチャク「なぁーるほど、罠に嵌める」
マリア「でも奴らも相当のプロよ、危険じゃない?」
ET「なぁーに、こっちはその上のプロだよ」 心配するマリアに、こともなげに言ってのけるETが実にカッコイイ。
さて、今度はチャンプが関西から来たサラリーマンという触れ込みで野村興信所を訪ね、結城を始末してくれと依頼に行く。
会社の金を使い込んだことを結城に知られ、そのことで強請られているという筋書きだった。

チャンプ「なんとかしてもらえまへんやろか、ゼニやったらなんぼでも払いますさかい」
野村「この男とは今日、何処で?」
チャンプ「はい、今晩8時に芝浦の倉庫街で……こいつに1000万渡すことになっとりまんのや」
野村「ま、始末するなどと言う物騒なことは出来ませんが、二度と強請りをしないよう話を付けてあげましょう」
チャンプ「ほんまでっかいな?」
野村が当たり障りのない表現で引き受けると、チャンプは大仰に喜び、その場で300万の小切手を切って差し出す。
チャンプ「こんなもんでどうでっしゃろ?」
野村「いや、こんなには……」
チャンプ「何を言うはりまんのや、ずっと外道に吸い上げられてまんねや、300万ぐらい安いもんだっさ」
強欲な悪党が思わず遠慮するほど気前のいいところを見せるチャンプ、帰り際にはポンと松田たちにタバコ代として3万円を渡して、ますます金離れの良さを印象付ける。
しかし、わざわざ関西から、何のツテもなしに、しかも、野村たちにとって実に都合の良いタイミングでETを始末して欲しいとやってきた時点で、野村たちは大いにチャンプのことを怪しむべきだと思うのだが……。
せめて、梅沢代議士から紹介されたとか何とか、そういうディティールが欲しかったところだ。
その代わり、

チャンプが帰ったあと、野村が部下に命じて、小切手の確認をさせるというシーンが出てくる。
松田がすぐ銀行に電話を掛けるのだが、その電話にはあらかじめ細工がしてあって、路上で待機しているマリアの車につながるようになっていた。

松田「もしもし、東和銀行ですか」
マリア「はい、大阪支店でございます」
松田「お宅の口座に小出英樹氏の口座はありますか? 小切手を受け取ったもので、残高を確認したいんですが」
マリア「はい、少々お待ちください」
銀行員に扮して応対するマリア。
相手を待たせている間に、当のチャンプが戻ってきて、

チャンプ「どや、反応は?」
マリア「効果覿面よ」
思いっきりケツを触られたと言うのに、にこやかな笑顔で応じてくれる菩薩様のようなマリア。

色っぽいウインクのおまけつき!
マリア「お待たせ致しました。小切手の金額はおいくらですか」
松田「300万ですが」
マリア「はい、だいじょぶでございます」
松田「どうもありがとう」
野村たちはあっさり信用するが、しかし、電話で確認なんてまだるっこしいことをせずに、直接小切手を現金化しようとしていたら、どうするつもりだったのだろう?
今回は、資金が乏しいから、300万の見せ金を用意するゆとりはなかっただろうから、困ったことになっていたのではないだろうか。
ま、既に銀行が閉まっている時間帯を狙って、チャンプが訪問したとも考えられるが。

マリア「オッケイ!」
チャンプ「これがほんまもんなら、ハングマンなんかやめてんやけどなぁ」
小道具の小切手帳を放り投げてしみじみとぼやくチャンプ。
しかし、実際、今回は一回分の報酬でほぼ三回分の仕事をこなしたことになるから、いつも以上の薄給だったことは確かで、チャンプがぼやくのも頷ける。相手を信用させる為に、3万円も使ってるしね。
同時に、ETたちはともかく、チャンプのような男が無理してハングマンのような割に合わない仕事を続けているのが疑問に感じられてしまうのが、このドラマの欠陥になっていると思う。
そういう意味では、2以前のように、もっと高額の報酬を貰っている設定にすべきだったと思う。
ここから、いよいよ、真のハンギングの時間となる。
園山の「ハンギングのアイディアにつまって手を抜いたんだろう?」と言う侮辱に反論する意味でも、今回は独創的なハンギングを期待したのだが……。
夜、芝浦の倉庫街でETが待っていると、果たして、欲に目の眩んだ野村たちが襲い掛かってくる。

ETも、そのことを予期して拳銃を用意しており、「ハングマン」では珍しい銃撃戦が演じられる。
無論、野村たちはハングマンの敵ではなく、三人はあっさり彼らの手に落ちてしまう。
で、気になるハンギングだが、

倉庫に大きな氷の塊を置き、その上に、縛り首のロープをつけた三人を裸足で立たせて、自白を強要するという、まさにマンネリズムの極致のような荒っぽい方法だった。
氷の上に移動させたあと、全員のズボンの裾を捲り上げてやるという芸の細かさは良いけれど。
野村「警察が手を出せない悪党を始末しただけじゃないか」
チャンプ「あほう、そらわしらのやっとこるこっちゃないか、紛らわしいことすな、ボケェ」
マリア「社会正義じゃなくてお金のためでしょう」
野村「違う、金は二次的な問題だ。俺たちはあくまでも……」
諦め悪く、なおも抗弁する野村だったが、

野村「あちちちちっ!」
冷たいと言うので、チャンプが馬鹿でかいライターで足元を炙ってやると、今度は熱い熱いと悲鳴を上げる。
チャンプ「こら、はっきりせい、はっきり、熱いか冷たいかどっちや?」
野村「いや、冷たい」
小林「足が凍っちまうよ」
ならばと、今度は、

強力なガスバーナーで親切に氷を溶かしてやるチャンプたちであった。
三人が「熱い冷たい熱い冷たい」と繰り返したり、

野村「……」
首が絞まって苦しそうに目を剥くところなど、一応、コミカルに撮ってるつもりらしいが、これじゃ、まるっきりナチスの拷問で、笑うに笑えない。
途中から、逆に、ETたちのほうが悪人のようにも見えてきて、はっきり言って最低クラスのハンギングであった。

やがて、観念した三人が白状し始めるが、それは、スピーカーによって外部に大音量で流され、ETからの手紙で近くまでやってきていた真紀の耳にも聞こえるのだった。
彼らの告白によって、遠藤、篠原、そして春川を殺したこと、篠原の借用書も自分たちがでっち上げたこと、などがはっきりする。
惨めな姿で命乞いする三人を、他の野次馬と共に見詰めている真紀。
やがてパトカーのサイレンの音が近付いてくるのと入れ替わりに、チャンプたちが速やかにその場から去って行く。

ETだけは最後まで現場近くに残り、真紀が倉庫から出てくるのを見届けてから、満足げに微笑むと車を発進させるのだった。
これっきり、ETが真紀の前に再び姿を見せることはない。
何度も書くが、このストイックさこそが「ハングマン」シリーズの最大の魅力なのである。
以上、プロットに工夫は見られるが、全体的に作りが雑で、お色気シーンもなく、肝心のハンギングもつまらないと言う、全方位的な駄作であった。
高沢さんが出てなかったら、喜んでスルーしていただろう。
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