第30話「カッパに負けたイナバウアー?!~河童沼殺人事件」(2006年7月22日)
冒頭、高村がセロリを食べながら歩道を歩いていると、いつものように雷が元気良く後ろから自転車でやってくる。

雷「高村さぁ~ん、おはようございます」
高村「あは、おはよう」
挨拶しながら自転車から降りようとする雷だったが、スカートの裾がサドルに引っかかって、ちょっぴりデンジャラスな状態になる。

雷「それってセロリですよね。今、ポッケから出しませんでした?」
高村「ああ、知らないんだ、生まれてないんだ、あのドラマね」
雷「ドラマ?」
高村「草刈正雄がさぁ、いつもセロリをジーパンのポケットに突っ込んでさ、時々出して塩を掛けて食べる。知らない? 『プロハンター』って」
ドラマのキャラクターが、俳優が実際に演じていた別のドラマのことを持ち出すと言う、ケータイ刑事ならではの豪快な楽屋落ち。
ちなみに「プロハンター」、管理人も少し見たことがあるが、あんまり面白くなかった……

雷「プロパンガス?」
高村「プロパンガス? 誰がパンガスって言った?」
雷「うふふっ」
高村が笑いながら言い返すと、雷も釣られて「素」で笑ってしまう。
こういう、大映ドラマだったら監督に刺し殺されそうな「ゆるさ」が、ケータイ刑事の魅力なのである。
と、雷のケータイに、河童沼で男性の変死体が発見されたとの知らせが入る。

雷「河童沼?」
高村「河童といえばセロリだな」
雷「え、そうでしたっけ?」
高村「そうだよ、好物のセロリを村の畑を荒らして盗んで食べるってやつだよ」
雷「それってキュウリじゃなかったっけ?」
高村「セロリだよ」
雷「キュウリです」
二人で、「セロリ」「キュウリ」と延々言い続けると言う、意味不明のオープニング。
河童沼は人家もほとんどない山奥にある小さな沼で、亡くなった男性は水泳パンツ一枚の半裸で、競泳用のゴーグルをつけ、ブリッジの途中で崩れたような、奇妙な仰向けの姿勢になっていた。

柴田「死因は溺死、死亡したのは赤坂大学4年、水泳部の荒川静雄、死亡推定時刻は昨夜11時ごろと判明しました」
高村「やっぱりそうだ、次期水泳のオリンピック候補にもなった荒川静雄選手だ。この前、ディフェンディングチャンピオンの北島田康介にね、イナバウアー泳法で勝った人だよ」
イナバウアーか……(遠い目)
その死体の異様な姿勢は、そのイナバウアー泳法のポーズなのだろう。

柴田「どうやら酒盛りをした後、この沼に入ったものと思われます」
柴田が指し示したほうを見ると、確かに、筵が敷いてあって、一升瓶や杯などが置かれていた。
雷「でも杯が二つあります。って言うことは、誰かと一緒に飲んでいた、その人はどこ行っちゃったんでしょう?」
高村「じゃ、もう一人の人間が溺れさせたって可能性もあるわけだ」
雷が腕を組んで考え込んでいると、不意に、彼らの周りから「ケーッ、ケーッ、ケーッ、ケーッ!」と言う、不気味な鳴き声が聞こえてくる。
声「ケーケッケーッ! 探さんほうがええぜぇ~」

緑川「ケーッ、ケーッ、ケーッ、ケェッ」
やがて彼らの前に、声の主、緑色の服を着た怪しい老人が現れる。
この近所で民宿をやっている緑川皿蔵であった。彼が死体の第一発見者であった。
演じるのは、「仮面ライダー」第11話のゲバコンドルの声でお馴染み、谷津勲さん。
そう言えば、ゲバコンドルが襲うのが花嫁に扮した「緑川ルリ子」なんだよね……。
緑川は、今度の事件は、河童様の仕業に違いないと断言する。
雷「河童様?」
緑川「この沼には……」
老人はそう言って、この土地に伝わると言う伝説を語りだす。

緑川「いにしえより、河童様が住むという伝説があるのじゃ」

緑川「そして50年に一度、河童様はその姿を現し、人間と相撲をとったり泳ぎを競い合ったりすると言われておるのじゃ、ケーッケッケッ」
河童に扮した柴田と、生前の荒川青年が抱き合っていると言う、おぞましい再現映像。
荒川青年は数日前から緑川の民宿に泊まっていたが、昨夜は出掛けたきり帰ってこなかったと言う。

緑川「おそらく、河童様と酒盛りをして酔った勢いで泳ぎ比べでもしてしもうたんじゃろ」
緑川、勝手にそう決め付けると、しみじみと手を合わせて見せる。
と、高村、筵のそばにセロリの切れ端が落ちているのに気付く。

高村「これは」
緑川「河童様の酒のつまみじゃな」
高村「ほれ、河童と言えばセロリでしょう?」
雷「うそぉー」
雷、はなはだ納得行かない顔になる。
高村「ねえ、おじさん、河童と言えばセロリでしょ」
緑川「うん、セロリ以外に何が考えられる?」
高村に聞かれた緑川も、即座に頷くと、どこからかセロリを取り出して口に入れる。
雷「だから、キュウリ!」 まるで不条理劇の中に迷い込んでしまったような雷、カメラに向かって懸命に叫ぶ。
このしかめっ面がめっちゃ可愛いのである!

高村「おじさん、どうしてセロリなの?」
緑川「いや、わしはなぁ、昔から草刈正雄の大ファーンでな、正雄はわしの息子のようなもんじゃ」
高村「そうなの?」
緑川「ああ、んで昔、ドラマで正雄がこれをこうやって食うておった」
高村「うわーっはっはっはっ」

高村「見てたのー?」
緑川「ああ、見てた見てた」
正雄、いや、高村と緑川はすっかり意気投合して、実の親子のように抱き合って大笑いする。
そう言えば、二人とも、似たような顔の形してるよね。
すっかり置き去りにされた雷、「あのー、盛り上がってるところ悪いんですけど、あの沼にはほんとに河童がいるんですか?」と、横から緑川に質問する。
緑川「ああ、おる。なぁ、正雄?」
高村「ああ、おるおる。おるよ」
雷「……?」
と、今度は柴田が、沼に向かって消えている変な足跡を発見して騒ぎ立てる。
緑川「ああ、やはり河童様じゃ」
雷「そんな河童なんている訳ないです」
緑川「ケェーッ!」
全否定する雷を威嚇する谷津さんが可愛い。
雷、その緑川をゴーグル越しに見ているうちに、それに「度」が入っていることに気付く。
その後、二人は老人の営む民宿へ行き、荒川青年の泊まっていた部屋を見せてもらう。

高村「卒業研究・河童沼の生態調査・河童は理論的に存在するのか……」
雷「荒川さんはあの沼を調査してたんですね」
研究ノートを熱心に読んでいる高村のそばで、荒川青年の眼鏡を目に当てて、まるでアニメのキャラのようなデカ目になる雷。
そこへ柴田から電話があり、荒川青年の胃の中にあった藻と、沼に生えている藻が一致したと言う。
柴田「それから、被害者の右目にコンタクトレンズが入っていました」
雷「右目にだけですか?」
雷、それを聞いて部屋にあったコンタクトレンズのケースを開くが、中は空っぽであった。

高村「ゴーグルは逆さになってたよね、そこから水が入ってコンタクトレンズが流れたんじゃないか」
雷「でも、ちょっと待ってください、泳ぐときにコンタクトつけますか」
高村「つけるよ、ゴーグルつけてたらコンタクトは落ちない」
雷「それならもっと変です。その場合、ゴーグルには度が入っていない筈、でも、あのゴーグルには度が入っていました」
雷、いわば眼鏡を二重に掛けている状態になると、死体の不自然さを指摘する。
さらに雷は、荒川青年の体に付着していた藻がドロドロになっているのを見て、何かの熱を加えられたのではないかと推理する。
CM後、雷は民宿の裏手にある「河童の湯」なる施設へ向かうが、それは、裏庭に四角い小さな浴槽が置いてあるだけの、客を舐めた「温泉」だった。

雷「高村さん、これって藻じゃないですか」
高村「まさか、さっきの沼の……」
雷は、浴槽の近くの地面にドロドロになった藻が落ちているのに気付いて高村に知らせる。
管理人は、しゃがんだ唯のフトモモが剥き出しになったのに気付いてキャプする。
続いて高村が、行方不明になっていたコンタクトレンズを発見する。
そして今回は、雷の前に高村が犯人を糾弾するシーンとなる。
無論、高村が会いに行ったのは、緑川老人であった。他にキャラいないもんね。
高村は、あの夜、緑川が荒川をしたたか酔っ払わせてから、沼の水を入れておいた浴槽に沈めて溺死させ、その死体を河童沼まで運び、水着に着替えさせてゴーグルをつけ、酒盛りの痕跡を残し、あたかも荒川青年が沼で溺れ死んだように偽装していたのだと指摘する。
部分的には違っているが、相棒の推理としては極めて正解に近い推理だった。
緑川「何のために、あの青年を殺すんじゃ?」
緑川が動機の点を追及すると、雷も静かに高村の横に立ち、

雷「荒川さんはあの沼に河童がいないことを証明しようとしていました」
高村「そうなれば、お父さんの商売、上がったりだ」
緑川「ケェーッ!」
高村「これは荒川さんのコンタクトレンズです。おそらく殺害時に浴槽に落ちて、排水口から出たんだ」
だが緑川、わざとらしく咳き込んで見せながら、自分のような老人に、荒川青年の体を沼まで運ぶことは不可能だと反論する。

高村「いや、それはあの」
緑川「言いがかりもええ加減にしろ! お前を息子だと思ってたワシが馬鹿じゃった。今日限り、親子の縁を切らせてもらう」
高村「お父さん……」
緑川「けえれっ、けえれっ」
高村、ショックを受けたように後ずさりながら出て行くが、
雷「元々親子じゃないし!」
雷、カメラに向かって悶えるように叫ぶ。
その後、かなり激しい雨が降ってくるが、撮影、いや、捜査は続行される。
そして雷は、沼の近くの山道の端に転がっていたドラム缶を見て、死体移動の方法を見抜く。
雷「謎は解けたよーっ! ワトソンくーん!」 傘を差したまま、周囲の木々に向かって決め台詞を放つ雷であった。
二人は民宿に戻ってくると(何故か、雨はやんでいる)、いつものお仕置きを発動させ、謎解きとなる。
と言っても、今回は謎らしい謎は既に高村が解いているので、雷が明かすのは死体移動トリックだけ。
まず、ラーメン屋の親父に台車に乗せたドラム缶を運んで来させる。

雷「お疲れです、ありがとうございました」
いさまらだが、雷ってスタイル良いよね。おまけに性格も良いときたもんだーっ!

雷「ここの庭には、元々このドラム缶があったんですよね」
そう、「河童の湯」と言うのは、あの小さな浴槽ではなく、ドラム缶の風呂だったのだ。
雷は、ドラム缶に荒川青年を押し込んで溺死させ、湯を抜くと、そのままドラム缶を転がして河童沼まで運んだのだと指摘する。
しかし、オリンピック候補にもなった水泳選手を沈めて殺したり、ドラム缶と人間の死体を一緒に転がしたりできるほどの力があるのなら、普通に荒川青年の体も運べていたような気がするんですが……。
あるいは、無理にドラム缶を使わずとも、一輪車を使えば簡単だったろう。
それでも緑川老人は罪を認めようとしなかったが、

雷「ここは、お風呂を沸かす時についた、焦げてる部分です。ほんとうなら熱くて触ることのできないドラム缶の底から、あなたの指紋が見つかりました」
雷の示した面白くもなんともない証拠で、ジ・エンド。
しかし、以前から風呂として使っていたのなら、主人である緑川の指紋がついていたとしても不思議ではないし、単に風呂として使うのをやめて捨てただけかもしれないのだから、それで緑川老人が死体を運ぶのに使ったと言う証拠にはならないだろう。
それ以前に、老人が荒川を溺死させたという証拠すらないのでは? ほんとに酔っ払って溺死したのを、河童の仕業に見せかけるために運んだだけと言う可能性だってあるだろう。
ま、そんなことより管理人、こういうシーンを見ると、反射的に雷の背後に回り込みたくなる衝動に駆られるのだが、病気だろうか?
ちなみに肝心の動機だが、
緑川「あいつは、わしらの村の秘密を暴こうとしたんじゃ、たかが、卒論のために……許せんかったんじゃ。ケーッケッケッケッ」 毎度お馴染み、
「そほんなことで殺すなよほぉ、ジュン~!」と叫びたくなるようなものだった。
いや、そもそも誰も河童の存在なんて本気で信じてないのだから、別に荒川青年に何を書かれようが問題なかったのでは?
むしろ、事件を知って民宿に予約の電話がジャンジャンかかってきたことからも分かるように、河童の仕業だと喧伝して客を増やすために起こした営利目的の殺人だったと言うほうが納得できるけどね。
つーか、そもそも、宿泊客が溺死した民宿に泊まりに行こうとする物好きがそんなにいるだろうか?

高村「緑川皿蔵、荒川さん殺害容疑で逮捕する」
緑川「息子に捕まって本望じゃ」
高村「お父さん」
緑川「正雄っ」
高村、観念してべったり座り込んだ緑川に歩み寄るが、花も実もある高村、手錠の代わりにセロリを差し出し、一緒にそれを齧るのだった。
雷「だから、親子じゃないって!」 しつこくカメラに向かって叫ぶ雷が可愛いのである!

雷「ケッケーケ、ケッケーケ、ケッ……」

雷「ケッケーケケッ」
ラスト、河童の足のような形に切り抜いたウレタンか何かの足型を履いて踏み踏みしながら、可愛らしく河童の鳴き声を真似ている雷。

高村「うまいじゃないか」
雷「ケッケーケ、ケッケーケ、ケッ」
言うまでもなく、その足型で緑川老人が足跡をつけて、河童の存在をアピールしていたのだった。
と、背後の噴水で水音が弾ける。

高村「あれ、今何か音しなかった?」
雷「ケケッ?」
高村「まさか、河童?」
雷「ケケーッ?」
高村「つっふっ!」
何を言われても「ケェッ」としか言わない雷を見ているうちに、高村も、と言うか、草刈さんも思わず吹いてしまい、

高村「君が投げたんでしょう?」
雷「ケェーッ」
高村「もう、疲れた、帰ろう」
雷「くふっ」
お互いほとんど「素」で笑うと、高村は「この番組にはついていけない」とばかり、苦笑いを浮かべて帰っていくのだった。
で、この、河童の鳴き真似をしながら踊っている雷が、めっちゃ可愛いのである!
文字ではその可愛らしさが伝わらないので、是非実際に映像をチェックしていただきたい。
ちなみに小出さん、河童の鳴き真似をしろと監督に言われて困ったが、谷津さんの鳴き方を真似したそうである。
つまり、雷は、ゲバコンドルの鳴き真似をしたのである!(註・違うと思います)
以上、はっきり言ってミステリーとしては全然面白くなく、谷津さんのユニークなキャラや、草刈さんとのやりとり、雷の河童の真似とか、そういうお遊びの部分だけが楽しいエピソードであった。
なお、谷津さんはこの2年後の2008年に他界された。ご冥福をお祈りします。
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