第42回「翔べ 人間大砲コセイダー」(1979年4月20日)
冒頭、21世紀の時空管理局の一室で、雑談しているゴウたち。
ビックラジィーが、遊園地で開催されている恐竜展が見たいと言うと、テツも身を乗り出し、

テツ「なんでもね、その展覧会の目玉は南極の氷の中から卵と一緒に発掘されたニッポノサウルスの子供だそうだ」
モリィ「そうそうそう、確かさぁ、生きてる時のまんまの姿で掘り出されたって奴だろ。まさか生きてるなんてことはないだろうよ」
ゴウ「いや、そんなことはわかんないぜ、南極の氷が天然の冷凍カプセルの役目を果たしてる可能性だってあるんだよ」
アルタシヤ「なんだか神秘的な話ね」
そういうアルタシヤ自身、白亜紀の時代にゴドメスによって氷漬けにされて、21世紀になってから発掘されて生き返ったと言う、とんでもない経験をしてるんだけどね。
だから、厳密に言えば、アルタシヤはこの惑星で、もっとも長い時間生きている生物とも言えるのだ。

そこへ珍しく私服姿のバンノが、小さな男の子を連れて入ってくる。
モリィ「おお、義教くん、久しぶりだな」
義教「おはようございます」
テツ「あれ、今日は休暇じゃなかったんですか」
バンノ「いや、それがなぁ、こいつに、たまにはみんなにあわせろってせがまれちゃってねえ」
テツ、良いものをあげると言って義教を部屋の隅に連れて行くと、

当事、市販されていたであろうコセイドン号の模型を取り出してプレゼントする。
それを見た義教の顔が、「なんだ、スポンサー対策か……」と、露骨に白けるのを、カメラはしっかり捉えていた。

テツ「お兄ちゃんが作ったんだ」
義教「……」
コセイドン号を受け取るが、義教は仏頂面のまま。

義教「わあ、ありがとう!」
と、ここで誰かの指示を受けたかのように、唐突に、満面の笑みを浮かべてお礼を言う義教であった。
初めて義教を見たアルタシヤが、ゴウの腕を引っ張りながら、小声で訊ねる。

アルタシヤ「ね、ね、隊長には子供さんがいらしたんだっけ?」
ゴウ「ああ、違うよ、義教君はね、隊長の妹さんの一人息子なんだ。だけど、去年、交通事故でお父さんを亡くしてね……」
義教はバンノのことを父親のように慕い、独身のバンノも義教を実の子供のように可愛がっているらしい。
と、部屋の電話が鳴り、アルタシヤが出る。

アルタシヤ「はい、コセイドン隊です。……はい、ちょっとお待ちください。隊長、警察からお電話です」
アルタシヤ、そろそろ髪切った方が良くない?
電話を変わったバンノの顔が見る見る緊張していく。
バンノ「テツ、ゴウ、殺人事件発生だ。出動」
ゴウ「でも隊長、俺たちはコセイドン隊員ですよー」
バンノ「だから警察から協力を要請されたんだ。殺人犯が恐竜である可能性があるらしいんだ」
とにかく、ゴウとテツは現場に行き、警察と一緒に目撃者……被害者の女性の恋人から事情を聞く。

テツ「あなたの見た恐竜はこれと違いますか」
男性「確かにこの恐竜だったんです」
テツが、ニッポノサウルスのポートレート写真を見せると、男性は迷わず断定する。
お、誰かと思えば、バルシャークの杉欣也さんじゃあーりませんか。クレジットは杉欽也。
二人は、さっき話題にしていた発掘された恐竜のことを連想し、念のため、恐竜展の会場へ向かう。
だが、会場の警備を担当をしている津村と言う男は、最新式のサイボーグガードマンが四六時中監視をしており、昨夜も、何の異常もなかったと断言する。

津村「第一、この恐竜が生きてるなんて信じられますか?」
ゴウ「……」
テツ「……」
が、その津村を演じているのが悪役俳優の伊達三郎さんだったので、こいつが黒幕であることはバレバレであった。
だからと言ってその場でやっつける訳にも行かず、二人は一旦引き揚げる。
ま、実際、その次のシーンで早くもそのことは視聴者に暴露される。
夜、巡回中のサイボーグたちが合図を受けて、恐竜の展示室に集まってくる。

津村「タイムマシンは?」
サイボーグ「いつでも出発できます」
津村「ようし、直ちに作戦開始だ。コセイドン隊をおびき出せ」
サイボーグが隠しボタンを押すと、ニッポノザウルスの展示ケース内に白いガスが噴射され、テツたちが冗談混じりで話していた通り、恐竜が仮死状態から醒めて動き出す。
その後、恐竜展会場の周辺で、ニッポノサウルスによって次々と通行人が襲われると言う通り魔事件が発生する。

男性「やめろーっ、くるなーっ!」
夜道を歩いていたら、等身大の恐竜と鉢合わせしてボコボコにされると言う、なかなか体験できない恐怖を味わう被害者のひとり。
コセイドン隊が知らせを聞いて駆けつけると、既にニッポノサウルスは警官隊に包囲されて大人しくなっていた。
テツはアルタシヤに恐竜展のニッポノサウルスを確認に行かせると、麻酔銃で恐竜を眠らせようとするが、モリィが「私に任せなさい」と、しゃしゃり出て、ひとりで恐竜に近付いて子供をあやすように優しく声を掛けて保護しようとする。
折りも折り、コセイドン隊に、亜空間の密航者を捕らえよと言う命令が下る。
バンノは直ちにテツたちを呼び戻す。
結局、テツは麻酔銃を撃つことになる。

撃たれた恐竜、しばらく両手をばたばたさせていたが、やがて両脇に揃え、

そのまま後ろにぶっ倒れてしまうのだった。
この、ぴょんと跳ね上がった両足が可愛い……。

アルタシヤ「テツ!」
ちょうどそこへアルタシヤがパツンパツンのお尻を振って戻ってくる。
テツ「どうだった?」
アルタシヤ「遊園地から恐竜が姿を消したそうです……それから、ガードマンも全員姿を消してしまったと」
コセイドン号は、そのお騒がせ者のニッポノサウルスを積んで、時空トンネルに入る。
出動のついでに白亜紀に帰してやる為である。
ところが、白亜紀まであと3分と言うところで、津村から通信が入る。
津村「コセイドン号に告ぐ、直ちにエンジンを停止しろ。バンノ隊長、チャンネル5を見たまえ」
何事かとチャンネルを合わせると、モニターに、津村たちに捕まっている義教の姿が映し出される。

バンノ「おおっ 義教!」
豪胆なバンノも、さすがに顔を歪ませる。

津村「ハッハッハッ、と言うわけだ、直ちにエンジンを止めろ、さもないと可愛い甥御さんの命はないぞ」
バンノ「ぐぎーっ!」
可愛い甥っ子に銃口が向けられるのを見て、歯軋りして悔しがるバンノだが、どうしようもない。
バンノ「テツ、エンジン停止」
テツ「了解、エンジン停止」
亜空間トンネルの一点に静止するコセイドン号。
津村「我々には時空レーダーの備えがある、もしその空間から白亜紀に一歩でも近付いてみたまえ」
義教「おじちゃん、助けてーっ!」
バンノ「貴様の目的はなんだ?」
津村「世界一の金持ちにさせて貰う。スーパーウランを頂いてな」
バンノ「ウランだと?」
津村は哄笑を響かせながら一方的に通信を切る。
電波の発信源を辿ると、彼らがいるのは、白亜紀のスーパーウランの鉱山だった。
つまり、津村は白亜紀のスーパーウランを独り占めすべく、ニッポノザウルスでコセイドン隊の注意をひきつけているうちにバンノ隊長の甥を誘拐し、コセイドン隊の動きを封じようとしているのだ。

ゴウ「もしやつらが、ウランをどこかの国に売り込んだとしたら、こりゃ大変なことになるぜ」
テツ「ゴウ!」
テツ、鋭く叫ぶと、首を横に振ってゴウを黙らせる。
使命と肉親の命との板挟みになっているバンノ隊長の気持ちを気遣ってのことである。
かつてないほど重苦しい空気に支配されたコセイドン号のブリッジ。

バンノはひとりゴウたちに背を向け、ひたすら甥っ子のことを考えていた。
バンノ「義教……」
だが、百戦錬磨のバンノは、ナレーターの古川登志夫さんのように「軟弱者!」とセイラさんにビンタされるようなやわな男ではない。
大義親を滅す、可愛い甥の命より任務のほうを優先させることは最初から決めており、義教への未練を断ち切る為に心を整理する時間を要していただけなのだ(たぶん)。
やがて決然と立ち上がり、艦長席につくと、「白亜紀に向け出発だ」と淡々と指示を出す。

ゴウ「隊長!」
アルタシヤ「義教ちゃんはどうするんですか?」
意外な決断に、バンノよりテツたちのほうが血相変えて詰め寄る。
バンノ「あのウランが悪用されたら、何億人もの命が失われることになるんだ」
だが、バンノの意思は強固で、アルタシヤの、パツンパツンのお尻を震わせての訴えにも微動だにしない。

バンノ「おい、テツ、エンジン始動だ」
テツ「……」
バンノ「おい、テツ!」
テツ「待ってください」
命令も上の空でしきりに何か考え込んでいたテツ、不意に立ち上がるとバンノのところへ来て、

テツ「方法はもうひとつあります。コセイダーです」
モリィ「え?」

テツ「コセイダーの装備はレーザーに感じられない素材で作られています」
バンノ「しかしこの位置から白亜紀まではざっと3000万年も離れてるんだぞ。ボンバーの推力だけで辿り着けるかどうか」
テツ「超加速ボンバーを作るんです。このコセイドンの中にある、あらゆるスピードを生む動力を加算して飛ぶんです」
ゴウ「そんなことが出来るのか」
テツ「ああ、ただ、ゴウ、そのスピードにお前が耐えることが出来るかどうかだ。いまだかつて人類が経験したことのないスピードだからな」

アルタシヤ「死ぬかもしれないと言うこと?」
テツ「いや、成功する可能性もある」
向こう見ずなゴウも、さすがに気軽に引き受ける勇気はなく、しばし考え込む。
バンノ「もう良い、やはりこのまま白亜紀に向かおう」
ゴウ「待ってください」

ゴウ「隊長、俺が行きます。もしこのまま進めば義教君の命は間違いなくなくなります。しかし、コセイダーには可能性があります」

ゴウ「隊長、俺は信じてるんです、俺は元々コセイダーになる為にこの世に生まれてきたんだと……だから、悔いが残んないよう、精一杯やろうとね」
まんま、松田優作みたいな顔で力むゴウ。

バンノ「お前……」
ゴウ「だいじょうぶっすよ、隊長、俺に任せてください」
ゴウの差し出した手をしっかりと握り、潤んだ目でその顔を見詰めるバンノ。
一応、感動的なシーンではあるが、最近の「コセイドン」って、難題にぶち当たったらとりあえずコセイダーにお任せしようと言う展開ばっかりで、工夫がないんだよね~。
考案者テツの決まり文句(?)、「計算上は……」「理論上は……」も、毎回必ず成功しているのだから、いかにも空しく響く。
第1、あるいは第2クールまでの、生身の隊員の知恵と勇気とチームワークでクエストを乗り越えていく痛快さと言うものが、路線変更後はめっきり味わえなくなったのは寂しいことだ。
それに、コセイダーが死んだら番組が終わっちゃうのだから、この試みが成功するのは分かりきっているわけで、その辺も物足りない。
唯一、射出時の速度を増す為に、コセイドン号が1000年ほどタイムトンネルの中をバックして、助走をつけてコセイダーが発進すると言うアイディアが面白かった。
津村はコセイドン号に白亜紀に近付くなと言っただけで、動くなとは言ってないので、後退する分には構わないのである。
さて、ここまでお膳立てが済めばもう詳しく書くことはない。
タイムトンネルから発射されたコセイダー、いや、ゴウは、見事その加速度に耐え抜き、白亜紀の時代にワープアウトすると、津村のサイボーグ兵士たちを全滅させ、義教を助け出すのだった。
そして津村は、自分が仕掛けた爆弾の爆発に巻き込まれ、あえない最期を遂げる。
やがてバンノたちの到着し、バンノと義教が歓喜の再会を果たしたことは言うまでもない。

アルタシヤ「良かったわね」
飛び切りの笑顔でゴウをねぎらうアルタシヤ。

ゴウ「この通りだ!」
自分の胸を叩いてから、意味不明のファイティングポーズを取るゴウ。
以上、設定は面白いのだが、前述したように結局コセイダーの能力でゴリ押し的に解決してしまうのが残念なストーリー展開であった。
ま、毎回言ってるような気もするが、これでもシリーズ後半ではマシな方なのである。
- 関連記事
-
スポンサーサイト