第31話「怪魔界を見た女」(1989年6月4日)
冒頭、赤いライダースーツを着た女性のバイクが、真っ黒なライダーに追われているのを見掛けた光太郎、同じくバイクで追跡する。

例によって黒いライダーの正体はガテゾーンで、資材置き場に女性ライダーを追い詰めるが、すぐ駆けつけた光太郎がRXに変身してガテゾーンとの戦いとなる。
ガテゾーン「RX、この礼は必ずしてやる」
ガテゾーンの目的はあくまで女性ライダーなので、捨て台詞を残してあっさり退却する。
その後、ジャーク将軍たちの会話で、ガテゾーンが狙っているのが、女性ライダーの持っている、地球と怪魔界をつなぐ直通トンネルの鍵だと言うことがわかる。

ガテゾーン「抜かりはないさ、あの女が三つの鍵を見付け出すまで泳がせているんだ。ちゃーんと見張りをつけてな」
ジャーク「ガテゾーン、慎重に事を運び、必ず怪魔界と地球界との扉を開くのだっ」
ガテゾーン「アイアイサー!」
いつも返事だけは頼もしい四大隊長の皆さん。
一方、光太郎もあの女性ライダーを探して、とあるヨットハーバーのボート置き場に辿り着く。
と、突然、光太郎目掛けてナックルナイフが飛んでくるが、光太郎はヘルメットで叩き落す。

ユーコ「その反射神経でモンスターから逃げてきたの?」
物陰からさっきの女性、ユーコが出てきて、ヘルメットを脱いで素顔を見せる。
演じるのは、女優・歌手の西崎みどりさんである。

ちなみにこちらが、ほぼ20年前の「変身忍者嵐」にゲスト出演した時の大変ロリロリした西崎さんである。なにしろ、まだ12才くらいだから、ロリロリしてて当然なのだが。

ユーコ「まずは助けてもらったお礼を言わなくちゃね。ありがとう、私はユーコ」
光太郎「僕は南光太郎です。何故クライシスに追われていたんですか?」
ユーコ「クライシスを知ってるのね?」
光太郎「クライシスは地球侵略をたくらんでいます。僕はクライシスと戦っています」
ユーコ「だったら、私の仕事手伝ってみない?」
光太郎「仕事?」
戸惑う光太郎だが、次のシーンでは早くも二人でその「仕事」に取り掛かっている。
夜、古代文化博物館と言う建物にやってくると、

ユーコ「手伝って」
光太郎「はぁ?」
ユーコ「早く!」
正門の脇の塀から、光太郎の足を踏み台にして乗り越えるユーコ。
普通は、先に上がった方がもうひとりを引っ張り上げるものだが、

光太郎「……って、
置き去りかい!」
と言う間抜けなことになるのだった。

実際は、光太郎、別に突っ込みも入れずに自力で乗り越えるんだけどね。
無論、これは、ユーコが振り向いて手を差し伸べると、それが西崎さんではなくスタントであることがバレてしまうからである。
ユーコが向かったのは、小さな保管室だった。

光太郎「こんなとこ、なんにもないですよー、金目のものならあっちの展示室の方が」
ユーコ「シッ!」
やがてユーコは、目当ての木箱を見付け出す。

ユーコ「これだわ。ね、下ろして」
光太郎「ええーっ?」
最近シリアスな演技が多かったが、このシーンでは久しぶりにコミカルな光太郎が見られる。
光太郎が木箱を棚から床に下ろすと、すかさずナイフを差し出して、

ユーコ「開けて」

光太郎「そんなことしたら泥棒ですよ」
ユーコ「調べさせて欲しいって申し込んだけど、資格がどうとかハンコがどうとか……そんなことしてたらクライシスに先を越されてしまうわ」
光太郎「つぁっ、しょうがないなーもう」
ぶつぶつ文句を言いながら従う光太郎であったが、気の強い年上の女性に振り回されていることに、ほのかな喜びを感じている節もうかがえる。

木箱の中には色んなものが雑然と入れられていたが、ヨーコ、小さな箱の中に収められていた金属片を手にして、「これだわっ」と目を輝かせる。
光太郎「なんですか、これ」
ユーコ「私にも良く分からないの」
光太郎(分からんのかいっ!) 
分からないと言いつつ、ユーコはそれを床に置き、懐から同じような二つの金属片を出して横に置くと、三つはひとりでに集まって、三角形を形作り、さらに金色の立体的な光を生成する。
肉眼で見ても意味不明だったが、

ユーコが持っていたポラロイド式赤外線カメラで見ると、等高線のような模様が浮かび上がる。
ユーコ「地図よ」
シャッターを切り、写真を現像するが、その直後、電線を青白い光が伝わって建物の外へ出て、

恐ろしげな怪魔ロボットの姿に変わる。
怪人「やっと見付かったぞ」
ガテゾーンが言っていた見張りとは、電気になって自由に電線の中を移動できる、バイオライダーのような能力を持つ怪魔ロボット・エレギトロンだったのだ。
能力的には「スカイライダー」のシビレイジン、外見的には「ストロンガー」の鋼鉄参謀に似ている。
その後、光太郎は警備員に見付かってひと騒動起こすが、その隙に、ユーコは忽然と姿を消していた。
あの写真を残して。
光太郎「そりゃないよー」
翌日、早速バイクで地図に印のあった場所にやってきたユーコ。
三つの金属片に反応したのか、突然岩山が爆発したかと思うと、その中から、三角錐の形をした人工的な岩が出現する。

ヨーコ「これだわ!」

おあつらえむきに、岩の表面には、あの三つの金属片を嵌め込む為の三角形のくぼみがあった。
ユーコは、金属片をその隙間に埋めて行く。
二つ嵌めたところで、にわかに雷鳴が轟き、いかにも何か起きそうな雰囲気となる。

ユーコ「最後のひとつ……これを嵌め込むと一体何が起こるのかしら?」
と、彼女の背後に、ガテゾーンが現れ、
ガテゾーン「その目で見ればいい」

ユーコ「あっ」
ガテゾーン「さあ、最後のひとつをセットするんだ」
愛用の銃を向け、渋い猫撫で声でユーコを促すガテゾーン。
ユーコ「恐ろしいことが起こるのね」
ガテゾーン「素晴らしいことさ。怪魔界への扉が開くんだ」
それでもなんとか逃げ出そうとするユーコだが、すぐ崖っぷちに追い詰められる。

ガテゾーン「鍵を渡して貰おう」
ユーコ「鍵? これが鍵なの?」
ガテゾーン「それとも、その前に地獄へ行きたいか?」
と、そこへ光太郎が飛び込んできて、ガテゾーンの銃を蹴り飛ばす。
ガテゾーン「怪魔ロボット、エレギトロン!」
ガテゾーンが叫ぶと、近くの鉄塔の送電線から電気の塊が降りてきて、

エレギトロンの姿に変わる。
うーむ、改めて見ると、実に秀逸なデザインだ。
「RX」の中でもベスト5に入る怪人ではないだろうか。
そして、この、ロボットでありながら電線を自在に移動できる特殊能力、これを、ガテゾーンがスパイ活動くらいにしか使ってないのが実に勿体無い。
宝の持ち腐れとはこういうことを言うのだろう。
ともあれ、二大強敵に挟まれてピンチに陥る光太郎。
ユーコがそばにいるので迂闊に変身することも出来ない。

ユーコ「欲しいのはこれでしょ?」
と、ここでユーコが残りの金属片を取り出して思い切り崖の向こうへ放り投げる。
光太郎、ガテゾーンの注意がそちらに向けられた瞬間、ライドロンを呼んでエレギトロンを牽制し、その隙にユーコを連れてその場から逃走する。
CM後、近くの山の中のちょっとしたくぼみに身を隠している二人。

ユーコ「あなたは、仮面ライダー?」
光太郎「「……」
何の前触れもなく、出し抜けにユーコが光太郎の正体を指摘する。
正直、かなり唐突と言うか、不自然な感じがするのだが、光太郎が正体を隠したままではストーリーの進行が滞ると見たスタッフの、やや強引な措置であろうか。
もっとも、既に玲子たちに正体を明かしているので免疫が出来ていたのか、光太郎もさほど驚かず、ユーコに頷いてみせる。
光太郎「何故あんな無茶をしたんですか」
ユーコ「どうしても知りたかったの、ジムを死に追いやったのはなんなのか?」
光太郎「ジム?」
ユーコ「私たち、結婚する筈だった……」

ユーコ「彼はアメリカ航空局のテストパイロットになったつもりの人で、私はその世話をしていたの」
ジム「ぶ~ん」
光太郎「気の毒に……」
じゃなくて、
ユーコ「彼はアメリカ航空局のテストパイロットで、私は設計担当のエンジニアだったの。あの日、彼は新型ジェット機のテスト飛行に飛び立って、二度と戻ってこなかった。ひどい方向音痴だったのよ」
光太郎「よくそれでテストパイロットになれましたね」
じゃなくて、ジェット機は空中で爆破してジムは帰らぬ人となってしまったのだと言う。

ユーコ「はじめは私の設計ミスじゃないかと悩んだわ。でも、これを見付けた時」
光太郎「これは?」
ユーコ「ジムの日記、それまでのテスト飛行で不思議な体験をしたことが書かれてるの。『突然、操縦不能になり、周囲が真っ暗になってその中に巨大な鋼鉄の虫のようなものが見える』」
光太郎「巨大な虫?」
反射的に、光太郎の脳裏に、ワシャワシャとたさくんの足を動かしているクライス要塞の姿がよぎる。

光太郎「はうっ、クライス要塞だ?」
ユーコ(なんで、あさっての方向見ながら言うのかしら?) それがヒーローのサガなのです!
光太郎「でもクライス要塞は異次元空間にある。ジェット機が時空の壁を越えられたなんて」
ユーコ「その秘密がこれなのよ」
ユーコ、にっこり笑って布に包んだ金属片を取り出して見せる。

光太郎「でも、これはさっき」
ユーコ「うふっ、あれはニセモノ。念のために作っておいたのが役に立ったわ」
ユーコによると、金属片のひとつはジムがアメリカ原住民の老人から貰ったもの、もうひとつはオーストラリアを旅行した時に露天商から買ったもので、婚約の記念のペンダントに加工してそれぞれが持っていたらしい。
ただ、事故を起こした時もジムが身につけていた金属片が、無傷で形見として残された、と言うのはちょっと変だよね。そんな大事故に巻き込まれたら、金属片だって無事では済まなかっただろうからだ。
そして、ユーコはその金属片を狙う怪しい一味から逃れつつ、金属片のことを調べ上げ、遂に、もうひとつの金属片が日本にあることを突き止めたのだと言う。

その後、色々あって、結局金属片はガテゾーンに奪われ、あの岩のくぼみに埋め込まれる。
と、三角形になった金属片から不思議な光が投射され、

背後にそびえる段差上の岩山に突き刺さる。

と、そこに巨大な割れ目が生じ、

目も眩むような閃光が周囲を照らす。
ついで、岩が真っ二つに割れると、その向こうから瘴気のような気体がこちら側に流れ込んでくる。
そのガスを浴びた植物は、たちまち枯れてしまう。

ガテゾーン「ああ、怪魔界の空気だ。懐かしいぜぃ」
だが、怪魔界生まれのガテゾーンは、逆に歓喜の声を上げる。

一方、光太郎はRXに変身してエレギトロンと戦うも、その杖から発射される強力な電磁ビームの前に苦戦を強いられていた。
やがて、異次元への扉が完全に開いて、その向こうに、静寂と死の匂いに満ちた怪魔界の荒涼たる光景が横たわっているのが見える。
ガテゾーン「おお、怪魔界だ」
ユーコ「ああっ」
ガテゾーン「RX、この光景を見納めに地獄へ行け」
ユーコ「あの鍵を破壊しなければ……」
ユーコ、咄嗟に自分のバイクにまたがり、三角錐に向かって猛スピードで突進する。

エレギトロンが気付いて電磁ビームを放つが、ギリギリで外れる。

逆に、RXがその腕に飛びついて、ビームの軌道をずらして、三角錐に命中させる。
こうして、あえなく三角錐は壊され、怪魔界への扉も閉ざされる。
一瞬の隙が、ガテゾーンの計画を台無しにしてしまったのである。

だが、その衝撃でユーコの体が吹き飛ばされ、崖から下の谷に転落ししまう。
ガテゾーン「おのれ、もう少しのところで」
粉々に砕けた三角錐に駆け寄って悔しがっていると、

マリバロン「ガテゾーン、どうやらあなたの負けのようね」
ガテゾーン(見てたんなら、何とかしろよぉ……) ほんと、こういうところがクライシスの駄目なところなんだと思う。
今回の作戦も、4人全員で取り組んでいれば、100パーセント成功していたのではないだろうか。
マリバロン「これは私が貰っていくわ」
何を思ったか、マリバロンは黒焦げになった金属片を丹念に拾い集めると、パッと姿を消す。
さっきも言ったように、ジェット機の爆破に直面した金属片が無傷で、電磁ビームを受けた金属片が黒焦げと言うのは、明らかに釣り合いが取れていない。
しかし、ガテゾーンも隊長としては実に無責任と言うか、いい加減で、

ガテゾーン「エレギトロン、RXを始末しろ!」
と叫んで、さっさと「お先」しちゃうのである。
……
ほんと、バカなんじゃないかと思う。
作戦は既に失敗したのだから、これ以上の損害を出さない為、また、スパイとしても有用な部下を犬死させない為にも、ここは断固、撤退を命じねばならないところである。
そして引き続き戦わせるのなら、自分も戦場に残ってエレギトロンの援護をすべきだったろう。
案の定、エレギトロンは善戦するも、最後はRXに倒され、あたら命を散らせてしまうのだった。
で、前述したように、エレギトロンが折角の電線移動能力を戦いにおいて全く使おうとしないのが、実に物足りなく、納得の行かない演出となっているのである。
なお、31話と32話は連続エピソードとなっており、戦いの後、谷に降りてユーコの行方を捜している光太郎の姿を映しつつ、「つづく」のだった。
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