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「魅せられた美女」~江戸川乱歩の「十字路」(リテイク版) その2

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 続きです。

 伊勢と晴美による、殺人事件の偽装工作が開始される。 

 
 まず、晴美が、大きなサングラスで顔を隠し、友子の帽子やマントなどをつけて友子に成りすますと、電車で伊東へ行き、予約してあったホテルにチェックインする。

 
 ただ、晴美、いくらサングラスをかけていても、声や肌の感じから、どう見ても10代か20代そこそこにしか見えず、これだと、警察がフロントを調べたら、すぐバレそうな気もするんだけどね。

 ……と言うか、晴美って人気アイドルなんだから、その時点でバレるんじゃないかと。

 とにかく、晴美、伊勢の指示通り、すぐホテルを出て、仏ヶ浦にマントや帽子などを置くと、晴美の姿に戻ってその場を離れる。

 ちなみに、原作ではこの場所は鏡ヶ浦となっている。恐らく、実際に熱海にある錦ヶ浦のもじりだろうが、ドラマではさらにそれをもじって仏ヶ浦になっている。

 そして、そこと目と鼻の先にある突端で釣りをしていたのが、我らが明智さんたちだったのである。

 もっとも、街灯も何もない真っ暗闇なので、晴美の存在には気付かない。

 
 文代「はい、先生、コーヒー」
 明智「こりゃありがたいな」
 小林「こっちはコーヒーどころじゃないよ。一匹も釣れないんじゃ、明智探偵事務所の名が廃るよ」

 まだ一匹も釣れないので小林少年がぼやくが、

 明智「僕は魚を釣りに来たんだじゃない」
 小林「えっ?」

 明智さん、今回のアクティビティーを全否定するようなことを言い出す。

 明智「神経を休ませているうちに僕の犯罪哲学が深みを増していく」

 
 明智「見たまえ、前の海には人間はいない。しかし、後ろの平和な夜景の中には人間がいる。人間がいる以上、犯罪がひしめきあっている筈だ。この美しい夜景も僕には犯罪の縮図のように思えるねえ」

 と、明智は言うのだが、「人間がいる」=「犯罪がひしめきあっている」と言うのは、さすがにオーバーなのでは?

 あと、「美しい夜景」と言いつつ、実際の映像は暗闇の中にぽつんぽつんとホテルらしい明かりが見えるだけなのが、なんか台詞と合ってないような気がする。

 文代「ほらほら、また先生一流の犯罪美学論が始まったわ」
 小林「それでだね、魚たちも恐れをなして近寄らないんだよ」

 助手たちに茶化されても、

 明智「かもしれんな、はっはっはっ」
 文代&小林「はっはっはっはっ」

 一緒になって朗らかに笑う明智さんであった。

 この明智の温厚さは、とりもなおさず天知茂先生自身の性格であろう。

 さて、マンションに残って殺人の痕跡を処理していた伊勢に、晴美から電話がかかってくる。

 伊勢は、24時間営業のドライブインに泊まって、目立たないよう朝まで待つのだと指示する。

 同じ頃、晴美たちの会話にも出たように、兄・良介が、えびすという旅館で、将棋のタイトル戦を戦っている最中だった。

 控え室で検討中の関係者が「良介勝勢」と話しているのを聞いた旅館の仲居、

 
 仲居「あら、奥さん、先生、調子良いようですよ」
 桃子「そう?」

 対局室の近くの廊下でそわそわしていた良介の恋人、桃子に知らせてやる。

 
 桃子「でも私、まだ奥さんじゃないのよ」
 仲居「あ……」

 桃子に言われて、少しまごつく仲居。

 松井紀美江さんと、奈美悦子さんという、どちらかというと悪女を演じることの多い二人が、揃って善人を演じている珍しいケースである。

 
 劣勢になって、しきりにタバコを吹かしている良介の対戦相手の大村誠(笑)。

 カメラが左手にパンして、中庭の方を映すと、

 
 そこにちゃっかり、晴美が立っているのだった。

 ……

 
 伊勢「目立たないようにって言ったでしょおおおおーっ!」
 晴美「すみません……」

 伊勢が怒るのも当然であった。

 それからほどなく、良介が見事、緒戦を勝利で飾る。

 
 仲居「お勝ちになったんですね、おめでとうございます」
 桃子「ありがとう」

 この松井さんの口の形が、めっちゃ可愛い……。

 その仲居に言われて庭の方に回った桃子、そこに将来妹となる晴美がいるのに気付いて驚く。

 桃子「あら、晴美さん?」
 晴美「お兄さん、勝ったのね」
 桃子「昨夜は調子悪かったんだけど、今日は頑張って……さっ」

 桃子、晴美を促して対局室のすぐ前まで移動する。

 
 桃子「……」

 無言で手を振って、良介の注意を引く。

 感想戦を行っていた良介、二人に気付くと、中座して縁側に出てくる。

 
 良介「どうしたんだ、今頃?」
 晴美「社長の奥さんの自殺を偽装した帰り、気になって素通りできなかったの」
 良介「えっ?」
 晴美「えっ?」

 ……

 
 伊勢「そんなことぺらぺら人に喋ったらダメでしょおおおおーっ!」
 晴美「すみません……」

 伊勢が怒るのも当然であった。

 じゃなくて、

 良介「どうしたんだ、今頃?」
 晴美「静岡で仕事とした帰り、気になって素通りできなかったの……勝ったんだってね? おめでとう」

 こんな状況ながら、いや、こんな状況だからこそ、胸が詰まって涙がこぼれる晴美であった。

 
 良介「はっはっ、まだ三つ勝たなきゃ」

 そして、あえて伏せてきたが、良介を演じているのが、天知茂先生なのだった。

 つまり、明智さんとの二役なのね。

 これは、別にマンネリ気味のシリーズの目先を変えてのことではなく、原作にも、良介と似ている(瓜二つと言うほどではない)南探偵と言う悪徳探偵が登場するので、それにならったキャスティングなのである。

 もっとも、原作のその趣向については、講談社文庫の解説でミステリー評論家の中島河太郎さんに、

 「被害者と探偵の相似が目ざわりでもある」

 と、ばっさり切り捨てられているのだが……。相変わらず容赦ねえぜ、河太郎!

 晴美「今度も勝ってね」
 良介「お前も頑張れよ」

 悲しいことに、二人がじかに顔を合わせたのは、これが最後となってしまう。

 そうそう、それから良介の恋人の桃子だが、原作に出てくる、良介の馴染みのバーの性欲旺盛なマダムがモデルになっていると思われるが、原作では特に将来を約束し合った間柄でもなく、ただの端役である。

 さて、夜が明け、明智さんたちが徹夜してメバル三匹と言う釣果にトホホな気持ちで引き揚げる途中、仏ヶ浦で、晴美の残して行った友子の遺留品を発見する。

 三人は地元の警察に行き、遺留品を届ける……って、勝手に現場から持ってきたらダメなのでは?

 三人が署長室にいると、そこへ何故か良介が入ってくる。

 
 文代「あっ……」
 署長「先生、おめでとうございます」

 入ってきた人物が、明智そっくりだったので、明智本人も文代さんたちも、思わず固まる。

 署長「あ、紹介しましょう、こちら名探偵の評判高い、明智小五郎さん、こちら沖良介6段、僕の将棋の先生なんですよ」
 明智「……」
 良介「……」

 署長に引き合わされた二人、感に堪えたようにしばらく相手の顔をまじまじと見詰めていたが、やがてソファに座ってなごやかに雑談を交わす。

 
 明智「お勝ちになったようですね、おめでとうございます」
 良介「いやぁ、これからですよ」
 明智「昨日は調子が悪いように聞いていましたが……」

 
 良介「僕のやり方はね、相手の出方を見てこっちの出方を決める。だから様子を探ってるうちはこっちが悪いに決まってる」

 
 明智「なるほど、探偵と一緒ですね。私も相手の出方を読んでそれからこっちの出方を決める。これが秘訣です。そして、最後は……」
 良介「逆手で勝負」
 明智「その通りです」

 図らずもそれぞれの将棋と探偵の秘訣が一致して、会心の笑みを浮かべる二人。

 
 小林「沖さんの妹さんが沖晴美さんでしょ。僕、ファンです」
 良介「ああ、これはどうも」
 小林「つきましては、晴美さんと結婚させてください!」
 良介「えっ?」
 明智「あ、お気になさらないで。前々から頭がおかしい奴でして……」
 良介「そうなんですか」
 小林「えっ、ほんとですか。はいっ、必ず晴美さんを幸せにしてみせます!」
 良介「気の毒に……」

 ……途中から嘘である。

 一方、晴美、朝になってからマンションに帰ってきて、伊勢に首尾を報告すると共に、今日、良介と桃子が引っ越しの片付けの手伝いに来る約束になっていると告げる。

 伊勢、桃子のバーの常連である真下に二人に今日は遠慮してくれと言わせようと電話するが、電話を受けた真下のほうが待ちかねていたように、

 
 真下「今、伊東警察から問い合わせがあって社長探してますよ」
 伊勢「伊東警察から? 何の用で」

 
 真下「それがですね、奥さんが自殺の疑いがあるんですって」
 伊勢「なに、自殺?」

 真下の言葉に驚きの声を上げつつ、晴美に頷いてみせる伊勢。

 伊勢「よし、すぐ連絡を取るよ。ひとつ頼みがあるんだ。さっき晴美に電話したら、疲れが出て頭が痛いんだそうだ、君、兄さんの恋人の店に行って今夜来ないように伝えてくれないか」
 真下「わかりました」

 夜、桃子の店にスーツ姿の良介が入ってくる。

 店の常連であり、晴美のマネージャーと言うこともあって、真下と良介は以前から親しいらしく、先に来ていた真下が気さくに声を掛ける。

 
 真下「いやぁ、先生の背広姿珍しいですね」
 良介「妹のマンションに行くんで着替えてきたんだよ」
 真下「ところがねえ、昨夜から晴美ちゃん、病気でしてね」
 良介「そんな訳ないだろう、昨夜、伊東で会ったばかりなのに」
 真下「伊東で?」

 晴美があれから伊東に行ったと知って、真下も少し驚くが、

 真下「とにかく、疲れ切って寝込んでるんですよ。ですから今日は来ないで欲しいって伝えてくれって」
 良介「ちぇっ、なんだ、自分で来い来いつっておきながら……」

 このシーン、原作では、デザイナー(画家)の真下が、恋人の相馬芳江との結婚について、芳江の兄の相馬良介と話し合う……と言う場面になっている。

 晴美のマンションから、そろそろ伊勢が友子の死体を処分しに行こうとしていると、けたたましく電話のベルが鳴り響く。

 あれ以来、電話が鳴るたびに心臓の縮む思いをしている晴美、一瞬凍りつくが、伊勢に促されておそるおそる受話器を取る。

 晴美「もしもし、沖ですが……あ、お兄さん!」

 相手が良介だと分かるや否や、その顔がパッと明るくなる。

 
 良介「どうしたんだ、晴美」
 晴美「ごめんなさい、疲れてて凄く頭が痛いの」
 良介「うん、二人で祝杯を挙げようと楽しみにしてたのに、一張羅の背広着てきたんだぞ、今日は」

 少し酔っているのか、駄々っ子のように妹にアピールする良介。

 
 晴美「まあ、お兄様が背広を? 見たい!」
 伊勢(見たいのか……?)

 いまいち若い女の子の感性が理解できない伊勢おじさんであった。

 晴美「良くなったらすぐ電話する」
 良介「よし、じゃあ大事にしろ」
 晴美「ありがとう。あまりお酒飲んじゃダメよ」
 良介「バカ、兄に説教するのはまだ早い」

 そう言うと、良介は電話を切る。

 それが、兄妹最後の会話になるとも知らず。

 その後、伊勢は友子の死体を毛布にくるみ、他の住民に見られないよう注意して非常階段で地下駐車場まで下ろし、トランクの中に入れる。

 伊勢の車が出て行った後、管理人のオヤジが晴美のところに来て、伊勢の車の無断駐車について文句を言う。

 その後、管理人は女物の靴が一足だけ落ちているのを見て、拾い上げる。

 そう、友子の死体が履いていた靴が片方だけ転がり落ちていたのだ。

 原作では、この靴が脱げた時のシーンが、一応、伏線になってるんだけどね。

 そして、ここから伊勢が大雪の中を、死ぬ思いをして奥多摩のダムまで往復するというのが、実は原作における最大の読みどころとなっている(と、管理人は思う)のだ。

 だが、ドラマでは季節が違うし、そもそもそんな撮影は出来ないので、少なくともドライブ自体は簡単なものになっている。

 さて、原作とは違う目的地に向かっている途中、伊勢は左側から突っ込んできたトラックと接触事故を起こしてしまう。場合が場合なだけに、伊勢はひたすら低姿勢に徹し、すぐに示談で片をつけようとする。

 それでも、警察に事情を聞かれることになり、一時車を離れて交番へ移動する。

 そして偶然にも、その事故が起きたのが、良介たちのいるバーのすぐ近くだったのだ。

 良介、すっかり酔っ払ってしまい、そこへ、真下から晴美と伊勢の噂について聞かされると、途端に機嫌が悪くなる。

 
 良介「いいか、真下、伊勢なんて奴には妹は指一本触れさせんぞ」

 
 真下「でもね、沖さん、僕は違いますよ。(中略)あの子は僕の作品なんです!」

 真下、マネージャーとして晴美を発掘して育てたことを誇るあまり、そんなことを言ってしまう。

 
 良介「僕の作品だと? なんてことを抜かすんだ? 晴美はな、俺が育てたんだ、俺のもんだ! そんな生意気なこと言うと承知しないぞ!」
 桃子「あなたっ!」

 良介、少し酒乱気味のところがあって、いきなり真下に掴みかかってくる。

 真下「よしなさいよ!」

 真下も思わずその体を突き飛ばすが、

 
 良介は背後のテーブルの角で頭を強く打ってしまう。

 良介「あっああっ」
 桃子「あなた、だいじょうぶ?」

 良介はすぐ起き上がると、介抱の手も振り払ってよろよろと出て行く。

 良介は、店を出て、すぐ近くに停めてあった車をタクシーだと思い込んでその後部座席にもぐりこみ、そのまま眠りこけてしまう。

 ところが、その車こそ、死体をトランクに乗せた伊勢の車だったのだ。

 ……

 さすがにそんな偶然、ねえよ。

 原作では、伊勢と良介とは何の面識もない赤の他人だったので、こちらはまだ偶然の仕業で納得できなくはないんだけどね。

 とにかく、伊勢は警察から解放されると、良介には気付かず、すぐ車をスタートさせる。

 だが、その一部始終を真下が見ており、何事かと伊勢の車を尾行する。

 ちなみに原作では、ここで、可愛い、松葉杖を突いた娼婦(!)のマリ子と言うキャラクターが出てきて、良介が乗り込むのを目撃する役割を担っている。

 当時としてはかなり狙ったキャラで、彼女の存在をもっと膨らませていたら、この無味乾燥な小説も少しは面白くなっていたかもしれないと惜しまれる。

 なお、最初に書いたように、ドラマでは伊勢が良介を殺すのだが、原作では、その前にバーで頭部を強く打ったのが原因で、良介は伊勢の車に乗った後、脳出血で死んでしまい、途中で伊勢が気付いて「なんじゃこりゃああああーっ!」と、ビックリする段取りになっている。

 また、死体の隠し場所だが、ちょうど数日後に水を入れることになっていたダム湖の中の井戸に、死体を投げ込んで隠すというのが、原作における最大のトリック(?)となっているのだが、ドラマでは、単に山の中の沼に沈める方法に変えられている。

 話が前後したが、伊勢は多摩平の自分の所有地にある首無し沼と言う沼に友子の死体を沈めようとするが、運悪く、良介が目を覚ましてそれを見てしまい、パニくった伊勢は、「ええい、面倒だ」とばかり、良介まで、友子の持っていたナイフで刺し殺してしまうのだった。

 伊勢が二人の死体に岩を結んで沼に蹴り落とすのを、真下が物陰からじっと見詰めていた……。

 その3へ続く(明日書きます)。
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コメント

バレバレですね😅

晴美の変装もバレバレですね😅見る人が見たらすぐにバレてしまう変装しか出来ないのが悲しいですね😢それにしても、伊勢が犯行の一部始終を目撃するシーンは、流石に有り得ないですがね

非猟奇作品

良介って言動がなんか子供じみて天知茂と齟齬がある気がします。

>さすがにそんな偶然、ねえよ。
大映ドラマっぽいですね。これはいくらなんでも・・・

>パニくった伊勢は、「ええい、面倒だ」とばかり、良介まで、友子の持っていたナイフで刺し殺してしまうのだった。
「歯車が狂いまくる」感じではありますが、別に殺さなくてもいいのでは?
「妹がどうなってもいいのか?」と脅せば口を噤むのではないでしょうか?

Re: バレバレですね😅

原作と違って有名人ですからね。

Re: 非猟奇作品

> 良介って言動がなんか子供じみて天知茂と齟齬がある気がします。

一応、天知先生が演じ分けようとしてるんだと思いますが。

> 「歯車が狂いまくる」感じではありますが、別に殺さなくてもいいのでは?
> 「妹がどうなってもいいのか?」と脅せば口を噤むのではないでしょうか?

そうですね。伊勢の図太さから言っても、不自然ですよね。

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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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