第43回「燃えろ 人間大砲コセイダー」(1979年4月27日)
冒頭、のどかな白亜紀の恐竜牧場。
そこで、シラキ・リョウと言う動物学者兼獣医が、その妻サオリ、娘レイと共に暮らしていた。

リョウ「ようし、もう大丈夫だ」
サオリ「よかったわねえ、タロウ」
おりしも、リョウが具合の悪くなったタロウと言う名前の恐竜を治療してやっているところだった。

レイ「がんばれ、たろちゃん! たろちゃん、がんばったね!」
レイに励まされて自力で立ち上がって歩き出したタロウと言う恐竜と、それに足並みを合わせて歩くレイと言う、微笑ましい光景。

リョウ「こっちへ持って来たい資料や血清もあるんだ、留守を頼むよ」
サオリ「こっちは大丈夫」
レイ「たろちゃん、こっち、こっち!」
タロウと仲良く戯れている娘の姿に目を細めるシラキ夫妻。
サオリ、つと娘に近付くと、

サオリ「レイ、お父さんね、21世紀へいらっしゃるのよ」
レイ「お父さん、あたしも連れてって」
リョウ「この次、連れてってあげる」
で、このサオリと言う人妻を演じている女優さんが、なかなか綺麗なのである。
稲川順子さんと言うらしい。
さて、リョウは所用の為、一時21世紀に帰ることになるが、彼らは単なる時間移住者なので、21世紀に戻る際も、普通の定期便を使うことになる。
で、円谷プロの熟練スタッフの凄いのは、

たった一度のエピソードの為に、鼻歌歌いながら(註・歌ってません)、ついでに屁もこきながら(註・こいてません)、その定期便ホワイト号と、空港ビル、発着場、

その離陸シーンまでチャチャッと作ってしまうところなのである!
ま、勿論、実際には「チャチャッ」と作ってる訳じゃなくて、ヒーヒー言いながら作ってるのだろうが。
同じころ、コセイドン号も、最近、亜空間タイムトンネルに出没するというタイムファイヤーなる謎の物体の調査の為、亜空間を航行中だった。
ホワイト号の接近を知ったバンノ、パイロットと通信を交わし、「ホワイト号の安全な航行を祈る!」
だが、両機がすれ違ったすぐ後、ホワイト号は、反対側から飛んできた、問題のタイムファイヤーと言う巨大な炎……と言うより、溶岩の塊のような物体と接触し、爆発してしまう。
少なくとも50人以上の乗客・乗務員が即死するという、大惨事であった。
バンノは、その乗船者リストを取り寄せて見ていたが、その中に「シラキ・リョウ」と言う名前を見つけ、驚きの声を上げる。

バンノ「シラキ・リョウ!」
アルタシヤ「ドクター・シラキ? ゴウ!」
ゴウ「……」
同時に、アルタシヤとゴウの面にもサッと緊張が走る。
リョウは、ゴウたちと旧知の間柄だったのだ。
何かを思い出すように宙を睨むゴウのアップに続いて、

リョウ「いいでしょう、僕は白亜紀が好きなんです。恐竜が大好きなんですよ」
ゴウとアルタシヤがあの牧場を訪れ、シラキ一家と和やかに談笑している姿が映し出される。
が、彼らとシラキ一家の関係についてはこれ以上何も語られないので、いまひとつ、リョウの遭難に接してゴウたちが見せた嘆きやショックが伝わってこないのが今回のシナリオの難点である。
たとえば、パトロール中にアルタシヤが怪我をして、それをたまたま近くにいたリョウに治療して貰ったとか、簡単なことで良いから説明が欲しかった。
あと、リョウが着用している制服(?)なのだが、明らかに「緊急指令10-4-10-10」の隊員たちの制服を流用してるよね。

~「緊急指令10-4-10-10」第1話より
で、コセイドン隊が直ちにリョウの捜索に乗り出すのだが、なんか、ほかの乗客・乗務員のことは良いのか? と言う気もするのだった。
リョウ以外の人たちの安否について、バンノたちが全く気にかけていないように見えるのも、今回のシナリオの欠点である。
亜空間の中で乗船を破壊されたら、どう考えても助からないと思うので、リョウ以外の人たちは全滅したと思われるが、もともと、悪人はリョウを拉致する為にホワイト号を襲ったのだから、そのとばっちりを食った犠牲者たちにとっては、運が悪かったで済む話ではない。
話が前後したが、リョウは、ただひとり生き残り、奇妙なハイテク装置がひしめく、真っ暗な空間の中に座っていた。
今回の悪役はドクター・ダークと言う謎の人物で、恐竜の知識の豊富なリョウに、何事かの協力を求めるが、相手の素性も目的もさっぱり分からないままそんなことを言われても、リョウは断るしかないのだった。

一方、ゴウとアルタシヤは白亜紀に着くと、すぐにリョウの家族に会いに行く。
サオリ「ゴウ、アルタシヤ、どうだったの?」
ゴウ「……」
夫の安否を問うサオリに、ゴウもアルタシヤも申し訳なそうに俯いて目を逸らす。

サオリ「主人はやっぱり見付からなかったのね」
ゴウ「……」
ゴウは、無言のまま、口をへの字に曲げて小さく頷く。

サオリ「……」
レイ「ママ、お父さんは?」
あんまり色っぽいので、思わず似たような画像を貼ってしまった。

レイ「お姉ちゃん、お父さんは?」
アルタシヤ「レイ……」
ゴウ「レイ、お父さんはね、きっと帰ってくるよ」
アルタシヤ「そうよ」
レイ「いつ?」
ゴウ「う゛っ……」
意外と面倒臭いお子様だった。
コセイドン号に戻って分かりやすく落ち込んでいるゴウを、バンノが言葉すくなに励ます。
バンノ「ゴウ……」
ゴウ「お父さんはいつ帰ってくるって聞かれて、俺は、俺は……」
悔しそうに顔をゆがめて言葉を途切れさせるゴウ。
ちなみにモリィの台詞から、捜索の結果、リョウは勿論、他の乗客・乗員の死体もまったく発見できなかったことが推定できる。

ダーク「気が付いたか?」
リョウ「お前は?」
ダーク「ふっふっふっふっ、ドクター・ダークだっ」
一方、得体の知れない拷問にかけられて気絶していたリョウの前に、ようやく、すべての張本人が姿を現す。
うーん、はっきり言って、この前の、暗闇の中でのリョウとドクター・ダークの会話は要らなかったような気がする。最初から、このシーンから始めれば良かったのだ。
ダーク「どうだ、協力するか、地球の歴史を変える私の計画に?」
リョウ「歴史を変える?」

ダーク(マントを翻して)「白亜紀にダーク帝国を建設するのだ。ようく飼い慣らされた何千頭、何万頭の恐竜を使って」
リョウ「なんだって?」

ダーク(マントを翻して)「カーッツ! エジプトの王は何十万もの人間を使ってピラミッドを作った。ふっふっふっ、人間の代わりに恐竜を……はっはっはっ、これこそ、白亜紀にふさわしい方法だと思わないか?」
いちいちポーズをつけないと喋れない、あまり病室で相部屋になりたくないタイプの悪役ドクター・ダークを演じるのは、毎度お馴染み、堀田真三さん。
「スカイライダー」の始まる半年前だが、片手が鉤爪になっているところは、ゼネラルモンスターに通じるものがある。
が、リョウのような大人が、そんな誇大妄想狂のタワゴトに付き合う筈もなく、彼はあくまで協力を拒む。
ダーク(マントを翻して)「帰れ、帰してやる。あのドアは亜空間に通じている」
と、意外にも、ダークはあっさり勧誘を諦めて、一方のドアを開けてリョウを解放すると言い出す。
もっとも、亜空間に生身の体で出たところで、無事に21世紀か白亜紀に生還できるとは到底思えないのだが、深く考える余裕を失っていたリョウは、そのままドアを抜けてしまう。
が、案の定、ダークがそう簡単にリョウを見逃す筈もなく、意趣返しとばかり、ドアを出たところで落とし穴に落とされて、たちまち、醜い半人半獣の化け物に改造されてしまう。
ドクターと言うだけあって、彼は遺伝子操作などのバイオテクノロジーに長けたワルモノのようである。

白亜紀に舞い戻り、「サオリ、レイーッ!」と、妻と娘の名を呼びながら原生林の中を走り回っている異形の姿となったリョウ。
怪物にされたリョウだが、一応、妻や娘についての記憶は残っているらしい。
もっとも、それ以外の点は、理性と知性をなくした、まさしく野獣の脳に成り下がっているようだ。
元々住んでいたコロニーの近くをさまよっていると、コロニーの警備兵たちに見付かり、問答無用で銃を撃たれる。
いや、さすがに、見た目が恐ろしいからっていきなり撃つのはどうかと思うんですけど……。
が、幸か不幸か、彼のボディはそれくらいではビクともしない強靭なものに変わっていて(恐竜の遺伝子を組み込まれた?)、小銃の弾を浴びても無傷だった。

警備兵「ぐわあああーっ!」

警備兵「ぐおっ」
怒りに忘れ、不運な警備兵の首をへし折って殺してしまうリョウ。
さらに、頭上から落とされた巨大な岩を怪力で持ち上げて投げ返し、その警備兵たちも潰してしまう。
このように、怪物化したリョウが実際に人を殺しているのも、今回のシナリオの瑕疵である。
殴って気絶させるだけなら良いんだけどね。
白亜紀に留まっていたコセイドン隊が、その知らせを受けて出動したのは言うまでもない。
ダーク「ようし、この騒ぎに乗じて白亜紀へ行こう。コセイドン隊を倒すのだぁ、カーッツ!」 敵も味方もいないのに、常に120パーセントのテンションを維持しているドクター・ダーク。
長い特撮ヒーローの歴史においても、これだけ鬱陶しい悪役キャラは珍しいのではないか。
あの溶岩の塊はカモフラージュだったようで、白亜紀にワープアウトしたタイムファイヤーは、高速回転して外装を吹き飛ばし、中から小型タイムマシンが出現する。

さて、早くも恐竜牧場に辿り着いたリョウは、サオリとレイを追いかけていた。
当然、それが夫の変わり果てた姿とは知らぬサオリは、娘を連れて必死で逃げ惑う。
この、レンガ造りの塔(サイロ?)が並んだロケ地、「スターウルフ」にも出てきたなぁ。

サオリ「はっ」
リョウ「サオリ、レイ……」
愛する妻と娘を前にしても、筋道だって事情を説明する能力も失ってしまったリョウには、悲しげな顔でその名を呼ぶことしか出来なかった。

娘を抱いて震えていたサオリだが、ふと、怪物の目に涙が浮かんでいるのに気付き、戸惑う。
結局サオリは逃げ去ってしまうが、リョウに可愛がられていた恐竜たちには、ニオイでそれが分かるらしく、怪物の姿となったリョウにじゃれるようにまとわりつくのだった。
ファイタス1号で森の中を走っていたゴウとテツは、サオリとレイに気付いてメカを停め、怪物を倒しに行こうとするが、

サオリ「待って、私の見間違いかもしれないけど、私たちを見て泣いていたの」
ゴウ「泣いていた?」
サオリ「目に涙をいっぱい溜めて」
テツ「変だな」
その後、いろいろあって、ドクター・ダークのタイムマシンは、モリィのファイタス2号にあえなく撃ち落とされてしまう。
こんなことで、果たしてダーク帝国などを建設できるのだろうかと不安になってくる。
サオリとレイは、アルタシヤのハクアス1号に保護されるが、リョウはなおもしつこく彼らを追ってくる。

レイ「お姉ちゃん、もっと早くう!」
大人よりは直感に優れている筈のレイが、怪物の正体に全く気付かないのも物足りないのである。
ゴウは生身の体でリョウとどつきあった後、コセイダーに変身して再度戦いを挑む。
怪物も、さすがにコセイダーの敵ではなく、レーザーサーベルで斬られそうになるが、

コセイダー「おわっ」
そこへ割り込んでコセイダーを突き飛ばし、リョウを助けたのが、リョウになついているタロウであった。
リョウ「やめろ、やめるんだーっ」
リョウ、必死でタロウを呼び戻すと、いとおしそうにその体を撫でてやる。
コセイダー「何故恐竜が……?」
と、今度はそこへダークが現れる。

コセイダー「貴様、何者だ?」
ダーク(マントを翻して)「おのれえっ、ドクター・ダークだっ。白亜紀にダーク帝国を建設するのだっ。地球の歴史を変えてやるっ」
それにしても、この人、そもそも何者なのだろう?
単なるマッドサイエンティストなのか、他の星から来た宇宙人なのか、ミュータントなのか、サイボーグなのか、それすらも分からない。
その目的にしても至極曖昧で、これだけ得体の知れない悪役と言うのも珍しいと思われる。
なんであんなにまでしてリョウを仲間を引き入れようとしたのかも良く分からないし……。
リョウ自身も言っていたが、それだけの技術があるのなら、別にリョウの力を借りる必要はなかっただろうに。
それはともかく、互いに剣を振り回しての一騎打ちとなる。
コセイダー、何気なく相手の特殊な材質の剣をレーザーサーベルで受けるが、その途端、激しい電撃が体を貫く。

コセイダー「うわーっ!」
ダーク「どうだ、この剣を受けるたびにお前の体を数千ボルトの電流が突っ走るのだっ」
うーん、せめてここは「数万ボルト」に盛って欲しかった。
コセイダーなら、数千ボルトくらいの電撃は平気だろうから。

もっとも、コセイダーはかなりのダメージを受け、さらに、ダークの機械化された左手から発射された無数のニードルで、大木の根元に文字通り釘付けにされてしまう。

ダーク「死ねえ」
身動きできないコセイダーに、ダークが剣を掲げて突っ込んでくる。
コセイダー、絶体絶命のピンチと思いきや、

コセイダー「だぁあああーっ!」
実は普通に動けたらしく、ギリギリのタイミングで体を浮かし、逆にダークの体を存分に切り裂くのだった。

ダーク「おうっ……くくくっ」
ダークはそのまま自分の撃ったニードルで体中を刺され、血を吐いて絶命する。
悪役としては、100点満点の死に様だと言えるだろう。
なお、コセイダーに背後から真っ二つに斬られた後、爆発を起こしていることから、やっぱりサイボーグだったのではないかと思われるが、結局正体不明としか言いようがない謎のキャラクターであった。
その後、絶望したようにタロウと一緒に歩いていた怪物を、コセイダーが追いかけ、呼び止める。

コセイダー「待て、お前は誰だ。ひょっとすると……」
リョウ「……」
リョウ、こんな姿になった自分を恥じるように、コセイダーに背中を向ける。
どうでもいいが、ゴウがコセイダーでいられる時間にはタイムリミットがあったんじゃなかったっけ?
いつの間にか無制限に変身できるようになっちゃってるなぁ。
やっぱりヒーローには弱点がないとつまらないよね。
で、ラストの処理もめちゃくちゃ雑で、怪物の正体に気付いたコセイダーがレーザーサーベルで怪物を突付くと、あっさり人間の姿に戻ってしまうのだった。
ナレ「コセイダーの剣は、その時、人を活かす活人剣となって燦然と光り輝いた……」 と言うナレーションも、いかにも投げやりだ。
ここは、普通にダークを倒したことで元に戻る、で良かったんじゃないの?
ラスト、リョウがサオリとレイと感激の再会を果たしたのは言うまでもない。
でも、前記したようにリョウは怪物になっていたとはいえ、数人の警備兵を殺している訳で、しかも、リョウ以外の乗船者は全員死んでるわけで、どうにも後味の悪いハッピーエンドであった。
怪物化した父親と、娘の交流なんてのも一切描かれておらず、ひたすら無味乾燥なシナリオである。
稲川さんの美貌と、堀田さんの怪演以外は見所のない凡作だったと言うしかない。

ま、最後はアルタシヤの飛び切りの笑顔で締めましょう!
しかし、アルタシヤにしても、シリーズ後半からは扱いがただの女性隊員になってしまって、その見せ場もぐんと減ったような気がする。
マリが抜けたのだから、もうちょっとアルタシヤにスポットを当てるべきだったと思う。
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