第9話「水着は脱がない」(1989年6月5日)
いや、そこをなんとか脱いで欲しいんです……と、反射的に応じたくなる素敵なサブタイトルの9話です。
で、ミカは確かに水着は脱がなかったが、代わりにパンツを脱いで、おまけにその写真を朝刊にでかでかと掲載して、全国のお茶の間を変な空気にしてしまうことになるのだが、それはしばらく後の話である。
さて、今日も今日とて厳しいトレーニングに明け暮れているミカ。

その日のメニューは、翔子とマンツーマンでの筋力トレーニングであった。
……
管理人「おい、山田君、このシーン考えた人に座布団7000枚上げなさい」
山田君「はーい、かしこまりました」
シンプルなトレーナーの上からでもはっきりと分かるそのでかさ。思わず手を合わせたくなる。
一方、東関東地区大会を2週間後に控えた涼子たちレギュラーメンバーも、最後の仕上げを行っていた。

鏡張りのダンスルームで彼らが行っているのは「ランドリル」と言うもので、水中のルーティン動作を陸上で行う練習である。
ナレ「シンクロの基本となる
一糸乱れぬ協調動作を養うのを目的とする……」
重々しいナレーションにあわせて涼子たちが手足を動かしているのだが、これが
全然合ってないのが今回の最大の爆笑ポイントになっております。
ま、所詮はシンクロ素人の女の子ばかりなので、その辺は大目に見てやってつかあさい。

だが、その中でも、頻繁にミスを繰り返している者がいた。和久井映見さん演じる加奈子である。
藤木「加奈子、遅いわよ、何やってるの!」
加奈子「はい、すいません」
ミスを連発する加奈子に、藤木コーチの叱声が容赦なく飛んでくる。

その後、水着に着替えてプールでの練習になるのだが、それにしても、和久井さんや武田久美子さん、桜井幸子さんなど、90年代を代表する錚々たる女優、アイドルたちがみんなハイレグ水着姿で、かつ、ワキを惜しげもなく晒していると言う、この奇跡のようなシーン!
まぁ、みんなゴーグルつけて同じ水着着てるのが残念だが……。
しかし、水中での練習でも加奈子は同じミスを繰り返し、

藤木「加奈子、何やってるの? ランドリルで注意したこと、一つも守ってないじゃないの。あなた聞こえてるの?」
加奈子「はい、聞こえてます!」
再び藤木コーチからボロクソに怒られる。

レギュラーと入れ替わりにプールから上がった補欠組も、プールサイドからそれを見ていたのだが、いつになく精彩を欠く加奈子を、初心者のミカも心配そうに見守っていた。
加奈子は前回、稔の人身事故の際、あらぬ噂を立てられたミカの為に勇気を出して証言してくれた、いわば「恩人」なので、ミカも無関心ではいられないのだ。
が、加奈子は必ず左腕の動作が遅れてしまい、その度にコーチに怒鳴られていた。

藤木「また違う、何度言ったら分かるの?」
加奈子「……」
唇を噛み締めて、屈辱に耐える加奈子。
この時点で、コーチも草薙オーナーも、加奈子の体の異変に気付くべきだったと思うのだが……。
練習の後、涼子がねちねちと加奈子をいじめる。

涼子「加奈子さん、私は三種目全部優勝したいのよ、チームルーティン、デュエット、ソロ、全部よ。あなたの為にチームの優勝がふいになるなんて耐えられないわ」
加奈子「私、大会までにはきちんとやります。みんなに迷惑はかけないわ」
涼子「大会までなんて信じられないわ。二、三日様子を見て、駄目だったら私、お母様に話すわ、あなたも覚悟してて頂戴ね」
早急に改善が見られないようだったら、ママ(草薙オーナー)に言いつけちゃうから! と最後通告をつきつけると、涼子は取り巻きの冴子や典子を従えて去って行く。

ミカ「加奈子さん、頑張って下さい」
加奈子「頑張るわ。頑張らなければどうしようもないもの!」
ミカの励ましに、加奈子は叫ぶように応じるとロッカールームを飛び出す。

明子「加奈子さんはミカさんの身代わりにされてるのよ」
ミカ「私の身代わり?」
明子「こないだ冴子さんを裏切ってミカさんの味方したじゃない、だからよ」
明子は、前回のことを涼子が根に持ち、それで加奈子につらく当たっているのだと分析して見せるが、実際に加奈子の調子が悪いのは事実なので、ミカのことがあろうとなかろうと涼子の態度はさして変わらなかっただろう。
もともと、涼子はひたすら自分のことしか考えていないクソ女で、チームメイトの不調を気遣う神経など、はなっから持ち合わせていないのだから。

景子「ミカさん、気にしないほうがいいわよ」
こうして見ると、桜井幸子さんが割りと小柄だったことが分かる。
お下げ髪が可愛過ぎる!

千絵「そうよ、ミカさん、加奈子さんは元々実力あるんだし、水の中のタイミングさえ掴めば大丈夫なのよ」
チームメイトも、加奈子の体の異変には全く気付いていないらしい。

ミカ「でも、加奈子さんが私の身代わりだなんて嫌だわ」
ヒロミ「ミカさんが涼子さんに好かれれば良いのよ」
真樹「そうよね、そうすれば加奈子さんもいびられずに済むんじゃないかしら」
明子の言葉にこだわるミカに、最年少の二人が屈託のない顔でアドバイスする。
要するに「長いものに巻かれろ」と言っている訳である。
それはそうと、ぶっとい眉毛が特徴的なヒロミの新田まゆみさん、久しぶりの台詞でした。
翌日から、ミカは視聴者も予想外の行動に出る。
クラブの受付で涼子が来るのを待ち、涼子が入ってくると最敬礼で挨拶し、その荷物を自分から持って、まるで家来のようにへこへこ付いていく。

ダンスの練習の合間には、涼子に率先してタオルを差し出したり、

あろうことか、その足をマッサージしたりする。

その豹変ぶりには、周りは勿論、涼子も戸惑いを隠せない。
涼子「何の魂胆があるの?」
ミカ「魂胆なんて何もありません。私は涼子さんに優勝して欲しいだけなんです」
涼子「……」

涼子「もういいわ、ありがとう」
ミカ「はいっ」
お嬢様育ちで女王様のように扱われないと気が済まない涼子、あんなに敵視していたミカに卑屈なまでに従順な態度を見せられると、それでも、つい受け入れてしまう。実際、このままミカがそんな態度を取り続けていたら、冴子たちのように取り巻きとしてその存在を認めるようになっていたかもしれない。少なくとも、ミカの実力が自分を上回らない限りは。
それにしても、毎回言ってることだが、宮沢りえさんの神々しいばかりの可愛らしさ!
そんなミカの様子を、翔子が遠くから怪訝そうに見ていた。

それはさておき、ダンスレッスンでも、アイドル、女優たちのレオタード姿が見放題なのです。
えー、画面左から、越智静香さん、宮沢りえさん、武田久美子さんの各お尻になります。

千絵「やりすぎよ」
景子「みっともないわ、ミカさん、あんなことする人じゃないもの」
ミカ「いいの!」
数少ない友人たちも見兼ねて忠告するが、ミカは何か考えがあるのか、耳を貸そうとしない。
恐らく、明子の分析を真に受けて、自分が涼子に好かれるようになれば、とばっちりを食っている加奈子もいびられなくなるのではないかと考え、露骨に涼子の歓心を買おうとしたのだろう。
その頃、ロッカールームでは、

冴子「ミカの奴、どういうつもりかしら? 急におべんちゃら使って気持ち悪いったらありゃしない!」
と、日々、涼子におべんちゃらを使っている冴子さんが申しておられました。
典子「涼子さんに嫌われたら、ここでは何も出来ないってこと、ミカもやっと分かったのよ」
明子「可愛いとこあるじゃない、ね、涼子さん」
自分たちと同じレベルにミカが落ちてきたと、涼子の取り巻きたちは単純に喜ぶが、

涼子「ミカがどう出ようと私はあの子が嫌い、あの子見てるだけで苛々してくるの!」
涼子、ミカと自分との間に横たわる切っても切れない宿命的な運命を予感しているのか、あくまでミカに対する敵意を捨てようとしない。
それにしても、こうやって見比べると、武田久美子さんの(人間としての)スケールの大きさが良く分かりますね。
そこへ加奈子が入ってくる。

冴子「今日はトチらないでよ」
典子「今日トチったら、責任とって貰うからね」
涼子「加奈子さんはミカと一緒に基本から始めたほうがいいんじゃないかしら?」
ミカたちとは違って、人の気持ちを思いやることを知らない涼子たちは、躊躇なく加奈子に刺々しい言葉を投げ付ける。

加奈子「……」
目に涙を一杯溜めて耐える加奈子が可愛いのである!
が、その後、またしても同じ失敗を繰り返す加奈子に対し、藤木コーチも遂に匙を投げて、メンバーチェンジを仄めかすようになる。
で、相変わらず、加奈子が腕を押さえる仕草をしているのに、コーチたちは加奈子の故障にまるで気付かないのであった。
藤木「左腕、どうしたの?」
加奈子「なんでもありません」
藤木「だったらしっかりやって!」
ダメだこりゃ。 ストーリー上の都合とはいえ、翔子も草薙オーナーも誰一人として気付かないというのは不自然である。
まぁ、ひょっとしたら、翔子だけは見抜いていたかもしれないのだが……。
放課後、心優しいミカは、合同練習の前に自主的にランドリルをしようと、千絵の了解を取ってから、加奈子の家に誘いに来る。

ミカの家はブティックをやっていて、ミカは加奈子の帰りを待つ間、母親と和やかに談笑する。
母親「ミカさんの話はね、加奈子からよく聞かされてるの」

母親「加奈子はね、今度の大会優勝するって言ってるんだけど、どうかしら、ミカさんの目から見て」
ミカ「はい、私はまだ新人なので生意気なことは言えないんですけど」
母親「優勝できるかしら」
ミカ「出来ると思います。加奈子さんは実力ありますし、一生懸命練習してますから」
母親「そう! 加奈子には優勝してもらわないと困るの。親戚中のみんなにね、絶対見に来るようにって言っちゃったのよ! 女手ひとつで育てたでしょ。色々あったのよ……」
ミカ、母親に加奈子がレギュラーから外されかかっているとは言えず、変に希望を持たせるようなことを口走ってしまう。
どうやら、母親の過度の期待が、加奈子に無理をさせているようであった。
そこへその加奈子が帰ってくる。

ミカ「加奈子さん!」
加奈子「あら、ミカさん」
加奈子に曇りのない笑顔を見せるミカ。

その後、ミカの発案で、スイミングクラブの屋上でランドリルをしている千絵と加奈子。
ミカはまだ初心者なので、手拍子でリズムを取るだけであったが。

と、屋上へ冴子が上がってきて、彼らに気付いて物陰に隠れる。
ひとりで屋上に上がってくるのは不自然なので、ミカの動きを常にマークしているのだろうか。

その練習中、遂に加奈子の左腕に限界が来る。
千絵「加奈子さん、腱鞘炎じゃないの? お医者様に診て貰ったの?」
加奈子「診て貰ったわ、軽い上腕二頭筋腱炎と言われたの。でも本当に軽いものだから、練習には支障を来たさないわ」
ミカ「しばらく練習を休んで、完全に治したらどうかしら……」
ミカはそう勧めるが、加奈子はどうしても聞き入れようとしない。そして、二人に怪我のことは誰にも言わないで欲しいと哀願する。

加奈子「涼子さんやコーチに知られてしまったら、私、チームから外されてしまうわ。そんなことになったら母が悲しむわ。母の立場がなくなってしまうの! 母は私が小さいときに離婚したの。私を育てるためにとってもつらい思いをして働いてきたの、その母が私が優勝するのを楽しみにしているの! 私、そんな母を悲しませるなんて出来ない! ミカさん、千絵さん、私の腕のことは誰にも秘密にして、お願いよ!」
加奈子に土下座してまで言われると、二人も口外しないと約束せざるを得なくなる。

ところが、既にその事実は盗み見ていた冴子によってしっかり知られてしまっていた。
良いですねえ、この冴子のいぢわるそうな顔。

いぢわる冴子は、その足で順子たちのところに行き、そのことを告げ口する。
順子は、とりあえず加奈子に練習を休ませるよう、コーチたちに指示する。

順子「困ったことになったわねえ」
翔子「……」
眉を曇らせる順子であったが、そばにいる翔子は、何の心配もしていないような顔をして立っていた。
何故なら、何の心配もしていないからである! そう、翔子にとって、ミカ以外の選手など、ただの捨て駒に過ぎないのである。
合同練習開始前、加奈子は藤木コーチから腱炎にかかっている選手に練習させる訳には行かないと、加奈子を強制的に休ませる。

水着に着替える為に、ロッカールームにやってきたミカ、不穏な空気を感じる。

果たして、膝を抱えて座り込んでいた加奈子が立ち上がると、いきなりその顔を引っ叩く。

ミカ「加奈子さん、何するの?」
加奈子「あなたね、私のことを告げ口したのはあなたなのね?」
ミカ「待って、何のことなの?」
加奈子「卑怯よ、私はあなたを信頼して話したんじゃないの、それを告げ口するなんて卑怯よ!」
ミカ「私、誰にも話してなんていないわ」
加奈子「千絵さんは私と一緒に行動してたのよ、話したのはあなたしかいないじゃない!」
ミカは身に覚えがないと主張するが、加奈子は、ミカの仕業に違いないと決め付け、激しく責め立てる。

加奈子「ミカさんもみんなと同じよ、ほんとは私が大会に出るの邪魔したかったんだ」
ミカ「違うのよ、違うのよ、加奈子さん!」
加奈子「あなたなんて良いカッコしいよ!」

涼子「みっともない真似はやめてよ、腱炎にかかったのはあなたなのよ、チームの迷惑を考えたら選手を辞退するのが当然よ」
が、横から涼子にビシッと言われ、加奈子は無言でロッカールームを出て行く。
珍しく涼子がミカを庇う形になったが、
涼子「仲間の告げ口をするなんて最低ね」
と、返す刀でミカの行為も非難するのであった。
ミカ、そのことについてはそれ以上抗弁せず、二人だけで話があると涼子と一緒に廊下へ連れ出す。

ミカ「加奈子さんは大会を目指して一生懸命に練習してきたんです。腕の腱炎は軽いものだそうです、二、三日、様子を見て大丈夫なようでしたら、加奈子さんを大会に出られるようにしてあげて欲しいんです」
涼子「そんなことはコーチが決めることよ」
ミカ「分かっています。でも涼子さんはチームのリーダーですから、もう少し加奈子さんを庇ってあげて欲しいんです」
涼子「そう、そういうことだったの。あなた、加奈子のために私にゴマすってたって訳なのね」
ミカ「いいえ、決して……」
涼子、漸く謎が解けたというような顔で決め付けると、この際とばかりに、ミカがこのクラブから出て行ってくれれば、加奈子のことは考えてやってもいいと、ある種の取引を持ちかける。
涼子「あなたはこのクラブの災いの種なの!」
ミカ「……」

きついことを言って涼子が部屋に戻った直後、

背後の曲がり角から、スッと翔子が顔を出す。
今回、翔子、ミカを背後霊のように後ろから見守ってるだけで、ほとんどコーチの仕事はしてません。同僚からは最近「百太郎」とか「給料泥棒」とか呼ばれているそうです。
実際、どう考えても藤木コーチや遠藤コーチの方がちゃんと働いてるよね。
でも、彼らはあくまでエキストラに毛が生えたような存在なので、どんなに頑張っても、選手たちと個人的な信頼関係は決して築けないのだった。

健吾「愛のプレゼント? まさか」
稔「そう、そのまさか、ミカに花束贈ろうと思ってなぁ」
健吾「他の店で買って貰おうか」
稔「おい、それはないだろう?」
その夜、いつもの花屋の店内で、健吾と稔が漫才をしていると、

いつの間にか、CMから抜け出してきたようなガーリーな格好をしたミカが、店の前に立っていた。

健吾「ミカちゃん!」
稔「ミカ、何だよ、その格好は?」
ミカ「私、どうしようかと思って……」
健吾「シンクロをやめるって言うのかい」
ミカ「ええ、そうしようと」
稔「それはないぞ、ミカ、俺に水泳を続けろと言ったのは何処のどいつだ」
健吾「そうだよ、ミカちゃん、君が頑張ってるから、僕も何とかここまでやってこれたんだ。
君がやめたら、僕はどうして良いか分からなくなるじゃないか!」
二人はミカに駆け寄り、口々に思い留まらせようとする。
しかし、稔はともかく、健吾の台詞は男としてかなり情けないものがある。

ミカ「……」
それにしても、宮沢さんの三つ編み、それこそ卑怯なくらい可愛い……。
翔子「ミカ!」
ここで、大方の視聴者の予想通り、翔子の声が背中から飛んでくる。ミカが振り向くと、

かなり強烈なイラストが書いてある回転看板の横に、翔子が凛然と立っていた。
「お急ぎOK」と書いてあるが、こんな得体の知れない店になど、絶対入りたくない……。

翔子「プールで待ってたのよ」
ミカ「私、もう練習はやりません」
翔子「ミカ、私にワケを話しなさい」
ミカ「私、もう疲れました」 翔子「もっと詳しく!」 何気に、このやり取りも爆笑だったりして。
ミカ「私なんていないほうがみんな上手くいくんです。私が良いと思って動くと、必ず誰かが傷つくんです。私、人を傷つけてまでシンクロをやりたくありません」
翔子「人を傷つけたくないから、どこか遠くへ去って行くって言うのね」
ミカ「ええ、それが私の望みです。私は独りで生きていくのが性に合ってるんです」

大方の視聴者の予想通り、ここで翔子のビンタがミカの頬に炸裂する。
翔子「バカッ!」
ミカ「暴力はやめてください!」 それに対するミカの反応も、1話以来の翔子のやってきたことを思い合わせると、あまりにまっとう過ぎて笑えるのである。

翔子「ミカが生意気だからよ。何にも分かんないくせに、生意気なことを言うからよ。人間は独りでは生きていけないわ。大勢の人間との関係の中で生きていかざるを得ないのよ。(中略)人間の本当の優しさや悲しみ、私はミカにそれを知って欲しいの。傷つくことを恐れずに、人間の本当の姿を見付けて欲しいの。
それがミカのシンクロなの!」
ミカ(来たーっ!) どんな話の流れからも強引にシンクロの話題に持っていく翔子の神業的なトークテクニックに、ミカも思わず心の中で喝采を送り……ません!
しかし、この辺の強引さは同じ大映ドラマの「スクールウォーズ」のラグビー馬鹿・滝沢に通じるものがあるな。
ミカ「私のシンクロ?」

翔子「シンクロは人間を表現することなの、人間のほんとの優しさや悲しさを水の輝きの中に映し出すことなの!」
ミカ「森谷先生……」
翔子「ミカもアキレス腱を切って絶望したわね。でもミカは絶望から立ち上がった。その時の経験を生かすのよ。さあ、加奈子さんのとこへ行ってらっしゃい」
ミカ「はいっ!」
翔子のビンタ&説教で、ミカはたちまち迷いを振り切り、自分のなすべきことをする為に夜道を走り出すのであった。

それを微笑みながら見送る翔子と、ミカに見向きもされず、
「俺たちって一体なんなの?」風に顔を見合わせて笑うしかない健吾と稔であった。
ミカはその足で加奈子の家(ブティック)に行き、

ミカ「私が言いたいのは、告げ口したとかしないじゃなくて、ここで無理をして取り返しが付かなくなるよりは次のチャンスを待つべきだということなの」
加奈子「……」
ミカ「加奈子さんはお母さんのために無理をしているのよ」
加奈子「お母さんのいないあなたに私の気持ちなんか分かるわけないわ!」

ミカ「分かるわ、痛いほど分かるわ。お母さんがいないから余計にあなたの気持ちが分かるのよ。でも、ここで無理をしてあなたがシンクロを出来なくなったら、お母さん、悲しむんじゃないかしら?」
加奈子「……」
最初はまだ怒りが覚めやらず、話も聞いてくれない加奈子だったが、ミカが冷静に粘り強く説得しているうちに落ち着きを取り戻す。
横で話を聞いていた母親がつと、進み出て、

母親「加奈子、お母さんもミカさんの言うとおりだと思うわよ」
加奈子「でも」
母親「私のことだったらいいの、次のチャンスがあるじゃない」
ミカ「そうよ、加奈子さん、私たちはまだ16歳なんだもの、チャンスは一杯あるわ」
母親からも優しく諭された加奈子は、割とあっさりミカの説得を受け入れ、きっぱり地区大会への出場を断念するのだった。
ラスト、涼子がプールサイドで巨乳をぶるんぶるん振るわせて準備運動していると、

クラブを出て行った筈のミカが、美しいシルエットを見せてこちらに歩いて来るではないか。
ミカ、真っ直ぐ涼子の目を見据えながら、「私、シンクロはやめませんから」と、力強く宣言するのだった。
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