第48回「コセイダー トカゲ人間の恐怖」(1979年6月1日)
「コセイドン」後半のつまらなさは、ハードなSFドラマとして始まった番組が、ただのスーパーヒーローものに路線変更してしまったのが主な原因だが、もうひとつ、脚本家のネタ切れか、同じようなプロットのエピソードが繰り返される点にも起因している。
この48話も、コセイドン隊が懇意にしている科学者が、悪の手によって異形の怪物に変えられてしまうと言う点、43話とそっくりである。
冒頭、宗方と言う若き学者が、生体電送装置の実験を行っている。
そして遂に、電話ボックスのような四角い透明なボックスの中に入れたトカゲを、離れたところにある別のボックスに転送することに成功する。
如月「おめでとう、宗方君」
その直後、如月と言う老教授が祝福の言葉をかける。

宗方「如月先生、ご覧になってましたか?」
爽やかな青年科学者・宗方を演じるのは、「変身忍者嵐」や「鉄人タイガーセブン」の南城竜也さん。

如月「よくやったねえ、きみ、画期的じゃないか」
宗方「はい」
その腕を掴んで、我がことのように喜んでいる如月教授を演じるのは、かつて菊容子さんのむっちりボディをお姫様抱っこしたこともある、名バイプレーヤーの奥村公延さん。
そう言えば、「嵐」では南城さんも菊さんと共演してるんだよね。全然関係ない話だけど。
如月「これが学会に発表されれば、発明者は最高の栄誉に輝くだろう」
宗方「恐れ入ります」

如月「私も電送装置の発明には心血を注いだ。残念ながら、私は失敗した……」
宗方「ははは、まぁ、実力の違いですかね」
如月「……」
じゃなくて、
宗方「ラッキーだったんです、私は」
宗方はあくまで謙虚であった。如月はふと思い出したように、
如月「あ、完成近しと見て、既に私のところに問い合わせが来てるんだ。中生代・白亜紀から……コロニー同士の移動に使いたいらしい」
宗方「実は先生、私も白亜紀のある病院と約束してるんです」
如月「そうか、君のお嬢さんが入院しているのはあの病院かね」
宗方「はい、なんといっても、あの時代は空気も新鮮ですし、医療も発達してます。この生体電送装置で瞬間電送すれば、どんな重症患者も助かります」
しかし、「空気が新鮮」と言うのは分かるけど、21世紀より白亜紀のコロニーの方が医療が発達していると言うのは、なんか変である。
また、宗方の言い方では、21世紀から白亜紀に電送するように聞こえるが、さすがに違う時代どうしでは不可能だろうから、「白亜紀で発生した病人・怪我人を、病院に瞬間電送すれば……」と言う意味なのだろう。もっとも、一刻を争う重傷ならともかく、病気では、瞬間電送しようが普通に搬送しようが、あまり関係ないような気もするんだけどね。
それにしても、電送装置が実用化されれば、交通網の発達していない白亜紀において、重要なインフラになることは間違いあるまい。

宗方の台詞に続いて、白亜紀のとある病院の外観が映し出される。
しかし、今更だけど、白亜紀にこんな建物をバンバン建てちゃっていいのかしら?
現在にどんな影響が及ぷか分からないから、過去にタイムスリップしても、その世界に干渉してはいけないと言うのがSFの不文律だと思うのだが。
ともあれ、その病院に入院加療中の、宗方博士の娘・みよ子。
詳しい説明はないが、目に包帯を巻いているので、視力に関する病気らしいが、既に手術も終わって、近々包帯も取れると言う。
で、そのみよ子の病室に来てあれこれ世話を焼いているのが、ゴウとモリィであった。暇なんか?
再び、宗方博士のラボ。

宗方「先生、これで危険を冒して亜空間を行き来する必要がなくなったわけです」
如月「ところで宗方君、万が一にも混信することはあるまいね」
宗方「ありません、このデータでもわかるように、同じボックスに二つの生体が入らない限り、混信する心配はありません」
うん? やっぱり、電送装置は異なる時代間でも機能するらしい。
でも、それこそ、実際に別々の時代にボックスを置いて実験しないと、完全に成功したとは言えないのではないだろうか?
さて、如月教授、宗方の示したデータを仔細に見ていたが、やがて会心の笑みを頬に刻むと、
如月「結構! これで完璧だ」
如月の賛辞に、宗方も嬉しそうに微笑むが、

如月「では、
私が注文に答えるようにしよう」
宗方「先生が?」
続く如月の言葉に、たちまちその笑顔が戸惑いの表情に変わる。

如月「そう、私はしくじり、君は成功した。だが、まだ、だぁれもこの事実を知らない。そうなんだろう?」
宗方「はぁ」
如月「だから、君に死んでもらえば、発明者は私と言うことになる」
宗方「なんですって?」
底抜けにお人好しの宗方、そこまで言われても、如月の真意が掴めず、ますます困惑した、泣き笑いのような表情になって問い返す。
やがて、廊下の奥から、誰かが重い足音を響かせながら近付いてくる気配が感じられる。
宗方「ふっ、人間を助ける装置を発明した君が私の作り出した殺人兵器に殺される。ふっ、皮肉な巡り合せだな、宗方君?」

如月がつぶやくように宗方に語りながら、ドアの前に移動すると、ガラスの向こうに黒い影が見え、ついで、ドアを蹴破って恐ろしげな武装アンドロイドが乱入してくる。
如月「これは私の護衛ロボットだが、若干手を加えて人間を殺せるようにした。君がその第一号ってわけだ」
宗方「先生は、先生はそれでも科学者ですかっ!」
如月「やれ」
宗方の抗議も無視して、如月は冷酷に命令を下す。
宗方は、銃撃を避けようと、咄嗟に電送ボックスの中に逃げ込む。
その直後、銃撃のショックでメカが誤作動を起こし、宗方の体が別のボックスに転送されてしまう。
如月「消えても無駄だ」
如月、赤いカーテンで仕切られたボックスの置いてある隣室に入るが、何を見たのか、悲鳴を上げて弾かれたように飛び出てくる。

一瞬の間を置いて、カーテンの間から、恐ろしいトカゲのような怪物がひょいと顔を覗かせる。
そう、宗方は、ボックスの中にいたトカゲと合体して、トカゲ人間になってしまったのだ!
さすがに如月が茫然としている隙に、宗方は窓を突き破って外へ逃げ出す。
が、すぐ追いかけたアンドロイドに背中を撃たれ、あえなく倒れる。
如月はその死を確かめることなく、

如月「ようし、電送ボックスを運び出せ、それからここを爆破するんだ」
他のアンドロイド兵士たちに、テキパキと指示を出す。
「コセイドン」後半の敵って、基本的に、マッドサイエンティスト(or死の商人)+武装アンドロイドと言う組み合わせがほとんどで、今回もその例に漏れない。
「コセイドン」後半のつまらなさは、ここにも原因があると思う。要するにワンパターンなんだよね。
それはともかく、宗方の研究所は木っ端微塵に爆破されるが、トカゲ人間になった宗方はピンピンしていた。トカゲの生命力を得たことで、多少の銃撃も平気な体になっていたのだ。
自宅の爆破に驚き、何も考えずに往来に出るが、

そこは人込みの真っ只中で、奇怪な怪物の出現に、たちまち大騒ぎとなってしまう。
「コセイドン」で、こういう現実世界の光景が映し出されるのは異例のことで、実に新鮮である。そう、うっかりしていたが、宗方の研究所は白亜紀ではなく21世紀にあったのだ。
宗方、釈明したくても喋ることが出来ず、ひたすら逃げるしかなかった。
やがて警官隊が出動し、彼の姿を見るや、問答無用で銃を撃ってくる。
ま、一応21世紀と言う設定なのに、警官隊の制服や銃器が、70年代と全く同じと言うのはいささか芸がないが。
宗方はなんとか彼らの目を逃れ、本物のトカゲのように団地の床下の空間に身を潜める。
宗方(娘に会いたい……みよ子ならきっと分かってくれる!)
で、次のカットでは、早くもトカゲ人間が操縦するタイムシップが、白亜紀に向けて亜空間の中を飛んでいるシーンになるのだが、トカゲ人間にされ、屋敷も吹っ飛ばされた宗方が、どこで、どうやってタイムシップを調達したのかが、スパッと省略されているのは物足りない。
が、正規の手段ではないので、たちまち密航者扱いされ、コセイドン隊が迎え撃つことになる。
そうとも知らず、ゴウとテツはなおもみよ子の相手をしてやっていた。暇なんか?

みよ子「もう少しで、ゴウさんやモリィさんの顔を見られるのね」
ゴウ「みよちゃん、俺の顔はともかくな、モリィの顔は見ないほうが良いと思うよ。包帯が取れて、初めて見るものはやっぱり綺麗なもんでなくちゃなー?」
モリィ「この野郎!」
などと二人がじゃれていると、テツがドアを開けて入って来て、手振りで二人を廊下へ連れ出す。

ゴウ「いきなりなんだよ?」
テツ「宗方研究所で原因不明の爆発が起こったらしいんだ」
モリィ「ええっ?」
ゴウ「それで、宗方博士は?」
テツ「それが、生死不明らしいんだ」
ゴウ「そんなバカな!」
と、背後からみよ子担当の看護婦の足音が近付いてきたので、

三人「ジャンケンホイ!」

ゴウ「ほーら、あっち向いてホイ!」
何の脈絡もなくジャンケンを初めて、強引に誤魔化す三人であった。

みよ子「パパ、リッキー連れてくるかな?」
看護婦「リッキーって何?」
みよ子「ベンガルモニターってトカゲなの」
看護婦「トカゲーっ?」
何も知らないみよ子が看護婦とそんな話をしている。

如月「宗方くんが行方不明? それは気の毒なことをしたな。私と同じ研究でどちらが先にゴールインするか、大いに期待をしておったんだが」
その後、既に白亜紀に来ている如月教授が、数体の護衛アンドロイドを引き連れ、院長らしき男性と話しながら歩いているのと、ゴウたちが擦れ違う。

ゴウ「なんだ、あのじいさん」
テツ「うん、生体電送で有名な如月教授だ。宗方博士の恩師だよ」
ゴウ「ああ、それにしちゃバカに落ち着いてんな」
ゴウ、如月の態度に微かな違和感を覚えるが、さすがにそれだけで如月が屋敷を爆破した張本人だとは気付かない。
ちなみに予告編では、

ゴウたちと擦れ違った後、角を曲がる時、最後尾のアンドロイドがゴウたちをギロリと見るシーンがあるのだが、本編では省略されていた。
その目付きが気になって、ゴウが如月への疑惑を掻き立てるきっかけになったと思われるので、これはカットしないで欲しかったな、と。
その後、いろいろあって、白亜紀に到着し、あの病院へ向かう宗方博士=トカゲ人間をモリィやゴウたちが追跡し、威嚇攻撃を加えるが、結局見失ってしまう。
だが、その際、トカゲ人間らしく、尻尾を身代わりに置いて行ったのが、事件解明の手助けとなる。

ゴウ「これはベンガルモニターの尻尾じゃないか」
テツ「そう言われりゃそうだが、それがどうした?」
ゴウ「……」
ゴウの頭の中に、さっきのみよ子と看護婦の会話が渦巻いていた。
ゴウ「よし、病院へ急ごう」
トカゲ人間の出現で、病院はたちまちパニック状態になる。
宗方は、易々とみよ子の病室まで辿り着く。さいわい、みよ子はまだ視力が回復していないので、その姿を見て腰を抜かすことはなかったが、なにしろ口が利けないので、宗方は何も伝えることが出来ない。

みよ子「誰、そこにいるのは?」
宗方「……」
みよ子「パパ? パパなのね? ちょうど良かった、今日いっぱいで包帯をとってもいいんだって……パパぁ?」
宗方「……」
みよ子「やっぱりパパだった、ねえ、どうして黙ってるの?」
だが、トカゲ人間と言っても手は人間の時のままなので、その手に触れると、みよ子はそれが父親のものだとすぐ気付く。

ゴウ「やあ、宗方博士、お待ちしてましたよ」
宗方「……」
ゴウ「みよちゃん、良かったなぁ、パパが来てくれて」
困惑する宗方に、ゴウがにこやかな声で挨拶する。
ゴウ、いささか察しが早過ぎる気もするが、宗方が生体電送装置のトラブルでトカゲ人間になってしまったことを見抜いているのだ。
ゴウはみよ子に気付かれないよう、筆談で宗方と話してから、ひとまず部屋の外へ連れ出そうとする。
ところがその時、中庭に面した窓から如月の武装アンドロイドが宗方を狙撃する。撃たれた宗方は再び倒れる。

如月「トカゲと合体したお陰で、爬虫類並みの生命力を持ったことに、気が付かなかった私の失敗だ」
それは良いのだが、あっさり如月がゴウたちの前に出て来て、自分が黒幕だと自ら暴露してしまうのが、実に物足りない展開。
このように、地位や名誉もある悪人が、自分が事件の首謀者であることをまるで隠そうとしないことが、シリーズ後半の多くの敵に共通する特徴であり、それが犯人探しと言う楽しさを視聴者から奪い、ひいてはシリーズ後半の低迷に拍車をかける一因になっていると思うのだ。
如月「今度こそ念入りに殺しやる。タイムGメンたちも覚悟しろ」
さらに、基本的に、悪人が
バカばっかりと言うのも残念な点である。
この如月にしても、人知れず宗方を抹殺するならともかく、こんなに大っぴらにタイムGメンに喧嘩を売って、それで自分のやったことを隠しおおせると思ってるあたり、完全なバカである。
案の定、すぐにバンノたちも駆けつけ、前後から挟み撃ちにする。

バンノ「そうはさせんぞ、今、病院長から聞いた。電送装置を持ち込んだそうだな。だがそれはこの宗方博士の研究を盗んだもんじゃないのかね?」
如月「うーん、おのれ、この女を連れて引き揚げろ」
アルタシヤ「ゴウ!」
が、アルタシヤを人質にとられているので、ゴウたちも迂闊に手が出せない。

如月「わしに万が一のことがあれば、この女の両腕をへし折るぞ。その次は、はっ、首の骨だ」
如月「エンジョイ・コーク!」 ゴウ(アホか、こいつは……)
じゃなくて、
如月「カァーッ!」
親指で喉を掻っ切ってみせるアメリカンな如月であった。
で、如月、念入りに殺すと言いながら、結局また宗方が生きているのに気付かず、病院から逃げ出す。
ここでゴウがコセイダーに変身し、ラス殺陣になるのだが、要するにただの流れ作業なので、あえて説明の必要はあるまい。

とりあえず、アンドロイドに担がれた状態で、コセイダーが飛んでくるのを見て笑顔になるアルタシヤの顔を貼っておく。
また、

コセイダー「タァーイム戦士、コセイダー参上!」
真後ろに人が立っていると、ヒーローが名乗りポーズを取りにくいということが、このシーンを見ると良く分かる。
アンドロイド軍団はコセイダーに殲滅され、如月は無事、お縄になる。
そして、電送装置であっさり宗方は元通りの姿に戻り、

宗方「良かったな、みよ子!」
みよ子の視力も回復、それを宗方が嬉しそうに抱き上げてハッピーエンドとなる。
以上、導入部は期待できるが、それ以降の展開にひねりがなく、終わってみれば大したことがなかったと言う、これまたシリーズ後半に頻出する、低評価のエピソードであった。
久しぶりの辻真先さんの脚本だったのだが、はっきり言って期待外れだった。
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