第11話「へんてこりんなロボットガンマン」(1986年6月23日)
冒頭、変身済みのスピルバンがホバリオンに乗って採石場をパトロール(無意味)していると、どこからかフラメンコ的なギターの演奏が聞こえてくる。
スピルバン、バイクから降り、神経を研ぎ澄ましながら20メートルほど歩くが、演奏はなかなか終わらない。

と、漸く、その出所と思われる人物が、スピルバンを見下ろす崖の上に現れる。
で、視聴者は当然、そいつが実際にギターを手に持って掻き鳴らしているのだろうと予想するのだが、何故か手ぶらなので、思わずコケそうになったと言う。
ま、多分、スーツの手が太くて、ギターを持たせることが難しかったのだろうが……。
怪人「ようこそスピルバン、会いたかったよ」
スピルバン「ワーラーの戦闘機械人か?」
怪人「イエース、僕の名はメカガンマン」
メカガンマン、自己紹介を終えるといきなりショットガンのような武器を取り出す。
スピルバンも思わず身構えるが、メカガンマンが狙ったのは、彼らの目の前を走っていた何の関係もないトラックだった。

その一発で、トラックは大爆発を起こして四散する。
凄まじい破壊力の銃であった。
スピルバン「なんてことをするんだ、罪もない人に」
怪人「キアーッ!」
メカガンマン、奇声を発しながらスピルバンの前に飛び降り、踊るように体を揺らしながら、
怪人「ほんの、挨拶代わりっ」
スピルバン「なんて残忍な奴」
と言う訳で、今回の敵は、戦隊シリーズやメタルヒーローシリーズにたまに出てくる、マカロニウェスタン風ガンマンの系統に属するキャラクターであった。
「ゴーグルファイブ」のヤマアラシモズーとか、「シャイダー」のオメガとか、「ジャスピオン」のアイガーマンとかね。
そして、全部じゃないけど、上原さんが書く話に良く出てくるような気がする。ちなみに今回のシナリオも上原さんである。
で、この手のキャラクターは、普通の怪人とは一味違った、規格外の要素を持っていることが多い。一匹狼だったり、正々堂々の勝負を好んだり、今回のメカガンマンのようなお調子者だったりね。
もっとも、スピルバンが評したように、お調子者の割りに、やることはえげつない奴だった。

何も考えていないようでいて、そのモニタースコープはスピルバンのハイテククリスタルスーツなみの高性能を誇り、普通に向かい合ってる間にも、速やかにスピルバンの能力を分析し、その行動を予測する。
スピルバンも、見掛けの割りに強敵だと直感して、油断なく身構える。
不意にメカガンマンがライフルを撃ってくる。
スピルバン、まともに胸を撃たれるが、すぐに反撃のビームを相手の胸に放つ。
衝撃に一瞬たじろいだものの、メカガンマンは倒れない。

怪人「おおっと、パンパカパーン、パンパンパンパーン! ガン比べはメカガンマンの勝ち!」

スピルバン「スナイパーが効かない。俺の武器を研究開発して作られた戦闘機械人だ!」
メカガンマン、あえて銃を投げ捨てると、今度は素手で襲い掛かってくる。
それによって、スピルバンの戦闘データを蓄積する為である。
スピルバンの攻撃を受けるだけ受けると、次はシミターのような刃幅のある剣を取り出し、斬り合いを挑んでくる。
スピルバンもツインブレードを抜いて応じる。
しばらくスピルバンの攻撃を凌いでいたが、

怪人「ちょっちょっちょっ、タンマ!」
スピルバン「むう?」
怪人「こりゃ効いた、もう駄目だ、今日はこれにて失敬」
スピルバン「なにぃ?」
怪人「今度機会を改めて……その時が勝負だ」
そう捨て台詞を残すと、崖から飛び降りてバイクに飛び乗り、走り出す。
スピルバン、(変身中は)基本的にシャレの通じない堅物キャラなので、メカガンマンのおどけた態度が上辺だけのものだと承知しながら、その人を食ったような口ぶりにいちいち反応してしまい、つい気勢を削がれてしまうのだ。

モンキーバイクのようなミニバイクに巨体を乗せて走っているメカガンマンと、

それをホバリアンのようなごついバイクで追いかけているスピルバンとの対比が可笑しい。
しかし、ホバリアンを引っ掛けようと、進路の上にキンクロンたちがロープを張るシーンは不要だっただろう。
スピルバンはその罠を蹴散らすものの、結局メカガンマンに逃げられてしまう。

グランナスカに戻り、年中痴女みたいな格好しているダイアナから傷の手当てをして貰っているスピルバン。
画面に映っている二人の体が、
ほぼ裸と言うハレンチなシーンである。
ダイアナ「ひどい火傷よ」
スピルバン「ああ、ハイテククリスタルスーツを貫通するんだ」
さて、ガメデスでは、デスゼロウたちが、帰還したメカガンマンのデータボックスを取り出して、モニターにつなぎ、スピルバンの戦闘能力を観察・解析する。

シャドー「クリンレーザー発生温度100万度」
デスゼロウ「強烈だ。レーザーショックアブソーバーを厚めにしておいてよかった」
再びグランナスカの船内。
まだ傷の癒えていないスピルバンが、そのレーザースナイパーを構えているシーンに合わせて、子供向け特撮では珍しい、本格的な解説が入る。

ナレ「レーザー光線とはある特定の原子や分子が、刺激を受けてエネルギーを高め、増幅し、やがて波長がピッタリと揃って一本の光の束となったものを言う。レーザー光線はプリズムを通しても太陽光のように七色に分かれない単色光で、何処までも真っ直ぐに直進する性質を持っている。その光をレンズで小さな一点に集中させると、大きな破壊力をうることができる。(中略)レーザー銃の光学システムを説明しよう。そのレーザー発振機構は、発信部、増幅器、ビーム収束レンズ、拡散レンズから成り立っている。普通発光温度は30万度から40万度だが、レーザースナイパーはさらに強力で、発生する温度も100万度と凄まじい破壊力を秘めていて戦車などもトランスミッションを狙えば、5キロ先からでも破壊することが出来るのだ。この地球上においては……(後略)」
それが、特撮番組史上最長レコードではないかと思われるほど、長く詳細なもので、管理人も書き写しながら途中で泣きそうになったほどである。
デスゼロウたちは、他にもスピルバンのパンチ力、キック力を正確に数値化して、恐らく、メカガンマンの装甲をそれに耐えられる強靭なものに強化した上で、再びスピルバン打倒に出撃させる。
一方、エジソンでは、奇しくも大五郎が、おもちゃのバイオリンを弾くロボットなるものを発明して悦に入っていた。が、いつものように周囲の反応は冷ややかで、

美和「操り人形のほうがよっぽどよく動くわ」
トキオ「ロボットにミュージカルやらせようなんて無理だよ」
前回も書いたが、美和のこの「むにっ」とした口元が可愛いのである。
そこへ子供たちが押しかけてきて、公園でロボットが紙芝居してると言うので、トキオも大五郎など放って一緒に行ってしまう。
無論、そのロボットこそメカガンマンで、わざわざ作ったオリジナルのイラストを立てて、陽気に紙芝居を始める。

その内容は、自分がスピルバンをボコボコするという、「仮面ライダーX」でも似たようなことやってたなぁと懐かしくなるようなものだった。
「X」では、仮面ライダーをこき下ろした内容に子供たちが抗議の声を上げていたと思うが、
怪人「(中略)スピルバンは腰抜けだ!」

子供たち「ハハハハハッ!」
何故かここでは、子供たちは屈託なく大笑い。
これが世代の違いと言うものなのか?
それとも、単にスピルバンが不人気なのか?
そのうち、エジソンに立ち寄って紙芝居のことを聞いたダイアナもやってくるが、既に紙芝居は終わり、メカガンマンが子供たちと一緒に歌いながら帰っていくところだった。

子供たち「スピルバンは腰抜けだ! ダイアナは露出狂だ!」
ダイアナ「ぬわぁんですってえ!」 ダイアナの怒りが爆発、メカガンマンもろとも子供たちを皆殺しにしてしまい、めでたく国際指名手配犯になったそうです。
じゃなくて、
子供たち「スピルバンは腰抜けだ! メカガンマンは銀河一のガンマンだ!」
しかし、他の子供たちならともかく、トキオたちは今まで何度もスピルバンに危ないところを助けられているのだから、スピルバンをけなすような歌を進んで歌うだろうかと言う素朴な疑問が湧く。
メカガンマンの声には催眠作用があって、知らず知らずのうちにマインドコントロールされているのかもしれない。
もしくは、子供たちが全員、
ただのアホだったと言うこともありうる。
メカガンマン、ダイアナの前を通り過ぎると立ち止まって振り向き、

怪人「認識ナンバー002、ダイアナだね」
ダイアナ「私がお相手するわ」
怪人「ノンノンノンノンノン、スマイル、あなたは笑顔が一番良く似合う。ふぁっはっはっはっはっ」
メカガンマン、攻撃しようともせず、ダイアナを煙に巻いて行ってしまう。
ダイアナも、一見痴女に見えて、その実、スピルバンと同じように生真面目な性格なので、メカガンマンのワーラーらしからぬ飄々とした物腰に、拍子抜けしたような顔で立ち尽くしていた。
CM後、グランナスカの中でレーザースナイパーの特訓を行っていたスピルバン、ダイアナからの知らせを受けて、さっきの公園にやってくる。
と、公園の東屋のベンチに、メカガンマンの顔の一部がスピーカーになって置かれていて、二人に親しげに話しかけてくる。

声「ようこそ、スピルバン、子供たちは預かった。早く助けないと……」
子供たち「助けてーっ!」
同じスピーカーから、檻に入れられたトキオたちの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
スピルバン「声が反響しているぞ」
ダイアナ「もしかして、洞窟の中では?」
何か心当たりがあるのか、スピルバンはスピーカーなど放置して、さっさと車でその場所へ向かう。
その途中、メカガンマンとキンクロンたちに襲われ、二人も即座に結晶する。
スピルバン、ダイアナレディに子供たちの救出を任せるが、彼女より早く、陰ながらスピルバンたちの手助けをしているヘレンが、その洞窟を見付けて入り込み、

ヘレン「さ、私といらっしゃい」
檻の中から子供たちを助け出す。
少し遅れてやってきたダイアナレディが、洞窟の外で子供たちを保護する。
ダイアナは、子供たちから話を聞いて、子供たちを助けたのはヘレンに違いないと確信する。
スピルバン、キンクロンを蹴散らしてから、メカガンマンとの決戦に挑む。
訓練を積んで精妙さを増したスピルバンの射撃だったが、メカガンマンも更にパワーアップしており、

レーザースナイパーのビームを、左手で作り出した電磁バリアで弾き返してしまう。
スピルバン「防御バーリアを装着したんだ!」

このギミックはなかなかハイテクで良いのだが、

肝心の、帽子やマントを外して剥き出しになったメカガンマンの顔が、
出っ歯のブサイクに見えてしまうのがとても残念だった。
体つきも、あまりにごつくて無骨で、洗練されたデザインとは言い難い。
それでも、メカガンマンは掛け値なしに強く、ツインブレードもバリアに跳ね返されて落としてしまい、

逆に怒涛の勢いで斬り付けられ、防戦一方となるスピルバン。
と、そこへダイアナレディが突っ込んできて、メカガンマンを蹴り飛ばす。
同時に、OPのイントロが流れ出してお待ち兼ねの
「ヒーロータイム」になるのだが、水木アニキの勇壮な歌声とは裏腹に、画面に映し出されるのは、ヒーローが二人がかりでひとりの敵をボコボコにしている情けない姿なので、スタッフが企図したほどには、燃えるシーンにはなっていない。
むしろ、

片手を突き出してマシンガンに変え、

スピルバンに片腕を取られながら、

離れたところにいるダイアナレディを撃ちまくり、

ついで、スピルバンの体を投げ飛ばすメカガンマンのほうが、ひとりで複数の敵を相手に奮闘しているように見えてしまい、ヒーローよりよほどカッコイイのであった。
こんなシーンを見ると、「スピルバン」の失敗のひとつは、女性の相棒までメタルスーツを着て戦うと言う、一見斬新なアイディアにあったのではないかと思えてしまう。
だから、この決戦シーンも、あくまでスピルバンひとりで強敵を打破するようにしておけば、素直に燃えるシーンになっていたのではないかと悔やまれる。

スピルバン「ダイアナ、しっかりしろ!」
ダイアナレディ「……」
怪人「心配するな、ダイアナ、すぐにスピルバン坊やもあとを追ってくる!」
結局、ダイアナを傷付けられたスピルバンが怒りを爆発させ、
スピルバン「許さん、怒りの鉄拳、受けてみろ!」

真っ正面から飛び込んで放った渾身の一撃でバリアを砕き割り、最後は必殺アークインパルスでメカガンマンを撃破するのだった。
しかし、自分で「怒りの鉄拳!」って言いながら怒りの鉄拳を振るう人ってのも、珍しいよね……。
あと、上の画像、スピルバンがダイアナレディの体を抱き起こして気遣っているシーンだが、これも、一方が生身の女性ならともかく、メタルスーツ同士では、いまひとつ盛り上がりに欠けると言うか……。
特に、当事のちびっ子はいざしらず、我々オールド特撮ファンは、ダイアナレディの中に入っているのもJACのお兄さんだと知ってるからね。
以上、アクションはそこそこ見られるが、メカガンマンのユニークなキャラクター描写が中途半端で、ストーリーにも捻りがなく、終わってみればいつもの凡作になってしまったのが惜しまれる一本であった。
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