第10話「愛憎のプールサイド」(1989年6月12日)
なんでワシ、こんなことしてるんだろう? と、時々思うこともありますが、今日も頑張って「スワンの涙」のレビューとしゃれ込みたいと思います。
一週間後に迫った東関東地区大会に向けて、涼子たちレギュラー選手の練習にもますます熱が入っていた。

まだシンクロの選手としては駆け出しのミカは、プールサイドから羨望と憧れの表情でそれを見詰めていた。
そんなミカが時折、悲しそうな目になるのは、涼子の母親・順子や、最近よく見学に来ている景子の母親らが水の中の娘たちに注ぐ、いかにも母親らしい優しさに満ちた眼差しが気になるからだった。
無論、この時のミカは、実の母親がすぐそばにいて、陰ながら自分のことを見守ってくれていることには露ほども気付いていなかった……。
練習が終わった後、三々五々家路につくシンクロ少女たち。
セーラー服姿の子もいるのだが、まだ、「イッキ」コールと並んで、日本社会を滅ぼす一因ともなった、おぞましきルーズソックスなどというものは見られず、清楚なハイソックスが主流なのが好ましい。
景子は、母親の運転する車で帰宅するが、その会話から、両親の関係がうまくいってないことが想像できる。

典子「景子のお母さん、ここんとこ毎日来てるわね、お父さん、どんな気持ちなのかしら」
冴子「夫婦仲うまくいってないみたいよ。お父さんに女が出来たとかで、離婚話が持ち上がってるって噂があるくらいだもの」
典子「女が出来たの? 不潔ねえ!」
そのことは、仲間の間でも噂になっていて、冴子などは、人の家庭の揉め事が嬉しくて嬉しくてしょうがないと言う風にあることないこと話している。
もっとも、景子の父親の浮気などと言うのは、単なる無責任な噂に過ぎなかったことが後に分かる。

順子「あら、ミカさんの手紙だわ」
一方、事務室では、草薙オーナーが自分への郵便物の中にミカ宛の手紙がまじっているのに気付く。
ちなみにその表書きから、スイミングクラブが世田谷区北沢にあることが分かる。

封筒の裏には、歯切れの良い字でミカの父親・節也の名前が記してあった。
順子「……」
それを見て、と胸を衝かれたような顔になる順子。
何故なら、その節也こそ……

ちょうどそこへ涼子が迎えに来る。場合が場合だけに、ちょっとドキッとする草薙オーナー。
涼子「お母様、なにしてるのぉ?」
順子「あ、ごめんなさい、もう済んだわ」
涼子のちょっと甘えたような喋り方とお団子をぶらさげたようなバリバリの三つ編みヘアが、撮影時、すでに二十歳を越えていた武田久美子さんと明らかにミスマッチなところが逆に萌えるのです!

順子「ミカさん、お部屋に戻ったかしら?」
涼子「ミカに何の用なの?」
順子「手紙が来てるのよ」
涼子「そんなもの、明日渡せば良いのに」
順子「お父様からの手紙なの。ちょっと待っててね、渡してくるから」
順子、そんな大事な手紙を人づてに渡すような迂闊なことはせず、じかにミカの部屋へ届けに行く。

ミカは、パジャマ姿でベッドの上であぐらをかき、痛めたアキレス腱に日本酒を擦り込むと言う、翔子に言われた民間療法を行っていた。
言いだしっぺの翔子が見たら、「え~っ、まだ信じてたの、それぇ?」と言いそうである。
それにしても、パジャマ姿の宮沢りえ……ほとんど凶器だよね。
ノックの音がして、「ミカさん、まだ起きてるかしら?」と、オーナーの声。

ミカ「はい、起きてます」
草薙「お父様からの手紙よ」
ミカ「父からですかぁ。ありがとうございます!」
父親からの手紙と聞いて、ミカは満面の笑みを浮かべる。

そんなミカをじっと見詰める順子の目は、まるで……
この際だからと言う感じで、オーナーはミカの部屋の中に入って見回す。
順子「ここがミカさんの部屋なのね。不自由してるんじゃないかしら」
ミカ「いいえ、そんなこと全然ないです」
順子「そう、強いのね、ミカさん」
ミカ「強くならないと森谷先生に負けてしまいますから」
順子「森谷先生、そんなに厳しいの?」
ミカ「はい、とっても、でも私は厳しくして貰った方が良いんです」
順子「あら、どうしてかしら」
ミカ「私、優しくして貰うとすぐに甘ったれてしまうんです。ですから厳しくして貰った方が……」

順子「アキレス腱の調子はどうなの」
ミカ「今のところ、凄く順調です。森谷先生に酒マッサージを教わって毎日やってますから」
順子「そう……、ミカさんはなんでも森谷先生なのね」
順子、心なしか、少し寂しそうな顔でつぶやく。

ミカ「それは……」
まだ自分のことで手一杯のミカ、順子の表情に込められた深い思いに気付く筈もない。
などとやってると、痺れを切らした涼子が迎えに来る。

涼子「お母様、いつまで待たせる気なの?」
順子「ミカさん、お休みなさい」
ミカ「お休みなさい」
それにしても、で、でけえ(何が?)
オーナーはすぐ立ち去るが、その場に残った涼子は敵意のこもった眼差しをミカに向けるのだった。

OPタイトル後、ミカは早速手紙の封を切って、懐かしい父親の書いた文字に目を通す。
節也の声「ミカ、君がシンクロを始めたことは森谷先生からの国際電話で知りました……バレエをやめてシンクロの選手を目指すと言うことは相当の決意があったと思うけど(中略)」

ミカ「相当な決意なんてもんじゃなかったわよ! それこそ生きるか死ぬかだったんだから!」
ふてくされたように口を膨らませるミカが可愛いのである!
節也の声「ミカ、しばらく連絡しなかったからお父さんのことを怒っているんじゃないかな?」

ミカ「当たり前よぉ、カンカンなんだから、何がしばらくよ、初めて手紙をくれた癖に……」
節也の声(話が進まねえ……) 手紙の文面に、一々声に出して反応するミカ。

ミカ「お父さん、何やってるの?」
机の上の、自分と節也の映っている写真に語り掛けるミカに応える形で、文面は続く。
節也の声「取引先との交渉が何度も暗礁に乗り上げてね……」

北欧のどっかで、取引先の外国人たちと交渉中の節也の姿が描かれる。
節也の声「さすがのお父さんもギブアップ寸前……」

交渉決裂して、立ち去る外国人。途方に暮れる節也。
節也(そもそも、何言ってるのか分かんないだもんなぁ) 
それでも、ひとりで頑張っているミカのことを思い浮かべ、歯を食いしばってなんとか交渉をまとめて祝杯をあげている節也の図。
節也(ははは、相変わらず何言ってるのかさっぱり分かんねえ) 事業も軌道に乗り、そろそろ仙台で営業を再開できそうだと節也は言い、「他人に対する優しさだけは喪わないで下さい。ミカ、頑張れよ!」と言う言葉で手紙は結ばれていた。
ミカ「お父さん、ありがとう、ミカ、寂しいけど逃げたりしないから大丈夫。逃げたりしないもの、めげたら負けてしまうもの……」
写真の中の節也に向かって、自分に言い聞かせるように何度も何度も語り掛けるミカであった。
ある雨の日、ミカ、ちょうど花束を配達中の健吾と出会う。

健吾「ミカちゃん、なんか嬉しいことでもあったみたいだね」
ミカ「うん、お父様(註1)から手紙が来たの……もうすぐ帰国してお店を再開するって書いてあったの」
健吾「良かったね、ミカちゃん、それに引き換え、俺の親父と来たら……」
忘れがちの設定だが、ミカの父親を倒産に追い込んだのは、健吾の父親であり、その父親は依然として行方をくらましたままなのである。
それはともかく、雨の中、花束を剥き出しで運ぶんじゃない。ビニールか何かに包め。
註1……ミカが節也のことを「お父様」と呼ぶのはかなり違和感がある。

早くもただの脇役に成り下がってしまった観のある健吾と別れた後、ミカは、道端に傘も指さずに立っている景子の姿を認め、慌てて駆け寄る。

ミカ「景子さん、どうしたの、何があったの?」
景子「私、もうシンクロできない!」
ミカ「なんですって、どう言うことなの?」
景子「お父さんが家を出たわ」
ミカ「お父さんが?」

景子「私がシンクロをやっているから、お父さんと喧嘩して家を出てしまったの」
ミカ「とにかく、一旦家に戻ろう。着替えをしないと風邪引いちゃうわ」
ミカ、詳しい事情は分からなかったが、とりあえず景子を促して彼女の自宅へ一緒に行く。
宮沢りえさんと、後に「やるやら」や「高校教師」でブレイクする桜井幸子さんとの夢の共演である。
景子が服を着替え、母親に髪を乾かしてもらい、ミカと一緒に改めてクラブへ向かう頃には、幸い雨は上がって晴天になっていた。

景子「お母さん、朝から晩まで私にかかりきりで、お父さんのことなんか何にもしてやらないんだもの! 親子三人で食事をしたことなんてもう何年もないわ。お父さん寂しいんだと思う。それで怒ってるんだと思う。お父さんが帰ってこなかったら、私やだ!」
ミカ「景子さん、お父さんのところに行って見ようか?」
景子「ほんとぉ? 一緒に行ってくれる?」
ミカ「勿論よ!」
道々、景子の切々とした思いを聞いていたミカ、思い切って景子にそんな提案をして、父親の会社のあるビルへ寄り道する。

喫茶店でかなり待たされた末、父親が姿を見せる。
演じるのは、山本紀彦さん。
父親「何だ、仕事中に」
ミカ「こんにちは、葉月ミカと言います。景子さんと一緒にシンクロをやっています」
父親「ほう、君もシンクロをやってるの?」
ミカ「はい」
父親「景子、お父さんは客を待たせてるんだ、用件があるなら早く言いなさい」
景子「お父さん、家に帰って下さい!」
父親「……家に帰ったって、誰もおらんじゃないか。わざわざそんなことを言うために来たのか? お父さんは忙しいんだ、これで」

娘の言葉になど耳を貸さず、すぐにも立ち去りそうな気組みを見せる父親を、ミカが慌てて呼び止める。
ミカ「待って下さい、景子さんの話を聞いてあげて下さい」
父親「聞いたところでどうにもならんよ」
ミカ「奥さんと話し合ってみたらどうでしょうか」

父親「何度も話し合ったさ、女房の奴は景子をスターにするんだと言い張って、私の話など聞こうともしないんだ。お父さんはな、お母さんと別れるつもりだ」
景子「……!」
父親の言葉に、景子が弾かれたように振り向く。

ミカ「待って下さい」
父親「君たちには大人の世界は分からんよ」
ミカ「それはあなたに女が出来たということですか?」
父親「馬鹿なことを言うな!」
ミカ「女が出来たって本当なんですか」
若さゆえの怖いもの知らずで、ずけずけと失礼な質問をぶつけるミカ。

父親「君ぃ、呆れた子だな。そんなことを言い出すもんじゃない」
ミカ「本当なんですか? はっきりして下さい」
父親「君には関係ないことだ」
景子「お父さん!」
当然、初対面の女の子にそんなことを答える筈もなく、父親は店を出て行ってしまう。
ちなみに、セーラー服姿の超絶美少女を前にしても、ひたすらコワモテの生真面目な紳士で通した山さんこと山本紀彦さんですが、ほんの15年前のドラマ「水もれ甲介」の中では、

六「頼むからよ、妙なボーイフレンドなんか作んなよな、俺な、
『三ツ森朝美の処女を守る会』の会長なんだよ」
朝美「ええ~っ、やだぁ~」
六「いやいやいや、真面目な話、今な第一次会員募集中なんだ、入会金は100円、特別会員は1000円、年一回のデートつきなんだぁ」
朝美「いや、もう~」(と言って駆け出す)
六「ぽ~っと赤くなっちゃって、きゃあわいんだぁ~!」 などというケーハクな兄ちゃんだったんだけどね。
もっとも、

彼が夢中になっているドラマのヒロイン、チャーミーこと朝美(村地弘美)が、当時としては奇跡的な美少女なので、その気持ちも分からなくはないのだった。
そう言えば、山さん、3年前の「セーラー服反逆同盟」でも、セーラー服の可愛い女の子たちを集めて学園に対する抵抗組織を作ろうとしていた前歴もあり、筋金入りのブルセラマニアだった可能性が高い(註・高くないです)。
閑話休題。
その後、シンクロの練習に、やはり景子の母親が姿を見せる。景子は自分ではなく父親のところへ行って欲しいと頼むが、押しが弱い景子が何を言っても通じない。

見るに見かねたミカが、母親を廊下へ連れ出して説得を試みる。
いい忘れていたが、母親役は佐野アツ子さんである。
母親「主人と話し合っても無駄よ」
ミカ「無駄にならないよう話し合って下さい」
母親「あなたに何が分かるって言うの。余計な口出ししないで頂戴」
ミカ「あの、生意気なようですけど、私、今日景子さんのお父さんに会って来て、お父さんの気持ちも分かるような気がします。お父さん、放っておかれて寂しいんだと思います。ですから……」

母親「生意気なこと言わないで頂戴」
ミカ「ですから、生意気なようですけど、と言いました」

ミカが必死に説得を試みていると、後ろの曲がり角の向こうから、二体に増えたミカの背後霊のように、順子と翔子が揃って顔を出し、管理人の笑いを誘う。
母親「私たちね、もう離婚の話し合いを済ましているのよ。後は手続きだけね」
ミカ「離婚だなんてそんなの絶対にダメです。景子さん、お父さんのことで心を痛めています。景子さんに大会で活躍して欲しかったら、夫婦の仲を良くすることが一番じゃないですか」
母親「……ちょっと先生、あの子、何とかしてくださいよ。図々しく家庭のことにまで口出しするんですよ」
母親も、ミカの真っ直ぐな視線と物言いを持て余して、順子や翔子に「言いつけて」からプールサイドに逃げるように戻っていく。

ミカ「景子さん、今のままじゃ、大会で力を出せないと思うんです。なんとかしてあげてください」

翔子「ミカの気持ちは分かるけど、私たちにはどうすることも出来ないわねえ」
順子「そうね、夫婦のことに口出しできないもの」
ミカは、その二人にも相談し、率直に助力を乞うが、順子も翔子も、他人が家庭内の問題に容喙することは出来ないと、通り一遍の言い訳を口にするだけで、いっかな動こうとしない。
ミカ「そんなこと言ってたら、景子さんの両親、離婚してしまいます。景子さん、お父さんと別れなければならなくなるんです。私の両親も私が小さい頃に離婚しました。お母さんがずっといなくて、どんなに寂しい思いをしたか分かりません。だから私、景子さんの気持ちが分かるんです。このまま行ったら、景子さん、シンクロをやめます。お父さんのためにシンクロをやめると思います」
順子「……」
翔子「……」
ミカ、自分の体験まで持ち出して訴えるが、二人の反応は相変わらず鈍い。

ミカ「もう頼みません。私が景子さんの両親を説得します」
翔子「ミカ、景子さんのお父さん、シンクロを見たことがないんじゃないかしら?」
ミカ「そんなこと関係ないわー。いざって時に役に立たないんだから。
シンクロ馬鹿も良いとこよ!」
ミカ、見当はずれとも思える翔子のさりげない一言に、遂に怒りを爆発させる。
それにしても、管理人、今まで折りに触れて翔子のことを
「シンクロ馬鹿」と呼んできたが、まさか劇中で同じ表現が使われていたとは……と言うより、これが元ネタだったのかしら?
翔子、ミカの痛烈な罵言に思わず苦笑する。

翔子「ミカの説得が奏を功すか見物だわ」
順子「森谷先生……」
翔子「草薙先生、ミカはやるかも知れませんわ」
いや、やるかもじゃなくて、
お前がやらんか。 くだらない社会通念に縛られて、有望選手の将来がかかっていると言うのに自らは何もしようとしない彼らの態度は、ミカの一本気な行動力と比べていかにも退嬰的に映る。
もっとも、翔子の何気ないアドバイスがミカを助けることになるのだが。

草薙「そうね、私もそんな気がするわ」
翔子「それにしても、
私たちのこと、シンクロ馬鹿だなんて、ミカの奴」
いや、「たち」じゃなくて、ミカが言ったのは、あんたのことだけだと思います。
勝手に「シンクロ馬鹿」の仲間にされては、オーナーだって迷惑です。
その後、選手たちのルーティン演技を見ていたミカ、ふと翔子の言葉を思い出し、「そうか、お父さんに景子さんのシンクロを見せてあげれば良いんだ。もしそれでダメだったら引っ叩いてやる」と、解決策に思い至る。
……なんで、シンクロを見たら夫婦の問題が解決するのか、良く分からないのだが。
とにかく、ミカは再び会社に景子の父親を訪ねる。

父親「女が出来たから別れるとか、そう言う問題じゃないんだよ」
ミカ「だったら奥さんと話し合う余地がある筈です」
父親「女房には愛想が尽きてる」
ミカ「景子さんが可愛いとは思わないんですか?」
そう言うミカが誰よりも可愛いのだから世話はない。

父親「そりゃ娘は可愛い。可愛いに決まってるさ」
ミカ「だったら」
父親「それとこれとは話は別だ」

ミカ「景子さんはお父さんが大好きなんですよ。それなのにどうしてあなたは景子さんが捨てられルンですかぁ?」

父親「君ねえ、捨てるとか捨てないとか……」
ミカ「捨てるんです。子供を捨てるんです。私も母親に捨てられた子供です。大人には色んな訳があるのかもしれません。でも、つらい思いをするのはいつも子供なんです。ずるいわ、大人はずるくて卑怯です!」
父親「……」
などとやっていると、当の景子がつかつかとやってくる。
景子「お父さん、私、シンクロをやめます。だから家へ戻ってください」
父親「シンクロを?」
景子「私、お父さんと一緒の方が良いもの!」
父親「……」
ミカ「おじさま、景子さんのシンクロを一度見てあげて頂けませんか?」
父親「景子のシンクロを?」

ミカ「イヤだと言っても、私が引っ張って行きます!」
父親「イヤだ……」
ミカ「えっ?」
そう、是非、こんな可愛い女の子に引っ張って行かれたいとオヤジは思ったのである! 嘘はさておき、このシーンにおける宮沢りえちゃんの可愛らしさはまさに異次元レベルである。
山さんも、その美しさに内心見惚れていたのではないだろうか。
さて、その後、練習中のプールサイドに景子の両親が連れ立ってやってくる。

ミカ「景子さん、お父さんよ」
ミカに言われて久しぶりに両親が一緒のところを見て、自然と景子の顔がほころぶ。
オーナーも気を利かして、コーチに指示してチームルーティンを先にやらせ、景子のシンクロをすぐ父親に見れるようにする。

ミカ「ね、おじさま、景子さん、ほんとに輝いてると思いません? きっとお父さんとお母さんが見てるから嬉しいんだと思います」
景子の演技に見入っている二人に近付き、揉み手をしながら、ほとんどタイコ持ちのような感じでましくたてるミカ。
ただ、実際に彼らの見ているのは、

こんなのなんだよねえ……(別名・犬神家の一族)
これじゃ誰が誰やら分からず、そんなに嬉しそうに見るようなもんじゃないと思うのだが。
無論、時々、景子が水面に顔を出して演技するカットもあるんだけどね。

ミカ「お父さんとお母さんに仲良く見て貰えたら、最高だもの。こんなに嬉しいことないもの」
母親「ミカさん」
父親「ミカさんの言うとおりだ。我々だけの都合で景子を悲しませる訳にはいかんな」
母親「ええ」
こうして、ミカの作戦は図に当たり、なんだか良く分からないが、景子の両親は晴れて和解するのだった。
……何の解決にもなってないような気がするが、二人が仲直りしたからこれで良いのである!
あるいは、ハイレグ水着で泳ぐキャピキャピした女の子たちの肢体にやられた景子のオヤジが、娘の練習を見に来ると言う口実でクラブに通う為に、強引に仲直りして見せたと言うことも考えられる。

翌日、ミカは翔子に付き合わされてブティックで洋服の品定めをしていた。
翔子「これなんかどうかな?」
ミカ「コーチには少し派手過ぎるんじゃないですか」
翔子「ばっかねえ、私のじゃないわよ、ミカのを選んでるのよ」
ミカ「私のですかー?」

翔子「これに決めましょう。私からのプレゼントよ」
ミカ「コーチ、シンクロのコーチは無料奉仕だと聞いてますぅ。こんな高価ものを……」
翔子「ミカ、プレゼントしたいの、ミカに着て欲しいの!」
ミカ「コーチぃ」
それは、無謀とも思える行動力で見事に景子の家庭問題を解決して、有望な選手を脱落させずに済んだことへの、翔子からミカへのプレゼントだったのだ。
と、同時に、母親のいないミカの、母親代わりを務めようと言う気持ちからでもあったのだろう。
しかし、シンクロのコーチが無料奉仕なら、翔子はどうやって生計を立てているのだろう?
あるいはスイミングクラブのコーチとしては給料を貰っているが、シンクロのコーチはボランティアでやっていると言う意味なのだろうか?

ラスト、自室で早速そのツーピースを着て、その姿を、色んな角度で手鏡に写してはひとり悦に入っているミカであった。

そんな服を着ただけで、急に大人っぽく見えるミカ。
……以上、サブタイトルのおどろおどろしさの割りに、大映ドラマらしさのない普通のホームドラマのようなエピソードであった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト