嵐の一夜が明けると、軽井沢の空は清々しく冴え渡る。

金田一は雨戸を開けて外を見る。鳥の声を聞くや、嬉しそうに双眼鏡でバードウォッチング。こののんびりした雰囲気が、とても好きだ。

そこへ内線電話がかかってきたので、金田一はてっきり日和警部からだろうと受話器を取る。
金田一「日和さんおヘソ大丈夫でしたか? ヘソ……」
女性の声「何寝惚けてるの、ちょっと病院へ来て頂戴よ」
金田一「ちょっちょっと待って下さい。こちらあの金田一耕助ですが……」

ミチ「その耕助さんに、病院の支払いをどうするのか聞いてるのよぉ」
電話の相手は日和警部ではなく、看護婦のミチだった。
金田一「病院の支払い?」
ミチ「そうよ、田代さん、ゆうべ病院からトンズラ……じゃない、逃げ出しちゃったのよ」
この、トンズラと言いかけて、慌てて言い直すあたりで、管理人はすっかりミチさんに惚れてしまいました(好きにしろ)。
ミチ「支払いどうすんの?」
金田一「支払いって、僕にそんなこと言われたって……」
ミチ「だって他に連絡先ないんだもの、とにかく頼んだわよ!」
一方的に切られる。
金田一は自分のトランクの中を引っ掻き回すが、無論、立て替えられるだけのお金はない。
ただ、大金持ちの飛鳥忠煕に調査を依頼された後なので、その活動費や着手金くらい貰ってそうなものだけどね。
とにかく病院へ行こうと部屋のフスマを開けると、その間に封筒が挟んであり、中には数枚の紙幣と金田一宛の手紙が入っていた。それには「病院の支払いを忘れたので代わりに払って下さい」と、田代からのメッセージが記されていた。
どうやって田代君が金田一の投宿先を知ったのか、野暮は聞かないことにする(じゃあ書くなよ)。

どっちにしろ病院へ向かう金田一だが、途中で日和警部といきあい、殺人事件の現場である津村の別荘へ連れて行かれる。
死体はうつ伏せになっていて、顔も蝋燭の火で少し焼け爛れている。
後からやってきた飛鳥は、てっきりそれが津村だと思っている。無論、視聴者もそう思うのだが、何故かそれは津村ではなく、槇恭吾の死体だった! と言う意外性を提示して、第一回は終わる。ミステリーのつかみとしては、申し分ないだろう。
ただ、この、槇が津村の別荘で死んでいると言う設定は、原作とは異なるのだ。それでもちゃんと整合性を持って、最後に謎解きされればいいのだが、ドラマではその辺は曖昧なまま終わっている。脚本の椋露地桂子さんは、繊細な人間ドラマを描くのは長けていても、複雑なミステリーを書くのは向いていないようだ。
さて、ここから第二回。
被害者の元妻である鳳千代子は現場に呼ばれるが、取調べを受ける前にさっさと車で逃げてしまう。

日和警部は部下を急かして後を追わせるが、金田一は落ち着いていて、
金田一「いいんじゃないですか、別に逃げ隠れする人じゃないし、被害者が元の旦那だからっていつまでもこんなところに……」
日和「元女房と言うだけで、事件の重要参考人じゃろうが」 めちゃくちゃ言うな。 管理人は、最初は日和警部は好きだったが、何回も見ているうちに、こういう警察官としての横暴な言動が鼻につくようになり、段々嫌いになってしまった。それに毎回同じ警部と言うのも、飽きるしね。
また、このシーンでも直後に「どうしてそんなに女に甘いん? そのくせ恋人のひとりもできんのはどういうわけ」と、冗談めかして言っているように、長門勇のとぼけたキャラクターで、その横暴な警察官と言う本質が覆い隠されているような気がして、ますます反感を覚えてしまうのだ。

さて、津村と一緒にいた煕子は、高熱を出してうなされていた。この悶え方が、いやらしいことをしているようにも見えて、悩ましいのである。

父親の飛鳥がやってきて、ふたりきりで話す。
飛鳥の態度も、頬をピタピタ叩いたり、抱き締めたり、汗を拭いてやったり、既に嫁に行っている娘に対する父親の態度としては、ちょっと甘くて、なんかエッチなんだよね。
飛鳥は、昨夜の彼女と津村のことを見ていたと告げ、さらに津村ではなく槇が死んでいたことも話す。また、昨夜は自分と一緒にいたことにするんだと、娘のアリバイを確保する。

ここでまた新キャラが登場。鳳千代子のマネージャーの柳生博である。彼は千代子に、飛鳥とは結婚しないで女優として活動を続けて欲しいと願っていた。
金田一は笛小路篤子にお茶の席に招待され、孫の美沙から、昨夜、津村と会ったことを聞かされる。

前回、美沙と槇が落ち合うところに金田一が居合わせたが、その後、ふたりは何かの講演会へ行き、美沙はひとりでパチンコをしていたと言う。
いいですねえ、このシンプルなパチンコ。

そこへ津村が現れて、三人で少し話をしたと言う。津村も、槇も、美沙にとっては一時的にせよ、義理の父親だった人物である。

津村はその後、女性と待ち合わせをしていたようで、二人でどこかへ行ってしまうのだが、それが煕子だったのだ。ただ、美沙は女性と言うだけで、煕子だったことは隠している。

そこへホテルからメッセンジャーが来て、美沙の母親・千代子からの贈り物と手紙を届ける。美沙の誕生日なのだ。だが、プレゼントに自転車を約束していたのに、ダイヤの指輪だったのでがっかりする美沙。篤子はホクホクしている。

金田一はそこで辞去しようとするが、電話がかかってくる。ミチからだ。
ミチ「随分探したのよ」
金田一「は? いやあのー」
ミチ「看護婦のミチよ、忘れちゃったの? ほら田代さんの」
金田一「ああ君か」
ミチ「大変なの、昨夜トンズラした田代さん舞い戻ってきたのよ」
金田一「そうか、そりゃ良かったじゃないか」
ミチ「ちっとも良くないのよ!」
金田一とミチの掛け合いがとても好きだ。

金田一は、美沙と一緒に田代のところへ行くが、ミチは何故か美沙を邪魔者扱いする。のみならず、彼女の顔を見て、何か思い出したような顔になる。これも重要な伏線である。
田代は、血だらけの状態で登山者に発見され、担ぎ込まれたらしい。

病室へ入る三人。しかし、ここで美沙まで部屋に入るのは、常識的に考えるとおかしいのだが……ネタバレになるので詳しく書けないけど。
田代は、金田一にゆうべ何があったのかは落ち着いてから話すと約束する。
金田一「田代君が素直になったのは君のお陰だな」
ミチ「うふ、だって他人じゃないんですもの」
金田一「他人じゃない?」
思わず目の色を変える金田一。
ミチ「あたしの血をあげたのよ、原爆症なんだって、あの人」

ここで、金田一が軽くミチの肩を突付き、
「好きになっちゃったのかな?」と、からかうように言うのも、とても好きなシーンだ。

ミチ「冗談じゃない! 同情よ」
全力で否定するところがとても可愛いのである。
ミチは、美沙について金田一に何か言いたいことがあるようだったが、美沙が呼びに来たのでうやむやになる。

その後、美沙の口から、津村と煕子が会っていたことがばれてしまい、煕子は自分が津村と一緒にいたと認める。
同時に、津村の死体がないことから、津村が毒を飲んで死んだように見えたのは津村の芝居だったのではないかと想像し、白目を剥いて失神してしまう。
と言ったところで第二回は終わり。
なんか、大田黒久美さん(ミチ)と皆川妙子さん(煕子)の画像ばっかり貼ってる気がするが、気のせいだろう。