続きです。

母親である鳳千代子に金田一と一緒に会いに来た美沙(村地弘美)。
千代子「何の用?」
と言う、事務的な対応に、
美沙「娘が母親に会いたいと思っちゃいけないの?」 と答える印象的なシーンである。
このドラマでの椋露地桂子氏の脚本は、千代子と美沙、飛鳥と煕子、一彦とタキ、さらには篤子と泰久と言うように、親子の情愛に力点が置かれているのが特徴である。そのせいか、金田一も二度ほど「おふくろ」について言及している。

その後、ホテルで一緒に食事を摂る。
美沙は、母親である千代子と一緒に暮らしたいといじらしくを訴える。
千代子「分からないこと言って、ママを困らせないで頂戴」
金田一「どうしてお困りになるんですか? 親と子が一緒に暮らすのはごく当たり前のことだと思うけどな」 人間味溢れる指摘をする金田一。とにかくこの脚本は、こういう印象に残る台詞が多く、シリーズの中では一番好きだ。
千代子は、美沙の小さい頃から面倒を見てくれた祖母・篤子への配慮からだと答える。つまり、家柄を大事にする篤子にとっては、美沙は笛小路の唯一の跡取りなので、手放したくないのだ。
その後、やや唐突に、千代子のかつての夫、阿久津謙三について話が及び、美沙が大怪我をした時、阿久津から輸血されて助かったことを話す。伏線です。

看護婦のミチは、金田一に話があると、アーチェリー場へ呼び出す。そこでは、飛鳥がアーチェリーの練習をしていて、その護衛のために、日和警部もいた。警部の疑わしい視線を浴びて、心細そうに人待ち顔をしていたミチだが、向こうから来る金田一の姿を見て手を振る。

金田一はそこで、彼が助けた田代信吉についてザッと説明する。ミチは、田代がその後、美沙と会っているのを見たと証言する。
ミチ「田代さんの心を滅茶苦茶にしているのは、あの美沙って女よ! あんな可愛い顔してて……ええそうよ、笛小路の小娘だわ」
田代は、結局また病院を抜け出して行方をくらませていた。
もっとも、ミチが金田一について知らせたかったのはそのことではなく、

ミチ「あたし、怖くて今まで誰にも言えなかったんです。このことは一生誰にも話すまい、いえ、話しちゃいけないことなんだってそう思ってたんです。去年の夏のことでした。病院の勤務が遅くなって近道をして帰ったんです……」
そして、ミチは酔っ払った泰久を偶然見掛け、さらにとんでもないものを目撃してしまうのだ。
このブログでは、基本的にネタバレ上等と言う方針を貫いているが(えばるなよ)、このエピソードに関してだけは完全に伏せたまま話を進めさせて頂く。
ミチの衝撃的な話に半信半疑の日和警部たち。

ところが、木の間から誰かがアーチェリーで飛鳥を狙っていた……。

咄嗟に金田一が飛鳥の体を押し倒すが、代わりにミチが心臓を射抜かれてしまう。あーあ。
しかし、上の画像の位置関係からして、飛鳥を狙って外しても、ミチには当たりそうもないので、あるいは最初からミチを殺すつもりだったのかもしれない。

それにしてもこんな激情的な展開になるとは予想もしていなかったので驚きであった。
金田一「すまん!」
ミチ「いいんです。田代さんに会えなかったら……死んでも死に切れなかったでしょうけど、人を好きになることを知らないで死んじゃうなんて、あんまり自分がかわいそうだもん」 金田一「ダメだ! 死んじゃダメだぞ! 田代君を再起させることが出来るのは君だけじゃないか!」
ミチ「……うん、嫌われても、いいから、ずっとそばについて……いたかった……」 金田一の腕に抱かれて息絶えるミチ。管理人は今猛烈に感動しています。

さらにミチの遺体に金田一が線香を手向けるシーンもある。天涯孤独なのか、金田一しか枕頭に訪れないミチが、ますます哀れを誘う。
ま、欲を言えば、ミチさんにはもっと活躍して欲しかったところだ。

金田一はさらに調査を進め、血液型のことから、美沙が泰久の娘ではないと篤子に告げる。常識的に考えて、美沙は千代子が別の男との間に作った子供と言うことになるが……。
ちなみにドラマでは出てこないが、原作ではその不倫相手としてサスケと言う人物がクローズアップされることになっている。小野寺昭版では出てきたけど。
その後、田代の身柄も確保される。田代は、津村の死体を誰かが地中に埋めるのを目撃し、その犯人に襲われて血だらけになったと証言する。その後、ハイカーに発見されて再び病院へ担ぎ込まれたのだ。ただ、嵐の晩だったので、犯人の姿は見ていないと言う。
かなり中途半端だが、これ以降、ネタバレ全開なので、分けて書きます。