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横溝正史シリーズ2「仮面舞踏会」その4(ネタバレあり)



 やけに長くなってしまったが、シリーズ中、管理人がもっとも好きな作品なのでご容赦ください。

 なお、以下、真犯人に関する豪快なネタバレがありますので、要注意。

 千代子のマネージャーの古田(百万円クイズハンター柳生博)が、自分が犯人だと名乗り出て、逮捕される。

 金田一は捜査の必要があって、千代子に会い、彼女の父親である有名な画家の画集を見せてもらう。

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 そのついでに、古田マネージャーが逮捕されたことを知らせる。

 千代子「それじゃ、彼が……」
 金田一「あなたにゃ何も分かってないんですね……彼は犯人じゃありませんよ。あなたへの容疑が強まり、あなたが尾行されていることを知った。だからロビーであんな芝居をしたんです。あなたを逃がすために」
 千代子「だから何故そんなことを?」
 金田一「あの人は、芯からあなたを好きなんだ。(中略)あなたは幸せな人なのかもしれないと僕は思っています。だってあなたにはどんなことがあっても思い続けてくれる古田さんのような人がそばにいてくれるんですから」

 金田一は溜息をついて、「お恥ずかしいことですが、今回の事件で僕は、ずっと霧のヴェールの向こうで右往左往していたような気がするんです」

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 警察の捜査も進展しないままだが、金田一は最後の証拠固めとして、関係者一同を集めて、ゴルフコンペを主催する。

 これはまあ原作どおりなのだが、原作と違い、ドラマでは関係者がそんなことをおっぱじめるような雰囲気とは程遠いので、だいぶ違和感がある。

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 ここで、煕子と一彦の会話。ふたりは、ドラマではえー、叔父と姪にあたるのか。

 煕子「夫婦って憎み合っては別れられるもんじゃないわね」
 一彦「せめてお姉さん達が収まってくれてよかった」

 しかし、一彦が彼女のことをお姉さんと呼ぶのはなんかおかしくないか?
 それに、鉄雄との夫婦関係がうやむやに修復してしまうのもなんか釈然としない。鉄雄は浮気はともかく、殺人事件をネタに煕子の父である飛鳥を脅迫するような男なんだし。

 金田一は、各人がグリーンでパットを打つとき、その軌道上にわざと赤い毛糸を置いていく。

 全ての人は無論、それに気付いて取り払う。だが、ひとりだけ……他人に指摘されるまでそれに気付かなかった人物がいた。




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 そう、美沙である。

 彼女は色盲だったのだ。それは要するに、遺伝的に、彼女が泰久の子供でもなければ、千代子の子供でもないことを示していた。最大の秘密を暴露されて、美沙は何もかも観念して、どこかに隠してあったピストルを取り出し、飛鳥の腕を撃つ。

 美沙「そうよ、殺しやったわ! あたしが一体何をしたって言うのよ、それなのにみんなよってたかって、あたしの血がどうの、不貞の子だの、色盲の家系がどうだって、訳の分からないことばっかり言って!」

 ヒステリックに叫ぶ美沙の形相に、金田一を初め、みな呆気に取られる。そこへ田代が現れて、美沙を連れて逃げてしまう。

 原作ではもっと早い段階から、田代は美沙に協力しているのだが、ドラマではここでやっと合流する形になる。

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 原作では、美沙の本性がかなりえげつない、悪魔の申し子のように描かれているが、ドラマでは殺人犯と言うこと以外、普通の女の子である。

 ふたりで山へ逃げる。ここの会話で、美沙は嵐の晩に田代を襲ったとき、顔を見られたと話しているが、だったら、金田一と田代の見舞いに行ったとき、彼の病室には決して入ろうとはしなかっただろう。田代に証言されたら一発でアウトだからね。

 美沙「あたしたちは可哀相な者同士なのよね」
 田代「こんな可愛い顔してて……」
 美沙「あんた、あたしが好きになっちゃったの?」
 田代「ミチさんはほんとにいい人だった。俺は今まであんな心の優しい人に会ったことはなかったよ。あの人は泣きながら怒れる人だ」


 金田一は、事件のもうひとりの黒幕である篤子に会い、美沙が千代子の娘なら、決して色盲にはならないことを論理的に説明する。この辺はいかにも名探偵と言う感じでかっこいい。千代子の父親の画集を確認したのも、それに関係があるのだ。

 金田一は、篤子が岡山で空襲を受けた際、本物の美沙を死なせてしまい、咄嗟に別の孤児を身代わりに仕立てて、千代子から養育費を取り、さらに笛小路の家を存続させようとしていたのだ。

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 金田一「何故そんな可哀相なことをなさったんですか? 家のためですか? 1100年続いた堂上華族の家系を絶やさないためなんですか。血統がなんです。家系がなんですか! そんなものは見せ掛けの幻じゃありませんか! その為に美沙ちゃんはこんな悲しい事件を引き起こしたんですよ!」

 肺腑を抉るような金田一の訴え。
 しかし、華族としての矜持を捨てない篤子は、非を認めないまま毒を呷って自殺する。

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 一方、警官から逃げ続けていたふたりだが、

 田代「俺もあんたもな、この世では不要な人間なんだ。生きてちゃいけない。俺たちは生まれてこなきゃ良かったんだよ!」
 美沙「人殺しぃーっ」

 田代「生まれてこなきゃ良かったんだよーっ!」

 田代の絶叫と共に、轟く複数の銃声。

 警官が駆けつけると、ふたりは手を握り合って死んでいた。なんで最後に手を握るのか、良く分からないのだが。

 この辺は、ほぼ原作そのままである。

 補足すると、義理の父親達から自分の出生の秘密について聞かされていた美沙は、一年前のあの晩の出来事(ヒ・ミ・ツ)をきっかけに、一種の狂人になってしまい、彼女の秘密を知る者を次々と殺していったのだ。

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 原作では、事件解決後の美沙の(作者による)扱いはかなりひどいものだが、ドラマでは最後に千代子の口から「恨んではいません。ただあの子がほんとに可哀相で……」と言わせているのが救いである。

 以上、ドラマとしては申し分のない面白さだが、一点だけ、許せないことがある。それは……、

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 ドラマ特有の設定で、美沙は、槇の死体を何故か津村の別荘へ移動させているのだが、その理由を日和警部に訊かれた金田一は、

 「さあ……」

 と答えているのだ。

 いくらなんでも名探偵が「さあ」はないだろう。

 原作では、別の場所で死んだ槇を、彼の別荘へ運ぶと言う死体移動トリックになってたんじゃないかな。

 ミステリーとしては穴が多いけど、シナリオと言いキャストと言い、個人的にはベスト3に入る秀作だと思う。


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コメント

いつも思うのですが、この手のミステリーは結末がやりきれないですね😔まだ戦争が終わった直後の事なので仕方ないのでしょうが、
田代の“俺達には夢も希望もない”と言う台詞が頭から離れませんでした

Re[1]:横溝正史シリーズ2「仮面舞踏会」その4(ネタバレあり)(09/04)  

ふて猫様

原作は、もっとえげつなくて救いのないラストになってます。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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