第14話「失意のクラブ追放!」(1989年7月10日)
草薙オーナーに呼び出され、藤木コーチからメンバーの金品を盗んだと言うあらぬ疑いを掛けられているミカ。
それが涼子と冴子の仕掛けた陰険な罠とは露ほども気付かないミカに出来ることは、ぽろぽろ涙をこぼしながら、ひたすら潔白を主張することだけだった。
……と言う、前回のラストシーンが繰り返された後、今回のストーリーとなる。
なかなか犯行を認めようとしないミカに対し、藤木コーチは別の角度から追及する。
藤木「これはあなたの財布よね」
ミカ「はい、そうです」
藤木「この中にいくら入ってんのかしら」
ミカ「1000円です」

藤木「これが1000円なの?」
藤木コーチ、ミカの財布の中から数枚の万札を取り出して見せる。
無論、これも冴子があらかじめ入れておいた涼子の金だろう。
ミカ「こんな……こんなたくさんのお金、私は知りません」
藤木「知らないではすまないのよ、きちんと説明しなさい」
ミカ「わかりません、分からないとしか言いようがないわ」
でも、ほんとにミカが犯人なら、藤木コーチの質問にちゃんとその金額を答える筈なんだけどね。
ミカを犯人と決め付けている藤木コーチにいくら訴えても無駄だと悟ったのか、ミカは順子の前に立ち、

ミカ「草薙先生、私を信じて下さい! 私は人のものなんか盗ったりしてません」
順子「……」
ミカの真剣な瞳を見詰めていたオーナーは、
草薙「ミカさんを信じます。ミカさんの目は嘘ついてる目じゃないわ」 と、「中学生日記」みたいなことを言い出して、実務的な藤木コーチをズッコケさせる。

藤木「でも、草薙先生……」
草薙「みんなをここへ呼んでちょうだい、私から話したいことがあります」
一方、ロッカールームでも、水着姿のクラブ員たちがミカの窃盗容疑のことを話していた。

景子「私、ミカさんが犯人だなんて信じない。何かの間違いよ、ねえ、千絵さん?」
千絵「私も、ミカさんが人のものを盗るなんて信じないわ」
客観的に見てミカの仕業としか考えられない状況でも、千絵のミカに対する信頼は揺るがない。
まことに、親友と言うものはありがたいものですね。

加奈子「信じたいけど、証拠が出たんだし……」
冴子「そうよぉ、千絵さんのネックレスがミカさんの部屋にあったのが何よりの証拠よ」
加奈子の言葉を引き取って、ネックレスを盗んだ張本人の冴子が勝ち誇ったように断じる。
典子「これでミカもクラブから追放ね」
景子「追放なんてかわいそうよ!」

冴子「ドロボーを置いとく訳には行かないわよ」
と、当のドロボーが申しております。 そこへ遠藤コーチが来て、いつになく険しい顔でスタッフルームへ来るよう指示する。

順子「当然、ミカさんが犯人だと疑われるし、皆さんもそう思ってると思います」
翔子を除く全コーチとクラブ員を集め、草薙オーナーが厳かに口を切る。
順子「私もそう思ってます」 全員「ズドドドド!」
じゃなくて、
順子「ミカさんは潔白を主張しました。私はミカさんを信じます」

関係ないけど、千絵って背が高いよね。
典子も高い方だが、彼女はそれ以上と思われる。
順子「ミカさんが今回の事件になんら関与してなかったこと、私は信じます!」

思い掛けないオーナーの全面的なミカ擁護の言葉に、仕掛け人の涼子と冴子が思わず「まずいわね」的なアイコンタクトを交わす。

対照的に、ミカは、後ろ暗いところは何もないので、順子のありがたいお言葉をやすらいだ表情で噛み締めていた。
順子「皆さんもミカを信じて下さい」
だが、いくらオーナーが「私も信じるから、おまいらも信じなさい」と新興宗教の教祖のように唱えたところで、全員が納得できる筈もない。
千絵や景子はすぐ賛同するが、典子が「だったら私の5000円札はいったい誰が盗んだんですか?」と、現実的な反論をする。
順子「そのことについて私の意見を言いましょう。私は誰かがミカさんを陥れる為にやったんだと思ってます」

母親に図星を指され、さすがの涼子もドキッとして目を逸らす。

順子「犯人探しをするつもりはありません。皆さん一人一人が胸によく手を当てて考えてください。そして思い当たる人はこんなに卑劣で恥ずべき行為は二度としないと心に誓ってください。罪のない人に罪を着せるなんて、人間としてもっとも恥ずべき行為です。もっとも卑劣な行為です。こんなこと、二度と起こしたら、私は許しませんよ!」

日頃温和なオーナーの、かつてないほど激した語調に、千絵たちも粛然と襟を正す。
もっとも、当の涼子の表情からは、反省したような色は見えない。

スタッフルームから解放された後、ヒロミや真樹などの年少組が、
ヒロミ「草薙先生があんなに怖い人だとは思わなかったわ」
真樹「凄いショックよ、あんな怖い先生初めてだもん」
戦々恐々と言い合う様子は、とんと、女性教師から叱られた小学生のようであった。

加奈子「ミカさんごめんね、私、ちょっぴりミカさんを疑ってたの」
ミカ「もういいのよ」
千絵たちはこれでこの問題は蹴りがついたと安堵の表情を浮かべ、加奈子も率直にミカに謝るが、

冴子「草薙先生がああ言ったからって、ミカさんの疑いが晴れた訳じゃないわよ!」
反ミカ派、と言うより親涼子派は、なおも疑いの目をミカに注ぐ。
どうやら冴子さん、草薙オーナーの仰ったことが
全く理解できていない様子。
無論、ミカにしても心の底から喜べる状況ではなく、その顔も曇ったまま。

涼子「ミカさん、気にすることないわ、冴子さんだっていつか分かってくれる筈よ」
ミカ「はい」
涼子「私があなたを信じてるんだもの、くよくよすることないわよ」
事件の黒幕である涼子、ミカに疑われてはならないと殊更に明るい笑顔を作り、心にもないことを並べ立ててミカを励ます。
ミカはミカで、涼子の仕業だとは1ミリも考えず、少し救われたような表情になるのだった。

一方、同年齢だが、お嬢様育ちのミカより思慮深く、また、涼子のことを良く知っている千絵は、そんなミカを気遣わしそうな目で見ていた。

心配するだけでなく、二人で外出中に(一緒に翔子の見舞いに行くつもりだった?)、直接、「あまり涼子を信用しない方がいい」と忠告する。
千絵は、さらに、前回ミカが、涼子に自分の財布からお金を取ってクリーニング代を支払っておいてくれと頼まれたと説明した際、その場ではミカの話を事実だと証言してくれた涼子が、ミカが立ち去った後に「そんな覚えはない」と、真逆のことを言っていたことを打ち明ける。
だが、涼子の偽りの微笑にすっかり騙されているミカは、
ミカ「涼子さんがそんなこと言う訳ないわ!」

千絵「ほんとうなのよ、千絵さん!」
ミカ「千絵さん、涼子さんを中傷するような言い方はやめて、そんな言い方、千絵さんらしくないわ」
逆に、今度は千絵が出鱈目を言っているのだと決め付け、気分を害してひとりで走り去ってしまう。
しかし……、ミカがクラブに来た時から涼子がずーっとあんな態度を取っていたと言うのならまだ分かるのだが、ちょっと前まではかなりミカに辛辣な態度を見せていた涼子のことを、親友の千絵以上に信じていると言うのは、あまりに不自然で、なんかミカがアホに見えてくるシーンである。
千絵と喧嘩別れしたミカは、ひとりで翔子の病室を訪ねるが、翔子に現況を聞かれても、例によってすべで自分の胸に溜め込み、盗難騒ぎや一部メンバーとのギスギスした雰囲気は一切打ち明けない。
翔子も、そんな言葉を鵜呑みにするほど甘くはなく、ミカが、最近は涼子とすっかり仲良くなってシンクロの指導もして貰っていると言うと、
翔子「そう、それは良かったわね」
と、ニコリともせず答える。
ノックの音がして、ミカの背後で扉が開く。

ミカ、何気なく振り向くと、

ミカ「お父さん!」
そこに懐かしい、大好きな父親の姿を見出して、たちまち子供のような笑顔を弾けさせる。

そして迷わず、父の広い胸に飛び込む。
宮沢りえを思う存分抱き締めている村井国夫さんの顔がこう語っておられます。
「俺は人生の勝利者だ! ドルオタどもめ、歯噛みして悔しがるが良い!」 (註・あくまで管理人の妄想です)
それにしても、宮沢りえを抱いてお金が貰えるなんて、世界一幸せなお仕事ですね。

幸せそうに父親の胸に顔を密着させているミカ。
ミカ「お父さん、いつ帰ってきたの」
節也「今、成田についたばかりだ」
節也、ミカの体を離すと、翔子のそばに立ち、深々と頭を下げる。
節也「森谷先生、事件のことは聞きました。ミカを庇って大怪我をなされたそうですね、ほんとに申し訳ありませんでした」
翔子、「大したことじゃない」とばかりに、笑顔で首を横に振ると、
翔子「ミカ、甘えてらっしゃい!」
ミカ「はい!」

その後、しゃれたカフェで久しぶりに親子水入らずの時間を過ごしている二人。
節也「取引先との交渉も上手く行ったんでね、仙台に戻って店を再開しようと思うんだ」
ミカ「それじゃあずーっと日本にいられるの?」
節也「ああ、そういうことになるな。ミカと同じ日本にいるんだからな、お父さんも頑張らなくちゃ」
節也は、実業家として再起する為、しばらく日本を離れ、北欧でビジネスに奔走していたのだ。
節也「どうした、何か話したいことがあるんじゃないのか?」
ミカ「ううん、別に何も」
さすがに父親である。節也はミカの一見屈託のない明るい笑顔の裏に、一抹の翳りを見付けて水を向けるが、ミカは何事もひとりで解決することが習い性になったのか、父親に対しても悩みを打ち明けようとしない。

節也「ミカが凄く眩しく見えるよ」
ミカ「あら、どうして?」

節也「うーん、大人になったというのかなぁ、そうだなぁ」
ミカ「なぁに、早く言って!」
節也、少し照れくさそうにミカに顔を近寄せ、
節也「綺麗になったよ」
ミカ「いやぁだぁお父さんたらっ!」 ああ、かわええ……
と、そこへ涼子が、自分の父親を連れて店に入ってくる。
ドラマでは初対面の涼子と節也、ミカに引き合わされて丁寧に挨拶を交わす。

涼子は、父親の前ではより猫を被って一層良い子を演じ、とろけるような笑みを絶やさず応接する。
父親同士が名刺交換している間に、涼子は、ミカを離れたところへ連れて行き、

涼子「私、父のことが好きで好きでしょうがないの」
と、心の奥底から溢れる思いを堪え切れないと言った風情で告白する。
奇遇だな、管理人も、武田久美子さんの乳のことが好きで好きでしょうがない。
しかし、腹に常に一物ある涼子にしては、こんな率直な気持ちを自ら進んでミカに打ち明けると言うのはいささか不自然な行動のようにも思えるが、これは今回の終盤の急展開の伏線と見るべきだろう。
先に店を出ようとした葉月親子だったが、節也は、洋平(平泉憲)と談笑している涼子から目を離しがたい素振りを見せる。

節也「涼子さんて言うのか、いくつになるんだ」
ミカ「私より二つ年上……どうしたの?」
節也「うん? いやいや、あ、お父さん似、かなぁ」
ミカ「本当のお父さんじゃないんですって」
節也「えっ」
それにしても、ミカの胸、横から見るとかなりヤバいですね……

ミカ「詳しいことは知らないけど」
節也「ふうん」
あまりに執拗な視線に、涼子の方も気付いてこちらを見る。節也は笑顔で一礼すると、ミカと一緒に店を出て行く。
まぁ、顔を見ただけで、節也に涼子が○○○○だと分かる筈もないのだが、やはり、何か心に引っ掛かるものがあったのだろう。
店を出ると、節也は今夜にも仙台に戻ると言って、ミカと別れる。

その頃、翔子の病室に千絵が来て、盗難事件について洗い浚い打ち明けていた。
翔子「そう、そんなことが……ミカに盗みの罪を着せるなんて、ミカがクラブにいられなくする為に、誰かが仕組んだのに決まってるわ」

千絵「気掛かりなことがあるんです」
翔子「気掛かりなことって言うと?」
千絵「涼子さんのことなんです。ミカさんに話したんだけど、ミカさん怒って取り合ってくれないし、森谷先生には話しておこうと思って」
翔子「……」
千絵は涼子に対する漠然とした疑惑も、翔子に告白する。
翔子も、千絵に言われるまでもなく、涼子のミカに対する敵意にも似た憎しみの感情には気付いていた。
しかし、正面から言ったところで反発を招くだけだ。で、病床で翔子が考え付いた方法と言うのが、

ミカ「微笑の中の悪意……?」
毎日FAXで送っているミカの練習メニューの2枚目に、「微笑の中の悪意」と言う遠回しな警告文を書くという、いかにも翔子らしい方法だった。
その時はピンと来なかったが、その後、自分の練習を仮面のように顔に張り付いた微笑で見守っている涼子を見ているうち、「ひょっとして……」と、微かな疑念が湧く。
だが、急転直下、事態は思わぬ破局を迎えることとなる。

ミカが練習を終えてロッカールームに入ってくると、ちょうど、冴子が他人のロッカーの財布から金を抜いている真っ最中だった!
で、この抜き方が、ほとんどプロの窃盗犯みたいになってるのが、妙に可笑しいのだった。

ミカ「冴子さん、あなただったのねえ?」
冴子「ミカ!」
ミカ「お金を元に戻して、草薙先生がこんなこと二度としたら許さないって言った筈よ」
冴子「……」
ミカ「冴子さんもうやめて、私だってこんなこと続けられたらあなたが許せなくなるわ。私があなたに何をしたって言うの?」
さすがに図々しい冴子さんも、盗みの現場を押さえられてしまっては言い訳の仕様がない。

ミカ「訳を聞かせてください」
冴子「訳は涼子さんから聞いたらいいわ、私は涼子さんの命令でこんなことやってるのよ」

ミカ「嘘よ、嘘です。涼子さんがそんなことする筈ないわ。涼子さんが私を追い出そうとするなんて、そんなことする筈ないわ!」
冴子、開き直って全て涼子の差し金だったと白状するが、ここ最近の涼子の微笑みにすっかり丸め込まれているミカは、容易に信じようとしない。
冴子「会って直接確かめたら良いじゃないの」

と言う訳で、人工芝を敷き詰めたテラスで、三人が顔を突き合わせて決着を付けることとなる。
例によって、涼子は知らぬ存ぜぬで押し切ろうとするが、

冴子「私ひとりに罪を被せる気なの?」
涼子「何を言ってるの、つまらないことで私の名前持ち出して良い迷惑だわ」

冴子「ミカさん、騙されては駄目よ、涼子さんはあなたが憎くて憎くて、クラブから追い出そうとしてるのよ」
冴子も、何かあるとすぐ部下のせいにして保身を図ろうとする、どっかの国の政治家のような涼子の腐り切った根性に愛想を尽かしたのか、ミカにありのままをぶちまける。

涼子「冴子さん、やめなさい」
冴子「いつまで良い子ぶってるのよ。ミカの引ったくり事件だってあんたが私に頼んでやらせたんじゃないかっ!」 涼子がいつもの女王然とした口調で制止しようとするが、その威厳も自暴自棄になった冴子には通用せず、遂に決定的な暴露をされてしまう。
ミカ「なんですって!」
涼子「嘘に決まってるわ。口からでまかせもいい加減にしたら?」
カッとなった涼子、思わず冴子の頬を平手打ちする。

冴子「こうなったらみんな話してやるわ!」

冴子もブチ切れて、そのままオーナーやメンバーに「言いつけ」に行こうと階段を駆け下りようとするが、そんなことをされては身の破滅の涼子が、必死になって引き止める。
だが、激しく揉み合っているうちに、涼子に突き飛ばされる形で冴子が階段を転がり落ちて行き、

最後は床に頭を強く打ち付け、意識を失ってしまう。

ミカ「冴子さん!」
涼子「こんなこと! こんなこと私がしたとパパに知られたら、私もママもパパに捨てられてしまうわ。私たちパパに捨てられてしまうわ!」
涼子、冴子の怪我を心配しようと言う素振りすら見せず、真っ先に頭に浮かんだのは自分の保身のことだった。

ミカ「涼子さん……」
涼子「私たちほんとの親子じゃないの。ママが私を連れて再婚した、義理のパパなの。でも、血は繋がってないけど、私のことほんとの娘のように可愛がってくれてるわ。(中略)パパは潔癖な人なの、私がこんなことやったなんて知ったら決して許さないわ……」

涼子「ミカさん、お願い、分かって、私はパパを失いたくない! 失いたくない!」
気位の高い涼子が、みっともなく顔をくしゃくしゃにしながら、今まで誰にも見せたことのない手放しの号泣を見せる。
元々、涼子がシンクロに打ち込んできたのも、義理の父親から評価されたいと言う思いが根底にあったのだろう。
いくら涼子が事件の黒幕だと分かったとは言え、同じファザコンのミカにとっては、涼子のそんな涙を見るのは、身を切られるほどつらいことだった。
そして、他人の心を必要以上に思い遣ってしまうところが美点であり、欠点でもあるミカは、自分も貰い泣きをしながら、
ミカ「涼子さん、分かったわ。冴子さんを突き落としたのは、私よ」
涼子「……」
自ら涼子の罪を被ることを申し出るのだった。
そんな渡りに船の申し出を断るような殊勝な涼子ではない。

藤木「ミカさん、冴子さんを突き飛ばして、重傷を負わせたのはあなたなのね」
ミカ「はい」
藤木「涼子さんが言ってたけど、あなたがお金を取ってる現場を冴子さんに見られて、呼び出したんですってね」
ミカ「はい」
藤木「恐ろしい子ね」
次のシーンでは、既にオーナーやコーチたちにミカが「自首」している。
……しかし、別に「お金を取ってるところを見られて」などと言う余計な罪まで背負わなくてもいいような気もするのだが。
単に「喧嘩をして突き飛ばした」で良いんじゃないの?
まぁ、事前に涼子と口裏を合わせて作り出した話なのだろうが。
ミカを庇い続けていたオーナーも、こうなってはどうしようもなく、「クラブを除名します」と、苦渋の決断を下さざるを得なかった。

涼子を助ける為とは言え、それは、ミカにとって死刑を宣告されたも同然の言葉だった。
順子「森谷先生のところへ行きなさい。そして何もかも正直に話して、相談に乗って頂きなさい」
ミカ「ご迷惑をおかけしました。このご恩は一生忘れません」
ミカ、顔中を涙で濡らしながら、気丈にもそう挨拶すると、一礼して部屋を出て行く。
だが、ひとりになった草薙オーナーも、涙をこぼしながら、「ミカ……」とつぶやくのだった。

さて、ミカは旅支度をしてクラブを出て行くと、翔子の病院の前までやってくるが、さすがに翔子に合わせる顔がなく、病室の窓に向かって「森谷コーチ、ありがとうございました。さようなら……」と語りかけ、頭を下げ、いずこともなく歩き出すのだった。
ところで、冴子の転落事故だが、オーナーたちは内々でミカの犯行と断定して処分を下しているが、普通は警察の捜査が入ってミカたちも事情聴取される筈で、そんな勝手に仲間内で片付けてしまうのは問題ではないだろうか?
まぁ、そうしないとストーリー上の都合が悪くなるからだが、順子にしても、冴子の意識が回復するのを待ってから、正式な処分を下すのが筋と言うものだろう。だいたい、冴子の両親が、順子に
「あ、犯人はミカですが、もう除名処分にしました。ザッツオール!」とか言われて大人しく引き下がるだろうか?
ともあれ、ひとり、行く当てもなく夜の街を彷徨うミカの孤独な姿を映しつつ、次回へ続くのだった。
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