FC2ブログ

記事一覧

ネタバレ上等の劇場版「ハサミ男」 その3

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ハサミ男 (講談社文庫) [ 殊能将之 ]
価格:950円(税込、送料無料) (2019/8/10時点)



 劇場版「ハサミ男」(2005年3月19日公開)

 の続きです。

 ネタバレ注意!(一応)

 タバコの煮汁を飲んで自殺を図るが、結局死に切れなかった知夏。

 
 知夏「はあー、はあー、はぁー、はぁー……」

 なんとかベッドの上に這い上がり、楽な姿勢で横たわる。

 美人と言うのは、普通に寝るだけでも「絵」になるのである。

 なお、原作では、これは由紀子の葬儀の後で行われている。飲んでからぶっ倒れ、24時間以上意識を失うのだが、映画では時間経過ははっきりしない。

 
 知夏「ううっ、ううっ……はぁーっ、はぁーっ」

 
 ついで、ベッドの横の床に座り込み、なおも間歇的に襲ってくる激しい吐き気に、苦しそうにえづいては、床に身を投げ出すように倒れ、チョコレート色の液体をカーペットに吐き散らす。

 安永は、そんな知夏を実験動物を見詰める科学者のような冷たい目で見下ろしながら、

 
 安永「気を付けろ、ニコチンは青酸に匹敵するくらいの猛毒なんだよ。本当は死んでいてもおかしくないんだ」

 そこへ、磯部から電話が掛かってくるが、知夏は途中で切り、安永と向かい合いながら、

 
 「面白いね、君の心の中に怪物はいない。何故なら君こそが僕の怪物だから。僕は君に逆らえないんだよ。なぁ、君は何者なんだい? からっぽよ。内側も外側も空っぽ、二つの空っぽの境目が、私……」

 知夏と、彼女の作り出した妄想人格・安永が、見詰め合いながら全く同じ台詞を言うという、監督苦心のシーン。

 ついで、ソファに座った知夏と安永がぶつぶつと同じ台詞を言いながら、過去のいくつかのシーンがフラッシュバックして、少女たちを殺したのが安永ではなく、知夏自身だったことが明らかにされる。

 と言うより、最初から安永などと言う人間は存在していなかったのだ。

 

 
 その時、チャイムが鳴ったので、知夏が玄関に行き、覗き窓から見ると、日高が立っていて、ドア越しに、「君がハサミ男なんだね、安永知夏さん」と告げる。

 カメラは、マンションの外から部屋の中を映しつつ、左から右へパンし、

 
 知夏が仕方なくロックを外してドアを開けると、その瞬間、ベッドのあった部屋が、布団を敷いただけの殺風景な部屋に変わる。

 今度は右から左へパンし、リビングとキッチンを映すが、

 
 そちらも、ソファも家具も何もない、引越し直後のようながらんとした部屋に変わる。

 つまり、ドアを開けたことで、知夏の主観的な映像から、客観的映像に切り替わった訳なのだ。

 もっとも、これは原作にはない趣向で、正直、安永と言う妄想人格と部屋の飾り付けとが何の関係があるのか、いまいち分からない。

 ただ、知夏の住まいが極度に殺風景になることで、元々安永という男など存在しなかった、最初から知夏は独りだったと言う事実が強調されて、知夏の孤独がより観客の胸に迫ってくると言う効果はある。

 ついでに、知夏が、収入がない訳でもないのに、そんな非人間的な部屋で生活していたことが、知夏も、由紀子と同じく、「心がない」人間だったことを表現しているのだろう。ソファやベッドなどは、安永が求めたものだったのかもしれないが、もしそうだとすると、生身の人間より妄想人格の方が人間らしい豊かな生活を営んでいたことになり、皮肉である。

 
 日高「警察が二丁のハサミの話をした。昨夜君は、樽宮由紀子を殺したのはハサミ男じゃないといった。正解はひとつしかない、君がハサミ男なんだ」
 知夏「いい加減にしてよ、日高光一君、あなたと話すことは何もない」
 日高「僕は見たんだ。あの晩、君は何かを捨てた。なんだろうと思った」
 知夏「……」
 日高「分かったんだよ、君が捨てたのはハサミだ。君がハサミ男なんだ」

 それはさておき、日高は、現場に落ちていた二本のハサミから、他ならぬ知夏こそがハサミ男だと気付いたのだ。磯部たちも、同じように目撃者を怪しいと睨んだのだが、日高は自分自身が犯人でないという事実を知っていた分、彼らに先んじて真相に到達できたのだ。もっとも、少なくとも由紀子を殺したのは知夏ではないので、日高の推理は不完全なのだが。

 ここで再び、過去の幾つかのシーンが再現され、実際は、知夏が常にひとりで行動していたことが強調される。

 
 安永がちょくちょく吸っていたタバコも、知夏自身が嗜んでいたことが判明する。

 知夏「話があるなら入れば?」
 日高「ダメだよ、ハサミ男の部屋に入るなんて……何をされるか分からないじゃないか。一緒に来てくれ」
 知夏「ふぅーっ、わかった」

 さしあたり、日高には逆らえないので、知夏は大人しくついていく。

 
 二人が出て行った後、カメラが壁に飾ってある小さな写真にズームして行き、それが安永……知夏の父親の遺影だったと分かる。

 このタイミングで、目黒西署の刑事たちも俄かに動き出す。

 それは、電話越しに聞こえた安永の声……と言っても知夏自身の作り声なのだが、それを磯部が日高の声だと勘違いし、てっきり日高が知夏の口封じに来たのだと思い込んだことがきっかけだった。

 もっとも、磯部以外の刑事たちが思い描いていた真犯人は、日高ではなく、全く別の男だったのだが……

 日高の車で移動中の知夏。

 
 日高「両手を少しでも動かしたら、車停めて怒鳴るからね、こいつがハサミ男だってね」
 知夏「私も同じこと叫んであげるよ、みんなはどっちを信じるかなぁ」

 

 
 助手席に座り、日高の指示でダッシュボードの上に両手を置いていた知夏が、ぱたぱたと子供のように手を動かすのが可愛いので思わず似たような画像を二枚も貼ってしまいました。

 
 並行して、同じく車に乗って何処かに向かっている村木と磯部の様子が描かれる。

 しかし、これはほとんど同じような構図でいささか芸がないかな。

 村木は、堀之内が由紀子が弓道部に入っていたと言う、報告書にも書いていないことを知っていたこと、いつかの雨の晩、磯部がケータイで呼び出したとき、埼玉に住んでいる筈の堀之内があっという間に目黒西署にやってきたこと、つまり、現在は離婚して目黒に一人暮らししていること、など、堀之内に関する数々の怪しい点を述べる。

 磯部「でも、そんなこと(離婚)よくあることじゃないですか」
 村木「ばか、考えてみろ、何故あいつは始めから、樽宮由紀子殺しの犯人がハサミ男だと断定できたんだ?」
 磯部「それは……」
 村木「いいか、由紀子には保険金が掛けられてた。母親にだって殺す理由はある。由紀子を恨んでた男友達もたくさんいた。それなのに何故、最初からハサミ男だと決め付けた?」
 磯部「それは……」

 ちなみに原作では、もろもろの謎解きは事件が片付いた後で一気呵成にされているので、映画での、この小出しの種明かしはあまり面白くないかな、と。

 
 それはともかく、ボンクラと思われていた上井田が、存外に優秀な警部で、早くから堀之内のことを疑い、部下に日高(と知夏)の写真を持たせて現場周辺を回らせたときも、磯部には内緒で堀之内の写真も見せていたことが明らかになる。

 
 磯部「じゃ、目撃証言って?」
 村木「そうだ、堀之内が目撃されたんだ。しかも由紀子と一緒のところをな」
 磯部「そんな!」

 磯部、尊敬していた堀之内こそ、由紀子殺しの犯人だと聞かされ、動揺を隠せない。

 村木は、うっかり蕎麦屋でそのことを口にしてしまい、磯部がそれを日高の目撃証言のことだと思い込んで堀之内のところへ注進に及んだ時も、彼らは磯部に調子を合わせて誤魔化していたのだ。

 
 さて、知夏が連れて行かれたのは、知夏の部屋の数倍はある、ワンフロアの高級マンションであった。

 刑事たちが話していたように、日高は金持ちのボンボンなのだ。

 日高は、部屋の真ん中に立っている知夏を魅入られたようにじっと見詰めている。

 
 知夏「話があるんじゃないのか?」
 日高「信じられないよ、ハサミ男が女性だったなんて、それもこんなに美人の……」

 原作では、ここで初めて、知夏の自分の容貌に対する認知が歪んでいて、たびたび独白していたような「でぶ」でも「ぶす」でもなかったことが分かり、嬉しくなった管理人であった。

 しかし、管理人は、ここであえて声を大にして言っておきたい。

 女性は見た目ではなく、中身なのである!(酔ってんのか?)

 
 日高「うおっ」

 知夏、相手を油断させるといきなりその顔面に豪快なパンチを叩き込むと、すかさず金的蹴りを放ち、

 
 最後は、電気ポットを日高の頭に打ち下ろして気絶させる。

 最後の電気ポットのオプションはともかく、パンチと金的蹴りは大歓迎と言う、特殊な性癖を持つ男性が世の中にはたくさんいらっしゃると思います。管理人は違いますよ。

 ここで再び磯部たちの様子。

 二人は堀之内の自宅マンションへ入り込み、ガサ入れをしながら、堀之内が現場に出たがらなかったのは、しょっちゅう由紀子とデートしていたので、現場に行くとすぐバレてしまうのを恐れていたから、などと村木が説明している。

 これも原作にはないのだが、うーん、所轄のヒラ刑事が、仮にも警視正の部屋を勝手にガサ入れすると言うのは、さすがに不自然だと思う。2時間サスペンスじゃあるまいし、万事形式主義の警察で、上層部の許可も得ずにそんなことをするとは考えられない。

 再び日高のマンション。

 顔を血だらけにしながら、両手両足を縛られて呻いている日高に、容赦なく水をぶっかけて目覚めさせるサディスティック知夏。

 
 タバコをふかしながら、細身の包丁をつきつけ、

 知夏「何故、樽宮由紀子を殺した?」
 日高「違います、僕じゃない、ほんとです」
 知夏「まあ本当だろうね、君はハンバーガー中年じゃない。じゃあ何故私に付きまとう?」
 日高「僕はハサミ男のホームページを持ってるんです、一緒にホームページに参加して欲しいんです。ハサミ男本人と僕の会話、ね、凄いでしょ?」

 確かに凄い。

 まさか、日高が、自分のホームページのネタにしたくて知夏に接近していたとは……

 なんか、こう、ホームページと言う響き自体にそこはかとない恥ずかしさを感じてしまうのは、管理人自身、「セーラー服反逆同盟」などのホームページを必死こいてやっていた過去があるからだろうか。

 まぁ、名称こそ違え、このブログだってホームページの一種なんだけどね。

 今なら、さしずめ、日高「僕はユーチューバーなんです(以下略)」と言うことになるのだろう。

 ちなみに、ホームページうんぬんは、原作にも出てくるのだが、日高は別にその主催者ではなく、単なる興味本位のハサミ男ファンで、ハサミ男として、さらに女性としての知夏に惹かれ、知夏に会いに来ただけである。

 
 さて、知夏は日高の告白に失望したように溜息をつくと、いきなり、薄い青色のシャツを脱ぎ始める。

 日高「……」

 日高が自分をワクワクしたような目で見ているのに気付き、

 
 知夏「君が何を期待してるか知らないけどね、このシャツを(返り血で)汚したくないだけだ」

 と、不意に安永の嗄れ声になって、その理由を説明する。

 日高「あ、何、その声?」

 急に知夏の声が変わったのでギョッとする日高だったが、知夏、いや、安永に包丁を口に突っ込まれてあえなく殺される。

 これは他のシーンでもしばしば見られたものだが、声まで別人のものに変わるというのは、やっぱり変なんじゃないだろうか? 原作にもそんな設定はなかった。

 ま、前述のように、知夏の作り声だと解釈するしかないのだが、物理的に不可能じゃないかと。

 それと、原作では、知夏はシャツだけじゃなくて、ズボンもブラもパンツも何もかも脱いで生まれたままの姿になって、ウヒヒとなる(註1)のだが、映画では、シャツ一枚だけと言う、客を舐めとんのかと言うソフトな演出なのが残念だ。それに、シャツ一枚脱いだだけでは、日高が、安永が言ったように何かよからぬことを期待するとは考えにくいから、日高の態度と安永の台詞が噛み合ってない感じがしてしまうのだ。

 勿論、全裸は論外だが、せめて下着ぐらいにはなって欲しかったなと、管理人は、決して不純な動機からではなく、自然なストーリー展開の為に、そう思う。

 註1……と思ったけど、下着姿になるんだったかな? 今、原作が手元にないので分からない。

 仕事を済ませた知夏が、カーテンを開き、部屋を明るくして自分の指紋を拭いていると、ドアのチャイムが鳴る。

 
 知夏がドアを開けると、堀之内が立っていた。

 堀之内「安永さん? 無事だったんですか、警視庁の堀之内と言います。奴は何処ですか」
 知夏「奴って?」
 堀之内「ハサミ男です。あなたを無理矢理連れ出した日高光一」
 知夏「こっちの部屋にいます」

 知夏、感情のない声でそう言って、日高の死体のある小部屋を示し、自分はキッチンへ行き、もう一度包丁を手に取るが、

 
 堀之内「動くな」

 堀之内、薄々知夏のことを怪しいと思っていたのか、素早く銃を構えて知夏の動きを牽制する。

 知夏はすぐに包丁を手から落とす。

 堀之内「そうか、そうだったのか。マスコミがハサミ男なんて名前をつけるから、てっきり男だと思い込んでいたよ。なるほどね……ずっと君に会いたかったよ、ハサミ男君」

 
 知夏「僕も君に会いたかったよ、樽宮由紀子殺しの犯人君」

 再び、知夏の声が安永の声に変わる。

 堀之内「……」

 さすがの堀之内も、咄嗟に声が出ない。

 そりゃ、ま、そうだよね。さっきも言ったけど、人格に応じて、声まで極端に変わると言うのは変である。

 原作のこの場面でも、医師(安永)の人格が現れて堀之内と会話を交わしているが、喋り方が違うだけで、声は知夏のままの筈だ。

 映画における安永と言うのは、知夏に取り憑いている幽霊と捉えた方が分かりやすいかも知れない。

 
 と、再び知夏の声になって、

 知夏「あんたは樽宮由紀子とハンバーガーを食べていた中年男だ」
 堀之内「そうか、二重人格か……君の中にもうひとりの自分がいるんだね。しかもお互いに会話し合える。君は妄想人格なのか」

 
 知夏の隣に安永が立ち、壁に映った二人の影が重なり合い、ひとつになる。

 堀之内「こりゃぁいい、最高の研究材料になるな」

 
 知夏「僕には初めから、犯人は警察関係者だと分かっていたよ。由紀子の制服は乱れていなかった。僕でさえハサミ男の犯行だと思ったよ。君は完璧過ぎたのさ、警察はハサミ男の被害者が性的暴行を受けているかどうか極秘にしている筈だ。警察しか知らないことを知ってる犯人ってのは誰だ? ひとつしかない、警察関係者さ」

 知夏と安永の声が一緒になって、最初から真犯人は警察関係者だと分かっていたと説明する。

 原作ではさらに、知夏と「医師」が、堀之内の前で口喧嘩を始めるという、ある意味、かなり笑えるシーンが展開されるが、映画では省略されている。

 堀之内「フッハッハッハッ、意外に頭の良い妄想人格だね。そうだ、君は頭の良い少女しか選ばなかったな」

 堀之内、乾いた笑い声を上げると、油断なく銃口を知夏に向けながら、食事用のテーブルに腰掛ける。

 
 知夏「何故、樽宮由紀子を殺した?」
 堀之内「彼女が妊娠したと言った」
 知夏「なんだって、そんな馬鹿馬鹿しいことで……これじゃ三面記事じゃないか」

 堀之内の答えに、知夏が呆れたような声を上げるが、「これじゃ三面記事じゃないか」と言う言い方が、妙におかしくて、印象に残る。あるいは、原作の別の箇所に出てくるフレーズだったかな?

 だが、堀之内が由紀子を殺したのは彼女が妊娠したからではなく、妊娠していなかったからだった。

 堀之内は沈んだ面持ちになると、

 
 堀之内「誤解するな、妊娠なんて僕には大した問題じゃないんだ、産めば良いと言ったんだよ」
 知夏「なら、何も問題ないじゃないか」
 堀之内「僕が産めと言ったら、彼女は笑った」

 ここでその時のやりとりが回想される。

 
 由紀子「うふふふ、あははは……」

 路上から知夏と安永が見たのは、その笑いだったのだ。

 堀之内「どうしたんだ?」
 由紀子「嘘よ、妊娠なんて……警視庁の偉い人がどんな顔するか見たかっただけ。実験よ、私、あなたと結婚する気なんかないわ。もうゲームは終わり」
 堀之内「……」

 堀之内が、それに対し表向きは笑ってみせながら、腹の中で、由紀子に対する怒りと憎しみを滾らせたのは言うまでもなく、それが殺害の動機だった。

 
 知夏「あっはっはっはっ、あははは、ははは……」

 それを聞いた知夏は、ケタケタと、世にも嬉しそうに体を震わせて笑い転げる。

 
 知夏「そうか、それで由紀子はあんなに楽しそうに……ふ、ふっふふふふ……あー、わかった、やっとわかったよ。うっふふふふっ、あはははははは……はぁー」

 堪えようとしても後から後から笑いが込み上げてきて、かっぱえびせん状態になる知夏。

 これは、知夏ではなく、安永が笑っているのだろう(多分)。

 
 堀之内「おかしいか、おかしいだろ? おかしいよな? 由紀子にはゲームだったらしいよ」
 知夏「愛が憎悪に変わった? あんたのプライドがズタズタかー、かわいそうに」
 堀之内「かわいそうなのは君の方だと思うがね」
 知夏「なんだって?」

 
 堀之内「あの時、君が現場にいなかったら、僕にこうして捕まることもなかっただろう。心配するな、君は死刑にはならない。精神鑑定の結果、拘置入院だろう。僕がゆっくり君を研究してあげるよ」

 再び立ち上がり、知夏の胸に銃を突きつけながら、ニタニタ嬉しそうに囁く堀之内に対し、

 
 安永「君は頭がおかしいんじゃないのか?」

 安永の低音ボイスがぼそっと指摘する。

 なかなかの笑いどころである。

 
 カッとなった堀之内、いきなり拳銃で知夏の頭を殴りつける。

 知夏(わ、私、何も言ってないのにぃ……)

 堀之内「頭がおかしいだと、お前こそ気が狂った殺人鬼じゃないか」

 
 床に倒れた知夏に近付き、なおも腹を蹴り上げ、その髪を掴んで日高の血まみれの死体のそばまで引き摺る。

 堀之内「わかってんのか? お前は二人の女子高生を殺し……お前のやったことを見ろ! こんな残酷な殺し方にどんな理由があるってんだ?」

 これもだいたい原作どおりなのだが、原作の堀之内は中肉中背の男なのに、映画では日本人離れした体格の阿部ちゃんである。

 だから、それが麻生久美子さんの華奢な体に渾身の蹴りを入れるのを見ると、それだけで彼女が死ぬんじゃないかと思えてしまうのが欠点である。

 と、そこへいきなり白馬の王子様よろしく飛び込んできたのが、我らが磯部クンだった。

 
 磯部「警視正、銃を捨ててください」
 堀之内「誤解するな」
 磯部「あなたは樽宮由紀子と肉体関係があった。目撃証言が集まってます。もう逃げられませんよ」
 堀之内「……磯部君、きみ、なんか勘違いしてるようだなあ」

 
 堀之内、少し距離を取りながら、磯部に対して銃を上げる。

 
 それをぼんやり見ていた自殺マニアの知夏が、「拳銃自殺が出来る……」と、出し抜けに堀之内に飛び掛かるところもちょっとしたギャグになっている。

 
 これには堀之内も虚を衝かれ、あっさり知夏に懐に入られてしまう。

 磯部には、知夏が勇敢にも堀之内から銃を奪い取ろうとしたように見えたかもしれない。

 
 知夏「うふふ……」

 まるで子供が親にじゃれついているかのように、その拳銃を奪おうと堀之内ともつれあってぐるぐる回る知夏。

 しかし、この場面で嬉しそうに笑うと言うのは、ちょっと変である。

 
 やがて知夏が堀之内の人差し指を押して引き金を引かせ、腹部に銃弾を浴びて思わずのけぞると、キッチンの扉に背中をもたれて座り込む。

 すぐ、安永が知夏と同じように荒い息をしながら隣に座ると、

 
 安永「君ね、腹なんか撃ったって、痛いだけで即死はしないんだよ」

 
 磯部「安永さん! なんてことするんだ、遺体発見者とハサミ男を二人とも殺すなんて!」

 磯部は慌てて知夏に駆け寄ると、彼女の体を抱いたまま、銃口を堀之内に向けて糾弾する。

 磯部は……目黒西署の刑事たちは、由紀子を殺したのは堀之内だが、ハサミ男の正体は日高だと思い込んでいるらしい。

 
 堀之内「おい、ちょっと待ってくれ、僕が日高を殺して彼女を撃ったってのか?」
 磯部「言い逃れをする気ですか、堀之内さん!」

 堀之内も、他人の罪まで着せられてはたまらないと、異議を唱えようとするが、磯部の態度を見て、あっさり諦める。もともと、離婚されるわ、由紀子にふられるわ、由紀子を殺しちゃうわで、半分自暴自棄になっていたのだろう、壁際に移動すると(なんで?)、

 
 堀之内「なるほどね、そのとおりだよ、僕が由紀子を殺し、口封じの為に日高を殺して、彼女も殺そうとした……か? で、その女は罪のない女性か?」

 
 堀之内「それでも構わんよ。フッハッハッハッハッ……どーんと来ーい!
 磯部「……」

 と言うのは嘘だが、どんなに偉くなっても阿部ちゃんは、管理人にとっては永遠に上田次郎なのです!

 
 乾いた笑い声を上げると、銃を自分の口の中に突っ込む。

 
 安永「あれが一番の拳銃自殺方法だ。ああすれば弾丸は延髄を吹き飛ばし、即死できる」

 それを見て、安永が自殺の専門家のように論評を加えるのがちょっと笑える。

 
 その直後、衝撃音と共に後ろの壁に鮮血が飛び、堀之内の体は一瞬痙攣して崩れ落ちる。

 いやー、なんだかんだ言って、阿部ちゃんは上手い! 今では、こんな役はやってくれないだろうけど。

 ちなみに、銃声よりほんの一瞬先に、背後の壁が赤くなってます。

 堀之内の理想的な拳銃自殺を見届けてから、知夏と安永は同時に意識を失う。

 その4へ続く。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

最近のトラックバック

カテゴリー

カレンダー

09 | 2019/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

FC2カウンター