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ネタバレ上等の劇場版「ハサミ男」 その4+おまけ

 劇場版「ハサミ男」(2005年3月19日公開)

 の続きです。

 
 病院のベッドから、窓の外を眺めている知夏。

 うう、なんという美しさ!

 
 磯部「これ、お見舞い……」

 病室には磯部が見舞いに来ていて、そっと花束を知夏の足元に置く。

 磯部「でも、みんなひどいよね、堀之内が怪しいと思ってて、俺には何にも言わなかったんだ。騙されてたんだよ、俺!」

 腕を組んで、仲間はずれにされた子供が拗ねるように憤慨してみせる磯部。

 

 
 知夏は、それを聞くと、天使のように穏やかな笑みを口元に浮かべ、目を開けて磯部を見上げる。

 うう、なんという可愛らしさ!

 磯部「君が笑うの、初めて見たな……」
 知夏「あなたといると、ほっとするから」
 磯部「ほんと? そっか……あっ、もう行かなきゃ、また来ます!」

 磯部、知夏の言葉に心底嬉しそうに頷くと、腕時計を見て、あたふたと病室を出て行こうとするが、ふと、進藤に見せてもらった靴跡のことを思い出し、入り口のところで振り返ると、

 
 磯部「ひとつだけ聞きたいんだけど……君はどんなスニーカー履いてる?」

 
 知夏「私、スニーカーは履かないの」
 磯部「あっ……そっか」

 少し緊張気味に質問するが、知夏の簡潔な答えに安堵の息を漏らし、今度こそ病室を出て行く。

 原作には全くない描写だが、映画の磯部はほんの少しだけ知夏のことを疑っていたらしい。

 ちなみに管理人、たった今、このやりとりの「スニーカー」を「パンツ」に置き換えて、ひとりニヤニヤしてしまったことを打ち明けたい。

 
 磯部「ういっす、ここはもう大丈夫ですから……お疲れ様でした」

 磯部、外で見張りをしていた警官にそう言うと、嬉しさのあまり、その警官とがっちり握手を交わす。

 磯部「良かった、良かった」

 管理人、この警官の態度になんとなく違和感を覚え、ひょっとして、監督や原作者がカメオ出演しているのかとも一瞬考えだが、覆面作家と言われていた殊能氏が映画などに出るとは思えない。また、監督とは明らかに別人のようだし、別に深い意味はないのだろう。

 原作では、知夏の見舞いに来た磯部が、事件の真相や、目黒西署の刑事たちの動きをかなり詳細に語って、これが推理小説で言う「解決篇」となっているのだが、映画では、それまでにだいたいのことは観客に示されているので、一切省略されている。

 結局、ハサミ男が日高だったのかについては、原作では警察も結論を出さないままうやむやになるのだが、映画ではあえて言及はされていない。いずれにしても、知夏は最後まで逃げおおせたのだ。

 
 安永「スニーカーを履くのは犯行の時だけだよ、磯部クン」

 カメラが病室に戻ると、いつの間にか安永がベッドの上に横向きに寝ていて、その場にいない磯部に説明する。

 
 その陰から知夏がむっくりと起き上がり、

 知夏「あなたといるとほっとする、だって? なんてこと言うんだ」
 安永「刑事のボーイフレンドもいいかなと思ってね」
 知夏「ふざけるな!」

 そう、いつになく女らしく話していた知夏だが、実際は安永が知夏のふりをして話していたことが分かると言う、なかなか楽しい一幕であった。

 ただ、細かいことを言えば、安永は妄想人格なのに、この描き方だと、知夏が二重人格者のように見えてしまい、それまでの描写と矛盾しているような気もする。

 何度も言ったように、映画の安永は、妄想人格と言うより、知夏に憑いている幽霊とでも表現した方が分かりやすい。

 安永「おや、珍しい人が……僕は消えるよ」

 安永、廊下を歩いてこちらに向かってくる気配に気付くと、知夏に囁いて部屋を出て行く。

 入ってきたのは、初めて登場する知夏の母親(二木てるみ)であった。

 原作では、医師(安永)自身を思わせるような、知夏の父親が訪れるのだが、直接的な描写はされていない。その際、医師は、父親のことを「ライオス王」と呼んでいるのだが、これはギリシア神話に登場する、エディップスコンプレックスの語源となったオイディプースの父親の名前である。それによって、作者がほとんど語られていない知夏の生い立ちや家族問題について仄めかしているのだろうが、浅学非才の管理人には良く分からないとしか言えない。

 知夏がもし娘ではなく息子であり、なおかつ映画のように母親が健在で父親が死んでいるのなら、ライオス王=息子に殺された父親と言うことで、知夏(息子)が実の父親を殺し、その罪の意識から、父親そっくりの妄想人格を作り出した……と言う解釈も出来そうだが。

 とにかく、原作では、その後、知夏がこれからどうやって生きていこうか考えるところで終わっているのだが、映画ではここからが結構長いのだ。

 原作では曖昧にされていた、何故、安永と言う妄想人格が生まれたのかと言う説明、さらに、知夏の殺人鬼としての倫理的責任問題の解決(言ってみれば、落とし前)が、そこでつけられることになる。

 知夏の母親が、くどくどと死んだ父親のことを話しているうちに、知夏も目の前で父親が自殺した、あの忌まわしい過去を思い出す。

 
 ここで、父親の死体に駆け寄る、女子高生の格好をした麻生久美子さんと言う、可愛過ぎて世界が滅びそうなビジュアルが出てくる。

 知夏「お父さん! お父さん!」

 あいにくモノクロなのが切腹したくなるほど悔しいのだが、おのおのがた、ご安心めされい!

 
 麻生久美子ファンの為に、管理人はぬかりなく、メイキング映像に収録されていた女子高生姿をキャプしておいたのです!

 既に女子高生を演じるにはやや無理のある年齢になった綺麗な女性が、仕事でやむなく制服を着させられている姿と言うのは、何ともはや、堪らないものがあるのです!

 さて、父親の死体を抱いた知夏は、

 知夏「お父さん、知夏にお話してくれない。お父さん、知夏が嫌いになった。知夏が嫌いだからお話ししてくれない……」

 冷たい、うつろな眼差しで、子供のような言葉遣いになってつぶやく。

 母親は、安永が自殺したのは、(登校拒否などの問題を起こしていた)知夏のせいではなく、あくまで借金苦によるものだと説明するが、

 
 知夏「……」

 知夏は納得せず、悔しそうな、恨めしそうな目に涙を溜めて母親を睨む。

 知夏「私がちゃんとしていればあの人は死ななかった!」

 知夏は、母親の持っていた遺影(知夏のマンションから持ってきたもの)をひったくると、落ち着かない様子で周囲を見回したり、ベランダに出たりするが、安永は一向に姿を見せない。

 
 知夏「ねえ……どこぉ?」

 その時、さっきの「僕は消えるよ」と言う安永の言葉を思い出し、ひょっとして永久に自分の前から消えると言う意味だったのではないかと気付き、心配する母親など眼中になく、デパートで親とはぐれた幼児のように、「どこに行ったの!」と、泣き出さんばかりに呼び続ける。

 知夏「消えたの、嘘でしょ? ねえ!」

 遺影を抱いた知夏、大声で叫びながら、パジャマのまま病院の廊下を走り抜け、そのまま外へ。

 
 ここでは、夜の繁華街の人込みを、パジャマ姿の麻生さんを走らせるという大胆な街頭ロケが敢行されている。

 探し疲れて、以前も出てきたガードレールの前で座り込んでいると、死んだ筈の由紀子が現れる。

 知夏は、由紀子に誘われるまま、とあるビルの屋上に上がる。

 普通に考えたら幽霊なのだが、安永と同じく、知夏が作り出した……正確には作り出しつつあった、もうひとりの妄想人格であった。

 
 由紀子に、そこから飛び降りようと誘われ、フェンスに掴まって下を見ていた知夏だったが、不意にパッと体を翻し、下に降りると、

 
 知夏「私、もう死ぬのやめた」
 由紀子「何よ、人殺しの癖に」
 知夏「そうよ、私は人殺し、でも、あんたみたいな弱虫じゃない」
 由紀子「弱虫?」
 知夏「あんたは人に構ってもらいたくて、わざと人を無視してただけでしょう。人を無視して人の目をひきつけたい天邪鬼……そう言うのはただの弱虫。ねえ、消えてよ、もうナントカ人格要らない。ひとりでやってく」

 知夏に突き放されると、由紀子はは少し寂しそうな顔をしてふっと掻き消える。

 遺影を拾い上げて知夏が歩き出すと、目の前に、懐かしい安永がしゃがんでいた。

 知夏「帰って来た!」

 知夏は嬉しそうにその前に駆け寄り、同じようにしゃがむ。

 
 安永「僕も要らないだろ」
 知夏「要らない? なんで? ナントカ人格要らないって言ったから? 違うよ、あれはあの子を要らないって言っただけなの」
 安永「……」

 がんぜない子供のような口調で慌てて説明する知夏。

 だが、安永の目が、フェンスの上に残った由紀子の蝶ネクタイに注がれているのを見て、いつもの険悪な態度に戻る。

 知夏「そっか、やっぱりあんたは、ああいう美人で清潔で頭の良い女の子がいいんだ……」
 安永「違う」
 知夏「嘘よ、だって、あんたは私が不登校になって成績が落ちたから自殺した……」
 安永「違う」
 知夏「あんたは私が家に閉じ篭っておしゃれしないでボサボサの髪してたから私が嫌いになって……」
 安永「……知夏、娘のことが嫌いな父親なんていると思うか?」
 知夏「じゃあ、私のこと嫌いじゃなかったの?」
 安永「大好きだよ、知夏……ずっと」
 知夏「……」
 安永「君はもう自殺はしないと言った、それを聞いて嬉しかったよ。もう僕がいなくても知夏はやっていける。さよなら知夏」
 知夏「駄目だよ!」

 安永は立ち上がると、フェンスを乗り越え、そばにあった蝶ネクタイをポイと落とす。

 知夏「まだ行っちゃヤダ!」

 知夏が追いかけて手を伸ばすが、その手は当然のごとく、安永の体を突き抜ける。

 そうこうしているうちに、空が白みかけてきた。

 監督によると、夜のうちにこのシーンは終わる筈だったのだが、間に合わず、結局朝になってしまったので、予定を変えて夜明けのシーンに変えたらしい。

 安永はフェンスの向こうに立ったまま振り向くと、

 
 安永「知夏、君は人殺しじゃない。ハサミ男は僕だ」
 知夏「……」
 安永「ハサミ男は自分の始末は自分でつける。僕はもう一度飛び降りる、今度は知夏の為に……」

 
 安永「知夏、こんなに長い間、ずっと僕のことを思っててくれてありがとう」

 うう、良い台詞やわぁ。

 安永「ごめんな、知夏……」

 安永の幽霊のように体がビルから落ちていき、動き出した電車の音に飲み込まれて消える。

 知夏「お父さん……お父さん!」

 もう、いくら呼んでも返事はない。

 さて、このシーン、原作には全くないのだが、前述の通り、安永という人格がどうして知夏の心の中に作られたのか、明確な説明がされると共に、少女たちを殺したのはあくまで安永であり、知夏は磯部が信じているように無罪なのだと主張し、それに続くハッピーエンドを観客がすんなり受け入れやすくなる働きを果たしている。

 それはそれで良いのだが、原作の他の部分を無視して付け加えた為、大きな疑問点を残すことになってしまった。

 それはすなわち、安永が、どうして知夏と対照的な少女を殺さねばならなかったのかと言う根本的な疑問である。原作では、あくまで殺したのは知夏の人格であり、そう言う少女を狙ったのは、単なる快楽殺人鬼としての「好み」の問題だったから、そう言う疑問は湧いて来ない。

 ま、無理に解釈しようと思えば……そう、たとえば、最後のシーンに出て来たのは妄想人格ではなく、ほんとの安永の幽霊だったと仮定しよう。とすれば、二人の少女を殺したのは、知夏の作り出した安永の人格であり、その動機は、知夏が、父親が自殺したのは自分のようなタイプの女の子を嫌ったからだと思い込み、その気持ちが妄想人格にも歪な形で反映され、清潔で頭の良い少女を探しては、一種の逆恨みと言う形で、殺していたと言う説明が成り立つ……かなぁ?

 自分で書いてて分からなくなったので、改めてチャートにしてみると、

 ・知夏は自分のせいで父親が自殺したと考える
 →その罪の意識で父親そっくりの人格を作り出した
 →しかし、その人格は、あくまで知夏の人格の一部である
 →知夏は、安永が自分とは正反対の少女を好きだと思い込んでいるので、そんな少女を探し出す
 →だが、同時に知夏の心には、自分とは正反対の少女たちへの嫉妬に似た憎悪があり、それがハサミ男としての殺人に結びついた
 →ただし、実際にそれを行ったのは、知夏の深層心理を受け継いだ安永の妄想人格だった

 うむ、自分で読んでもさっぱり分からない。

 とにかく、最後に出てきた安永が、妄想人格ではなく、知夏の父親の霊だったとしたら、知夏へのそれまでとは別人のように優しい態度も、知夏の罪を背負ってもう一度自殺しようと言う行為も、実にすんなり納得できる気がするのは確かである。

 安永の妄想人格が、知夏のことを好きだったのなら、もっと早くそのことを知夏に言っていれば、そもそもハサミ男による殺人など起きず、知夏も自殺未遂を繰り返すことはなかったのではないか?

 それと、理屈とは別に、このシーンだけ妙に湿っぽくて、それまで原作のドライで硬質な世界観を忠実に映像化してきたのが、ここ(母親がくどくどと愚痴を言うシーンも含めて)だけ、がらっとテイストが変わってしまい、まるで別の映画を見ているように感じられるのが、ちょっと残念なのだ。

 余談が長くなってしまった。残り僅かである。一気に片付けよう。

 

 
 屋上から降りて、セミの声の降る並木道を、遺影を持ったまま知夏が歩いていると、後ろから磯部がハーハー言いながらやってくる。

 磯部「安永さん、捜しましたよ。病院から突然いなくなったと聞いて……良かった。無事で」
 知夏「ねえ、私がハサミ男だったらどうする?」
 磯部「何バカなこと言ってるんですか、事件はもう終わったんですよ。ハサミ男はもう死んだじゃないですか」
 知夏「そうよね」

 磯部の台詞から、警察が、日高がハサミ男だったと考えていることが分かる。

 知夏、ふと立ち止まり、さっきのビルの屋上を見上げる。

 で、そこにもう消えた筈の安永が再び現れるのは、ちょっとどうかと思う。

 あまつさえ、

 安永「知夏、大丈夫、君なら人生に勝てるさ」

 と、まるっきり父親のような励ましを贈るのは、是非やめて頂きたかった。

 こう言うのを蛇足と言うのである。

 ただし、知夏にはその姿が見えていなかったのかも知れない。

 だとすると、ますます最後の安永=ガチの幽霊だった説が真実味を帯びてくる。

 知夏、再び磯部の方を見て、

 
 知夏「お腹空いたな、朝ごはん食べない?」

 それは、知夏の最後の台詞であると同時に、劇中で初めて聞く、知夏の前向きな台詞であった。

 磯部「いいですねえ、なんか旨いものでも食べに行きましょう!」

 管理人、このシーンが大好きで、見るたびに泣けてきちゃう。だって女の子なんですもの(やかましい)

 ちなみに、原作では、知夏はとても食いしん坊で、実際にややふくよかな体型で、だから自分のことを「でぶ」だと思い込んでいるのだが、とにかく、ミートパイが旨いとかコーヒーがまずいとか、飲食に関する記述がかなり多い。しかし、映画では時間の関係もあり、すべてカットされている。

 まだ車の少ない車道の横断歩道を、パジャマ姿の知夏と磯辺が並んで歩いていく。

 実に、感動的で、爽やかなシーンである。

 その女性が連続殺人鬼であることを気にしなければ……

 
 で、しっかりした足取りで歩く知夏の最後のアップを見た管理人は、気にしないことにしました!

 個人的にこのカットで終わった方がいいと思うのだが、

 
 ラスト、まだおったんかいと言う感じだが、屋上に立って両手を広げた安永の体に、直角に開いたハサミと、最初の犠牲者を殺した時の情景が贖罪の十字架のようになって重なり、クレジットが流れ出す。

 どうでもいいが、最初にトヨエツの名前が出てくるのは、ちょっと納得いかないなぁ。

 役柄的には、普通は麻生さんが先でしょ。

 以上、最初思っていたより遥かに長くなってしまいましたが、思い残すところがないほどしっかりレビュー出来たと自負しております。面白いか面白くないかは別にして。

 そして、最後まで根気良くお付き合いくださった麻生久美子ファンの為に、おまけを用意しました。

 それは、この映画が公開された少し後のテレビドラマ「時効警察」の第8話のこと、ある夜、思いを寄せる霧山(オダギリジョー)から、彼のアパートに呼び出された三日月しずか(麻生久美子)は、いきなりセーラー服を着てくれといわれて戸惑うが、愛する人の為ならばと、年も省みずセーラー服を着て、一旦部屋の外に出ていた霧山をノリノリで出迎える。

 まずくるっと一回転してから、

 
 三日月「ピョーン! ピョコピョコ!」

 
 三日月「あっ!」

 
 三日月「どうかちら?」

 ウサギさんのように、頭の上に乗せた両手を閉じたり開いたりする。

 これだけでもう鼻血モノだが、

 

 
 三日月「うーふぁっ!」
 霧山「……」

 さらに、スカートの端をつまんで、ルーズソックス(!)を履いた足を曲げて、可愛く腰を屈めて見せる。

 ……

 管理人、もう思い残すことはありませんっ!

 この後、ロマンティックなことを期待していた三日月だが、案の定、霧山にそんな気は毛頭なく、逆に霧山に投げ飛ばされ、セーラー服を着たまま帰されるのだった。

 以上、おまけコーナーでした。

 最後までお読み頂き、ありがとうございました!

 
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Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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