第35話「ターゲットは雷!~殺し屋の殺し屋による殺し屋のための殺人事件」(2006年8月26日)
34話は、記念すべき「ケータイ刑事」シリーズ初回のゲストだった矢部美穂さんが再登場しているのだが、
特に面白くないのでスルーした。
その代わり、

自転車に乗った雷が、両腕を伸ばして思いっきり胸を反らしているシーンを貼っておく。
さて、35話は、前回やった33話に負けず劣らずシュールな回で、メタフィクション的な要素もある。
が、ストーリー自体はわやくちゃだし、この手の話はあまり詳しくレビューしてもしょうがないので、なるべく簡単にまとめたいと思う。
冒頭、高村が刑事部屋(?)に入ってくると、

雷が、スティックを手に、お仕置きの雷を落とす練習に励んでいた。
高村「おお、あぶねえ」
巻き添えを食うのを恐れた高村、慌てて廊下へ出ると、ドアの隙間から怖々様子を窺う。
雷「なるほどね」
雷が練習をやめると、部屋も元通りになる。

高村「ハロー、銭形、こんなの来てたよ」
雷「え? 差出人の名前がありませんね」
封筒には、とある場所を示した地図と、カセットテープが入っていた。
テープを再生すると、くぐもった男の声が、「我々は国際的暗殺団ネプチューン……」と、マンガじみたことを語り出す。
声は、鑑識の柴田を預かっている、助けたければ地図に書いた場所まで雷と高村に来るよう指示する。
声「もし他の警官の姿が見えた場合、柴田君の命はない。なお、このテープは……」
高村「伏せろっ」

聞き覚えのあるフレーズから連想される事態に、高村は雷を庇うようにして床に伏せるが、
声「……燃えないゴミに出して下さい」

ゆるゆると起き上がり、テーブルの上にちょこんと顎と前足を乗せる高村と雷。
雷「意外と地球に優しいんですね」
高村「うん」
別に優しくはないと思うが。
二人が地図に指定された場所に行くと、そこには教会らしき建物が建っていた。

高村「もういいよ、帰ろうよ、ええ?」
だが、高村はいかにも気乗りしない様子で、しきりに雷を促す。
なにしろ優勝賞品が柴田なので、高村に熱意が感じられないのも当然であった。
雷「だって柴田さんがいないと困りますよ。鑑識メモは誰が担当するんですか?」
もっとも、雷にしても、柴田の命がどーのこーのと言う使命感に突き動かされている訳ではないようだ。
ちなみに「鑑識メモ」と言うのは、ドラマ本編の後に、柴田が何か適当なことをコメントすると言うミニコーナーのことである。理由は言うまでもないが、今までレビューで取り上げたことはない。
ま、とにかくそうしないと話が進まないので、雷が、嫌がる高村の体を押すようにして中に入ると、

真っ暗で、いくつもの燭台がぼんやりした光を投げかけている、一種異様な空間になっていた。
もっとも、実際に建物の中で撮影している訳ではなく、普通のスタジオで撮っているのである。
意味もなく部屋を真っ暗にしているのは、教会内部のセットを組むだけの予算と熱意がないからである。
声「よく来たな、これでもう君たちは逃げられない」
雷「柴田さんは何処ですか?」
声「彼はこの奥だ。だが、そこに行くまでに三人の殺し屋たちと勝負をしてもらおう」
この言葉が終わるか終わらないうちに、闇の中から一枚のカードが高村の顔目掛けて飛んでくるが、雷が素早くキャッチする。
ジョーカー「さすがですねえ、ライ・ゼニガタ殿」
高村「なんだ、この男」
ジョーカー「私の名はジョーカー、まずは私がお相手いたします」
続いて、シルクハットを被った八の字ヒゲの男があらわれ、勝負を挑んでくる。

声「第一の刺客、死神ジェントルマン・ジョーカー、トランプを自由に操り、どんな相手でも一瞬に切り刻む。鋼をも切り裂く彼のカードは……現在特許出願中」
再びあの声が、台座の上に載ってぐるぐる回っているジョーカーのプロフィールを語る。
ジョーカー「お見知りおきを、マドモアゼル」
雷の手を取って挨拶がわりの口付けをしようとするが、雷はその手を鋭く振り払うと、
雷「お見知りおきを、お仕置きに変えてあげます!」
だが、何故か高村が勝負を買って出て、ジョーカーと高村の対決となる。

で、次のシーンでは、何故か二人はだだっ広い荒野に背中合わせに立っていて、いかさま、金のない西部劇の決闘シーンのような趣となる。
まぁ、こういうところにいちいち野暮なツッコミを入れずにあるがまま楽しむと言うのが、「ケータイ刑事」シリーズの正しい鑑賞法なのである。

それはそれとして、両手を握り締めて、高村の勝利を祈っている雷が可愛いのである!

ジョーカー「持ち札はそれぞれ5枚、3歩歩いて振り向きざまにカードを投げ合う。ルールはそれだけです」
……
明るいところで改めて見ると、とことん人を馬鹿にした顔だなぁ。
このままのメイクで、卒業式とか、葬式とか、厳粛な雰囲気の場に放り込んだらどんな反応が起こるか、試してみたい衝動に駆られる。
さて、勝負の結果、高村は右腕から流血し、一方のジョーカーは高村の投げたカードをすべて受け止め、勝負ありかと思われたが、
高村「そうかな、よく見てみろ」

ジョーカー「ロイヤルストレートフラッシュ?」
高村に言われて手元のカードを見ると、いつの間にかポーカーの最強の役が揃っていた。

高村「勝負あったな!」
雷「……」
何がなんだかよく分からず、ボーゼンとしている雷が可笑しい。
誰がどう考えてもジョーカーの勝ちだと思うのだが、

何故か当のジョーカーも敗北を認めたようにその場に膝をつく。

と、黒子が出て来てシルクハットを取り、ジョーカーの手に載せる。

次の瞬間、天井から巨大なタライが落ち来て、ジョーカーの脳天を直撃する。

首が胴にめり込むほどの強烈な一撃に、さしものジョーカーもこんな顔になってぶっ倒れる。
この顔、たぶん、演技じゃないんだろうなぁ。
しかし、コントじゃなくて普通(?)のドラマで、ガチのタライ落としの刑を受けた俳優さんと言うのも、彼くらいのものではないだろうか。
雷「これって、そういう勝負だったん、だ?」
勝ったけど、なんとなく釈然としない雷。
さて、次のステージに進んだ二人の前に現れたのは、チャイナドレスをまとったリン・シャイメイと言う、女性の殺し屋だった。
今度こそと雷と殺し屋の一騎打ちになる……のだが、

柴田「これより、銭形選手対リン選手の料理対決を行います」
今度は一転、バラエティ番組のセットみたいな場所で、二人の料理対決が行われると言う、最早「ケータイ刑事」フリークですら理解困難の領域に到達してしまう。
一応、リンは、食べ物に毒を仕込んで相手を殺すのが得意技らしい。
さて、リンの料理は、超激辛麻婆豆腐。

雷の方は、稲妻型のケチャップが可愛い、これは本気で食べたいと思うオムライスであった。
で、勝負はあっさり雷の勝ちとなり、リンは、手にした風船が膨れ上がって破裂すると言う罰を受ける。
雷「何しに出てきたんだろう、あの人……」
再び暗い部屋に戻り、腕を組んで考え込む雷。
そこへ審査員のひとり、高村が来て、
高村「いや、美味しかったよ、銭形君」
雷「ほんとですか」
高村「うん、と言うかね、、相手の料理、毒が入ってると思って誰も食べなかったんだよ」
雷「それ、嬉しくないんですけど……」
管理人もだいぶ飽きてきたが、頑張って続けよう。
さて、三人目の刺客は、死を奏でる演奏家・チャーリー村上なる人物だったが、彼との勝負は永久にお預けとなる。
何故なら、雷たちが来た時には、既に彼は木箱の上に座ったまま、死んでいたからである!
と言う訳で、やっとここで殺人事件が発生し、いつものように雷と高村による捜査が開始される。
高村「これ、死んでから間もないね」
雷「座ってるところを後ろから殴られたようですね」
声「凶器はこのウクレレだな」
何処からか第三の声がして、二人は驚いて周囲を見渡すが、誰の姿も見えない。
が、もう一度同じ台詞が足元から聞こえ、

足元を見ると、そこに、ちっちゃな丹下ダンペーみたいな人が立っていた。

雷「あのー、どちら様ですか」
辰五郎「私が暗殺団ネプチューンの首領(ドン)辰五郎だ」
高村「じゃ、テープの送り主?」
辰五郎「いかにも」
これまた、人を小馬鹿にしたようなメイクの辰五郎を演じるのは、シリーズ常連、いや、重鎮の半海一晃さんである。
以前、死神博士やってた人ね。

雷「ええ~、イメージ違う」
高村「ただのジジイじゃん」
雷「ボスがこんなあっさり出て来て良いんですかね」
高村「話の流れに無理があるんじゃないの」
辰五郎「……」
辰五郎、二人からボロクソにダメ出しされて、本気で凹む。
ちなみに高村、「ジジイ」って言ってるけど、自分の方が半海さんより年上なんだけどね……
辰五郎「そんなことよりも! これは殺人事件ですぞ。早く犯人を見付けて頂きたい」
高村「あんたたちが仲間割れでも起こしたんじゃないの?」
CM後、雷も視聴者もすっかりその存在を忘れていた柴田が「報告します!」と、いつものようにあらわれるが、

雷「柴田さん、無事だったんですか?」
柴田「ええ、お陰さまでね」
そこに立っていたのは、鑑識の制服こそ着ているが、柴田とは似ても似つかぬ、イタリアンなナイスガイであった。

雷「あ、あのー、どちら様でしょう?」
柴田「いやーだなぁ、雷ちゃん、私です。逆もまた真なりの、柴田束志です」
高村「なぁに言ってんだ、銭形君、360度どっから見ても柴田君じゃないか」
雷「ええっ、うそーっ」
この前見た悪夢の世界に舞い戻ったような不可解な状況に、めまいを覚える雷。
それは視聴者も同じことだったが、とにかく、この世界の柴田はこんなキャラなのである。

柴田「被害者の死因は脳挫傷、死亡してから30分も経ってないと思われます」
高村「料理対決の頃だ」
柴田「ちなみにこちらのウクレレからは被害者の指紋しか検出されませんでした。見た目は普通のウクレレ(註1)ですが、鉄製で、弦が強化製のワイヤーソーになっています」
そこに拘っていては話が進まないので、とにかく鑑識としての報告を受け、事件の捜査を続ける雷。
註1……「ピンクレディー」と言ってるように聞こえる。
二人は、容疑者の三人から事情を聞くが、ジョーカーと辰五郎にははっきりしたアリバイがなく、犯行時刻、雷と料理対決をしていたリンにだけ、確固としたアリバイがあった。
と言うことは、とりもなおさず、リンが真犯人なのだろう。ミステリーの基本である。

高村「リン・シャイメイが何らかの形で殺したと疑ってるんでしょう? 彼女の犯行は絶対不可能だ。犯人はね、辰五郎かジョーカーだよ」
雷「でも仮にも殺し屋が、そんな簡単に容疑が掛かるような真似をするでしょうか」
高村「だから逆なんだよ、殺し屋だからこそアリバイ工作は必要ないの」
雷「そう言うものかなぁ」
高村にしては珍しく筋の通った意見だったが、雷はなおも納得しかねる顔つきだった。
と、雷、犯行現場の近くの床に水溜りが出来ているのに気付く。
上を見ると、天井のダクトのその部分に、たくさんの水滴がついていた。
高村「水漏れでもしてんだろう」
雷「もしかしたら……」
柴田「報告します!」
再び柴田の声(本物)がするが、

柴田「そこのぉ、ガラクタの山から、こんなものが発見、されました」
振り向けば、やはりイタリアンな柴田が立っていて、土嚢に長いロープを結んだものを二人に見せる。

雷「そっか、そういうことか」
柴田「そういうことですね」
高村「なに、全然わかんないけど?」
この世界の柴田は、イケメンだけじゃなく、頭の回転も早いようで、雷と同時に殺人トリックを見破ってしまう。

雷「謎は解けたよ、ワトソン君」
雷の決め台詞にあわせて、イタリアン柴田もポーズを決めて、意味もなく歯を光らせる。

さらに、同じようなポーズを決めた雷の歯も光るのだが、これは、光らせないほうが良かった。
雷は容疑者三人を集め、犯人を指摘するが、果たしてそれは、唯一アリバイのあるリンだった。

雷「あなたはまず、両端に重りとフックをつけたロープを用意しました。そして重りを天井の鉄骨にぶらさげておきます。この重りはウクレレとほぼ同じ重さのものです。片方のフックには盗み出したウクレレを引っ掛けてダクトの上に準備した氷の板に置いておきます。それからあなたは私と料理対決を始めた。その熱がダクトを通り、氷の板が解け始める。落ちたウクレレは振り子の原理でチャーリーさんの頭部を直撃したんです。その衝撃でウクレレはフックから外れます。するとロープは重りに引かれてガラクタの中に落ちると言うわけです」
高村「床の水は氷が溶けたものだったんだ」
雷「遠隔殺人はアリバイがないと意味がありません。三人の中でアリバイがあるのはあなただけです」
と、一気呵成にトリックを解説してしまう雷。
ま、例によって極めて成功率の低そうな殺害トリックであったが、「ケータイ刑事」の中では割りとまともな方かな。
リンは、被害者が仕事の前に、ひとりで瞑想に耽ることを知っていたので、あえてその場所に木箱を置いて、そこに座るよう仕向けたのだったが、これも、木箱のどの部分に座るかまでは予測できる筈がないので、ますます成功率は低くなっていただろう。
ともあれ、観念したリンは、逆に雷を殺そうと毒入り注射針を手に襲ってくるが、間一髪、イタリアン柴田に助けられ、珍しく、謎解きの後のお仕置きを受けてジ・エンドとなる。
ちなみに気になる(註・ほんとは気になってない)動機だが、村上が、リンの恋人に、リンが殺し屋であることをバラしてしまったことへの仕返しであった。
事件が解決して喜ぶ辰五郎とジョーカーだったが、その後、二人まとめて雷のお仕置きを食らう。
ジョーカー「何をするんですか」
辰五郎「我々は犯人ではないぞ~」

雷「何言ってんですか、国際的暗殺団ネプチューン、全員まとめて逮捕します」
事件解決後、まだ腑に落ちない顔をしていた雷だったが、最後までカッコよく二人の前から去っていたイタリアン柴田を見ているうちに、
雷「そうかぁ、またまた謎は解けたよワトソン君!」
ここで、原稿に向かってペンを走らせている醜い方の柴田の姿が映し出され、

雷「やっぱり、今回の脚本は柴田さんが書いたんですね」
高村「道理でひどい話だと思った。リアリティのひとかけらもないよ」
雷「誘拐事件も尻切れトンボだし、殺人のトリックも強引だし、穴だらけじゃないですかー」
そこへやってきた雷と高村に、容赦なくダメ出しをされる。
すなわち、登場人物が、自分たちがフィクションの世界の存在だと自覚し、その脚本に不満を述べると言う、すぐれてメタフィクション的なオチとなるのだった。
高村「外国人で出てたよ、でも」
柴田「たまーには僕も活躍したいんだよーっ」
そして、劇中の柴田が妙にカッコよくて冴えていたのは、脚本を書いている柴田の願望がストレートに反映された結果だったのである。
もっとも、実際に大堀さんが今回のシナリオを書いている訳じゃないんだけどね。
高村「僕が書いたほうがマシだ」
雷「あっ、私書きたいです」
高村の発言に、雷が手を上げてカメラに向かって身を乗り出し、
雷「焼きイモ食べ放題殺人事件!」 目をキラキラさせて、実に可愛らしいサブタイトルを発表するのだった。
以上、結局、殺し屋たちが実在したのか、殺人事件が本当にあったのかもどうかもはっきりしない、摩訶不思議なエピソードであった。
これをミステリードラマと呼ぶことに躊躇いを覚えるが、少なくとも33話よりは面白かった気がする。
……って、気がついたら、いつもと大して変わらないボリュームになってしまったことよ(詠嘆)
- 関連記事
-
スポンサーサイト