第16話「謎の女 その名はデスパー秘密捜査官」(1974年8月6日)
微妙に突っ込みを入れたくなるサブタイトルである。
「デスパー」が苗字で、「秘密捜査官」が名前なの?
あるいは、「デス」が苗字で、「パー秘密捜査官」が名前なの? みたいなね。
それはともかく、冒頭、浜松市にある浜松城の模擬天守の上から、デスパーの一味が、九条博士に作らせた殺人超音波発生装置の実験を行っている。
同行した九条博士は「いやだい、いやだい」と駄々をこねるので、結局ヨロイ元帥(文弥さん)がスイッチを押し、浜松市内に向けて殺人超音波を放射する。
効果は絶大で、超音波を浴びて大勢の犠牲者が出てしまう。

ガイゼル「第一の実験は、成功だ。サデスパー、分かっておろうな」
サデスパー「は、早速九条博士を使って、さらに強力な威力を持つ超音波兵器に改良いたします」
怪人「これで日本全土を破壊することが出来る。俺もイナズマンを必ずやる!」

被害の様子は、全国のテレビニュースでも放送される。
まさに死屍累々と言う感じだが、これは他の番組の借り物じゃなくて、新撮なのかなぁ?
地下のアジトでそれを見ていた五郎と荒井、当然、それがデスパーの仕業だと睨む。
と、珍しく荒井の仲間からの通信が入る。

麻耶「こちらナンバー005、応答願います」
荒井「こちら0446、どうぞ」
麻耶「インターポール、NY支部のK麻耶です」
荒井「麻耶さん、いつ日本へ?」
麻耶「一週間前です。デスパーの情報をキャッチしました。九条博士がデスパーの日本基地に捕らえられています。今度の事件も博士の開発した超音波発生器が実験された結果と思われます」
と言う訳で、五郎と荒井は二手に分かれて、麻耶の滞在している浜名湖の北にある舘山寺ビュホテルへ向かうことになる。

次のシーンでは、早くも荒井の車がホテルの前に到着する。
【タイアップの鉄則 その1】 対象となる施設名を、さりげなく画面に映し込め! しかし、多分、同時に東京を出発しただろうに、ライジンゴーの五郎より、荒井の車の方が先に到着すると言うのもなんだな……
ちなみに管理人、てっきり「ビューホテル」だと思っていたのだが、

フロントの背後に書いてある字を良く見ると、「ビュー」ではなく「ビュ」になっていた。
……
変な名前ー。
それはさておき、
フロント「お客様は今、
モーターボートで湖の方へ出掛けていらっしゃいますが」
荒井「どうも」
【タイアップの鉄則 その2】 対象となる施設およびその周辺で可能なアクティビティーをストーリーに絡ませろ! んで、その後、浜名湖の上で、麻耶の乗るモーターボートが、デスパーのモーターボートに襲撃され、

銃撃を受けた麻耶のボートは、黒煙を吹きながら猛スピードで岩場に突っ込んでいき、

大爆発を起こす。
たとえロケ先だろうと、70年代特撮スタッフは火薬の量を手加減したりはしないのである!(ダメじゃん)
荒井が急いで駆けつけるが、そこに残っていたのはボートの残骸の他には、通信機と麻耶のサングラスだけであった。
さて、九条博士は、引き続きデスパーのアジトにとどめられていた。

サデスパー「もう一度言うが、博士、あなたの頭脳は恐ろしい殺人兵器を作り上げた。我々の注文はさらにこの機械を数百倍の威力を発揮する超音波発生器として完成させて欲しいのだ。もし断れば、可愛い息子の命はない」
九条博士は幼い息子を人質に取られ、無理矢理超音波発生器を作らされているらしい。
一方、五郎はライジンゴーで真新しい道路を浜名湖へ向かっていたが、途中、デスパーによって未舗装の道に誘い込まれる。

そこは地雷原になっており、左右で連続的に激しい爆発が起きる。
さらに、ライジンゴーを捨てて走り出した五郎目掛けて、戦闘機が爆弾を落としていく。
が、ライジンゴーがそれを叩き落すことなく、次のシーンへ行ってしまう。珍しいパターンである。

デスパーのアジトでは、肌もあらわなビキニ姿の女性が鎖で縛られていた。

サデスパー「ソシンミーサー、トスイデーサー」
その前に立つサデスパーが、奇妙な呪文を唱えながら、胸のカバーを変質者のコートのように開く。
サデスパーの胸のカバーの裏側には「鋼鉄の処女」のようなトゲトゲが一杯生えていて、体には、それに合わせた穴が開いているのだ。実に素晴らしい、ビザールなデザインである。
ちなみに、サデスパーの口にしている呪文だが、例によって何かの言葉を逆から言ってるだけと思うのだが、後半部分は「サディスト」だと思うが、前半部分が何度聞いても分からない。「催眠」?

サデスパー「お前の名前は?」
麻耶「デスパーの秘密捜査官、K麻耶」
サデスパー「お前の任務は?」
麻耶「我がデスパー軍団の敵、イナズマンとインターポールの犬・荒井誠をこの世から葬ることです」
サデスパー「ようし、
たった今からお前はインターポールではなく、我がデスパーの秘密捜査官となったのだ」
いや、「たった今から」って、最初から麻耶は「デスパーの秘密捜査官デス」って言ってるんだけど……
ま、そんな細かいことはさておき、麻耶は生きていたが、デスパーに捕まって催眠術を掛けられ、デスパーの手先にされてしまったのだ。
麻耶、こうして見ると、なかなかの美女なのだが……
演じるのはロマンポルノで大活躍していた山科ゆりさん。
そのせいか、妙に露出度の高いコスチュームが多い。

次のシーンでは、背中の大きく開いた真っ白な衣装に着替えて、ホテルの前に立つ。
【タイアップの鉄則 その1】 対象となる施設名を、さりげなく画面に映し込め! 荒井は、てっきり麻耶が死んだものと思って落ち込んでいたが、その麻耶がひょっこりホテルにあらわれたので、驚き、かつ喜ぶ。

荒井「麻耶さん、無事だったのか」
麻耶「すみません、デスパーを欺く為に連絡が取れませんでした。あの時、撃たれたと見せかけて水の中に飛び込んだのです」
荒井「そうだったのか、さすがだ。五郎君、私の同僚、NY支部のK麻耶さんだ」
五郎「渡五郎です、よろしく」
荒井、付き合いの長い相手だけに、デスパーの手先になっているとは露ほども疑わず、五郎に麻耶を紹介する。
麻耶「九条博士と一人息子の一郎君が誘拐されたのはフラワーパークらしいんです」

と言う訳で、荒井と麻耶は、そのフラワーパークへ赴く。
【タイアップの鉄則 その3】 撮影はなるべく観光スポットで行え! ホルターネックのトップスに、ワイドパンツと言うか、フレアパンツと言うか、今風に言うとスカンツを履いた麻耶のスタイルは実に美しい。
これで牧れいさんや小野恵子さんみたいな、管理人好みの美女だったらなお良かったのだが(註1)。
註1……さっきから、麻耶の後姿ばかり貼っているのは、どうやらそこに秘密が隠されているようである。
とりあえず公園内を歩き回っていると、

荒井が何者かの気配に気付き、植え込みの影から背後をうかがう。
麻耶「どうしたんです」
荒井「俺たちをつけているものが……」

麻耶「気のせいですわ」
荒井「いや、確かに誰かいる」
麻耶、話しながら、ハンドバッグに仕込んでいたナイフ(と言うか短剣)を抜く。
それをいきなり投げつけるが、ナイフは荒井の頬をかすめ、背後の木の幹に突き刺さる。

麻耶「私の手裏剣をかわすとはさすがね」
荒井「命は無駄に出来ないんでね。君こそ相変わらずなかなか見事な腕前だ」
相手のことを信じ切っている荒井は、麻耶が冗談でそんなことをしたのだと思い、にこやかにナイフを抜いて麻耶に返す。
だが、麻耶は受け取ったナイフを荒井の顔に押し当て、

麻耶「その命、私が貰うわ」
荒井「冗談はやめたまえ」
荒井、笑ってそれを振り払おうとするが、麻耶はなおも荒井の頬に食い込ませ、
麻耶「動くと命がないわ」
荒井「麻耶さん?」

CM後、引き続き荒井の顔にナイフを押し付けている麻耶。
荒井がなんとか振り払うと、今度はデスパーの戦闘員があらわれ、襲ってくる。
麻耶「私はインターポールなんかじゃない、今の名は、デスパー秘密捜査官」
荒井「君がデスパー?」

やがて、今回の怪人、ノコギリデスパーも姿を見せ、
怪人「トドメは俺が刺す」
荒井「ノコギリデスパー!」
なんで荒井が名前を知ってるのかと思ったが、よく考えたらノコギリデスパーって1話と2話に登場した昔のキャラだった。初登場時とは多少デザインが違うようだが。
つまり、前回と同様、スーツのリサイクルなのである。
なにしろ、オイルがショックなもんで。
怪人「イナズマンの片割れ、貴様の最期だ!」
しかし、荒井さんなら、今まで何度もデスパーに捕まったことがあるのだから、殺そうと思えば何度でも殺せていた筈で、今頃になってムキになって殺しにかかると言うのは、いささか解せない態度だ。
ま、イナズマンは逆立ちしても無理だが、せめて相棒なら倒せるんじゃない? と、ガイゼルが目標ラインを下方修正した可能性はある。
そこへイナズマンが駆けつけ、荒井を助けるが、麻耶もいつの間にか姿を消していた。
荒井「麻耶さんがデスパーに利用されているなんて、信じられん」
目の前で麻耶の裏切り行為を見た後でも、荒井はそれを現実のものとして受け入れらなかった。

ビュホテルの屋上にひとり佇み、麻耶との思い出の日々を回想している荒井。
【タイアップの鉄則 その1】 対象となる施設名を、さりげなく画面に映し込め! ……って、あれ、ここではちゃん「ビューホテル」になってる。
どっちやねんな、正味の話。
ま、どっちでもいいか。

荒井「K麻耶、NY5番街作戦の時、君は俺と一緒に勇敢に敵と戦った。その君が……」
で、NY時代のことが回想されるのだが、それが、NYの写真に、並んで銃をぶっ放す荒井と麻耶の映像が二重写しにされただけの、チープきわまる再現映像なのが悲しい。
しかし、これじゃあ、インターポールじゃなくてギャングの出入りだよね。

と、荒井が何気なく、ゲルショッカーの本拠地があったことで有名な浜名湖の内浦をまたぐようにかけられた「かんざんじロープウェー」のゴンドラを双眼鏡で見ると、なんと、ゴンドラの中に麻耶、九条親子、デスパーの一味らしき姿があるではないか。
【タイアップの鉄則 その2】 対象となる施設およびその周辺で可能なアクティビティーをストーリーに絡ませろ! 荒井、今回は麻耶のことで理性を失っているのか、五郎にも知らせずにひとりでロープウェーに乗り込み、麻耶たちを追いかける。
麻耶たちは、ま、他に行くところはないので当たり前なのだが、大草山駅で降りる。
荒井(この
大草山で何をやるつもりだ?)
【タイアップの鉄則 その4】 ロケ地の地名を俳優に言わせろ! 
展望台のようなところに上がる麻耶たち。
ここで麻耶が、ラメ入りレザーのヘソ出しベストに、ショートパンツ、ブーツと言う、当時としてはかなり尖がった、黒一色のエロいコスチュームにチェンジしてくれるのが、なかなか嬉しいご褒美。
これで、小野ひずるさんや丘野かおりさんみたいな管理人好みの美女だったらなぁ……

麻耶「あなたが命を懸けた殺人兵器の威力をその目ではっきり見ることね」
九条「待ってくれ、これは私の機械だ。私にやらせてくれ」
麻耶、九条の目の前で、強化型超音波発生器を作動させようとするが、九条が自分でやると申し出る。
しかし、なんでわざわざ博士のみならず、人質の一郎まで同行させたのか、いつものことだがデスパーのやり方が理解できない。
麻耶「そう、いい心がけね」
麻耶、九条の望みを叶えてやるが、案の定、九条はスイッチを押すと見せかけて、機械を抱いて麻耶たちから離れる。

九条「こんな恐ろしい機械を貴様たちに渡すわけにはいかん。一郎、許してくれ」
九条、息子もろとも、殺人超音波で麻耶たちを殺そうと、非情の選択をするが、間一髪、荒井に銃で撃たれて未遂に終わる。
しかし、九条も、麻耶と同じくサデスパーが催眠術にかければ、人質を取る必要すらなく、言うことを聞かせられたのではないだろうか?

それと同時に、デスパーの黒服のひとりが、一郎を助けて荒井たちの側に回る。
それにしても、このコスチュームはエロくて良いなぁ。
ほんと、女優さんの顔が自分好みでなかったことが惜しまれる(しつこい)

五郎「……」
荒井「五郎君!」
黒服がサングラスを外すと、その下からあらわれたのは無論、五郎であった。
五郎がこんな風に変装するのは、珍しいことである。
その後、ノコギリデスパーが超音波発射装置を掴んで、動き出したゴンドラの上に飛び乗ると、

五郎もジャンプして、ゴンドラに両手でぶら下がる格好になる。
怪人「この、この、死ね、死ね!」
その五郎の手を、足で何度も踏みつけるノコギリデスパー。
さすがにこれはスタントだろうと思いきや、

ノコギリデスパーの目線からの次のカットでは、しっかり伴さんが空中のゴンドラにぶら下がっているではないか!
ま、「仮面ライダー」の71話の藤岡さんほどではないが、なかなか凄いアクションである。
もっとも、最初にゴンドラにしがみついていた五郎も、伴さんが演じていたかどうかは分からない。
五郎は結局ゴンドラから浜名湖に墜落してしまい、荒井や九条親子も、ノコギリデスパーたちに見付かり、

怪人「渡五郎は死んだ、今度は貴様たちを片付けてやる」
絶体絶命のピンチに陥るが、そこへお約束のようにイナズマンがあらわれ、ラス殺陣となる。
ノコギリデスパー、イナズマンに「念力パンチ」をお見舞いされて吹っ飛び、

最後は「ゼーバー・イナズマンフラッシュ」を受け、

内浦の礫島(つぶてしま)……だと思うが……をバックに、画面に入りきらないほどの水柱を吹き上げつつ昇天するのだった。
【タイアップの鉄則 その5】 観光名所を、さりげなく画面に映し込め! こうして事件は解決し、麻耶も、ノコギリデスパーの死とともに正気に返るのだった。
しかし、マヤの催眠術はサデスパーに掛けられたのだから、ノコギリデスパーが死んだから解けると言うのは、ちょっと変じゃないか?
ここは、「F」らしく、荒井さんに撃たれて死亡した方が、盛り上がったと思うが。

ナレ「湖のほとりにも安らぎが戻った。だが正義の戦士の前途には、さらに新たな困難が待ち構えているのだっ」
浜名湖の岸に立ち、その美しい湖面を見詰めるイナズマンの勇姿を映しつつ、幕となる。
以上、プロットは良いのに、シナリオの詰めが甘くてそれほど面白いエピソードにはなっていないが、麻耶のエロいコスチューム、ロープウェーのアクション、タイアップのお手本のような数々の演出など、見所の多い力作ではあった。
あと、サブタイトルに「謎の女」ってるあるけど、視聴者には麻耶がどうやってデスパーの手下にされたのか丸代わりなので、謎でもなんでもなかったのが残念だった。
だから、サデスパーに洗脳されるシーンを見せずに、麻耶の荒井たちへの裏切り行為を描いていれば、もっと面白くなっていのではないかと愚考する次第である。
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