第17話「恐怖の帝王 アンドロメダ来る!」(1972年1月23日)
の続きです。

校長に辞表を提出した後、ひかるが、美術室で、かつて戦ったことのあるソクラテス像をいじっていると、旗野先生が血相変えて駆け込んできて、
旗野「どういう訳で辞めるんです? 訳を言って下さい」
ひかる「説明したってわかりっこないわ。ただお別れに来ただけ」
旗野「そんなばかな、訳もなく辞めるなんてナンセンスだ、職場放棄だ、悪質違反だーっ!」 目玉をひん剥いて怒鳴り散らしてから、
旗野「うんにゃあー、もうー、どおして俺はこんな時にこんなことしか言えないんだろう?」
その場で自分で自分の情けなさに愛想を尽かすのだった。
それでも、このチャンスを逃したら後がないとばかり、大勇をふるってひかるの柔らかな手を握り、
旗野「月先生、ひかるさん!」

ひかる「はっ……」
ひかるも、旗野先生の真剣な眼差しにドキッとする。

旗野「思い切って言ってしまおう、
僕はですね!」
そのまま一気に告白してしまえばいいものを、

旗野「うん、まさかお父さん、さっきの僕(の態度)に腹を立てて辞めろと言うんじゃ?」
ふと余計なことに思い至り、さらにそこにタケシが入ってきたので、結局尻切れトンボとなってしまう。
もしこれが本当の最終回だったら、アンドロメダ帝王を追い払った後、ほんとにプロポーズするシーンが見られたのではないかと、実に残念だ。
ここで突然ですが、特撮ドラマにおけるお似合いのカップルベスト10(暫定)の発表です。
1 ひかる&旗野先生
2 高瀬健&葉山真紀(マシンマン)
3 風見志郎&純子(V3)
4 メギド王子&キメラ王女(ダイナマン)
5 一条寺烈&ミミー(ギャバン)
6 東光太郎&二代目さおり(ウルトラマンタロウ)
7 郷秀樹&坂田アキ(帰ってきたウルトラマン)
8 本郷猛&緑川ルリ子(仮面ライダー)
9 ジロー&ミツ子(キカイダー)
10 緑川達也&千恵子巡査(デンジマン)
それはさておき、タケシは、自分の弟のタケゾウがまだ学校に来てないと二人に相談する。
ひかる「まぁ」
旗野「ああ、あいつよく道草食うからな。それとも交通事故か、痴漢か、誘拐か」
タケシ「先生、ろくなこと言わないな」
と言う訳で、旗野先生やひかるは勿論、校長や教頭、タケシの母親も加わって、総出でタケゾウの行方を捜索する事態となる。
だが、何の手掛かりも得られないまま、時間が過ぎて行き、

ひかる「タケゾウくーん!」
ひかるが、ゴミ捨て場のようなところを、子供の名を呼びながら探し回っていると、その前に帝王があらわれる。
しかし、それこそ、8話でやったように、ムーンライトパワーの力で行方を捜せば良いのにと思うのだが。

帝王「別れは終わったな、では、行こう」
ひかる「待って!」
帝王「なにっ、待てだと? 約束が違うぞ、姫」
ひかる「もう一度だけ、小島タケゾウって子が見付かるまで……」
帝王「そんなことか、子供の一人があれを悪戯しておったぞ!」
父親が指差したほうをみれば、そこに、粗大ゴミとして出された大きな金庫が転がっていた。

ひかる「金庫の中? タケゾウ君、タケゾウ君! このままだと窒息しちゃうわ」
すぐ金庫に駆け寄り、必死に扉を開けようとするが、どうしても開かない。
しかし、ひとりで遊んでいて金庫に入ったのなら、外からダイヤルをいじらない限り、鍵が掛かることはないと思うんだけどね。
それはともかく、これも、今までのひかるのキャラだったら、
ひかる「パパ、なんで見てないで止めてくれなかったのよ! もうっ気が利かないんだからっ!」
帝王「すまん」
ぐらいのことは言いそうなもんだけどね。
また、路線変更前だったらムーンライトリングで扉を開けるか、タケゾウを金庫からテレポートさせて簡単に救出していただろうに、

ひかる「アンドロ仮面、ローッ! ムーンライトパワー!」
一旦、変身コンパクトをかざして、アンドロ仮面に変身した後、無駄毛の処理跡もなまめかしい腋を全開にしてムーンライトリングを発動させると言う、まわりくどいことをしなくてはならないのだった。
上級監視員になったと言うのに、前よりむしろ超能力が控えめになっていると言うのはどう考えても変である。
で、アンドロ仮面の力で金庫でも叩き壊すのかと思いきや、ウルトラセブンのように自らの体をミニサイズに変えて、

扉の隙間から内部に入り、じかにダイヤルの歯車を回して鍵を開けるという、七面倒臭い方法でタケゾウを助け出すのだった。
……
スタッフ、なんか力の入れどころ、間違ってません?
ともあれ、次のシーンでは、タケゾウは東西学園保健室のベッドに寝かされ、校医の診察を受けている。

校医「危ないところでした。もう一足遅かったら助からなかったでしょう」
母親「ありがとう、ありがとうございます!」
校医にすがりつかんばかりに泣いて感謝するタケシとタケゾウの母親だったが、
校医「礼を言うなら月先生にですよ、お母さん」

母親「あ、そ、そうでしたわ。あのーあら、あら?」
校医に穏やかに指摘されて、ひかるを目で探すが、いつの間にかひかるの姿が消えている。

子供たち「かぐや姫先生ーっ!」
正夫、ハルコ、進、タケシの4人は、ひかるの姿を求めて学校の外へ飛び出し、周囲を一望できる丘の上からその名を呼ぶが、もう家に帰ってしまったのか、どこにも見当たらない。
正夫「行っちゃった」
進「もう、これきりやめちゃうのかなぁ」
タケシ「やめさせるもんか」

と、タケシの母親も追いついて、
母親「当たり前だよ、タケシ、ろくにお礼も言わないうちに先生に行かれちゃ、あたしゃ、立つ瀬がないよ~」
正夫「おばさん良いこと言うぜ、おい、みんなで月先生追いかけにいくんだ。考え直して貰うんだよ」
ハルコ「そうよ、私、お父さんに文句言ってやる」
進「月先生を僕たちから取り上げないで下さいってね」
正夫「ようし、たとえかぐや姫先生のお父さんが殺し屋だって行くぞ」
まさか相手がアンドロメダの帝王とも知らず、闘志を燃やす正夫たちであった。

一方、ひかる、自分の部屋に戻ってくると、懐かしそうに中を見渡し、
ひかる「この部屋ともお別れだわ……」
しかし、そろそろ宇宙へ帰ろうかと言う段になって、わざわざ着物姿に着替えると言うのもアレなのだが、これはまぁ、「竹取物語」のクライマックスということで、あえて和服にしたのだろう。

ひかる「子供たちとも、学校とも、旗野先生とも……」
ビニールソファに腰掛け、悲しそうにつぶやくひかる。
最後に旗野先生を持ってきた辺り、ひかるもやはり旗野先生のことを愛していたことが窺えて、じんわりと胸が熱くなるシーンである。

バル「姫! 分かるその気持ち、お察しする」
隠し部屋からバルが出てくるが、相手が帝王では、ひかるに慰めの言葉を掛けるのが精一杯であった。
ひかる「もうすぐお父様が迎えに来る。これ以上お別れを延ばす訳には行かないわ」
ひかるもすっかり諦めてしまったようで、顔色も病人のように冴えない。
やがて玄関の戸がガラガラと開く音が聞こえる。
ひかる「お父様だわ……さよなら、バル」
バル「……」
バルの手を掴んで、あっさりと別れを告げて立ち上がるひかる。
同じアルファ星人のバルとはまたいつか会える機会もあるとは言え、長い間一緒だった相棒と別れると言うのに、ひかるの態度はあまりに淡白過ぎるようにも見える。

だが、ひかるがまな板の鯉のような心境で玄関に出てみると、そこにいたのは父親ではあらで、大家の竹取夫婦であった。
竹右衛門「今、学校から電話がありました」
きよ「事情は残らず聞きましたよ。恐ろしいお父さんを持ってあんたも苦労しますねえ」
ひかる「え? あ、あの……」
竹右衛門「ここはワシたちが引き受けた、絶対にあんたを渡しはせん。安心なさい!」
ひかる「あ、はぁ……」
老夫婦の意気込みに、ひかるもとりあえずそう応じるしかなかった。
ま、この辺は、まんま「竹取物語」の終盤とおんなじだよね。
続いて旗野先生、正夫たちも到着する。

旗野「お父上を怒らせたのは僕の責任です。もし、月先生を連れ戻しにきた時には、腹掻っ捌いてぇ、男一匹血の色党! うんにゃああ、僕の誠意を見て貰う!」
旗野先生、用意した包丁を縁側に叩き付けると、座って歌舞伎の見得のような変なポーズを取りつつ、決意のほどを語る。
ひかる「あのー、ほんとに腹切るつもり?」
旗野「切る! 痛そうだけど」
しかし、「男一匹血の色党」ってなんなんだろう? 旗野先生って、たまにこういう訳の分からないことを言う癖があるんだよね。
子供たちは子供たちで、
正夫「先生のパパを怒らせたのは僕の責任だ。責任を取らせて貰う!」
進「クラスメイトの責任は僕たちの責任でもあります!」
ハルコ「どんな怖いお父さんだって、負けません!」 口々に、ひかるの父親と戦うことを宣言するのだった。
ひかる「ありがとう、みんなの気持ちはとても嬉しいんだけど……」
進「嬉しいんなら、先生は黙って見てて下さい!」
正夫「そうだよ、かぐや姫先生は俺たちの先生だ。先生は俺たちで守るんだ!」
ひかるのおずおずした抵抗も、子供たちの迫力に掻き消されてしまう。
そのうち、タケシとその母親が、弓矢などの武器とタケシの造った巨大なパチンコを持って応援に駆けつける。

ひかる「バル、何とかしてよ、早くみんなを帰さないとお父様、本気で怒り出すわ。ねえ、バルぅっ!」
バル「立派である! 偉いのである!」
ひかる「えっ? 誰が?」
バル「みんながである。帝王を暴力団(の親分)と思い込みながら敢然としてます。これ、すべて姫の為! バルは恥ずかしいのである」
ひかる「バルぅ!」
ひかる、思案に余ってバルに助けを求めるが、バルは逆にそんな地球人たちの勇気と健気さに感激する始末だった。

さて、子供たちが少ない家具でバリケードを作っていると、背後にバルとひかるがあらわれる。
バル「諸君!」

進「あ、なんだ、バル!」
ハルコ「いつ来たの、バルちゃん?」 私事で恥ずかしいが、管理人、このハルコちゃんの台詞が可愛くてしょうがないのである。
バル「遅くなって済まんのである」
ハルコ「なんのことぉ?」 私事で恥ずかしいが、管理人、このハルコちゃんの台詞が可愛くてしょうがないのである。
バル「かく言うバルも、諸君と共に姫を守らんとするものである!」

進「ありがとう、そうこなくっちゃ!」
ハルコ「仲間が増えたわ!」
帝王の恐ろしさも知らず、無邪気に喜ぶ子供たちの歓声に、ひかるは「もう知らない!」と、拗ねたようにソッポを向いてしまう。
と、急に空が暗くなったかと思うと、帝王が竹薮に囲まれた中庭に降臨する。
帝王「ううっりゃっ、小癪な地球人どもめ、姫を渡さぬと言うのかーっ? ううりゃーっ!」
ここに、アンドロメダ帝王と地球連合軍との戦いの火蓋が切って落とされたのである!
落とされたのだが、映像としては、中庭でひとり気張って色んな掛け声を出す帝王と、地震やら雷やら炎やらの攻撃を受けつつ、弓矢やパチンコで反撃する旗野先生たちの様子が交互に映し出されるだけで、盛り上がらないこと甚だしいのである。
奮闘する旗野先生たちだったが、炎で離れを取り囲まれては手も足も出ず、やむなく窓を閉めて、ソファやテーブルでひかるの体を覆うように隠し、その周りに腕を組んで立つのがせめてもの抵抗だった。

バル「ワシも、仲間に入るのである」
旗野「ありがとう」
バルもすかさず旗野先生の右側に立ち、輪に加わる。
何の気なしに応じた旗野先生、一瞬の間を置いて、

旗野「なんですか、君は?」
バル「何でも良い、説明の暇はないのである」
旗野「すまん」
緊急事態なので、旗野先生もあえて細かいことは気にせず人間バリケードを続ける。
ちなみに15話では、「地球人に姿を見せる」=「平和監視員を失職する」ほど厳しいルールだったのに、平気でバルがその姿を晒していることに、視聴者も戸惑ってしまいがちだが、これは撮影順と放送順が違うことによって引き起こされる現象で、

帝王の超能力で地震が起きた際、14話に出て来た巨大な鏡餅が映っていることからも分かるように、本来は、(バルが子供たちに姿を見せた)14話の次に放送されるべきエピソードなのである。
それはともかく、迫り来る炎に、部屋の中はサウナのような暑さとなる。

進(先生を助けるんだ!)
ハルコ(頑張るわ、私、熱くたって苦しくったって!) タケシ(俺たちの先生を渡すもんか!)
正夫(そうだ、かぐや姫先生は俺たちの先生だ!)
だが、汗だくとなりながら、子供たちは心の中で己を鼓舞して、その苦しさに耐えるのだった。

と、姿が見えない状況を利用して、ひかるがアンドロ仮面に変身し、父親の前に瞬間移動する。
ひかる「あの子たちを置いて、私に他の星へ行けと言うの? そんなわからず屋なら、私はお父様の命令には従いません」
帝王「姫!」

ひかる「力尽くで連れて行くと仰るなら、戦います。私は地球を離れる訳には行きません。子供たちのために……ムーンライト」
ひかる、父親と一戦交える覚悟でムーンライトリングを発動させようとするが、その時、遠くから車や大勢の子供たちが近付いてくる音が聞こえ、途中で唱えるのをやめる。
車は校長先生のもので、教頭と一子、三郎たちも同乗していた。
また、ひかるのクラスの子供たちも、プラカードやのぼりを掲げたデモ隊のような格好で、ひかるの家に向かって練り歩いていた。
無論、彼らもひかるを引き止めようと言うのである。
それを見た帝王は、急に落ち着きを取り戻し、

帝王「負けた……姫」
ひかる「え」
帝王「地球人は言う、姫の為に。姫は言う、地球人の為に……まことに平和監視員として理想的な姿、その気持ちを忘れるなよ」
ひかる「お父様!」
帝王「帰ってやれ。地球の子供たちのところへ」
ひかる「お父様……」
ひかる、深々と頭を下げながら、再び瞬間移動し室内に戻る。
しかし、ひかるを守ろうとしている点では、旗野先生や正夫たちも同じだと思うのだが、校長や他の子供たちの抗議の声を聞いた途端、帝王が急に考えを改めるというのは、なんか釈然としないんだよね。
ともあれ、帝王が宇宙へ帰ると共に空は明るくなり、ひかるも元の姿に戻って、バリケードの中から出て来る。
ひかる「ありがとう、お陰で学校にとどまることが出来ました」
正夫「わーい!」
タケシ「ばんざーい!」
ラスト、旗野先生や子供たちと一緒に、家から嬉しそうに駆け出してくるひかるの笑顔を映しつつ、幕となる。
さて、冒頭に書いたように、次回から、吸血魔人クモンデスと言う敵が登場し、最終話までアンドロ仮面とクモンデスの戦いが描かれる、完全な特撮アクションヒロイン番組に移行してしまう。
一応、18話以降もレビューは続けるつもりだが、あまり気が進まないなぁ。
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