第5話「二大怪獣 東京を襲撃」(1971年4月30日)
ウルトラシリーズ全体でも人気の高い怪獣、グドンとツインテールが登場する、第6話との前後編エピソードである。
冒頭、地下ショッピングセンターの工事現場の脇を通りがかった次郎たちが、岩石とも化石ともつかぬ、巨大な瓢箪型の不思議な物体を発見したことがすべての始まりだった。
次郎はそれが怪獣の卵ではないかと考え、MATにいる郷に電話して伝える。
時を移さず、郷と岸田隊員が、マットビハイクルでやってくる。
早く家に帰りたい岸田隊員は、それにスコップを叩き付けてもビクともしないのを見てただの岩だと決め付けると、念の為、マットシュートで熱線を浴びせ、さっさと引き揚げようとする。
だが、郷が表面に耳をくっつけると、中から鼓動のような音が聞こえてきた。

郷「岸田隊員、この岩石、もっと調べる必要があるんじゃないでしょうか」
岸田「その必要はない、さぁ、行くぞ」
この頃のMATは、まだ一匹狼の集団のようにギスギスした人間関係が特徴で、本部に帰還してからも、二人の意見の対立は続く。

岸田「郷、俺の処理の仕方が不満なのか」
郷「もっと慎重な配慮が必要だったと思います。マットシュートで撃つだけで良かったかどうか」
岸田「じゃあ、戦車でも出動させろと言うのか」
郷「そうではありません。同じ処理をするにしても、もっと科学的な調査を……分析が必要だったんじゃないでしょうか」
岸田「たかが石ころひとつをあっちこっち持って回れと言うのか?」
相手が先輩でも、物怖じせず堂々と意見を述べる郷に、岸田隊員も苛立ちを押さえ切れず、声を荒げる。
郷「必要があるならそうすべきです」
岸田「なにぃ」
加藤「おい、二人ともそういきり立つな」
そこへ加藤隊長があらわれ、穏やかに仲裁に入る。

加藤「いいかね、我々の仕事は、即断即決、臨機応変に対処しなければならない局面が多い。その場合、隊員一人一人の判断を信頼するしかない。岸田はその物体を無害なものとして判断した。私は岸田の判断を信じる、お前も信じてやれ」
郷「……」

岸田「そんなに俺が信用できなければ、自分で行って調べろ!」
南「岸田、そうムキになるな」
それにしても、中盤以降の和気藹々とした、完全な馴れ合い体質のMATメンバーのやりとりと比べると、まるっきり別の番組のようなソリッドな雰囲気である。
そこへ緊急連絡が入る。

丘「隊長、第二採石場で異常な地震が続いているそうです」
加藤「上野、南、偵察に行け」
ここでちょっと丘隊員の綺麗なお顔でも見て、クールダウンしましょ。
ちなみにこの5話から、丘隊員の髪型がストレートのロングからおばさんっぽい短髪のパーマになってしまうのが残念である。
ま、「魔女先生」のひかるも、同じように髪型が直毛→パーマに変わっているので、当時はそっちの方がウケたのだろう。
やがて、採石場の岩山の表面がぼろぼろと崩れ落ち、その内部から、大量の噴煙を巻き上げつつ、トゲのついた鎧のような皮膚を持ち、両手が細長いムチのようになった、素晴らしいデザインの怪獣グドンがあらわれる。
上野と南のMATジャイロが直ちに攻撃を開始し、知らせを受けた郷と岸田のMATアローもすぐ応援に飛んでくる。
グドンの姿をまじまじと見ていた岸田隊員が不意に叫ぶ。

岸田「そうだ、こいつはグドンだ!」
郷「え、知り合いなんですか?」 岸田「ちゃうわ!」 じゃなくて、
郷「グドン? MN爆弾をかましましょう」
岸田「なるだけ正面に向かって接近する。顔面の辺りを狙って発射しろ」
このまま攻撃が成功していれば、郷と岸田の関係も修復していたかもしれないが、例によっていぢわるな上原脚本はそれを許さず、レバーを引こうとした瞬間、郷の視界に、地面を走る女の子の姿が飛び込んでくる。
郷(発射しちゃダメだ……)
普通、こんな場合、「あっ、女の子が!」とかなんとか叫ぶと思うが、何故か郷は心の中で自分に言い聞かせるだけで、岸田隊員の指示に背いて、レバーを引こうとしない。
岸田「どうして発射しない? 郷、発射しろ!」
郷「ダメです!」

結局、MATアローは空しくグドンの顔の前を素通りする。

岸田「バカヤロウ、何故発射しない?」
郷「子供がいたんです」
岸田「何処に?」
郷「あそこです」
郷、さっきの場所を指差すが、あいにく、既に女の子の姿は消えていた。
郷たちがもたついているうちに、グドンはさっさと地中に潜って逃げてしまう。
4人が本部に引き揚げると、またしても岸田がネチネチと郷を非難する。
岸田が怒るのも無理はないが、同じようなウツなシーンが続くのは、いささかウンザリさせられる。
岸田「郷は俺に反感を持ってた。岩石の一件以来、俺に反発する機会を待ってたんだ」
郷「違います、俺は本当に……」
上野「俺は郷を信じる。そりゃ怪獣を逃がしたのは残念だけど、郷の取った処置も正しいと思います」
珍しく(?)上野隊員が郷の肩を持ってくれるが、

岸田「そんな奇麗事で誤魔化そうとしてもそうはいかんぞ、郷は俺個人に対する反発から、MATとしての任務を怠ったんだ。隊長、郷に対する断固たる処置をお願いします」
南「おい、岸田、何もそこまで……」
岸田「いや、この際きちんとしておいたほうがいいんだ」
温和な南隊員がなだめるが、岸田隊員も頑固で、一歩も引こうとしない。
郷は郷で、

郷「俺は懲罰されても構いません、しかしパトロール中の岸田隊員の判断は甘かったと思うし、それに俺は今でも採石場で子供を見たと言う確信があります!」
言わないでいいようなことまで口にして、

岸田「貴様ぁ!」
岸田隊員の怒りに油を注いでしまう。
ま、この辺はいかにも、郷の未熟な若者らしさが出ていてグーである。
……そう言えば、エドはるみは今何をしているのだろう?(知るか)
加藤「やめろ! ……郷、君は今日、岸田の命令に背き、怪獣を撃ち損じた、従って三日間のシッコ禁止を命じる」
郷「……」
南「そりゃひどい!」
……間違えました。
加藤「やめろ! ……郷、君は今日、岸田の命令に背き、怪獣を撃ち損じた、従って三日間の自宅謹慎を命じる」
郷「……」
南「そりゃひどい!」
だが、王様ならぬ隊長の命令は絶対なので、郷は涙を飲んで従うしかなかった。
で、正直、「またぁ?」と言う感じだが、郷はズタ袋を提げた私服姿で坂田のところへ戻ってくる。

郷「こんにちは」
坂田「冴えない顔して……だいぶ謹慎が堪えてるようだな」
郷「どうしてそれを?」
坂田「加藤隊長から連絡があった」
加藤隊長、たまに小学校の担任みたいな過保護なことをするのだ。
郷「俺は確かに(子供を)見たんです! それを……くそぉ」
坂田「俺にも経験がある。小学校4年の時だったけなぁ、俺は職員室の窓ガラスを割ったと言うんで、廊下に立たされた。いくら俺じゃないといっても信じてくれないんだなぁ。そこで俺は一週間学校に行かずに抗議した。とうとう一週間目に真犯人のガキ大将が名乗り出たがね」
郷「くそぉ……岸田の奴ぅ」
坂田「今の話聞いてた?」 途中から嘘であるが、坂田はそんな昔の逸話を語って聞かせると、

坂田「少女を見たんなら、どこまでも見たと押し通すべきだ。三日や四日の謹慎喰らったって、胸を張ってればいいよ」
実に心強いアドバイスをしてくれる。
しかし、郷は岸田にも加藤隊長にも、「子供」としか言ってないのに、なんで部外者の坂田が、郷が見たのが「少女」だと知ってるのだろう?

郷「ええ、そうします!」
これで何日でも堂々と休めるぞと、満面の笑みを浮かべる郷であった。
……と言うのは嘘だが、こういうシーンを見ると、やっぱり「新マン」には、坂田やアキの存在が必要不可欠なのだと感じる。
そこへ、そのアキが女友達二人を連れてあらわれる。

アキ「あら、郷さん来てたの、ちょうど良かったわ、そこのショッピングセンターまで付き合って」
郷「女の買い物は長いからなぁ」
アキの誘いに露骨に嫌な顔をする郷。
女友達(別名・引き立て役)からも、アキが郷にシャツをプレゼントしたいと言ってるから是非付き合ってあげて欲しいと頼まれるが、郷は謹慎処分を口実にして断ってしまう。

アキもそれで駄々をこねるほど子供ではなく、諦めて友達と出掛けようとするが、そこでちょっとした地震が起こる。
アキ「このところ地震が多いわねえ」
郷「おい、アキちゃん! そこのショッピングセンター行くのやめろよ!」
郷、急に胸騒ぎを感じて、発作的にアキに忠告する。
アキ「あら、どうして?」
郷「別に……その、ただ、そんな気がするんだ」
だが、郷にも、あの卵のような物体(あの後、地中に埋められた)の正体ははっきりとは分かっておらず、具体的な理由を説明することは出来なかった。
アキ「郷さんに合うサイズ、その店でしか売ってないもの」
そう言って、アキは予定通り地下ショッピングセンターに行ってしまう。

郷(あの埋められた岩石……)
CM後、案の定と言うべきか、アキたちが紳士服売り場でショッピングをしていると、さっきより強い揺れが襲ってきて、三人は慌てて店から逃げ出す。

地下道は、逃げ惑う通行人や客たちで溢れ返るが、70年代前半の特撮の困るところは、こういうエキストラだらけのモブシーンでも、ミニスカの女の子がたくさん混じっているので、いちいちコマ送りしてチラがないかチェックしないといけないことである。
ま、別にしないといけないことはないのだが……

で、
残念なことにさいわいなことにチラはなかったのだが、その代わりに、人とぶつかりそうになって、思わず右足を後ろにピョンと伸ばして、ちょっと面白いポーズになるおじさんを発見することが出来た。

ついでに、そのおじさんとぶつかりそうになった女の子が、ウルトラシリーズでは珍しく、「笑いながら逃げている」ことにも気付いた管理人であった。
それにしても、特撮も凄いが、この大量のエキストラを動員したパニックシーンの出来も見事である。

続いて、ショッピングセンター付近の道路が地割れを起こして盛り上がったかと思うと、その下から、巨大な卵が出現し、怪しい光を放つ。
そう、郷が睨んだとおり、あれは岩石ではなく怪獣の卵だったのだ。
……って、卵が大きくなるって、なんか変じゃないか? しかもこんな短期間に。
ともあれ、騒ぎを聞きつけて郷もすぐ地下ショッピングセンターの入り口までやってくるが、既に入り口は、土砂やコンクリートの破片によって完全に塞がれていた。

郷「中に誰かいるんですか?」
男「は、逃げ遅れたらしいんです。助けを呼んで来ます」

地下道には、アキたちも閉じ込められており、しかもアキは怪我をしたのか、意識不明の状態だった。
やがて郷のいるところに坂田や次郎、消防団員も応援に駆けつけ、みんなで必死になって通路を塞いでいる障害物を取り除こうとする。
一方、MAT本部に岸田防衛庁長官が突然姿を見せる。
演じるのは日本映画界の重鎮・藤田進さんである。佐原健二さんをまるでエキストラのように引き連れて入場する辺り、いかにも大物だど!と言うオーラが漂っている。
そしてその名前からも分かるように、岸田隊員のおじさんでもあった。
でも、岸田隊員、いちいち角立つ性格ではあるが、おじさんの権威をかさに来て威張り散らすようなことは一切ないので、その点、立派である。

長官「岸田隊員、あの卵を放っておけばどういうことになるか、報告したまえ」
岸田「はい、えー、第二採石場に出たグドンと、あの卵とは関係があると言うことです。この文献のとおりであれば、あの卵はツインテールの卵と思われます。グドンはツインテールを常食としていたんです」
長官「ふむ」
岸田隊員、一歩進み出て、外国語で書かれた文献(オックスフォード版の怪獣図鑑)を広げて説明する。
いや、お前、エラソーな顔して講釈垂れてるけど、その卵を岩だと決め付けて見逃した責任はどう取るつもりなんだ?
それはともかく、ツインテールが孵化する前に卵を破壊せねばならないと言うことで、長官はMN爆弾を使用するよう加藤隊長に命じる。
と、そこへ緊急招集を受けた郷が飛び込んできて、

郷「待って下さい、MN爆弾の使用を待って下さい」
岸田「何を言うんだ?」
郷「卵のある地下道には5人の人間が生き埋めになっているんです。彼らの救出が終わるまで、MN爆弾の使用を待って下さい!」
長官「MN爆弾は地上で使うのだ、地下に閉じ込められているものなら心配することはない」
郷「しかし、もしものことがあっては……」
長官「東京1000万都民の安全を守る為だ、この際、5人のことは忘れよう」
郷「5人も1000万人も命に変わりはありません!」
上野「そうだ、まず5人を救出してからMN爆弾を使用すべきだと思います」
郷がコワモテの長官に対しても怖めず臆せず異議を唱えると、調子に乗った上野隊員もその尻馬に乗って反対意見を口にする。

長官「君たちはワシの命令に反抗するのか?」
隊員「……」
長官「長官の命令に背くものがどうなるか、知っておろうな?」
コワモテの藤田進さんが言うと、なんか逆さハリツケにでもされるんじゃないかと思ってしまうが、
郷「知っております」
郷は自ら隊員バッジを毟り取ると、長官の前に置いて退室する。
そう、一体何度目だ? と言う感じだが、MATを辞めると言う意思表示であった。
と、上野隊員が通路まで追いかけてきて、

上野「お前MATを辞める気か」
郷「辞める、あんな長官の元で働けるか!」
上野「何を言う、甘ったれたこと言うんじゃないよ」
郷「何が甘ったれだ?」
上野「そうじゃないか、何か気に食わないことがありゃ、すぐ辞めるのか? 腹が立つのはお前だけじゃない。お前、何の為にMATに入った? 帰るところがあるからって、これじゃ無責任過ぎるじゃないか」
郷「……」
ええっ、上野隊員ってこんな真面目なキャラだったっけ? と目からウロコが落ちる思いだが、この件に関してはまったく上野隊員の言うことが正しく、郷も言葉に詰まるが、かと言っていまさらのこのこ長官の前に戻る訳にも行かず、そのままMATを出て行ってしまうのだった。
もっとも、その長官は、改めてMN爆弾の使用を厳命した後、
長官「なぁに、いざと言う時は必ずウルトラマンが来てくれるさ、心配いらんよ。どわっはっはっはっ」 仮にも防衛軍のトップに座る人間にあるまじき、最低最悪の台詞を口にする。
口に出しては何も言わなかったが、加藤隊長も心の中で呆れていたのではないかと推測される。

岸田「長官の命令どおり、直ちに出動しましょう」
加藤「5人の救出が終わってから行動に移る」
岸田「隊長、長官命令に背くつもりですか」
加藤「私はMATの隊長だ。MATの犯した不始末はMATのやり方で収拾をつける」
果たして、加藤隊長も、堂々と長官命令を無視すると言い出す。
それにしても、この一連のシーンの骨太の人間ドラマ、実に見応えがあるが、メインターゲットのちびっ子たちには不評だったろうなぁと容易に想像がつく。
大人の目から見ても、これだけ毎回のようにメンバー間でいざこざが起きたり、主人公が孤立したりするのは、見ていてつらいものがある。
その後、色々あって、

とうとうツインテールの卵が割れて、怪獣が孵化してしまう。
この、殻と殻の間に、粘着質の薄い膜のようなものが張っているのが、いかにもリアルである。
ここでやっと郷がウルトラマンに変身し、ちびっ子たちが待ちに待ったバトルとなる。

しかし、ツインテールって、もっと愛嬌のある怪獣のイメージだったが、実際は、足(?)についている顔は、
不貞腐れたおっさんのような顔だし、頭部(?)から生える二本の触手と上半身(?)をビクビク波打たせながら、真っ直ぐウルトラマンに突進してくるところは、はっきり言ってかなり不気味である。

それにしても、このショットなんか、ほんとに実景じゃないかと思えるくらいにリアルで、凄いとしか言いようがない。
ウルトラマン、相手の特異な体型を前に、どこから攻めていいのか分からず、

逆に、背後から触手を首に巻かれ、足首を巨大な口で噛まれ、身動きが取れなくなる。

ここでウルトラマンが握り締めた両手を顔の前でクロスさせ、

ウルトラマン「ヘアーッ!」
気合と共に両手を開くと、そこから眩い閃光が発射され、

取り付いているツインテールの体に電流が走ってスパークすると言う、めっちゃカッコイイ反撃を繰り出す。
……
ここまで来ると、もはやどんな賞賛の言葉を浴びせ倒しても足りない気がする。
まさに、国宝級の特撮である。
さて、夕陽の中、なかなか決定打を与えられず、早くもカラータイマーが点滅を始めるウルトラマンだったが、岸田隊員が恐れていたように、ツインテールのニオイに釣られて、地中からグドンまであらわれる。

夕陽の中、二大怪獣に挟まれて苦戦するウルトラマンの姿を映しつつ、6話へ続くのだった。
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