第40話「ユーレイ団地の罠 」(1989年8月6日)
とあるマンモス団地で、様々な怪奇現象が発生する。

それは、主婦が乗り込もうとしたエレベーターの隅に、分かりやすい女の幽霊が立っていて、恨めしげにこちらを睨んだり、

階段の踊り場に、トウの立った花子さん風女の子+のっぺらぼうと言うハイブリッドなお化けが出て子供たちを驚かしたりすると言う、全体的に、昭和の香り漂う古式ゆかしい心霊現象の数々であった。
幽霊騒ぎに肝を冷やす住人たちだったが、

玲子「どうせデマか、見間違い。毎年お盆が近付くと決まってこの手の話が出るのよ」
ジョー「ああー」
仕事でその団地を取材に行かなければならなくなった玲子は、いかにも気乗りしなさそうに切って捨てる。
玲子「いくら仕事だからってうんざり! クライシスの本格的な攻撃が開始されたって言うのに……」
仕事どころではないと言わんばかりの口調で焦燥を滲ませる玲子。

ま、その割りに、お化けの仮面をつけて玲子を驚かせた吾郎を、今度は七七子が驚かせ、その吾郎を玲子がとっちめるという、お約束のじゃれあいを演じるその姿からは、緊張感のカケラも感じられないのだった。
なにしろ、クライシス、弱いからね……
一方、そのクライシスのクライス要塞では、ダスマダーががみがみとジャーク将軍と四大隊長に雷を落としていた。

ダスマダー「度重なる戦略の失敗に、皇帝陛下のお怒りは最早頂点、査察官であるこの私にまでその矢は向けられつつある! 即刻お前たちを処刑……」
ゲドリアン「ヒッ!」
ダスマダーの鋭い声に、思わずたじろぐ4人だったが、
ダスマダー「……しても良いのだが、それだけでは皇帝陛下に対して申し訳が立たん」
ジャーク「なぁにが言いたいのだ?」
ダスマダー「(今後)地球攻略の為の新しい戦略の立案・実行は、このダスマダーの指揮の元に発動される!」
ジャーク「なにぃ」
指揮権剥奪とも取れるダスマダーの決定に、剛腹なジャーク将軍も思わず唸り声を上げる。

マリバロン「無礼なっ!」
ガテゾーン「査察官の分際で」
ゲドリアン「我々を指揮するだとぉ」
当然、マリバロンたちはぎゃんぎゃん騒ぎ立てるが、
ダスマダー「問答無用! 最早お前たちに拒否する資格はないっ」
本来なら、全員処刑されていても文句の言えない彼らの抗議など、ダスマダーは歯牙にもかけない。
ボスガン「査察官殿の言われるとおりだ、ここは我らも潔く非を認めて、指揮下には入ろうではないか」
と、ここでボスガンが思い掛けないことを言い出す。
マリバロンたちは、ジャーク将軍を裏切るつもりかと色めき立つが、
ボスガン「どうとでも取れ、私は自分の力を十二分に評価してくれる指揮の下で働きたい」
ボスガンは平然と言ってのけると、挑むような目でジャーク将軍を見遣る。
ジャーク将軍、忌々しそうにボスガンの顔を睨んでいたが、ふてくされたように背を向けると、

ジャーク「好きにするが良い、誰が指揮を取ろうと、我らの使命は地球の攻略、それだけは忘れるな、ボスガン、いや、ダスマダー」
ダスマダー「言われなくとも分かっている。行こうか、ボスガン」
ボスガン「は」
二人が退出した後、またマリバロンたちが騒ぎ出すが、
ジャーク「ボスガンは余を裏切ってはおらん」
マリバロン「はぁ?」
ジャーク「ダスマダーめ、貴様ごときの勝手にはさせん」
どうやらボスガンは、ジャーク将軍の意を受けて、わざとダスマダーの側についた芝居をしているだけらしい。
一方、例の団地では、幽霊騒ぎに恐れをなして団地から引っ越していく人が後を立たず、文字通りゴーストタウンの様相を呈し始めていた。
その様子を最上階の通路から見下ろしているダスマダーとボスガン。

ダスマダー「どうやら時間の問題だな、この場所から人間どもの姿が消えるのは」
ボスガン「そしてクライシス帝国からの移民団が、地球の環境に慣れた後の、最終的な落ち着き先とする」
ダスマダー「ここだけでも1万人の収容が可能だ。これを全国的に広めていけば……」
ボスガン「さすが査察官殿、戦略のスケールも大きい」
ダスマダー「お世辞は似合わんぞ」
ボスガン「何を言われる? 私はただ正直な感想を……」
ダスマダー「ふふ」
しかし、ダスマダー、「全国的に広めていけば」と言ってるけど、団地から出て行った人たちは、別の団地やアパートへ移って行くのだから、そんなことを全国で行っていたら、そのうち空き部屋が枯渇して、引っ越し先がなくなってしまい、仕方なく幽霊団地に住み続けることになるのではないだろうか?
幽霊が出ると言っても、別に実害がある訳でもないしね。
それはともかく、クライシスの悪の人たちって、一般的な悪の組織と違って、ただ闇雲に地球を滅ぼしたり、人類を皆殺しにしたりすれば良いと言うわけではなく、本国からの50億の民を移住させなくてはならないのだから、はっきり言って割に合わない仕事だよね。
その困難さが、四大隊長や怪人の弱さと相俟って、ますます浮き彫りになってくると、逆にクライシスの作戦を応援したくなってくるのは、管理人だけではないと思う。

ボスガン「お、これは、地球の環境に適応する為の強化細胞の」
ダスマダー「増殖装置だ。既に8000人の強化細胞が作り出されている」
続いてダスマダー、地下に設けられた施設で目下増殖中の強化細胞をボスガンに披露する。
と、監視モニターに、団地から逃げ出す人たちを撮影している玲子の姿が捉えられる。
ボスガン「あれは白鳥玲子」
ダスマダー「どうした、ボスガン、何をうろたえている? あの女の背後にいる南光太郎、いや、RXがそんなに怖いか?」

ボスガン「何を言うか、この私に怖いものなどない!」
ダスマダー「……あ、ゴキブリ」
ボスガン「ヒィイイッ!」 その玲子、血相変えてヘリコプターの整備をしていた光太郎のところへ駆け込むと、空中にジャーク将軍の姿がはっきり映り込んだ、団地の写真を見せる。
玲子「クライシスよ、幽霊騒動にはクライシスが絡んでたのよ、きっと」
さらにジョーもやってきて、例の団地で、元の住民が引っ越した後の入居者が、それを待っていたかのようにどんどん決まっていると告げる。
ジョー「こりゃひょっとすると」
光太郎「多分、その新しい入居者ってのは、クライシス本国からの移民団だ」
彼らはあっさり今回の作戦の目的を見抜くが、

光太郎「しかし、あのジャーク将軍が、こんなに無用心にレンズの前に身を晒すなんて……どう考えてもおかしい」
思慮深い光太郎、これには何か裏があるのではないかと警戒する。

そんな中、アジトの司令室に突然、ジャーク将軍があらわれる。
ボスガン「将軍、直接おいでにならずともいずれご報告に参りましたのに」
ジャーク「なるほどな、これがダスマダーめの戦略か」
ボスガン「将軍のご命令どおり、奴に従うふりをして引き続き監視を……万が一、我ら一同を亡き者にしようなどとする動きがあったときは、即座にこの手で!」
ジャーク「うむ、頼むぞ、ボスガン」
前述したように、やはりボスガンは最初からジャーク将軍の命令で動いていたことがはっきりする。

その後、地下道を歩いていたジャーク将軍の前に、他ならぬ、ダスマダーが立ちはだかる。

ヒゲの剃り跡も青々としたダスマダー、すべてを見透かすような鋭い眼差しでジャーク将軍を睨み据える。

ジャーク「むうう」
ジャーク将軍も立ち止まり、ダスマダーの顔を凝視する。
しばし、無言で立ち尽くし、ガンの飛ばし合いをする両雄。
すわ、ここで一戦交えるつもりかとにわかに緊張が高まった次の瞬間、

ヒゲの剃り跡も青々としたダスマダー、不意に会心の笑みを浮かべ、手を振って合図すると、

なんと、ジャーク将軍がチャップ(戦闘員)の姿に変わったではないか。
そう、狡知に長けたダスマダー、ニセモノのジャーク将軍を近付けてボスガンを油断させ、その魂胆を残らず吐き出させてしまったのだ。
これには、オンエアを見ていた自分もすっかり騙され、心地よい敗北感を味わったものである。
あまりにそのトリックが鮮やかだったので、最近DVDを見返した時も、ころっと騙されたほどである。
ま、単に管理人の記憶力が悪いと言うことなのかもしれないが……
ダスマダー「この私を欺こうなど笑止千万、いずれこのカタは付けてくれる」
戦闘員「白鳥玲子のカメラにもわざと映ってやりました。ダスマダー様の罠にRXがかかってくるのももうすぐかと」
ダスマダー、過去の四大隊長(およびショッカー)の失敗を教訓とせず、戦略の遂行とライダー抹殺とを同時に果たそうと、欲張りなことを考えていた。

CM後、団地に潜入した光太郎に、幽霊やのっぺらぼうなど、トラディショナルな夏の風物詩が次々と襲い掛かってくる。
その変幻自在の攻撃に翻弄される光太郎だったが、RXに変身してキングストーンフラッシュを放つと、あえなく戦闘員の姿に戻る。
そう、怪奇現象はすべてチャップたちの仕業だったのである。
無論、ボスガンもそんな攻撃でRXを倒せるなどとは思っておらず、

例によって怪魔獣人大隊「最強の戦士」ガイナジャグラムを投入する。
ビジュアル的にはかなり期待できそうな怪人であったが……

一方、彼らの戦いは、団地のあちこちに設置されたカメラで多角的にモニターされており、その映像から、ダスマダーの用意した怪魔コンピューターが、RXの戦闘データを徹底的に収集・分析する。
ガイナジャグラム、素のRXにはそこそこ通用したが、ロボライダー、バイオライダーにフォームチェンジされると手も足も出ず、

バイオブレードで逆袈裟斬りを決められ、

あっけなく撃破される。
……
よ、弱い、いくらなんでも弱過ぎる。
思うに、クライシスの怪人がどいつもこいつも弱いのは、四大隊長が、いつまで経ってもロボライダー、バイオライダーに対する対策を怠っているからではないだろうか。
なにしろ30話では、RXがロボライダーに変身するまで、マリバロンもガテゾーンもそのことを
すっかり忘れていたくらいだからね……
それこそ、素のRXはともかく、ロボライダー専用、バイオライダー専用の怪人を作り出して、フォームチェンジにあわせて繰り出すぐらいことをしなければ、永久にクライシスの勝利は望めないだろう。
もっとも、ダスマダーもそれは十分承知の上で、あくまでガイナジャグラムは捨石として利用したに過ぎず、

戦いの直後、素のRXに戻った瞬間、団地の上部に設置してあった二つのパラボラアンテナのような装置から、同時に強烈なレーザー光線が照射され、RXの腹部を直撃する。

この不意打ちで、RXは、太陽エネルギーを蓄積する重要な器官サンバスクを破壊されてしまう。

そこへ颯爽とあらわれのが、ダスマダーであった。
ダスマダー「お前の動きはすべて怪魔コンピューターによって分析された」
RX「なにっ」
ダスマダー「そして割り出したのだ、RXを倒すにはそのエネルギーを叩くべし、とな」

ダスマダー「しかもお前はガイナジャグラムとの戦いでエネルギーを消耗していた。叩くのは簡単だった。戦略の成功を祝う宴にRX、貴様の首を供える。皇帝陛下もさぞお喜びになるであろう、これで査察官としての私の地位も安泰、いや、それ以上の地位に登ることも……」
強くて賢く、その上美形で野心家の、悪の組織の幹部としては非の打ち所のないダスマダー。
このシーンを見て、賞味期限の切れたジャーク将軍たちにはもっと早い段階で退場してもらって、さっさとダスマダーを新しい指揮官にし、四大隊長も(マリバロン以外)すべて入れ替えて、敵のメンバーを一新していれば、この番組ももう少し面白くなっていたのではないかと、今更ながら感じた。
また、そうすれば、最後にダスマダーの正体が○○だったと判明しても、すんなり納得できるからね。

しかも、アクション俳優の松井さんが演じているので、アクションシーンも切れ味鋭くて、「絵」になるのだから、言うことなし。
ダスマダーの強烈な蹴りと斬撃に、一転して劣勢に立たされるRX、番組開始以来、最大のピンチであったが、

その時、頭上に輝く太陽がきらめいたかと思うと、七色の巨大な光の柱が落ちてきて、RXの体を包み込み、激しい爆発を起こす。
ダスマダー「うわっ」
思わずたじろいたダスマダーが見たものは、

すっかりサンバスクが元通りになって、全身から光を放つRXの勇姿だった。
ダスマダー、部下に命じてしつこくレーザービームを放ってサンバスクを破壊しようとするが、そこへ響子ちゃんが乱入してきて、矢を放って発射装置、ならびに強化細胞培養器をメタメタに破壊してしまう。
ボスガンもそこにいたのだが、10代の女の子の攻撃に右往左往するだけなのが、相当に情けない。
ダスマダー「おのれぇ、どういうことだ、RX、エネルギーを絶ったのに!」
予想外の展開に、歯噛みして悔しがるダスマダーに対し、

RX「キングストーンだ。たとえすべてのエネルギーを失っても、キングストーンがある限り、俺は蘇る。何度でも!」
答えになってない答えを返すRX。

ダスマダー「……」
なんか、とても納得できない顔になるダスマダーさん、気持ちは分かる。
「RX」のつまらなさは、クライシスの弱さに加え、RXのあまりの無敵ぶりにも起因しているように思う。
基本無敵の上に、「復活の石」を無限に使えるのだから、クライシスに負ける筈がない。
ダスマダー、それでも踏み止まって戦い続けるが、

ダスマダー「あ、ああああーっ!」
動揺した状態では素のRXにも勝てず、リボルケインで貫かれ、

怪人同様、爆死してしまう。
ただし、その際、黒い煙のような塊が抜け出し、空の彼方へ消えて行った。
目障りなダスマダーが消えて、清々するジャーク将軍たちだったが、

それくらいで大幹部が死ぬ筈がなく、ダスマダーの笑い声と共に黒い塊が降って来て、ダスマダーの姿になる。
ダスマダー「肉を斬らせて骨を断つ、RXのうち懐に入ることによって私は奴を倒す為のあるものを手に入れた」
ガテゾーン「なんだ、それは?」

ダスマダー「RXのすべての攻撃パターンと機能を改めて私は怪魔コンピューターに分析させた、勿論、あのキングストーンについてのデータも含めてだ!」
水戸黄門の印籠のように、得意げにディスクを披露するダスマダー。
だが、ジャーク将軍は悔しいくらいにマイペースで、ダスマダーが行った後、
ジャーク「直ちに次の戦略会議を開く!」
と、やる気だけは必要以上にあるのだった。
ちなみに、管理人、今回40話をチェックした際、実はダスマダーは、RXに倒された時に本当は死んでいて、再びクライス要塞にあらわれたダスマダーは、クライシス皇帝の魂が宿ったニセモノだったのではないだろうかと言う仮説を思いついた。
すなわち、部下の不甲斐なさに痺れを切らした皇帝が、ダスマダーの死を利用して、彼の体を得て地球にやってきて、自ら移住計画とRX打倒を推し進めようと考えたのではないかと言うことだ。
そうすれば、今までのダスマダーの言動の矛盾(
自分が皇帝なのに、皇帝に処罰されることを恐れるとか)もすっきり解消され、最終回の唐突な展開も多少は分かりやすくなっていたのではないかと思うのだが。
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