第23話「暗黒怪獣 星を吐け!」(1971年9月10日)
いかにも石堂さんらしいファンタジックなストーリーである。

岸田「丘隊員、わかってるねえ」
丘「ふふ、これが一番良いのよ」
冒頭、丘ユリ子姫が、ガラスの板を蝋燭の火で炙っていると言う、一瞬、ヤバいことでもやってるのかと勘繰ってしまう映像と台詞。

上野「ほらほら、あんまりくっつけると割れちゃうよ」
伊吹「後5分で欠け始めるな」
郷「真昼に割り込んでくる夜か、幻想的でいいですね」
だが、それは、皆既日食を見るために、ガラスを焼いて焦げ目をつけているだけだということが分かる。
要するに、サングラスの代用であろう。
それこそ、MATには、その手の装備もちゃんと用意してあると思うんだけどね。

丘「では私、見て参ります」
丁寧な挨拶とお辞儀をして、うきうきと司令室を出て行く丘隊員が可愛いのである!
南「どうぞ、どうぞ、少女は夢を見ることがお好きですからね」
丘「あらぁ、だって私まだ若いんだもん」
と、続いて郷が立ち上がって、

郷「では、小生、お供しましょう。だって私、まだ若いんです」
隊員たち「はっはっはっはっ……」
おしとやかなポーズで、丘隊員の台詞を真似すると、隊員たちがドッと笑う。
うむ、ついこないだまでの、ストレスで胃に穴が開きそうなほどギスギスした雰囲気は何処行っちゃったの?と言う感じで、まるで別の組織のような朗らかさである。

丘「昔の人は驚いたでしょうね。昼間なのに急にお日様が暗くなるんですものね」
焦がしたガラス板で空を眺めながら、まるで子供のようにはしゃいでいる丘隊員。
管理人、丘隊員の股間の割れ目が気になってしょうがないんですが、同じことを考えている読者の方もたくさんいらっしゃると思います。

郷「そう、我々人類には暗闇と言うものは怖いという固定概念があるからね」
丘(聞いてない)

丘「あ、少し暗くなり始めたんじゃない?」
やはりユリ子お姉さまは美形である。
この角度から見ると、竹井みどりさんに似ているような気がしなくもない。
ナレ「この日、東京では珍しい皆既日食が見られたのだった。太陽と月が重なって光が遮られ、東京一帯は黒い影に覆われた」
やがて日食が始まり、見る見る太陽が月の影に削り取られていき、突然の夜の世界が訪れる。
手製のフィルターで、代わる代わる美しい天体ショーを観察している二人。

丘「素敵だわ、なんだか太陽から御遣いがやってきそうな気がするわ」
郷「その御遣いは勿論、男だね」
丘「いーえっ、私のようなか弱き乙女……」
喋りながら振り向いた丘隊員だったが、いつの間にか、彼らの背後に見知らぬ若い女性が立っているのに気付き、びっくりする。

丘「郷隊員、ちょっと……」
郷「あのう、どなたかお探しなんでしょうか?」
純子「MATの方たちですのね?」
郷「はい」
純子「どうぞ」
郷「どうも」
丘「ありがとう」
謎めいた女性は二人に近付くと、手にした赤い花を渡す。
純子「大変なことが起きそうなんです、私には良く分かるんです。MATの方は今から準備をしなければいけないわ」
丘「あのう、一体どういう大変なことなんでしょうか?」

純子「お二人とも北の方を見てください」
郷「いや、そっち南ですけど……」 純子「……」
じゃなくて、
純子「北極星が見え始めています。北極星の周囲を見てください。お気づきになりませんか。ああっ、北斗七星がなくなっています」
郷「……」
純子「北極星の近くに柄杓型に並んでるはずのあの七つ星が見当たりません」
郷「そう言われると……」
やがて日食が終わり、世界が再び明るくなるが、現れたとき同じように、謎の女性はいつの間にか姿を消していた。
丘「何処に行ったのかしら」
郷「はっはっはっ、やはり太陽からの御遣いはお嬢さんだったね」
奇怪な現象であったが、郷はこともなげに言って笑い飛ばす。

アキ「さあ、出しなさい!」
次郎「だからさ、もう使っちゃったって言ってるだろ。ない袖は振れないよ」
その夜、郷が坂田家に顔を出すと、アキが台所で次郎を追い掛け回していた。
後の丘隊員ほどじゃないけど、ミニスカから伸びる太ももが実に美味しそうである。

郷「おいおい、一体どうしたんだ?」
丘「日食で暗くなった隙に、私の財布から500円抜いたのよ!」
郷「はっはっはっ」
結局、次郎は捕まるが、姉に「バカバカ」と罵られながら、お尻をバシバシ叩かれると言う、まるで泥棒に追い銭みたいな羨ましい目に遭うのだった。

坂田「よう、来てたのか」
郷「はい、今日の日食ご覧になりましたか?」
アキ「ありがとう」
アキへの手土産を、さっきの女性から貰った花で済ませてしまう、割とちゃっかりしている郷であった。
坂田「日食? そんなことより表で星がないって騒いでる人がいるぞ」
郷「星? それは北斗七星じゃないですか」
坂田「あれ、どうして知ってんだ?」
アキたちも気になって、望遠鏡で星を見ている人たちのところへ行って見せてもらう。

アキ「見えなくなった星があるってほんとですか?」
子供「本当に見えないんだよ」
星は見えないけど、アキのブラは、ブラウス越しにはっきり見えてます! アキ「ほんとだわ、他の星は見えるのに、北斗七星が見えないわ」
坂田「今の季節では、北斗七星は北極星の上に、柄杓を逆にしたような形で見える筈なんだが」
アキ「雲があるわけでもないのにねぇ」
坂田「アルファ星とガンマ星だけは見えるけど、他の五つの星が見えないな」
坂田、天体についても詳しく、即座に欠けている星を指摘する。
そう言えば、自分も星空を見上げることなんて、とんとなくなったなぁ……
突然、周囲がフラッシュを焚いたような眩しい光に照らされたかと思うと、夜空を青白く燃える炎の塊が落ちていくのが見えた。
次郎「あんな大きな流れ星、見たことないや」
アキ「北斗七星がなくなったことと関係があるのかしら」
やがて、大きな落下音が聞こえる。
翌日、郷は伊吹隊長に嘆願して、ひとりでその落下地点に調査に赴く。
果たして、落下地点には、カニのお化けのような怪獣がいて、郷の知らせを受けたMATが直ちに出撃することとなる。
MATアロー2機による猛攻が加えられるが、1機が戦闘中、相手の腕と接触して故障したため、両機とも一旦引き揚げる。
郷も、巨大なカニの爪のような切断された腕を抱えて、本部に帰還する。
一方、丘隊員は郷隊員の指示で、あの謎めいた予言をした少女のところへ向かっていた。

で、このシーンで丘隊員が披露してくれる、えげつない短さのミニスカ姿が、今回のメインディッシュなのであり、はっきり言って、ストーリーなんかどうでも良いのであった。

丘「あの、ちょっと伺いますが、この辺に星占いの娘さんがいると聞いて来たんですけど」
丘隊員、道路を横切って細い路地に入ると、赤と紫の花を持った男性に話し掛ける。

男「あんたは、誰かね」
丘「ええ、ちょっと知り合いなんですが」
男「ああ、あの子は病院に入ったほうがいいんだ。星占いの力はまるでなくなって半分キチガイのようになってしまった」
丘「キチガイのように?」
丘隊員が話し掛けたのは、他ならぬ純子の父親であり、演じるのは「ウルトラマンレオ」でクモのお化けに襲われていた陶隆さんである。
しかし、丘隊員、何の手掛かりもないのに、どうやって純子の職業や住まいのことを知ったのだろう?
丘隊員、男に教えられた木造アパートの2階に上がり、いかにも昔のアパートらしく、色んな物が置かれてゴタゴタしている廊下を抜け、純子の部屋の前に立つ。

丘「ごめんください、ごめんください」
どんづまりの、「南條純子」と言う表札の出ている部屋のドアをノックするが、何の反応もない。

丘「ハッ」
やむなくドアを開けた丘隊員、部屋の中を見て思わず息を呑む。

そこに純子が立っていて、うつろな表情で花びらをちぎっては捨てていた。
丘「覚えていらっしゃいませんか、私、あのときのMATの女子隊員です」
丘隊員がおそるおそる呼びかけると、
純子「北斗七星は飲み込まれてしまった」
丘「え」
純子「今、かに座の星たちが、飲まれかかっている」
丘「星を飲む? 一体何が飲むんですか?」
純子「ああーっ! かに座は私の星なのだぁーっあーあーっ!」 突如、喉の奥から絶叫をほとばしらせて床に倒れ込んだ純子は、なおも「あ゜ーあ゛ーっ!」と狂ったように叫びながら、激しく身をよじらせる。
純子「苦しい、苦ぅしっ、ああーっ! 頭が割れるぅ! ああーっ!」
丘「しっかりしてください、大丈夫ですか?」
真面目で責任感の強い丘隊員、相手がキチガイだからって逃げたりはせず、慌てて駆け寄ってその体を抱き起こすのだった。
CM後、巨大なカニの爪を前に、郷が分析結果を報告している。

郷「この爪の成分は、地球上に存在しない、13種類の元素が中心になってるそうです」
伊吹「丘隊員が会って来た、星占いの少女のかに座云々と言ってた言葉も、こうなったら単なるうわごととは言えんな。あの怪獣もカニそっくりだった」
丘「やっぱり、かに座の怪獣なんでしょうか」
伊吹「うむ、もしそうだとしたら、星を飲む別の大怪獣に追われて、この地球に逃げてきたのかも知れん」
大真面目に、
「かに座に関係した怪獣だからカニの格好してるんだろう」と推測する隊員たちであったが、かに座だのさそり座だのスカラ座だのというのは、あくまで地球から見た星の配列を何かに見立てたもの(の一種)なのだから、宇宙の彼方から来た怪獣が、なんでそんな「文化」に従っているのだ? と言う、この手の話にはつきものの指摘を、野暮を承知でしておこう。
ついでに言えば、北斗七星が次々飲まれた話にしても、地球から見れば柄杓型に並んでいるように見えても、実際には、まったく離れた場所にあるんだけどね……
もっとも、物語は、そんな些細なイチャモンなど歯牙にかけず、さらに雄大に進んでいく。

ナレ「伊吹隊長の推定は正しかった。第108宇宙系に生じた暗黒怪獣バキューモンは、星を飲んで生きているのだ。バキューモンは、10日間かけて北斗七星を飲み、今、かに座に取り掛かっている。地球に現れたのは、まさしく逃げ出したかに座の怪獣なのだった」
ナレーションに合わせて、暗黒怪獣バキューモンが、複数の星を飲み込むイメージが映し出される。
ま、怪獣といっても、実体のはっきりしない、黒い煙の塊のような物体なのだが、そのスケールの大きさは、恐らくウルトラシリーズ史上、最大といえるだろう。
なにしろ、文字通り、星を飲み込んでしまうのだから……
ナレ「バキューモンに星をひとつ飲み込まれるたびに、この怪獣の体は痛んでいくのである」
………………え、なんで? ナレ「いや、なんでも言われても……ははーっ、こいつぁ困ったなーっ!」
管理人の素朴な突っ込みに、思わず困惑する名古屋章さんであったが、嘘である。
でも、ほんと、なんでだろう?
この怪獣、ザニカと言うのだが、この怪獣がかに座に住む(……と言うのも変なんだけど)怪獣ではなく、かに座の精、あるいは守護神のような存在だとしたら、まだ納得できるんだけど、今回は幻想的なストーリーと比べてドラマの演出がリアルタッチなので、ついそんなことが気になって鑑賞を妨げるのだ。
やっぱりこの手の話は、夢か現実か分からないような撮り方にすべきだよね。「第四惑星の悪夢」や「円盤が来た」みたいな。
その後、色々あって、

純子「真っ黒い奴が、こっちに向かってやってくる、かに座の精を追って、地球に向かってやってくる」
丘「純子さん、しっかりして」
純子「私の星を痛めた奴、無限に大きく、暗い奴さ、地球に向かってやってくる、ああーっ!」
熱を出して寝込んでいた純子は、むっくり起き上がると、再び狂ったように暴れ出す。
って、今気付いたけど、純子がはっきり「かに座の精」って言ってますね。
丘隊員、ちょうどそこへ純子の父親が来たので、純子のことを頼むと、廊下へ出て、

丘「こちら丘隊員、伊吹隊長へ、星占いの娘さんが変です、かに座の精を追って巨大な真っ黒いものが地球に向かっているようです」
伊吹「了解、郷隊員をすぐ帰す……郷隊員、丘隊員と天文研究所に行ってくれ」
それにしても、何度見ても、このミニスカ姿は……良い!
二人は天文研究所と言う研究施設に行き、所長に会う。

郷「何か異常な状態が起こってるのではありませんか」
所長「どうして知ってるんだ? まだ極秘にしてたのに」
で、その所長を演じているのが、死神博士の天本英世さんなのだった。
丘「かに座から黒いものが地球に向かってませんか」
所長「そうなんだよ、途方もない引力を持った、暗黒の巨大な物体が、地球に向かってきてる。暗黒星雲にも似た、その大きな塊は途中の天体物質を次々吸収しながらますます大きくなってい。地球なんか、君、ひとたまりもなく飲まれてしまうんだよ」

所長「残念ながら、このまま行くと、後12時間もしないうちに、地球は破壊され、人類は絶滅する。同じ滅亡するなら、誰も何も知らないほうが幸せと言うもんだ。私は一切発表しないつもりだよ」
郷「……」
あまりに突然の破局の到来に、さすがの郷も言うべき言葉が見付からなかった。
もし管理人が郷だったら、
郷「よし、死ぬ前になんとしてでもアキちゃんとエッチするんだ! ついでに丘隊員とも!」 と、しょうもない決意を胸に抱いたことだろう。
しかし、星は無数にあるのに、なんでバキューモンがよりによって地球目掛けて向かってくるのか、その辺が一切説明されてないのが気になるが、やはり、ザニカを追いかけているのだろうか?
それにしても、重苦しい表情で、人類にふりかかるであろう悲劇のことを思っている天本さんが、この数ヶ月には「仮面ライダー」で、人類の敵ショッカーの大幹部となり、さらに、最後は隕石を地球に落下させようとしてライダーに倒されるのだから、皮肉である。
おまけに、その正体はイカだもんね。
その後、正直そんなことしてる場合じゃないと思うのだが、暴れ出したザニカに対し、MATが総攻撃を掛ける。もっとも、伊吹たちは地球の運命については何も知らされていないのだが。
色々あって、結局郷がウルトラマンとなり、ザニカとの戦いとなる。
ウルトラマン、ウルトラブレスレットでその両腕を切断し、トドメを刺そうとするが、

ナレ「ウルトラマンは気付いた、この怪獣は、追われてこの地球に来たのだ。問題はこの怪獣ではない」
と、肝心なことに気付いて戦いをやめる。それに対し、ザニカは、
ザニカ「気付くの遅えよっ!」 と、思いっきり突っ込みを入れたと言う。
嘘はさておき、ウルトラマンは途中で戦いをやめて宇宙に飛び立ち、バキューモンの体内に突入する。

その体内は、七色に輝く得体の知れない臓器や粘膜がうごめく異様な世界であったが、ウルトラマンはウルトラブレスレットを、授業で使う伸縮自在の指示棒のような剣に変化させると、あちこちを突き刺し、そこから飛び出す。
と、バキューモンから飲み込まれた星が吐き出され、バキューモンは閃光のような爆発を起こして、宇宙の塵と化すのだった。
うーん、恒星や惑星をまるごと飲み込めるような巨大な怪獣に対し、ウルトラマンがその体内で少々暴れただけで、そんなあっさり倒されると言うのはねえ……
我々から見れば巨人だが、バキューモンから見れば、ウルトラマンなんてアリンコにも満たない大きさの生き物に過ぎないのだから。
それはさておき、バキューモンが消えた途端、純子は初めて明るい笑顔を見せる。

純子「お父さん、どうして私、布団なんかに? 私、とっても気持ちがいいのに」
あっけらかんとした様子で布団から出ると、ごくごく水を飲むのだった。
ウルトラマンが地球に戻ってくると、ザニカはウルトラマンにぺこりとお辞儀をして、宇宙へ帰っていくのだった。
また、かに座や北斗七星を構成していた星も、何事もなかったように輝き始める。

アキ「綺麗に揃ったわ」
ラスト、元通りの姿になった星空を晴れ晴れとした顔で見上げているアキ。
坂田「宇宙の秩序は、そう簡単には崩れやしないもんさ」
やがて郷も姿を見せ、アキとにっこり笑みを交わす。
以上、滑り出しは期待できたのだが、それ以降の展開がいまひとつ面白味に欠ける惜しい作品であった。
純子の存在も、終わってみれば大勢に影響はなかったし。
まぁ、丘隊員の超ミニスカが見れるだけでも、十分価値のあるエピソードではあるのだが。
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