第41話「百目婆ァの恐怖」(1989年8月13日)
冒頭、山の中の開けた土地にいつもの三角錐が三つ並び、そばではチャップたちが忙しく機器を操作している。
それはクライシスからの移民船を受け入れる為の次元エアポートのような施設だったが、丘の上から光太郎とジョーが降りてきて、奇襲を仕掛ける。
すぐにガテゾーンがストームダガーに乗ってあらわれ、激しい撃ち合いになるが、

油断した二人は三角錐の放つビームに絡め取られ、宙吊り状態になる。
ガテゾーン「ははははは、もがけもがけ、光太郎、あと30秒もすればお前たちの体はバラバラだ」
いや、見てないで、トドメの一撃を撃てば良いのにと思うのだが……
果たして、ガテゾーンが傍観しているのをいいことに、光太郎は拳を握り締めて精神を統一し、また、頭上の太陽光を浴びて、空中でRXに変身する。
四大隊長、既に怪人と大差のない雑魚に成り下がっており、ガテゾーンは一矢を報いることも出来ず、RXのパンチを受けると、ストームダガーにまたがってトンズラする。
しかし、ガテゾーンってビジュアルもポーズもめっちゃカッコイイのに、どーしてこんなに弱いのだろう?
ありきたりだけど、スタッフが中盤で四大隊長のパワーアップなどを考えなかったのは、怠慢のそしりを免れまい。
クライス要塞に逃げ戻ってきたガテゾーンの報告を聞いたダスマダーは、
ダスマダー「ジャーク将軍、怪魔界はここに来て急激に歪み始め、クライシス帝国は崩壊寸前の危機にある、このような時に、移民船のための空港をひとつも建設できぬとは何事だっ!」
いつものようにジャーク将軍を罵るが、
ジャーク「黙れ、ダスマダー! 我らとてただ手を拱いている訳ではないっ」 ダスマダー(逆ギレかよ……)
(事実上の)首領が、「逆ギレ」するようになったら、「悪の組織」もおしまいだな、と思う。
切歯扼腕して悔しがるボスガンたちの結論は、結局、「RXさえいなければ……」と言う恨み言に集約される。
……
じゃあ、RXのいないところで活動すれば良いのでは?
まぁ、そんなことしたら番組が成立しなくなるし、今回のラストで、仮に海外に活路を求めていたとしても無駄だったことが判明するんだけどね。
と、ここでいつになく自信たっぷりにマリバロンが、「打倒RXは、私にお任せ下さい」と申し出る。

ジャーク将軍「マリバロン、勝算はあるのか」
マリバロン「はい、私の大叔母である怪魔妖族の棟梁・百目
婆ァに、RX打倒を頼んであります」
自分の大叔母のことを「婆ァ」よばわりする失礼なマリバロン。
いくらそういうネーミングだからって、身内が「婆ァ」はないよね、「婆ァ」は。
ここは「百目お婆(ばば)様」と呼ぶのが普通だろう。

ジャーク将軍「なにっ、百目
婆ァに?」
人の大叔母のことを「婆ァ」呼ばわりする、マリバロンに輪をかけて失礼なジャーク将軍。
マリバロン「2000年の命を持つ百目
婆ァなら、必ずやRXを滅ぼしてくれることでありましょう」
ジャーク将軍「うむ、マリバロン、百目
婆ァならRXに勝てる! RX打倒、そちに任せよう」
マリバロン「ははっ」
わざとやってんじゃないのかと思えるくらいにババアを連呼する二人だったが、幸いなことに、百目婆ァは彼らのやりとりを聞いていなかったので、快く姪孫(てっそん)の頼みを引き受けてくれる。
しかし、マリバロンも、「ははっ」と言いながら、実際の仕事は全部大叔母に丸投げ状態で、現場に出ようともしないのは、横着と言うものだろう。
そしてまず婆ァが目を付けたのが、単独行動をしていた響子ちゃんであった。

豊かな水をたたえた清流のそばに立ち、水の音や小鳥のさえずりに耳を傾けている響子ちゃん。
響子「自然は美しい。この自然を破壊しようとするクライシスはどんなことがあっても許せないっ」
自然大好きっ子の響子ちゃん、不意に、太い眉を怒らせて叫ぶ。
ま、言わずもがなのことだが、クライシスなどより人間のほうがよっぽど盛大に自然を破壊してると思うんだけどね!
と、茂みの向こうにたくさんの目が浮かんでいるような気配を感じた響子ちゃん、油断なくアーチェリーを構えながら周囲を警戒していると、けたたましい笑い声を立てて本日の真打ち・百目婆ァが登場する。

響子「何者なの?」

婆ァ「私は若い女が大好きな、百目婆ァじゃよ」
響子「百目婆ァ?」
そういう名前なので、仕方なく響子ちゃんも汚い口を利いてしまう。
さすが怪魔妖族の棟梁だけあって、底知れぬ実力を秘めた、クライシス屈指の強敵である。
ちなみに声は、「シティーハンター」の香の声でお馴染み、伊倉一恵さん。
婆ァ「そうじゃ、百の目を持つ婆ァじゃよ……って、
誰が婆ァやねん!」
響子「……」
怪魔界では鉄板のネタであったが、地球では不発に終わる。
嘘である。
婆ァ「若い女の命を吸って、2000年生きてきた。今度はお前の命が欲しい」
響子「お前はクライシスの妖族ね?」
婆ァ「命をくれ、命をくれ~」
響子ちゃん、矢を放つが、怪魔妖族の棟梁にそんなものが通用する筈もなく、矢は婆ァの体を素通りしてしまう。
おまけに見た目が不気味なので、響子ちゃんは得意の超能力を使う余裕もなく、踵を返して走り出す。
森の中に小さな山小屋を見付けてその中に逃げ込み、つっかえ棒をして立て篭もるが、すぐに発見され、小屋の戸やあちこちの壁をドンドン叩かれる。

響子「光太郎さん、助けて!」
戦士と言っても、なにしろまだ10代の女の子、得体の知れない強敵を前にしては、ひたすら閉じ篭って光太郎に助けを求めることしか出来なかった。
そのうち、急に音がしなくなったので、立ち去ったのかと安堵したのも束の間、

振り向けば、いつの間にか婆ァが小屋の中に入り込み、囲炉裏の前にあぐらを掻いているではないか。
婆ァ「的場響子、私から逃げることは出来ぬぞ」
響子「……」
婆ァ「綺麗な目じゃ、それに若々しくて美しい体を持っておる私はお前のような若い女が大好きじゃ」
響子「私をどうするつもりなの?」
婆ァ「私が不死身なのはのう、この目の中に若い女の命を吸い込むからじゃよ」
婆ァ、響子ちゃんに(超能力の?)勝負を挑むが、恐怖で打ち震えている響子ちゃんは超能力を使うどころではなく、

暗闇の中に浮かび上がる、ピボルダー系の怪物のような巨大な目に睨まれると、なすすべもなくその中に吸い込まれそうになる。
響子「光太郎さん、助けて!」
一方、引き続きクライシスの基地を潰して回っていたのだろう、光太郎、ジョー、玲子がその近くの森を歩いていたが、人間離れした聴覚を持つ光太郎だけが、響子ちゃんの必死の叫びをキャッチする。
光太郎「俺は一足先に行くぞ!」
ジョー「兄貴!」
CM後、光太郎は真っ直ぐあの山小屋にやってくる。
と言うことは、響子ちゃんはたまたまその山小屋を見付けて飛び込んだのではなく、そこは元々、光太郎たちのゲリラ活動の拠点として使われていたのだろうか。
山小屋には響子ちゃんのアーチェリーが置いてあるだけで、人影はなかった。
渓谷に降りて響子ちゃんの名前を大声で叫んでいると、

意外にも、その響子ちゃんが何事もなかったような明るい顔であらわれる。
響子「光太郎さん、お帰りなさい」
光太郎「響子ちゃん、無事だったのかい?」
響子「私なら無事よ。どうして?」
光太郎「いや、助けを求める響子ちゃんの声を聞いたもんだから……」

響子「おかしな光太郎さん、私なら何もなかったから安心して」
無邪気に微笑むその顔は、パッと見、本物の響子ちゃんにしか見えなかったが……
光太郎、響子ちゃんと一緒に山小屋へ向かうが、その途中、響子ちゃんの歩くリズムがいつもと違うことに気付き、目に警戒の色を滲ませる。
それでも何食わぬ顔でついていき、彼女の獲った川魚を囲炉裏で焼いて食べることにする。

ジョー「うわー、焼けた焼けた」
響子「さあどうぞ、たくさん食べてくださいね」
ジョー「いっただきまぁーす!」
ジョーと玲子は串に刺した魚にかぶりつこうとするが、その臭いを嗅いだ途端、光太郎は血相変えて、「やめろ! 毒が入ってる!」と制止する。

ジョー「毒が?」
響子「光太郎さん、ひどいこと言うのね、毒なんて入ってる訳ないじゃない」
響子、曇りのない笑顔で否定すると、自ら魚を食べて見せる。
玲子「光太郎さん、響子ちゃん、平気で食べてるじゃない」
ジョー「そうだよ兄貴、響子ちゃんがせっかく焼いてくれたものを……」
光太郎「やめろ、一口食べても命をなくすぞ!」
光太郎、ジョーの手から無理やり魚を取り上げる。
ただ、「一口食べても」って言うけど、ジョーはともかく、明らかに玲子は一口齧ってるんだけどね。

光太郎「お前は響子ちゃんじゃないな、毒を食べても平気名ところを見ると、クライシスの妖族か?」
響子「ほっほほっ、さすが南光太郎、良く私の正体を見破った」
ニセの響子ちゃんは立ち上がると、あっさり百目婆ァの正体をあらわす。

婆ァ「私は怪魔妖族、百目婆ァじゃ」
玲子「響子ちゃんをどうしたの?」
婆ァ「響子ならこの目の中にいるぞぉ……響子の命はこの目が吸い取った。お前たちの命も私の目が吸い取ってくれるぞぉ」
ジョーと玲子、ついで、光太郎までもが、変身する暇もなく無数にある目の中に吸い込まれてしまう。
強えぜ、婆ァ! 一時的にせよ、レギュラー4人を同時に捕獲したその能力からして、クライシス最強の怪人と言っても過言ではあるまい。
婆ァはスキップを踏みながら野原に出ると、クライス要塞にいるマリバロンに呼びかける。
婆ァ「マリバロン、私の愛しい子孫よ、聞こえるか?」

マリバロン「はい、大叔母様!」
婆ァ「ところで、さっき、私のことを婆ァ、婆ァって言ってなかったか?」 マリバロン「言ってません」
じゃなくて、
婆ァ「マリバロン、光太郎と仲間はすべて私の目の中に閉じ込めた」
マリバロン「将軍!」
ジャーク将軍「うむ、聞いた、これで邪魔者が消えた」
おそらく、番組始まって以来の完勝に、頬を上気させるマリバロンと、会心の笑みを浮かべるジャーク将軍。
が、ダスマダーはにこりともせず、
ダスマダー「百目婆ァが生きてる限り、RXもその目の中で生き続けることになる」
光太郎がまだ婆ァの目の中で生きていることを指摘する。

マリバロン「ダスマダー、お前は私の大叔母様を消せと言うのか?」
ダスマダー「消せとは言わん、RXもろとも一刻も早く怪魔界へ戻るよう、伝えるが良い」
ダスマダーの冷たい言葉に、いかにも悔しそうに唇を噛むマリバロン。
てっきり、ここで十八番の仲間割れが起きて、それがきっかけで光太郎たちが生還するのかと思ったが、そうではなく、逆に、ダスマダーの指示が的確だったことが分かる。

婆ァ「なにぃ、私にすぐ怪魔界へ戻れだと? アホ抜かせ! せっかく地球に来たんじゃ、少しは楽しませんか」
マリバロンからとっとと怪魔界へ帰ってくれと頼まれた婆ァだったが、容易に従おうとしない。
なんか、婆ァ、良く見ると結構可愛い顔しとるな……

光太郎「君たちに頼みがある、精神を統一して、君たちの念動波を俺に送ってくれないか? 俺たち4人の力を合わせればなんとかここを脱出できるかもしれないんだっ!」
響子「分かったわ、光太郎さん」
果たして、婆ァがぐずぐず地球にとどまっている間に、光太郎がテレパシーで仲間に呼びかけ、彼らのエネルギーを受けて、あっさりバイオライダーとなって目から脱出してしまう。
もっとも、念動波と言っても、ジョーも玲子も別に特殊な力は持っていないので、超能力者の響子ちゃんの助けさえあれば、変身できていたのではないかと言う気もする。
だから、百目婆ァは、最初に捕まえた響子ちゃんの命を完全に吸い取ってから光太郎たちを襲うべきだったのだ。

婆ァ「おのれは?」
バイオライダー「俺は怒りの王子、RX、バイオライダー! 百目婆ァ、お前が吸い取った仲間の命、返してもらうぞ!」
ここでラス殺陣となるが、

婆ァ「私の本当の目を潰さない限り、お前の仲間は助からんぞ!」
バイオライダー「なにっ?」
開始早々、言わずもがなの秘密を自ら暴露してしまうお茶目な婆ァであった。
で、しばらく戦った後、光太郎、本当の目が婆ァの持つ杖の先端にあることを見抜き、ロボライダーにフォームチェンジして、ボルテックシューターで撃ち砕き、三人を助け出す。
それでもさすがにクライシス最強クラスの怪人である。婆ァ、前半に出てきたビホルダー系の怪物の姿になって反撃に出る。
しかし、善戦空しく、最後はRXのリボルケインで貫かれ、2000年の生涯を華々しく閉じるのだった。
さて、今回は、ラストにもうひとつの見せ場が用意されている。
グランドキャニオンっぽい峡谷の映像や、サボテンの生えた荒野の映像の後、何処とも知れぬ国の倉庫のような建物の中に、10人の戦士が集結していた。
そう、1号からゼクロスまでの、10人のレジェンドライダーたちである! ナレ「そしてその頃、世界の各国でクライシスと戦っていた1号から10号(ゼクロスのこと)までの仮面ライダーたちがアメリカ、アリゾナにある1号のアジトに密かに集まっていた!」
と言う訳で、今まで何の伏線もなかったのに、突然、歴代ライダーたちが登場しちゃうのである。
管理人、オンエア時には、思わず「おおっ」とどよめいてしまったが、今思うと、どよめいてしまった自分がちょっと恥ずかしい。
今更言ってもしょうがないが、この歴代ライダー一挙客演は、やめておくべきだった。
その理由はいくつかある。
第一に、今まで海外でのクライシスの活動なんて一切描かれていなかったのに、いきなりそんなこと言われても戸惑ってしまうし、とってつけた感じが物凄くするのである。
ちなみに、さきほど、クライシスがRXの目を逃れて海外に進出したとしても結果は同じだったと言ったのは、このことを念頭においての分析である。
第二に、せっかく「BLACK」では、過去のシリーズ作品とはまったく別個の作品として完結させたのに、その続編である「RX」で、必然性もなく歴代ライダーたちを登場させるのは、首尾一貫しないではないか。
第三に、

1号「クライシスが日本を総攻撃する日が近い、我々は直ちに帰国して仮面ライダーBLACK RXに協力してクライシス壊滅の為に戦おう!」
どうせ出すなら、出演は無理でも、せめて声だけはオリジナル俳優を起用して欲しかったのだが、1号以下、全員、オリジナルとは似ても似つかぬ声優があてている、がっかり感が半端ないからである。
また、1号の檄以下、ひとりひとりアップになって何か一言言うのだが、

アマゾン「やろうぜっ!」
アマゾンが、「キキーッ!」とかじゃなくて、普通のアンちゃんのような声を上げるのが、原作に対するリスペクトと思い入れが全く感じられないやっつけ仕事に見えてしょうがないのである。
だいたい、その直前のシーンで、光太郎が、響子ちゃん、ジョー、玲子の頼もしい仲間とスクラム組んで頑張るぞ! と盛り上がっていたのに、そこに降って湧いたように、人数にして2.5倍の、それも一騎当千の強力メンバーが加わったのでは、彼らがスクラム組んだ意味がなくなってしまうではないか。
そもそも、クライシスは「悪の組織」の中でもとりわけ脆弱な集団であり、今でさえ空中分解して自然消滅しそうなのに、これ以上彼らの敵を増やす必要性がどこにあるというのだろう?
その逆なら分かるんだけどね。
すなわち、ショッカーはじめ、過去の「悪の組織」の幹部たちが集結して、クライシスに加勢するとか……

ともあれ、砂塵渦巻く荒野を横一列になって歩くライダーたちの姿を映しつつ、42話へ続くのだった。
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