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名探偵 明智小五郎 「暗黒星」(画像復刻版)



 読者の皆様、あけましておめでとうございます。

 旧年中はお世話になりました。

 今年もこのしょうもないブログにお付き合いのほど、何卒よろしくお願い致します。

 さて、正月だけど何もすることがなくてヒマなので、前々から気になっていた美女シリーズの画像復刻をしてみました。

 ただし、本家ではなく、当時は勝手に番外編と決め付けていた陣内孝則主演のスペシャルドラマのほうです。

 ちなみに、1作目の「地獄の道化師」も2012年に書いていて、そちらを先に復刻してみたのですが、あまりに内容がお粗末だったので、管理人権限でボツにしました。ご了承ください。

 かと言って、改めてレビューを1から書き直すほどの作品じゃないからねえ。

 で、3作目の「暗黒星」のほうは2015年執筆と言うことで、多少マシな内容だったので、最低限の手直しをした上で公開することにしました。

 以下、本文。

 ……と言う訳で、シルバーウィーク特別企画(今思いついた)として、久しぶりに(呼ばれてないのに)帰って参りました。フジテレビで1990年代に製作された陣内孝則主演の明智小五郎シリーズのお時間です。

 今回は、1996年1月19日放送の第3弾「暗黒星」を紹介したいと思います。

 原作は昭和14年(1939年)に連載された同名の長編「暗黒星」。

 この陣内版は、原作をかなりアレンジしていて、特に中盤以降はほとんど別物と言っていいストーリーになっております。

 小林少年「天体が人の運命に影響を及ぼすというのは本当でしょうか。星や太陽の巡り合わせが悪い年は事件が起きると言います。昭和8年もそんな年でした。そして僕にとってもまた……」

 今回も、小林少年が事件を回想すると言う形式を採っていて、こんなモノローグから始まる。

 冒頭、いつものようにモノクロの世界で、怪人二十面相に追い詰められている小林少年。

 
 ここは戦艦「三笠」の上で、甲板には眠り薬を盛られた水兵たちが倒れ、小林少年も水兵に変装している。二十面相はロシアの宝冠を盗む為に士官になりすまして三笠に潜入したのだ。

 二十面相を演じるのは例によって高杉亘さん。

 撮影は、現在も横須賀に展示されている「三笠」で行われているのだが、昭和8年の時点で既に「三笠」は廃艦となっていたと思うので、水兵たちが乗り込んでるのはおかしいんだけどね。

 と、見張り台(?)の上に高笑いを響かせながらダンディな人影が現れる。

 二十面相「貴様、いつ上海から帰ってきたのだ?」
 小林少年「あなたは……」

 たっぷり30秒ほど焦らしてから、

 
 振り向いて顔を見せる明智小五郎。

 明智「私だよ」

 
 このタイミングでタイトルが表示される。

 そこでスパッとやめときゃいいのに、その後も二十面相と明智のしょうもないチャンパラシーンなどがあり、小林少年の機転で二十面相が捕まったところで、本編に移る。

 書籍が山と積まれたオフィスで、自分の活躍の載った新聞を開いている明智、妻の文代(森口瑤子)がお茶を持ってくる。新聞には、21年ぶりに日食が起こることが予言されてあった。

 この日食についても、実際に当時起きたのかどうか確認できなかった。まぁ、どうでもいいことだが。

 今回は、事件がこの日食の前後に起きるよう設定されていて、全編に不吉なことが起こりそうな雰囲気が濃密に漂っている。原作にはない趣向だ。

 文代に、今夜、帝都産業の伊志田社長の屋敷に招待されていると言われ、驚く明智。すっかり忘れていたのだ。文代は、社長の後妻・君子(原作では君代)の学生時代の友人なのだ。

 
 留守番を仰せ付かった小林少年だったが、彼は今、興行に来ている瀬下良一一座によるサーカスのことが気になってしょうがないのだ。

 しかし、この名前を出すと、原作をしっかり記憶している人には一発で真犯人が分かっちゃうなぁ。

 
 とにかく、明智夫妻は敷地内に八角形の塔が聳える麻布の伊志田邸を訪れる。

 
 主人の伊志田鉄造を演じるのは清水紘治さん。

 伊志田は早速、妻・君子、長女・綾子、次女・直子、三女・鞠子を二人に紹介する。

 管理人、この並びを見て、思わず「やっすいなぁ~」と、感嘆の声を上げてしまいました。いかにもテレビドラマです、と言うリーズナブルな感じが良く出ている。

 何と言っても、ヒロインが稲森いずみさんだもんね(どういう意味だ?)

 当時、23歳くらい。

 原作では、妻・君代、長女・綾子、長男・一郎、次女・鞠子となっていて、伊志田の母親の老婆も登場する。

 夕食までの時間を利用して、明智夫妻は伊志田家の家族を映した16ミリシネマを見せられる。要するにホームビデオですね。この状況を、専門用語で「いい迷惑」と言う。

 原作は、家族だけでこれを見ているシーンから始まるんだけどね。

 
 伊志田の人たちが庭で和やかに遊んでいるシーンが流れていたが、君子の大写しのところで映写機が止まり、

 
 君子の右目から発火して、恐ろしい形相になる。

 この辺は原作に極めて忠実だ。

 続いて、同様に、直子と鞠子の目にも穴が開く。居合わせた人々は、なんとなく不吉な予感を抱くが、

 伊志田「みんな気にすることはない。この映写機もだいぶ古くなったからね。君子、気分転換に一曲歌ってくれないかな」

 伊志田に懇望され、かつてオペラ歌手だった君子が鞠子のピアノの演奏で美しい歌声を披露する。当然、吹き替え……と思ったが、演じる花山佳子さんは、声楽科出身の本職なので、本人が歌っているみたいだ。

 
 だがその最中、直子が突然「あ゛あ゛、ああ゛ーっ!」とけたたましい悲鳴を上げる。

 うーむ、ぎっくり腰になりそうなシーンであるが、いずみタンの演技力のせいではなく、演出が悪いのである。もしくはオイルショックのせいである(註・違います)

 
 直子「ごめんなさいお母様、先程の気味の悪い自分の顔が思い出されて……折しも不吉な日食が近付いています。あれはもしかして、不幸なことが起こる前兆……」
 伊志田「しっかりおし、直子、今夜はお客様も見えてるんだ」

 伊志田の差し出す手を、優雅に取ろうとした直子だったが、再び体のバランスを崩してしまう。

 事務所に帰ってきた明智夫妻は、伊志田邸での出来事をあれこれ話し合う。

 ふと気付けば、留守番の小林少年の姿がない。

 その頃小林少年は、例のサーカスのテント小屋にいて、大勢の観客と共に無邪気にサーカスを楽しんでいた。

 
 時間が過ぎていることに気付いて、慌てて小屋を抜け出して帰ってくるが、ちょうどその時、明智が直子から救いを求める電話を受けているところだった。

 明智「一体どうしたんです?」
 直子「廊下で奇妙な足音が……、誰か入ってきました。明智さん、ガイコツが……」
 明智「ガイコツ?」
 直子「ああーっ!」
 明智「直子さん、直子さん!」

 
 今回も章立てになっていて、こんな画面が節目節目で出てくる。

 明智は小林少年にすぐ車を呼ばせて、伊志田邸へ急行、家族を叩き起こして直子の寝室へ突撃する。

 
 寝室に入ると、直子があのフィルムのように、右目から血を流しながら痙攣していた。

 明智はすぐ直子をベッドに寝かせ、医者を呼びに行かせる。

 と、部屋にはガイコツのようなマスクをつけた不審者が残っていて、明智が誰何するとマントを必要以上に翻して逃げ出す。

 原作では「コウモリ男」と呼ばれているが、ドラマではガイコツのマスクでより恐怖度をアップさせている。

 
 明智は懸命に追いかけるが、地下室に続くドアの前で見失ってしまう。

 念の為、地下室のなかを調べてみるが、誰の姿もなかった。

 原作では、この時、伊志田の母親である老婆の部屋に入り込んでしまい、ドギマギする明智と言うような描写がされている。原作でもこの老婆は、意味ありげで実は事件には何の関係もなかったという膝カックンな存在であって、ドラマで省略されていても何の問題もない。

 「美女シリーズ」では、あえてその老婆を登場させ、しかも原作にはない重要な役割を与えていたが。

 それはともかく、直子の傷は意外と浅く、失明も免れた。

 
 翌朝、波越警部(伊武雅刀)が二人の部下を従えてやってくる。

 門をくぐる時に、三人揃って肩を回すのだが、ギャグにも何にもなってない。

 波越は事情を聞くが、直子も突然何者かに襲われたというだけで、具体的な手掛かりは得られない。

 
 と、部屋に飾ってある直子の写真に、いつの間にかこんな悪戯がされていた。あくまで直子の右目を狙うという予告だろうか?

 波越は、家族や使用人を集め、事件当時のアリバイを尋ねる。

 
 ちなみに背の高い書生を、メタルダーの妹尾洸さんが演じていて、特撮オタクの管理人は「おおっ」と叫んでしまったが、彼は本当にただの端役で、出番はほぼこのシーンだけだった。

 俺の「おおっ」を返せ。

 あと、田を返せ。

 
 聞き取りの結果、確固としたアリバイがないのは、長女の綾子だけだった。単純な波越警部は、すぐ綾子に疑いの目を注ぐ。

 警察官が非常識なほど関係者に顔を近付けるのも、このシリーズの特徴である。

 
 直子がガイコツ怪人に襲われてから数日後、明智が見舞いがてら伊志田邸を訪れた夜のこと、明智は直子の部屋の窓から、八角形の塔の最上階に怪しい光が点滅しているのに気付く。

 
 明智が足音を忍ばせて塔を登っていくと、あっさりそれが綾子が手提げランプで出しているものだと判明する。彼女は誰かに合図を送っているようなのだが……

 原作ではこの時、明智が綾子が使っている香水(ヘリオトロープ)に着目し、それが後々のストーリーにも影響してくるのだが、何故かこのドラマでは一切省略されている。美女シリーズ版では、香水が「黒水仙」に変えられて、それがタイトルにもなっている。

 数週間後、直子の快気祝いを兼ねて、伊志田家一同と明智が、かつて小林少年も夢中になっていた瀬下良一一座のサーカスを見に行くことになる。

 
 昭和初期の春風駘蕩とした雰囲気を、物憂いBGMとスローモーションで醸し出そうとして見事に失敗しているが、やはりこういうのはビデオ撮りでは難しい。

 
 ちなみに、この瀬下良一一座、原作では一行も出てこないのだが、ドラマではとても重要な役割を果たす一座なので、その演芸の内容も、かなり詳しく描写されている。

 
 まず、瀬下良一の娘・花子による歌唱。

 曲目は、このドラマで何度も流れることになる「夜の女王のアリア」。

 正直、このドラマで一番人の心を打つのはこの歌唱じゃないかと思うのである。管理人がオペラやクラシックに疎いだけに余計。(ソプラノ・金本栄子)

 
 その後、瀬下良一が人形と共にステージに立ち、腹話術で人形と軽妙な会話を交わして観客の笑いを誘う。

 瀬下「山の手のお屋敷町の方々は覗き見趣味をお持ちだからね」
 人形「きらびやかな衣装に身を包んでいても心は卑しいんだね!」

 ちなみにドラマでは瀬下(セシタ)であるが、原作では瀬下(セジモ)とルビが振ってある。

 顔にひどい傷があり、常にピエロのようなメイクをしているので素顔は分からないが、演じているのは藤井びん氏。彼の独特の存在感がこのドラマのグレードを高めている。

 瀬下は、マジックに参加して下さる方はいないかと客席に語りかけ、何故か、綾子を指名する。

 
 物怖じする綾子を半ば強引に他の団員がステージに連れて行くが、彼らがガイコツのような衣装を着ているのを見て、明智はひとり、直子を襲ったガイコツ男のことを連想し、気遣わしそうな目になる。

 
 で、綾子は縦長の箱に入れられ、巨大な刃物を押し込まれたり、胴体をバラバラにされたり、怖い目に遭う。

 これはちゃんと本式のマジックが行われているのだが、こういうのは、中に入る人も前もってネタを知って練習しとかないとダメなんじゃないの?

 なお、このシーンを見ると、どうしても乱歩の「魔術師」を思い出してしまい、この場で綾子が惨殺されるような気がしてしょうがないのだが、特に何も起こらず、無事にマジックが成功したので、管理人はやや拍子抜け。

 ま、「魔術師」のあのシーンを映像化するのはテレビではまず無理なのだが、このドラマが「魔術師」と「暗黒星」を融合させたようなストーリーであることは確かである。

 明智はこのサーカスのことが気になり、密かに調べたようとしたが、その夜のうちに一座はこの地を引き払ってしまう。

 
 その後、直子がひとりで明智事務所を訪ね、

 直子「明智さん、私を守って下さい。あの怪人は私を襲った後、写真に奇妙な細工をして逃げ出した。あれは必ずや私をもう一度襲うという予告だと思うのです。明智さん、どうか私を守って下さい!」

 熱っぽい瞳で訴える。

 
 (一応)美女の頼みとあらばと、明智はその日から伊志田邸に泊り込んで日夜警戒に当たることになる。

 原作でも、明智は依頼人の不思議な魅力に惹き付けられ、医者に変装をして伊志田家に入り込み、依頼人をガードすると言うことをしている。もっとも、原作の依頼人は女性ではなく美青年なのだが……

 ちなみに原作では「明智は変装嫌い」と書かれている。どこがじゃ。

 
 と、そんな明智の前にまたしてもあのガイコツ男が登場する。

 今回も地下室の前で見失うが、

 
 今度はガイコツ男は地下室に隠れており、降りてきた明智に見咎められると、いきなりピストルを発射する。

 銃弾は明智の左腕を貫通するが、幸い、軽傷で済む。

 済むかなぁ?

 
 しかもその混乱の中、伊志田の後妻・君子が、浴室で右目をナイフで貫かれて絶命した状態で発見される。

 原作では明智はしばらく入院することになるのだが、ドラマでは自宅で文代に手当てされている。

 明智「犯人はどうして目に拘るんだろう?」
 文代「ねえあなた、私も君子さんの仇は討って貰いたいのだけど、でも、気を付けてくださいましね」
 明智「怪人は十分に僕を撃ち殺せたはずだ。なのに……」

 君子は伊志田邸の広大な庭の片隅に埋葬される。

 その葬儀の席で、直子が思い出したように、明智や波越にあの光について語りだす。

 
 直子「毎晩のようにあの塔の上に妖しげな光を見るのです。その光はついたり消えたりを繰り返すのです」
 伊志田「熱にうなされたお前の幻影だよ」
 明智「いえいえ、そうではありません。確かに僕も同じ光を目撃したのです」

 明智は助け舟を出しつつ、綾子に問い掛けるような眼差しを注ぐ。

 綾子はあからさまに狼狽し、目を反らす。

 
 伊志田は、君子の供養にと、生前吹き込んでいたレコードを、蓄音機で流す。

 それは、以前瀬下良一一座で、花子が歌っていた「夜の女王のアリア」であった。

 
 君子と花子の歌声を頭の中で比較している明智さんの図。

 もしくは、「孝則ぃ、この娘とお見合いしーやー」と、オカンに言われて困っている陣内さんの図。

 だが、その最中、2階から女性の悲鳴が上がる。

 
 明智たちが慌てて駆けつけると、今度は鞠子が右目に矢を突き立てられて殺されていた。悲鳴は、それを発見した綾子のあげたものだった。

 
 一応、部屋は密室で、密室殺人ではあるのだが、そのトリックは隣の部屋に仕掛けられたボウガンが、二つの部屋をつなぐ覗き穴から覗いた鞠子を貫いたと言う、昭和14年当時ならともかく、1996年においてはトリックとも呼べないような平凡かつ単純な方法だった。

 で、それをまた明智が、快刀乱麻を断つが如き名調子で波越たちに得々と解説するのだから始末に負えない。

 波越たちは、ボウガンの仕掛けられた部屋が綾子の部屋だったこと、第一発見者も綾子だったことからいよいよ彼女に対する嫌疑を色濃くする。

 素人が考えても、自分の部屋にわざわざそんなもの仕掛ける奴ぁいねえよ、と思うのだが。

 明智の事務所で捜査会議をしている波越たち。

 警察署でやれよ……

 
 明智「僕はね、犯人を暗示する物全てが綾子さんに向けられているのが納得行かないんです」
 波越「はぁ?」
 明智「直子さんが襲われた時、唯一アリバイがなかったのも綾子さん、君子さんが殺された時もまた然り。そして鞠子さんの犯行現場に佇んでいたのもやはり綾子さんだ」
 波越「そりゃあ、明智さん、やはり彼女が犯人だからですよ。完璧な推理だ

 それ、推理って言うんやろか?

 明智が、塔上から合図を送っていたのが綾子だったと教えると、波越はますます勝ち誇って、

 波越「なに、じゃあやはり、私の推理は益々完璧だ。綾子はその合図でガイコツの怪人と連絡を取り合っていたんだ」
 明智「その共犯者の怪人とはいったい誰なんです?」
 波越「う゛……」

 明智はさらに、直子が最初に襲撃された時、家族ではなくわざわざ自分に助けを求めに電話して来たことを強調する。

 波越「まさか直子さんが犯人だなどと言い出すんじゃないでしょうな? まさか、はっはっはっは、直子さんは一番最初に怪人に狙われた人物ですぞ」

 
 明智「はじめに、声を大にし叫びし者、翻ればまったき罪人(つみびと)!」

 芝居がかったゼスチャーで、明智は直子の写真を指差す。

 陣内孝則一流の大袈裟な芝居が、このドラマの魅力の源泉である。

 

 
 小林少年、浮浪者に変装して毎日のように伊志田邸の周囲を見張っていたが、ある夜、彼の目の前で塔の最上階から誰かが墜落する。

 大声を出して屋敷に知らせようとする小林少年の前に、あのガイコツ怪人がその存在を誇示するように現れ、心地良げに哄笑を放つ。

 その後、警察や明智、伊志田などが死体の周りに集まる。

 死体の顔は落下の衝撃のせいか、判別もつかないほどぐちゃぐちゃに崩れていた。

 それでも、伊志田が去年自分が直子に買ってやった指輪を嵌めていたことから、警察は被害者を直子だと断定する。

 波越「明智さん、やはりあなたの無謀な推理は間違ってました。現に直子さんはこうして殺されてしまった」
 明智「……」

 今回も、少し遅れて現場にやって来た綾子に、波越は露骨な疑いの目を向ける。

 この殺人、原作にも似たようなシーンはあるのだが、殺されるのは荒川と言う、「ばってん」が口癖だった貧乏な青年である。また原作で小林少年が登場するのは、このシーンだけ。

 明智は文代を相手に「僕の推理は間違っていたのか?」などと叫ぶが、「あの死体が直子さんではないとしたら」と、ネタバレに近い台詞も口走る。

 と、小林少年が、例の一座が再び興行を始めたと興奮した様子で知らせに来る。

 明智は早速見物に出掛ける。

 
 例によって、軽妙なトークで観客を沸かせる腹話術師の瀬下良一。

 瀬下「日食が近づくと不吉なことが起きると言いますが、折しも、世間様を騒がせております、あーら、おそろしや、連続殺人事件。このすぐ近くの屋敷で美人姉妹の二人までもがお目ン玉をば刺され(中略)残るは長女のみ、警察はその長女が下手人か、となりましたが」
 人形「しゃしゃり出てきた名探偵!」
 瀬下「そう、この名探偵、最初に刺されて大怪我をした次女が怪しいと言い出したそうですが、言った途端に次女は何者かに塔から落とされ真っ逆さま、犯人が殺される訳がない!」
 観客「はははははははっ」
 瀬下「天下の名探偵も形無しでございます」
 人形「その名探偵のお名前は?」
 瀬下「お、ここじゃ言えないねえ。今日もお客で来てるかも知れないし」
 観客「明智小五郎ーっ!」
 瀬下「シーッ!」

 
 観客にまで揶揄されて、思わず苦笑を浮かべる明智。

 瀬下「日食の時には不吉なことが必ず起きる。昼が夜の闇になる時、闇の世界からあらわるる夜の女王、我が一座のスター、我が娘、花子が、モーツァルトのオペラ『魔笛』のアリア、『地獄の復讐が我が胸に煮え返る』……を、歌います」

 
 瀬下の紹介にされて、花子が下手から登場。

 ……って、あのう、バレバレなんですけど。

 
 今度は字幕付きで歌うのだが、稲盛さんは歌えないので、当然、吹き替え。

 明智は何も気付かず耳を傾けていたが、ある箇所で、微かな違和感を覚える。

 
 その後、明智は警視庁に行き、波越警部に頼んで21年前の捜査資料を揃えて貰い、徹底的に調べる。

 21年前にも、日食が観測されているのだ。

 
 波越「無駄な努力です。我々は綾子を逮捕することにしました」
 明智「波越さん、日食の暗闇はほんの一瞬ですが、その暗闇にばかり気を取られていると判断を誤ることになりかねない」
 波越「はぁ」
 明智(パチンと指を鳴らして)「本当の暗闇とは自然現象の暗闇ではありません。本当に恐ろしいのは人間の意識の中の暗闇です。すなわち、人間の心理の錯覚!」

 そして明智はむしろ綾子が逮捕された方が安全かもしれないと一人合点につぶやく。

 だが、警察が伊志田邸を訪ねると、その綾子の姿が忽然と消えていた。

 家族を全て失い、悲嘆に暮れる伊志田だったが、彼のところに、

 「伊志田社長、お前の不幸はまだ終わった訳ではない。俺の本当の相手はお前さんなんだよ。明日は21年に1度の日食の日、お前は五体無事に日食を拝むことが出来るかな」と、稲森いずみの作り声で脅迫めいた電話がかかってくる。

 

 伊志田はすぐ明智の事務所へ行き、脅迫電話のことを知らせ、保護を求める。

 
 明智「本当の相手はあなただと、伊志田さん、その電話の声は告げたのですね?」
 伊志田「犯人の狙いは私を苦しめるだけ苦しめたあとで殺害することだった」
 明智「何か心当たりがおありになるんじゃありませんか」
 伊志田「いや、ありませんよ」
 明智「明日は日食、21年前の人知れぬ事件とは一体……」

 
 明智「伊志田さん、このお屋敷の構造には何かからくりがあるのじゃありませんか? 綾子さんと鞠子さんの部屋の間に開けられた小さな穴、そしてガイコツの怪人は追い詰められたはずの地下室から姿を消した。そしてこの不思議な塔……このお屋敷には色々なからくりが仕掛けてある。それを掴まないことにはガイコツ怪人を捕縛するのは不可能ですね」
 伊志田「いや、知りませんよ、そんなからくりなんか」
 明智「恐らくはこの屋敷の前の持ち主、実業家・雨宮十三郎と言う人がこのからくりを考え、作ったのでしょう」
 伊志田「雨宮十三郎?」

 その名を聞いた途端、伊志田の顔色が明らかに変わった。

 明智は畳み掛けるように、

 
 明智「当然御存知のはずですよね。このお屋敷をあなたに直接売った人だ。その雨宮は、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったのが、突然どういうわけか没落してしまった。その後は全く行方知れずのままです。何か御存知ありませんか?」
 伊志田「いや、知らん」

 明智は執拗に伊志田の抱えている秘密を聞き出そうとするが、伊志田は頑として話そうとしない。

 明智は小林少年に変装をさせてサーカス小屋に潜り込ませ、荷物の中からある物を盗み出させる。それは一枚の楽譜であった。

 また、明智は綾子の部屋を調べてローマ字で書かれた秘密の日記を見付け、ある青年に会いに行く。

 さて、いよいよ日食の起きる日がやってくる。

 伊志田邸では、物々しい警備体制が敷かれていた。

 
 ここでも、波越と伊志田がチェスを戦わせるさまが、独特の演出で描かれている。

 こういうどうでもいいところには力が入っているのだ、このドラマ。

 だいたい、妻と二人の娘を殺されて、残る娘も行方不明と言う状況で、なんでこの伊志田は暢気な顔でチェスをしていられるのだ?

 
 やがて明智もやってきて、君子が良く歌っていた「夜の女王のアリア」の楽譜を見せてくれないかと伊志田に頼む。

 明智「直子さんは君子奥様から声楽のレッスンはお受けになられていらっしゃいましたか?」
 伊志田「ああ、本格的ではないものの、5、6年は……ありました」
 明智「直子さんのレッスンは、君子さんの残されたこの楽譜で?」
 伊志田「詳しいことはよく分からんが、多分……」

 伊志田はしばらく休むと言って、書斎に閉じこもる。

 明智は扉越しになおもあれこれ尋ねていたが、ぱたりと伊志田の声がやむ。

 気になって踏み込むと、今度は伊志田の姿が消えていた。

 そして「事件の真相が知りたかったら瀬下良一一座に来なせえ」と言う手紙が残されていた。

 原作でも、終盤、綾子と伊志田が忽然と姿を消す。そして明智が一郎(ドラマの直子)や北森課長(ドラマでは波越)を相手に謎解きをし、綾子も伊志田も無事に救出されることになっている。

 ただし、ドラマの結末は、かなり異なる。

 

 明智と波越たちは、即座にテント小屋に車を飛ばす。

 
 通算4度目の、瀬下良一一座の舞台の様子。

 明智と波越たちが天幕の中へ入ってくる。

 一応「暗黒星」は「館モノ」の元祖のひとつと言われている(誰に?)のだが、ドラマではむしろこちらのサーカス団のシーンの方が多いような印象を受ける。

 瀬下「最後の公演に、皆様の度肝を抜くような魔術ショーをご覧にいれまするぅ」

 瀬下はそう前置きして、突然、21年前のある出来事を語り始める。それは苦労して財を成したある実業家が、詐欺師まがいの男の甘言に騙され、全財産を奪われてしまったというものだった。

 
 瀬下一座は、それをマネキン人形や仮面を効果的に使って活き活きと描き、観客の心を捉える。

 瀬下「常日頃から実業家の若い妻に横恋慕し、暴力をもって犯し、なぶり、そしてそして蝋燭の燭台で右目を刺してその妻を無残な死に陥れたのです……」

 
 瀬下「実業家は復讐の鬼と化し、己の子をその復讐の手立てにしようと試みたのでありまする。成長して美しい娘となったその実業家の娘はまさに復讐の鬼として父の恨み、母の恨みを晴らすべく、その男の後添いの妻や子供たちを次々に殺害して行ったのであります!」

 瀬下の台詞にあわせて、ドクロの仮面をつけて短剣を振り下ろす仕草をする花子。

 瀬下「しかし、まだ復讐は終わった訳ではない! 何故ならその男自身がまだ生き残っているからであります!」

 瀬下はそう叫んで、復讐の相手である男に擬した、スーツを着たマネキン人形を指差す。

 瀬下「さて、この男、許してやってもよろしいか?」
 観客「いいんじゃないの?」
 瀬下「……」

 じゃなくて、

 観客「ダメだ、許すな!」
 瀬下「では、皆さんの審判は死刑でよろしいか」
 観客「当たり前だ」(拍手)
 瀬下「よろしい、民の声は神の声、天に代わってせめてこの人形の目を突き刺して正義をまっとういたしましょう」

 人形が、杭に縛られて花子の前に立たされる。

 
 瀬下「日食と共に、瀬下良一一世一代の処刑ショーをお見せ致しましょう。ご覧なさい、折しも、日食の闇となり、21年ぶりの地獄が口を開けまするぅ~!」

 天を仰いで絶叫する瀬下。太陽が影に侵食され、一時、世界全体が闇に包まれる。

 瀬下「この闇が晴れましたなら、その時こそ、21年前の復讐劇が完結するのでありまする」

 
 やがて日食が終わり、それと同時に観客がどよめく。いつの間にか、舞台の人形が生きた人間、紛れもない伊志田鉄造にすりかわっていた。

 花子はナイフをその右目に突き立てようとするが、さすがにそれまで突っ立って見物している訳には行かない明智、慌てて舞台に上がり、花子の腕を捕らえる。

 明智「これ以上、人殺しをしてはならない!」

 何も知らない観客は明智の登場にどっと沸きかえる。

 
 明智「違うんだ、これはお芝居でも奇術でもない。それより瀬下さん、いや、雨宮さん、一体綾子はどうしたのです?」
 瀬下「綾子か、ふふふふっ、綾子はそこにいる!」

 瀬下が舞台袖のロープを切ると、

 
 天井に吊るされていた綾子が落ちてくる。無残にも、右目を貫かれて死んでいた。

 死体の出現に、面白がっていた観客達はあっという間に小屋から逃げ出す。

 前述したように、原作では綾子は明智に助けられるのだが、ここではあっさり殺されている。正直、後味が悪い。

 明智(花子を指差して)「波越さん、この女性は、花子さんではありません。花子さんを塔の上から突き落とし、自分は死んだと思わせて花子さんになりすましていた伊志田直子さんだったのです!」
 波越「なんですと!」

 ここからやっと明智による謎解きが始まる。……と言っても、もう犯人の方であらかたネタばらししちゃってるんだけどね。

 
 明智は、21年前の日食の時、瀬下(雨宮)が産院で、生まれたばかりの自分の娘・花子と、伊志田の前妻が産んだ直子とをすりかえたと説明する。

 乱歩の通俗作品ではおなじみのトリック(?)である。

 明智「つまり本物の伊志田直子さんはこの一座の花子さんとして育てられ、雨宮さんの子供である花子さんは伊志田家で育てられた」
 波越「そりゃ一体、何故ですか?」
 明智「復讐の為です。さきほど雨宮さんが自作自演したあのお芝居の通りの現実が21年前に本当に起こっていたんです」
 瀬下「そうだ、この花子は私が伊志田に復讐する為に送り込んだ人間兵器なのだ」
 直子「そうです。私は伊志田鉄造とその家族の全てをこの世から葬る為に生まれ育てられた女、執念の子……」

 一旦舞台袖に下がった直子、

 
 綺麗に道化師メイクを落として戻ってくる。女優ですもの。

 伊志田「お前は……」
 直子「伊志田鉄造、かりそめのお父様、私をここまで育てて下さって本当にありがとう」
 伊志田「いいえ、どう致しまして」

 冷ややかに育ての親・伊志田に礼を言う直子。

 
 明智「ある天文学者が、暗黒星と言う星を想像しました。星と言うものは自らが発光するか、他の天体から光を受けて反射し、明るく光る物です。しかしその暗黒星と言う星は、全く光のない星だ、と。そばに近付いても全く見えない星、僕は今回の事件を考えている時、その暗黒星の話を思い出したんです。今度の犯人は、目の前にいるようでまったく正体がつかめない。自ら光を発しない星、邪悪の星、それは直子さん、あなただったんです!」

 独特の言い回しで真犯人を表現する明智。これは原作にもほぼ同じ台詞がある。

 明智は事件の最初から、直子のやってきたことを説明する。

 最初の16ミリフィルムに仕掛をしたのも無論、直子。

 直子への偽装襲撃は、実父である雨宮を招き入れ、彼にやらせたのだ。

 また、直子は綾子が夜な夜な塔の上から光を発し、外部の誰かと連絡を取っていることを知り、それを利用して、あたかも彼女が犯人であるかのように警察の目を綾子に向けさせたのだ。

 波越「ちょっと待って下さい、それじゃ綾子さんは何の為にそんなことを?」
 明智「恋の為です。綾子さんはお屋敷の塔が見える、裏の長屋に住む青年と恋に落ちていたのです。しかし残念なことにその彼には奥さんと子供さんがいた。綾子さんはそんな忍ぶ恋をはかなんで、ともしびのモールス信号で荒川君に愛情を伝えていたのです」

 ……

 手紙書けよ!(by郵便局)

 なお、ドラマでは不倫の恋だからと言うことになっているが、原作ではばってん荒川青年がビンボーだから、父親に許して貰えないと思った、と言うことになっている。

 ちなみに原作で、直子を襲ったガイコツ男(コウモリ男)に扮していたのが、この荒川だった。彼は真犯人に脅されて協力していたのだ、で、後に屋敷におびき出されて口封じの為に殺されている。

 しばしば綾子のアリバイが不確かだったのも、荒川と密会していたからなのだった。

 明智はその辺の事情を、あのローマ字の日記を読んで知ったのである。

 直子は君子、鞠子を相次いで惨殺し、さらに、本当の直子、つまり、瀬下花子として育てられた娘を、塔の上から突き落とし、自分の身代わりに仕立てたのだ。

 
 ここで、花子が瀬下に厳しく指導されているシーンが挿入される。

 瀬下「血反吐を吐くまでこきつかってやったんだ。伊志田、お前の実の娘をな」
 明智「花子さんはあらかじめ目を潰され、顔をぐちゃぐちゃにされて、自分の運命を何も知らぬまま、短い命を落としたのです」

 見ていてウツになる、後味の悪過ぎる話である。

 しかし、そもそも、いくら血が繋がってないと言っても、赤ん坊のころから育てた娘に、そんなことができるだろうか? いかにも現実味の感じられない話である。

 ついでに言えば、生まれてから一緒に暮らしてきた義母や義理の姉妹たちを、そんなにサクサク殺せるだろうか? これはまあ原作にも言える最大の欠陥であるが。

 それに、これじゃあまるっきり「魔術師」だ。

 もっとも、原作「暗黒星」では、すりかえられた本物の直子(一郎)がどうなったのか、一切説明されておらず、片手落ちの感が強いのだが、ドラマではそこをしっかり補っているという点では評価できる。

 直子「明智さん、私がその後、この一座の花子になりすましていたことにはどうして気付かれたのですか?」

 明智はそう聞かれると、会心の笑みを浮かべ、2枚の楽譜を手に、実際にピアノを叩いて説明する。

 
 明智「僕があなたがたがこの広場に戻ってくると知り、聴きに来た時、僕は不思議なことに気付いたのです。同じ曲なのに、前にこの広場での興行で踊り子の花子さんが歌った歌とは微妙に違う。それは何故なんだろう。僕はそれを確認する為に、小林君にこの一座の楽譜を盗み出して貰いました。そして伊志田邸に残った、君子さんの楽譜と照合した。すると……この部分、この一音だけが、両方の楽譜で違うんです。恐らく書き写す時、書き損じたんでしょう。花子さんはこの一座のこの楽譜で覚えた。直子さんは君子さんの楽譜で習った。直子さんは踊り子になりすましたつもりが、君子さんじこみの間違ったモーツァルトの旋律で歌っていたのです!」

 ドラマではこの楽譜の違いが効果的に使われているが、原作では前述したように香水の匂いが明智が真相に気付くきっかけになっている。

 明智「雨宮さん、あなたの恨みの為に利用された直子さんの気持ちを少しは考えたことがありますか?」

 明智、瀬下に非難の眼差しを向けるが、直子がそれを引き取って、

 直子「いいえ、私はこれっぽっちも後悔していません。私は伊志田家をこの世から抹殺する為に、一生を捧げる決意をしたのです。私が子供の時、実の父親である雨宮が伊志田について本当のことを聞かせてくれました。最初私は信じられなかった。でも、私は見たのです」

 
 ここで、雨宮が地下室の壁を壊し、その奥に塗り込められていた実の母親の死体を見せるシーンとなる。

 ミイラ化した死体を前に、父親から呪いの言葉を囁かれる幼い直子。この子役はなかなか上手い。

 直子の実母は、直子会いたさに伊志田邸に入り込んだところを伊志田に見付かり、

 直子「ケモノのような伊志田に何回も何回も犯されて……」

 いやぁ、若い女性の口からこういう台詞を聞くとコーフンしますね!(黙ってろハゲ)

 
 で、あれこれやってるうちに、彼女は右目に燭台を突き立てられて死んでしまったのだ。

 それを、山下容莉枝さんが演じているが、彼女は他のシリーズ作品にも出演している(で、いつもひどい目に遭う)

 
 瀬下「妻の死体を伊志田が塗り込めるのをワシは忍び込んだ地下室で見たのだ。ワシはその時決意した、司直に委ねるを潔しとせず、復讐はワシと娘の手でとな! 伊志田、ワシはお前に復讐する為に自分の顔を焼いたのだ。魔術師としてお前と顔を合わせても分からんようにな。しかしワシは遂には伊志田を地獄へ送ってやることが出来なかった。復讐にかけた人生も終わりだ……」

 瀬下は、ぶつぶつつぶやいていたが、短剣を取り出し、自らの体に突き立てる。警察は見てるだけ。

 
 直子「暗黒星……明智さん、素敵な名前を付けて下さってありがとう」
 明智「いいえ、どう致しまして」
 直子「暗黒星、自らは光を発さない星、なんて私にふさわしい名前なのかしら……」

 伊志田はずっと綾子の死骸に寄り添っていたが、ここでやっと自分の罪業を認めて反省の弁を口にする。

 
 伊志田「許しておくれ、直子」
 直子「お父様……」
 伊志田「まだお父様と呼んでくれるのか、こんな私を……」

 引き続き、警察から野放しにされている直子、養父である伊志田と感極まったように抱き合う。

 しかし……、

 
 直子は父親に抱きついたまま、手を伸ばし、燭台をつかむや、伊志田の右目にぶすりと突き刺す。

 そう、直子は骨の髄まで復讐の鬼となっていたのだ。

 それにしても、目の前で犯人に人殺しを許すなど、警察も明智も大失態としか言いようがない。

 
 直子「私は何処まで行っても暗黒星……」
 明智「いけないっ」

 直子は瀬下が使った短剣を拾い上げると、それで自分の胸を貫いて自殺する。

 
 明智「雨宮さんは自分が死んでも、必ずや彼女が復讐をなし遂げてくれることを計算して自害したのです。それほどまでに直子さんは人間兵器になりきっていた。何故だ、何故そこまで人間の心が歪んでしまうんだっ」

 顔を覆い、芝居がかったポーズで嘆きの声を放つ明智。

 関係者全員死亡!と言う凄惨な結末に、波越たちも言葉もなく立ち尽くす。

 しかし、明智はこうやって嘆いていれば済むから良いけど、波越たちはこの後、上司への報告書や始末書を書くので大変だったろう。なにしろ、目の前で三人もの人間(犯人2・被害者1)に死なれてるんだからね。

 明智の配慮で、テント小屋から出されていた小林少年のモノローグが、事件を締め括る。

 
 小林「事件は終わりました。戦争へと突き進む、暗い時代を暗示するような陰惨な事件でした。暗黒星、なんと切ない言葉でしょう。哀れ直子さんは生まれた時から暗黒星としての宿命を背負っていたのです……」

 原作では、真犯人は全てを認めた上、「早く死刑にしてぐれーっ」と泣き喚くという醜態を見せて、ポテチン的な結末を迎える。また、その不可解な動機についての説明も、抽象的で納得しがたい。

 ドラマでは、その部分をほぼ「魔術師」と融合させる形で補欠すると共に、復讐に一生を捧げた親子の狂気をあますところなく描いて、一種凄愴な余韻を残すことに成功している。そう言う意味では、原作を超えたと言って良いのではあるまいか。

 もう少し、本格ミステリーらしいトリックが使われていればもっと良かったのだが。

 それに、明智が名探偵らしい働きをほとんどしていないのがちょっと情けない。最後の謎解きも、別に明智がしゃしゃりでなくても、犯人たちが喜んで話してくれただろうからね。

 解決後、明智も「今回ばかりはさすがに参ったよ」と文代にぼやいている。

 文代「復讐だけに生きた人生なんて、直子さん、おかわいそう」
 明智「罪を憎んで人を憎まず、せめてもの供養にと、今回の僕の探偵料は直子さんと雨宮のお墓を建てるのに使おうと思うんだ」
 文代「そう……、えっ?」
 明智「しばらく芝居見物とシネマ、連れていけないけど頼む」
 文代「はぁーっ」

 しかし、探偵料ったって、依頼人の一家は全滅してるんだけどね……

 そもそも誰の命も救えなかったヘボ探偵の分際で、金を取ろうというのがおこがましい。

 ラスト、波越から二十面相が脱獄したと言う電話を受け、颯爽と出掛ける明智の姿を映しつつ、幕が下りるのもシリーズの定番演出である。

 と言う訳で、レビューもこれにて終わり。最後までお読み頂き、感謝です。


 復刻版・編集後記

 ほんとは画像を復刻するだけで済ますつもりだったのが、生来の完璧主義の悪い癖が出て、画像を全て補正して貼り直し、さらに、DVDをチェックしつつ、文章にもかなりの手直しを加えたので、なんだかんだで2時間くらい掛かってしまった。

 正月からナニやってんだろ、俺……

 ともあれ、正月早々、こんな長いレビューを読んで頂き、ありがとうございました!
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コメント

後味が悪い

確かに後味だけが悪い結末でしたね👎関係者全員が死んだのに、お金を取る(仕事とはいえ)ってどうも意味が分からないのですがね😅

Re: 後味が悪い

依頼人を全員死なせておいて、名探偵もクソもないですよね。

夜の女王のアリア

モーツァルトの「夜の女王のアリア」が登場する作品と言えば、やはり僕的には映画「アマデウス」の終盤シーンです。
作曲家としてろくな仕事に恵まれず、暮らしも荒れていたモーツァルト(トム・ハリス)は、ある夜それも顧みず奥さんのコンスタンツェの目を逃れて友人たちと一晩飲み歩き朝帰り。二日酔いをおして雪の降る中を家に帰ってみるとコンスタンツェの姿はありません!
モーツァルトは、コンスタンツェのおっかさん、つまりは姑さんのウェーバー夫人に呼びつけられ熱いお灸を据えられる事となります!!
「あの子は、私が温泉へ療治に出したのよ!あの子のやつれ方には驚いたわ!これと言うのもあなたの無責任のせいよ!!世間から天才音楽家とかちやほやされて調子に乗って、お酒は飲む、博打は打つ・・・・・・・(怒)!!!」
等とひたすら怒鳴り自分を貶めるウェーバー夫人の口元を生気を無くした目で見ていたモーツァルトでしたが、その夫人の口元がそのままオペラ「魔笛」の舞台で「夜の女王のアリア」を歌う女性歌手の映像に切り替わると言う珍場面がありました!
しかもそれをオーケストラピットで指揮するモーツァルトも顔面蒼白の上油汗をかき、それに続く場面では遂に倒れてしまいます!!モーツァルト自身にも最後の時が迫っており、モーツァルトはそこから寝たきり状態の中で「レクイエム」を作曲する事になります。

Re: 夜の女王のアリア

いつも言ってるように、自分は大変無教養な人間ですので、とても勉強になります。

恥ずかしながら「アマデウス」も見たことがないのです……

清水絋治さん

ご返信ありがとうございます。

ところで清水絋治さんと言えば、やはり「フラッシュマン」の大博士リー・ケフレンでしょう!且つて「バイオマン」で秀一の素行調査のためにドクター・マンが老紳士に変装して街中に現れた事がありましたが、もしケフレンも変装して街中に現れる場面があったら、ここに観る鉄造氏の様なルックスになるかもしれませんね(笑)!

Re: 清水絋治さん

知的な悪の首領と言う点では、ピカイチのキャラですよね。

残念ながら、「フラッシュマン」のレビューの予定はないですが。

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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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