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「好き!すき!!魔女先生」 第20話「恐怖の暗闇魔人」



 第20話「恐怖の暗闇魔人」(1972年2月13日)

 常々、路線変更後はどれもクソだと主張している管理人だが、この20話に関しては、路線変更前の、「魔女先生」本来の面白さを不完全ながら備えている佳作となっている。

 理由は簡単で、脚本を書いているのがメインライターの辻真先さんだからである。

 何度も繰り返すが、脚本は大事である。

 冒頭から、クモンデスが学校の屋上にいて、中庭を見下ろしている。

 
 中庭では正夫と進が、頬に大きなホクロのあるルミという女の子をからかっていた。

 正夫「やーい、やーい、サイコロ」
 ルミ「私、サイコロなんかじゃない」
 正夫「おい、鏡を見てみろよ、ホクロがひとつでよ、賽の目を作ってよ。おい、悔しかったらよ、二つや三つ作ってみろよ、おい」

 そのホクロをサイコロの目になぞらえて女の子の容姿を馬鹿にすると言う、あまり正夫らしくない陰湿なイジメをしていると、

 
 その悪口を封じるように、何処からともなくミカンが飛んできて、その口にすっぽり嵌まる。

 正夫「んがっ、うん?」

 見るに見兼ねたひかるの仕業であった。

 
 ひかる「おやめなさいっ」
 ルミ「先生!」
 正夫「おい、食えっ」

 その様子をじっと見ていたクモンデス、何かろくでもないことを思いついたように、

 クモンデス「ふっふっふっ、あれは使えるな」

 ひかる、怪しい気配に気付いて視線を上げるが、既にクモンデスは忽然と姿を消していた。

 放課後、ルミが帰宅中、とある店のショーウィンドーに自分の顔を映して溜息をついていると、

 
 店員「あの子、可愛いわね」
 店員「ホクロがかえって良いじゃない」

 それに気付いた店員が、ルミの容姿をホクロ込みで褒める。

 だが、外にいるルミには会話の内容は聞こえず、逆に、

 
 ルミ「何を笑ってんのかしら?」

 正夫と同じく、自分のホクロのことを笑っているのではないかと不安になる。

 辻さんの、こういう、人間の……子供の微妙な心理の綾を描き出す才能は、島田さんや真里ちゃんの遠く及ばないところである。

 医師「あんたのホクロだよ」

 と、ルミの不安を具現化した声が、背後から飛んできてルミの胸に突き刺さる。

 
 ルミ「えっ」
 医師「そのホクロがある限り、あんたは笑いものになる。それが嫌ならついてきなさい」
 ルミ「……」
 医師「笑われても構わないと言うのかね?」

 黒い服に、真っ白なモジャモジャ頭をした怪しげな男は、そう言うと、さっさと向こうへ行ってしまう。

 一瞬躊躇したルミだったが、やがて男の背中を追って走り出す。

 
 男がやって来たのは、白いドクロの看板の出ている、森の中の不気味な洋館であったが、

 ルミ「美容整形術? なーんだ、お医者さんだったの!」

 ルミは相手が医者だとわかるや、安堵の笑みを満面に浮かべる。

 手術室のような部屋につれてこられたルミに、男は初めてその顔をはっきり見せるが、それは、顔の半分がクモの巣のようになった、おぞましいものだった。

 口に手を当て、思わず出そうになった悲鳴を飲み込んで、顔を背けるルミ。

 
 医師「ふっふっふっふっ、驚くことはない、と言っても無理じゃろうがな」
 ルミ「……」
 医師「ご覧のとおり、わしは醜い、だからこそ死に物狂いになって美しくなる方法を研究しておるのじゃ、これを取るにはまだまだ研究を積まねばならん。じゃが、そんな小さなホクロなら、たちどころに取って上げる。どうだな、手術を受ける勇気、ありなさるか?」
 ルミ「……」

 ルミ、親にも無断で手術を受けるのはためらわれたが、正夫たちの自分をからかっている憎たらしい顔が脳裏をよぎり、消え入りそうな声で「はい……」と答えてしまう。

 しかし、この医者の顔、火傷の跡などを、黒いマスクで隠しているように見えるし、黒い部分がそのままかさぶたのように変形しているようにも見えるし、まぎらわしい。

 ともあれ、ルミは手術を受けてホクロを除去してもらい、スキップを踏みながら病院を後にするのだった。

 だが、その医者は案の定クモンデスの化けたもので、彼が、単なる善意でそんなことをしたのではないのは明らかだった。

 
 果たして、その夜、ルミがふと目覚めて鏡に自分の顔を映すと、ホクロのあった部分が、劇薬でも浴びたように醜く爛れているではないか。

 ルミ「これが私? 手術の失敗だわ……ああっ」

 絶望のあまり、一睡もしないで夜を明かしたルミだったが、恐る恐るもう一度鏡の前に立ってみると、あら不思議、今度はホクロのない綺麗な顔に戻っているではないか。

 ルミ「良かった、夢だった。あー、良かった」

 文字通り胸を撫で下ろして、深い安堵の息をつくルミ。

 上機嫌で学校へ行くと、寝ぼけ眼の旗野先生を見掛け、元気に挨拶する。

 
 ルミ「おはようございまぁす!」
 旗野「うんぁああ、おはよう……ううーん」
 ルミ「うっふ」
 旗野「……なんか用か?」
 ルミ「ううん、別にぃ、用ってほどじゃないけど、昨日、お医者さんに行ったんです」
 旗野「医者? そりゃいかんなぁ、鼻風邪が?」

 
 ルミ「違います」

 ルミ、自分の頬を指で差してアピールするが、旗野先生は救いがたいほど鈍感且つ無関心で、

 
 旗野「あ、歯痛?」
 ルミ「違います」
 旗野「うぅ、なんでもよろしい、とにかく大切にしろ」

 ホクロのことに全く気付かず、さりとて聞こうともせず、さっさと歩いて行ってしまう。

 ルミ「あ、ああ……もう、鈍感ねえ」

 ルミが嘆息していると、入れ違いにひかるがやってきて、

 
 ひかる「あら、ホクロがないわ、丘さん」
 ルミ「さっすがーっ、バットマンとはだんちだわぁ」

 対照的に一目で気付いたひかるの明敏さに、ルミが快哉を叫ぶ。

 ひかる「どうしたの? 薬で? それとも自然に?」
 ルミ「手術したんです」
 ひかる「えっ?」
 ルミ「気味の悪いお医者さんだったけど、あっという間に取ってくれたの。あ、今度先生にも紹介してあげる」

 快活に答えて走り去るルミの背中に、「あっは、先生にはホクロはないのよ」と声を掛けてから、

 ひかる「気味の悪い医者?」

 少し気掛かりそうにつぶやくひかるであった。

 ルンルン気分で教室に入ってきたルミだったが、何故か他の子供たちはひとりもおらず、代わりに、教壇の下から、ぬっとあの医者があらわれる。

 
 医者「昨夜のことを夢だと思っているらしいな」
 ルミ「ああ……」

 恐怖のあまり、その場に立ち尽くすルミ。

 医者「もしそれが本当だとしたら? 治す方法はひとつしかない、それを友達に移すことだ、ひとりでもふたりでも多く……ほっぺたを触らせるだけでよい」

 それだけ言うと、医者はパッと姿を消し、同時に部屋も明るくなって、正夫と進が入ってくる。

 
 正夫「あ゛あ゛っ! おい、こいつのホクロがなくなっちゃったよ」
 進「ええーっ? あ、ああ、ほんとだー」

 正夫たちはすぐルミの変化に気付き、必要以上に驚いてみせる。

 
 正夫「お前、化粧してんだろ?」
 ルミ「違うわ、嘘だと思うなら……触ってご覧なさい」

 ルミ、さっきの医者の言葉を頭の中でリフレインさせてから、決然と正夫たちを直視し、頬を触って確かめるよう促す。

 ちなみに、ルミの左頬、確かにホクロはなくなっているのだが、代わりに何かにかぶれたように赤くなっている。

 これは恐らく、爛れた皮膚の特殊メイクをした際、その素材によって斉藤浩子さんの皮膚が実際に炎症を起こしてしまったのではないかと思う。

 言い忘れていたが、ルミを演じるのは70年代特撮の有名子役、斉藤浩子さんである。

 さて、正夫と進がルミの頬をべたべた触っていると、ハルコちゃんも登校してきて、

 
 ハルコ「おはよう、何してるの」
 正夫「こいつの、サイコロの目がなくなっちゃったんだよ、ほら」
 ハルコ「……」

 こうしてハルコちゃんも、何も知らずにルミの頬を撫で撫でしてしまう。

 一方、校舎に入ろうとしていたひかる、中庭を横切って出て行こうとしている見知らぬ男から「妖気」を感じ、男の前に瞬間移動する。

 
 ひかる「誰、お前は?」
 医師「ふふふふふふっ……」

 が、男は気味の悪い笑みを漏らしながら、そのままひかるの横をすり抜けて行ってしまう。

 もっとも、この段階では特に何か起きた訳ではないので、ひかるも黙って見過ごすしかないのだった。

 ちなみに、直前の19話と比べると、ひかるがアンドロ仮面になる前から、普通に超能力を使っている点、なかなかクモンデスが登場しない点で、大きな違いが見られることに気付く。

 前者については、ひかるがアンドロ仮面に変身する必要性そのものに異議を唱えているようにも受け取れるし、後者については、クモンデスというキャラクターにまったく魅力がないことの裏返しのようにも見え、辻さんの路線変更後の設定に対する不満が露呈しているように見える……と言うのは考え過ぎだろうか。

 その夜、ルミが再び左頬に違和感を覚えて鏡を見ると、またしてもあの醜い顔になっているではないか。

 思わず悲鳴を上げるルミだったが、ひかるに言われてルミの家の屋上で監視していたバルがその声に驚き、下宿先のひかるにテレパシーで呼びかける。

 ひかるはアンドロ仮面に変身すると、夜空をひとっ飛びしてルミの家にやってくる。

 同じ頃、正夫、進、

 

 

 
 ハルコ「きゃあっ!」

 そして愛しのハルコちゃんが、それぞれ、ルミの頬を触った手がルミと同じように醜く膿み爛れたようになっているのに気付いて飛び起き、思わず悲鳴を上げていた。

 
 母親「しっかりしなさい、夢でも見たの?」
 ルミ「夢じゃない、本当だった、本当に……」
 父親「泣いてばかりいちゃ分からんよ」

 ルミは、悲鳴に驚いて駆けつけた両親に両側から助け起こされるが、手で顔を覆って泣きじゃくるばかりなので、両親もほとほと困っていた。

 母親「顔がどうかしたの?」
 ルミ「お母さん!」
 母親「まぁ、ほら……別に変わったことないじゃないの」
 ルミ「え?」

 母親に抱きついて泣くルミだったが、その顔を覗き込んだ母親から指摘され、漸く落ち着きを取り戻す。

 父親から渡された鏡を見ると、いつの間にか痣が消えていた。

 父親「なんだ、こいつ、寝惚けとったのかぁ」

 
 屋根の上でそれを聞いていたひかる、何故か、アンドロ仮面から普通の姿に戻っている。

 
 ひかる「しっかりしてよ、バルぅ、丘さんが寝惚けるたびに私を叩き起こすつもり?」
 バル「いや、そんな筈は、あったのである」

 実際に痣を見ていないひかるも、てっきりそれがルミの夢だと考え、バルをなじる。

 しかし、菊さん、女ながら、良くこんなところに、それもブーツで立って演技が出来るものだと感服する。

 また、真冬の撮影だと言うのに、露出の高いアンドロ仮面の格好でアクションされているし、その女優魂は見上げたものである。

 
 翌朝、学校の屋上で、ルミが同じ目に遭った三人に、ぺこぺこ頭を下げて謝罪している。

 ルミ「勘弁して、おかしな手術したばかりに迷惑かけてしまって」
 ハルコ「そりゃあびっくりしたわ、昨夜自分の手を見て涙が出ちゃった」
 ルミ「すみません、木村さん、すみません、田辺さん、竜村さん、うつると知っててわざと触らせたんだもん」

 だが、基本的にさっぱりした性格の正夫は、格別ルミには怒りを見せず、

 正夫「だけどよぉ、一番悪いのは丘じゃねえよ、なぁ?」
 進「そうだよ、一番悪いのはその医者だよ」

 その代わりに問題の医者を非難すれば、

 
 ハルコ「そうだわ、私だってそんなこと言われたら、うつすもの」

 真面目で心優しいハルコちゃんも、そう言ってルミの立場に理解を示すのだった。

 さらに、

 正夫「そうだよ、みんなで押しかけてよー、そいつに責任とってもらおうぜ」

 と言うことになり、

 
 正夫「おい、なんだか薄気味悪いところだなぁ」
 ハルコ「こんなところに病院があったかしら?」

 放課後、今度は4人でその病院にクレームをつけに来るのだった。

 このシーンが象徴的だが、辻さんの描く世界では、子供たちがひたすら受動的で被害者の立場から一歩も踏み出そうとしない19話と違い、ストーリーを動かしているはあくまで子供たちであり、ひかるではないことが分かる。

 と、同時に、それこそが「魔女先生」本来の面白さの淵源なのだと、それを失って初めて思い知らされた管理人であった。

 いかにも怪奇ムード漂う建物の外観に、正夫たちがなかなか踏み出せずにいると、いつの間にか、彼らの傍らにその胡散臭い医者が立っているではないか。

 医師「何か御用かな?」

 
 正夫「あっ、ああっ!」

 突然話し掛けられて、ギョッとする正夫であったが、勇気を振り絞り、

 
 正夫「お、おじさんかよ、丘ルミ子のホクロを取ったっつのは?」

 医師に確かめるのだが……あれ、正夫、ルミのことをルミ子と呼んでるぞ。

 Wikiにルミって書いてあるので何も考えずにルミと書いてきたが、正しくはルミ子だったらしい。

 まぁ、面倒くさいので、以後もルミで統一する。

 それはそれとして、正夫の背中に隠れるように小さくなっているハルコちゃんが可愛いのである!

 医師「それがどうしたのかな?」
 正夫「どうもこうもねえや、ルミ子のほっぺた触ったらよぉ、昨夜、俺たちの手が腫れちゃってよぉ」
 医師「それはつまり手術の副作用でな」
 ハルコ「治るんですか」
 医師「治るとも、ただし、4人が一緒に手術を受けたらの話じゃが」

 
 ルミ「また手術?」
 正夫「おい、どうする?」

 
 ハルコ「そうすれば絶対出ないんですね?」
 医師「約束しよう。絶対に出ん」
 進「タダかい?」
 医師「もちろん」

 
 ハルコ「じゃあ、私、受ける!」
 正夫「ようし、決まった、おじさん、頼むよ」

 迷っていた4人だが、無料と言うのが決め手になったのか、結局手術を受けることに同意するが、ほどなく彼らは「タダより高いものはない」と言う諺をその身で経験することになる。

 CM後、4人を目隠しして椅子に縛り上げた医師は、ここでクモンデスの姿となり、ルミたちの首に牙を突き立て、新鮮な生き血を存分に味わう。

 だったら、全員の血を残らず吸えばいいものを、何故か少し吸っただけで彼らを解放し、「痣を取りたければ、当分私の元へ通え」と、命じる。

 恐らく、彼らを餌に、ひかるを誘い出すのが目的だったのだろう。

 翌朝、正夫も進も夢遊病者のような危なっかしい足取りで登校しているところを、旗野先生や校長に見付かり、どやされる。

 
 ハルコちゃんやルミも、校庭に力なく座り込んでいるところを、教頭に注意される。

 教頭「何をしてるの? 早くしないと授業に遅れますよ」

 何度も怒鳴られて漸く立ち上がる二人であったが、いかにも元気のない歩き方であった。

 職員室でひかるは、旗野先生から進の様子が変だと聞かされる。

 
 ひかる「ええっ、首筋に歯の跡が?」
 旗野「そうなんですよ、はじめは狂犬に噛まれたのかと思ったんですけどねー、犬の口にしては小さ過ぎるんだなぁ」
 ひかる「……」

 
 旗野「あ、なんだ」
 ひかる「え?」

 宙を睨んで考え込んでいた旗野先生が、何か思い当たったような声を上げたので、ひかるもその顔を見上げるが、

 旗野「あっははははははは、アベックのやぶ蚊に噛まれたんだ」

 
 ひかる「……」

 教育者とも思えぬ太平楽な発想に、「まあ」とでも言いたげに口を大きく開くひかるだったが、あまりに呆れたせいか、声が出ない。

 そこへ教頭が入ってきて、ルミを含むひかるの生徒が理由もなく学校を早退したと聞かされ、慌てて職員室を飛び出す。

 ひかるが4人が追いかけて学校から出て行った後、バットを持った旗野先生も校舎から出てきて、

 
 旗野「ね、ね、ね、ね、月先生を見ませんでしたか」
 山辺「ティーチャー・ムーン?」
 旗野「イエス」
 山辺「……」
 旗野「あっち? イエス、サンキュー・マイ・オールドボーイ」

 イギリスかぶれの山辺に調子を合わせて英語交じりの会話を交わして、颯爽とひかるの後を追う。

 こういう、ストーリーとは関係ない、遊びのシーンがあるか無いかが、19話などの無味乾燥なエピソードとの大きな違いなのである。

 さて、クモンデスは再び子供たちを呼び集め、血を吸うとともに、ひかるが来るのを待っていたが、待つまでもなくひかるが駆けつける。

 しかし、ひかるは病院の場所までは知らない筈なのに、それにしては来るのが早過ぎる気もする。

 クモンデス、ひかるの左手にクモ糸を巻きつけ、ムーンライトリングを封じ、

 
 恐れ多くも、姫の血まで吸おうとする。

 ひかる「バルーっ! 助けてーっ!」

 
 バルに助けを求めるひかるだったが、そこへあらわれたのは、バルではなく意外にも旗野先生であった。

 旗野「うんにゃあ、この化け物め!」

 バットマンこと旗野先生の振り回すバットに、さしものクモンデスもうろたえてひかるの体を離す。

 久しぶりに……と言うより、多分、初めて、ひかるの前で良い所を見せた旗野先生。

 
 旗野「へっ、もう駄目だかんにー!」

 もっとも、このまま旗野先生がクモンデスを撲殺してしまってはアンドロ仮面の出番が無いので、間違って壁を叩いた衝撃で、旗野先生はあえなく気絶する。

 この後、ひかるがアンドロ仮面に変身し、いわゆるラス殺陣となる。

 いつものように、寒風吹く中、二の腕や太もももあらわに、ほとんどのアクションを自分で演じておられる菊さんの頑張りには敬意を表するが、特にどうでもいいのでカット。

 今回は、お宝ショットも皆無だったからね。

 途中でバルも応援に駆けつけ、二人がかりで何とかクモンデスを撃退したひかる。

 
 それと同時に、建物は看板だけを残して煙のように消え失せる。

 病院自体、クモンデスの作り出した幻影だったのだ。

 旗野先生、目を覚ますと、バットを振り上げ、バルに向かって突進する。

 
 旗野「月先生、危ないっ」
 バル「待つべし、地球人」
 旗野「うん、お、なんだバル公か」
 バル「バル公とは何事、クモンデスはわしの鼻息により、吹き飛ばしたのである」
 旗野「ほんとかおい」
 バル「ほんとうよ、ねえ、姫」
 ひかる「まあね」

 ひかるがアンドロ仮面に変身して倒したとは言えないので、バルが嘘を言って自分の手柄にしてしまう。

 しかし、明らかに宇宙人であるバルの存在が公になっている状況では、別にひかるの正体がアンドロ仮面だとバレても、特に問題ないような気もするんだけどね。

 
 旗野「ありがとうバル君、いやバル様、このとおりだ! うんにゃああ、ぶちゅっ」
 バル「むっ、モーレツ」
 旗野「おえっ」

 感激した旗野先生、バットを放り出すと、いきなりバルの口に熱烈なキスをぶちかますのだった。

 いやぁ、やっぱり、辻さんの脚本は面白い。

 これが、路線変更前の回だったら、ホクロに悩むルミの心情をより細やかに描いて、さらに数倍面白くなっていただろう。

 
 その日の放課後だろうか、ハルコちゃんがルミと一緒に帰っている。

 ハルコ「またホクロが出て来てる」
 ルミ「そうよ」

 ハルコちゃんが気付いて指摘するが、

 
 ルミ「でも、もう気にしないことにしたの」
 ハルコ「もちろんよ、だってルミちゃん、美人だもん」
 ルミ「ほんとにそう思う?」
 ハルコ「うん」
 ルミ「うれしっ、私もそう思うことにしたの」

 ホクロにからんで散々怖い思いをしたルミだが、そんなことを深刻に悩むことがバカバカしくなったのだろう、そう言って、精神的に成長したことを示す。

 進「いーっ、これだからねーっ」
 正夫「だからね、女っちゅうのは付き合いにくいんだよ!」

 それを聞いて、石立鉄男みたいな口調で大人びた台詞を吐く正夫たち。

 以上、内容的には路線変更前のエピソードに最も近い、掘り出し物の佳作であった。

 それにしても、前回とほぼ同じくらいのボリュームになったが、前回が、レビューを書くのがとてもつらかったのに対し、今回は全然苦にならず、むしろ、書くのが楽しいくらいであった。

 優れたシナリオと、残念なシナリオの間には、それくらいの差が横たわっているのである。

 なお、ハルコちゃんの画像がやたらたくさん貼ってあるのは、管理人の趣味です。
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コメント

こうも違うとは

今回は面白い作品でしたね🤣子供達1人1人のアップとかリアクションが普段と違って賑やかでしたね。シナリオの書き手が違うとこうも違うものですね😅

Re: こうも違うとは

路線変更後がつまらないのは、ライター陣が変わったことも大きかったと思います。

不要なコメント

 ルミの父親役の大山 豊は、6話で八百屋のオヤジ役でも出ていた。

Re: 不要なコメント

相変わらずお詳しいですね。

頬に傷のある女

「桃太郎侍」の「頬に傷のある女」と言うお話を、子供目線の内容にした様なお話にも思えます。
桃さんは、田のさん(山城新伍さん)たちと江戸でも人気店と言われるとある料理店で女子会ならぬ男子会を開きますが、そこで給仕として勤めるおゆうさん(佳那晃子さん)には、美貌とは裏腹に頬に傷跡があったために、一同はびっくり。
「こんな顔をしていても、普通の人間でございます・・・・。」
とのおゆうさんに対し、仁兵衛親方(深江章喜さん)は、
「お前さん、そんな綺麗な顔なのに何でほっぺたに傷なんか・・・?!」
と興味津々な様子で訊き、大工のとん太(北野清治さん)も
「男出入りじゃねぇのかいっ♪」
等と冷やかしいると、桃さんが
「お前たち、よさないかっ!!いやぁ、みんな悪気はないんだ。気にしないでくれよ。」
と一同を一喝しておゆうさんをフォローします。
ここにみる序盤の場面等は、ルミちゃん→おゆうさん、正夫と進→仁兵衛親方ととん太、ひかる先生→桃さんと置き換えられます!!
因みにおゆうさんが頬に傷を作ってしまったのは、おゆうさんには性格が正反対のおばずれなおはま(横山エリさん)と言う姉さんがおり、子供の頃、周りからおゆうさんばかりがかわいがられていたのをひがんだおはまが、刃物で傷付けてしまったため!!
今では、おゆうさんと和解していたおはまでしたが、悪仲間とその飼い主でもある乗っ取り屋から、おゆうさんの勤める料理店の乗っ取りのために主人(熊沢博士・・・・・、もとい珍しく善人な頭師孝雄さん)を色仕掛けでたぶらかす事をおゆうさんの命と引き換えに依頼され、更におゆうさんは主人から結婚を申し込まれていたため、おはまは依頼と妹の幸せとの板挟みに苦しめられる事となります!!
結果、おはまは悪仲間を裏切り、おゆうさんと主人を助けた挙句、口封じをされてしまいますが、乗っ取り屋一味は黒幕の悪奉行(五味龍太郎さん)共々、桃さんに成敗され、おゆうさんは頬に傷をもちながらも姉さんの尊い犠牲によって主人と結ばれる幸せを得るのでした!!
クモンデスの所為で、恐怖を味わったルミちゃんでしたが、そのクモンデスを悪奉行を成敗した桃さんの様にひかる先生=アンドロ仮面が倒してくれた事でもあるし、きっと将来はおゆうさんの様な幸せが待っていて欲しい物ですね。

Re: 頬に傷のある女

いつもながら詳しい解説ありがとうございます。

その話は多分見てないと思います。

ルミちゃんに姉さんがいたら・その1

>これが、路線変更前の回なら、ホクロに悩むルミの心情をより細やかに描いて、さらに数倍面白くなったいただろう。

これが、仰る通り路線変更前なら、「桃太郎侍」での上記のお話も踏まえ、以下の様な内容になっていたとも思われます。

桃さんは、頬の傷を消す薬だと言いおゆうさんに塗り薬を与え
「あんな、便利な薬を出すだなんて流石は旦那ですね~。」
と感心する田のさんに対し
「いや、あれは傷を消す薬ではなく、肌を綺麗にする薬だ。今のあの人に必要なのは心の治療なのだ。」
と応えます。それと同じ様に、ルミちゃんの頬にあるのは、ほくろではなくここでのほくろ大の火傷の跡で、ひかる先生もその火傷の跡を消す薬と言い、ルミちゃんに塗り薬を与えます。大喜びでそれを貰い帰って行くルミちゃんを見て
「いやぁ~、あんな便利な薬を出すとは!また、ムーンライトリングで作ったんじゃろうて。流石は姫じゃのう~♪」
と感心するバルでしたが
「いいえ、あれは只のヒルドイドよ。今のルミちゃんに必要なのは、火傷より心の治療だわ。」
とひかる先生も応えます。因みにルミちゃんにはおはまの様なあばずれではないものの、お父ちゃんの商売が経営不振なのをバイトをしながら支える、「シャイダー」の陽子さんの様な姉さん(キャスト的には隅田和世さん等)がおり、ルミちゃんの頬の火傷の跡も、まだルミちゃんが幼稚園の頃、花火遊びをしていた際、その姉さんが発射したロケット花火が誤ってルミちゃんの頬に当たってしまったため!!姉さんは今でも時々
「ルミのほっぺたをそんなにしちゃったのは私だから・・・。」
とルミちゃんに話す等おはま同様の罪の意識を持っています。そしてひかる先生から貰ったヒルドイドを火傷の跡を消す薬と信じきって一生懸命頬に塗っているルミちゃんを物陰から見ていた姉さんは、今のままではいつまで経ってもルミちゃんの火傷を治してあげられないため、治療費稼ぎのために「悪いバイト」に手を染める決心をしてしまいます!!(続きます)

ルミちゃんに姉さんがいたら・その2

(続きです)
姉さんが夜な夜な外出しては、自分の治療費稼ぎのために不心得者たちと接触している事を知ってしまったルミちゃん!!それを進たちから聞いた正夫は、
「こいつはいけねぇ!こうなったのも俺たちがあいつのほっぺたの火傷をからかったりしたせいだ!済まねぇ、ルミっ!!」
となり、更にその会話を聞いていた旗野先生も
「生徒の危機を見て見ぬふりは出来ん!よ~し、こうなったら先生も及ばずながら手を貸すぞっ!!」
とルミちゃんの姉さんを正夫たちと悪の道から助け出そうと一計を案じます!!
夜の街を姉さんを探し回っているルミちゃん。そして一方で不心得者たちと裏通りを闊歩していた姉さんでしたが、その前に
「おーーーーっと、お嬢さん!お待ちなせいっ!!!!」
と北島三郎さんの「兄弟仁義」風の曲をバックに現れたのは、渡世人姿に変装した旗野先生と組員風に変装した正夫、進、タケシ!!
「おめぇら、お嬢さんを連れて行こうたぁ、天下の東西組に断りもなく可愛げねぇ真似しやがって!!」
との旗野先生!不心得者のリーダーは
「なっ、何だとっ?東西組だとっ?!」
と訊き返しますが、
「バキヤローッ!東西組の若頭、旗野の兄貴を知らねぇのかっ(怒)!!」
と見事にハッタリを食らわす正夫!!それを見て
「あっ、あれはルミの学校の旗野先生と正夫くんたちだわ・・・・・・(驚)!!」
と心の中で叫ぶ姉さん!!
「おひけいなすって!手前生国と発しますは河内の国大阪でござんす!!」
と正夫のハッタリにも負けじと旗野先生も堂に入った仁義をきりますが、それでも姉さんを返そうとしない不心得者たちに
「そうかい!どうあってもお嬢さんをこっちに返さねぇなら、気の毒ながら浮世の薬!マサっ!!!」
と言い、それに合わせて正夫もモデルガンを構え
「へいっ、兄貴っ!おめえら、さもねぇとこいつが火を噴くぜっ(怒)!!」
と不心得者たちをびびらせます!!こうして姉さんは旗野先生と正夫たちの手に渡り奪回作戦は大成功・・・・・と思いきや、そこへ折り悪くルミちゃんが現れ
「姉さーーーーんっ、私の火傷のためにもう止めてっ(泣)!!(旗野先生や正夫たちを見て)あら、旗野先生に正夫くんたちじゃないの?どうしたのよ、みんな任侠映画みたいなかっこうしちゃってっ(驚)?!」
とネタを割ってしまったために、
「ほう、てめえら、随分な猿芝居を打ってくれやがったなっ(怒)!!!!!」
となる不心得者に
「旗野先生、正夫くん、これって超やばくないっすか・・・・(怖)?!」
との進!!姉さんを連れて一目散に逃げ出す一同を
「待ちやがれーーーーーーっ(怒)!!!!」
と追い掛け出す不心得者たち!!そしてそれを見つけたひかる先生も追い掛けて行きます!!(続きます)

ルミちゃんに姉さんがいたら・その3

(続き、そして完結編です)
とうとう、不心得者たちに袋小路に追い詰められてしまった旗野先生と正夫たち、そしてルミちゃん姉妹!!
「ナメんじゃねえぞ、てめえらっ!やれっ!!!!」
との不心得者たちでしたが、その時後ろから
「待ちなっ!!!!」
との声が!!そこに立っていたのは、般若の面を着けた桃さんの代わりに、ムーンライトリングで裾に般若の絵が描かれた黒く凛々しい着流しに身を固め赤い和傘をさした女博徒姿に変身したひかる先生!!
「兄さんたち、堅気のみなさんに手を挙げるだなんて、恥ずかしくないのかい?」
とのひかる先生に
「やかましいやいっ!!!」
と掴み掛かる不心得者たち!!それを、和傘で叩きのめすのに見せ掛け、やはりムーンライトリングのパワーで投げ飛ばし、遂には懐刀でリーダーのズボンまで斬り落としてしまったひかる先生は、
「さあ、もうあのお嬢さん(ルミちゃんの姉さん)を仲間に引き込むような真似は止めるんだねっ!!」
と凄み、不心得者たちは
「わっ、わかりやしたーーーーーっ(怖)!!!」
と逃げ出して行きます!!同時に女博徒姿のひかる先生も疾風の様に消え
「助かったぁ~。でも今のどこの姐さんだろ?!」
と一同がなっていると、そこへ普段着に戻ったひかる先生が現れます。
「わかった、ルミちゃん。もう火傷の事でお姉さんにこんな余計な心配を掛けちゃ駄目よ!」
とルミちゃんを諭し
「それにそんな火傷があってもルミちゃんは十分にかわいいわよ♪」
ともフォローしてルミちゃんも
「はい、ひかる先生♪」
と漸く笑顔を取り戻します!!そして
「それにしても、旗野先生も正夫くんたちも、そのかっこう案外似合ってるわよ♪」
とひかる先生に渡世人姿を冷やかされ旗野先生や正夫たちも思わず苦笑い!!
こうして姉さんは以前までの地道なバイトに戻り、ルミちゃんも頬の火傷を気にせずに明るく元気はつらつ周りと接し合えるようになります。
また、長い文章になりましたが、こんなお話はいかがでしょうか?因みに旗野先生や正夫が渡世人に変装するくだりは、「まいっちんぐマチコ先生」の「まどかの星の王子様」と言うお話で不心得者たちから山形先生やケン太たちがまどかちゃんを助ける場面をインスパイアさせていただきました(笑)!!

Re: ルミちゃんに姉さんがいたら・その3

いつもながら、本当のシナリオみたいな巧みな文章に感服いたしました。

菊さん、女博徒姿がいかにも似合いそうですよね。

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