第22話「邪魔者は殺(け)せ ガイゼルの至上命令」(1974年9月17日)
冒頭、デスパーシティへの入り口を発見したインターポールの秘密捜査官ナカヤシキ。

捜査官「ナンバー0483より、0446、荒井調査官! 応答願います」
小型通信機で荒井に連絡しようとするが、荒井が応答する前に、黒ずくめのスナイパーに撃ち殺されてしまう。
ガイゼル「邪魔者は消せ、我がデスパーに楯突くものども、そして渡五郎、イナズマン!」
別の場所に打ち捨てられたその死体を調べに来た五郎と荒井は、衿についていた「IP」と書かれたバッジから、それが秘密捜査官であることを知る。
その最中、3号埠頭で別の男の死体が発見されたとの知らせが入り、二人はそちらに急行する。
死体は、3号埠頭のビルの屋上にあり、額を射抜かれたその男の服にも、「IP」のバッジがついていた。

荒井「最近、デスパー捜査の秘密行動を取る、インターボールの捜査官三人を日本へ送り込んだと言う連絡が入った。だがそのうちの二人が既に死体になってしまった」
五郎「あとひとりは?」
荒井「一切分かっていない、何かの確証を掴んだとき、初めて私のところに連絡が来ることになっている。それまでに私と接触を持つと、デスパーに気づかれてしまうと言う配慮からだ」
男の「IP」バッジを調べていた荒井は、その中に、数字がびっしりと書き込まれた小さな紙片が隠されているのに気付く。
荒井「これは我々の使う乱数表だ。何が手掛かりが掴め掛けていたのかもしれない。急いで解読する必要がある」
五郎「ええ」
荒井はそう言うのだが、乱数表をどうやって解読すると言うのだろう?
ここは、普通に暗号で良かったんじゃないの?
だが、二人がビルの階段を降りている頃、既に別のビルの屋上から、黒ずくめの狙撃手の銃口が彼らに狙いを定めていた。
スナイパーは五郎の心臓目掛けて引き金を引くが、寸前で気付いた荒井が五郎の体を突き飛ばした為、命拾いする。
一転、追われる立場となった狙撃手だが、

岸壁の近くに停めていた車に乗り込もうとしたところを、別の狙撃手によって射殺されてしまう。
男の服の衿には、05という数字が縫い付けてあった。

荒井「この男もデスパーの殺し屋か……」
二人がしゃがんで男の死体を調べていると、誰かがこちらに向かってくる。
振り向いた視線の先にいたのは、

繋留してある船からタラップで岸壁に降り立った、うら若き女性であった。
そう、70年代を代表する特撮ヒロインの一人で、第5話にもゲスト出演している牧れいさんである!
上下ともデニムと言う、ジーンズメイトから出てきたような色気のないいでたちだが、相変わらず凛々しく、美しい。

二人は険しい視線をその女性、白鳥ジュンに注ぐが、ジュンは無言のまま、小ぶりのケースをぶら下げて、すたすたと立ち去ってしまう。
その中に、スナイパーライフルが入っているのだろう。
その様子をガイゼルもご覧遊ばしていた。

ガイゼル「あの女は何者だ?」
怪人「あの女は白鳥ジュン、私の妹、死んだ05は私の弟です」
サデスパー「何故兄(05)を殺させた?」
怪人「05が渡五郎に捕らえられた時、あの男の口から我々の作戦が漏れるのを恐れたのです」
ガイゼルたちの質問に、今回の怪人ブラックデスパーが明答する。
一方、五郎と荒井は、さっきの乱数表を根性で解いて割り出したアドレスにやってくる。

ジュン「カモメに託した、私の恋は広い海に、消えたまま~♪」
そのバーともスナックともつかない薄暗い店の隅で、ギターの弾き語りをしているのが、さっきの白鳥ジュンであった。

ジュン「どんなことでも一度だけ~♪」
とりあえずカウンターに座った五郎、その涼やかな歌声に耳を傾ける。
牧れいさんが歌を歌うのは、これ以外では見たことないが、これがなかなか上手いのである。

ジュン「一度だけしかないわたぁしぃ~♪
私にとって二度と言う言葉はすべて要らないの~♪」
と、五郎が荒井に、ジュンの前に座っているソンブレロを被った、どう見ても頭がおかしいとしか思えない男の存在に注意を促す。
ジュン「波に誓った、私の願い~♪
今でも海は知っている~♪
生きる証を立てるため~♪」

ジュン「涙を捨てた私なの~♪」
歌いながら、席を立ってカウンターに近付くソンブレロに目をやるジュン。
やっぱ、牧れいさんは美人だよね。
ややケツアゴ気味の角張ったアゴも、その勝ち気なイメージにぴったりである。

ジュン「私にとって一度だけ~♪
小さな願いをささやいた~♪」
いかん、あまりに可愛いので意味もなく画像を貼ってしまう。
ストーリーに意識を集中させよう。
ソンブレロは、荒井の横に座ると、

コルト「インターポール荒井調査官……」
荒井「君は誰だ。どうして私のことを知っている?」
コルト「私がインターポールの人間だとしたら?」
荒井「証拠は?」

ジュン「ルールルー、ルールルー」
ああっ、またやってしまった……
俺はダメな人間だ。
男「表で話しましょう。ここではゆっくり話せない」
ソンブレロは、そう言って先に店を出て行く。
五郎「荒井さん」
荒井「分かっている、何かのきっかけが掴めるかも知れん」
罠ではないかと危ぶむ五郎に頷いて見せると、男の後を追う荒井。
ジュン「ルールルー、ルールルー……」
結局ジュンは、最後まで歌いっ放しなのだった。
荒井「君の名前は?」
コルト「コルト・カシーラ」
荒井「何かデスパーの確証を掴んだのか」
コルト「いいえ、まだなにも」
荒井「では何故君は私に話し掛けてきた?」
コルト・カシーラと名乗る男は、荒井の質問には答えず、タバコを投げ捨てて歩き出す。
コルトを追いかけて操車場に来たところで、荒井が相手の正体を喝破する。

荒井「君はインターポールではない。インターポールの捜査官は、不用意に私に話しかけたりはしない。貴様は一体何者だ、デスパーか?」
コルト「ふふふふ、バレたら仕方がない」
コルトは不気味な笑みを漏らすと、

ソンブレロを脱ぎ捨て、漆黒のサイボーグの姿に変わる。
デスパー怪人の中でも極めてスタイリッシュな、どことなく横山光輝っぽいブラックデスパーである。
怪人「くろがねの殺し屋、このブラックデスパーが、貴様たちを倒す」
荒井が戦闘員たちを倒している間、五郎はブラックデスパーと素手で殴り合っていたが、頃合を見てサナギマンに変身しようとする。
だが、ポーズを取った瞬間、ブラックデスパーが銃を撃ってくるので、ポーズを決める余裕がない。
と、貨物列車の中からジュンがライフルを撃って、ブラックデスパーの持つ銃を弾き飛ばす。
怪人「くそう、邪魔が入った。貴様たち、今度こそ仕留めてやるぞ」
荒井もやってきたので、ブラックデスパーはあっさり退散する。

荒井「五郎君」
五郎「さっきの銃声は?」
荒井「またあの女だ。敵か味方か……」
ジュンの不可解な行動に戸惑う五郎であった。
CM後、デスパー恒例の、サデスパーによるお仕置きタイムが開催されている。

サデスパー「でやっ、くぬっ、口ほどにもない奴め、渡五郎を仕留められなかったことの言い訳は聞かんぞ!」
サデスパー、口を極めてブラックデスパーを罵りながら、何度もムチを振り下ろす。
サデスパー「ガイゼル総統、こやつの始末は?」
ガイゼル「……」
サデスパー「はっ」
相変わらず無口なガイゼル、チェスの駒を動かして、命令を伝える。

サデスパー「貴様を殺してやる!」
ガイゼルの答えはやはり「死刑!」だったらしく、サデスパー、変質者のように胸を開いて、そのトゲトゲのついたベストのような扉で、ブラックデスパーを串刺しにしようと迫る。
しかし、今まで何度も見させられてきたシーンだが、ガイゼルを裏切ったとか、大きなヘマをしたとかならともかく、一度イナズマンを倒しそこなったくらいでいちいち怪人を処刑していた日には、いくら怪人がいても足りはしまい。
そんなことをして喜ぶのは、他ならぬイナズマンだと言うことに、どうして気付かないのか?
やっぱり、
バカなのかな……
と、そこへあらわれた男女三人が、サデスパーを止めに入る。

ジュン「お待ちください、ハンター02」
03「03」
04「04」
あ、ジュンって書いちゃったけど、一発で分かるから良いよね。
サデスパー「ブラックデスパーは攻撃に失敗した。ガイゼル総統は失敗を許さぬお方だ」
ジュン「お言葉ですが、サデスパー参謀、ハンターはまだここに3名います。ブラックデスパーは私どもの指揮官、万が一、私たち3名が失敗した時、処刑なさるべきだと思います」
ジュンの訴えを聞いていたガイゼル、不意に立ち上がると、
ガイゼル「サデスパー、後は任せる」
サデスパー「はーっ」
暗に、ジュンの願いを聞き届けてやれと言って、退室する。
……
なんだかんだで、ガイゼル、やっぱり女の子に甘いんだなぁ。
一方、五郎と荒井は、いつものアジトに戻って事件について話し合っていた。

荒井「どの方面に依頼しても、あの女の正体は掴めない」
五郎「全く謎の多い女だ。でも、何かの鍵を握ってることは間違いないでしょう」
荒井「暗号の場所にあの女がいた。調査官は何かを掴んだ矢先に殺されたに違いない」
五郎「日本に来たもう一人のインターポールは?」
荒井「いくら緊急事態だと説明しても、本部では機密事項だから教えられないと言うんだ」
上層部の杓子定規な対応に不満を漏らす荒井であったが、そこに涼やかな女の声で連絡が入り、自分こそインターポールの捜査官だと名乗り、明日5号埋立地の貯木場に来て欲しいと告げる。
声は明らかにジュンのものだった。
五郎「荒井さん、罠では?」
荒井「しかし、ここと連絡を取れるのはインターポールだけだ」

ジュン「誰も知らない私の祈り~♪
海は黙って見詰めてる~♪
波に揺れてる屑星にぃ~♪
ぶつけた石が私なの~♪
私にとってただ一度、悲しい祈りをつぶやいた~♪」
翌日、貯木場の桟橋に繋留されたボートの舷側に腰掛けて、再びあの歌を熱唱しているジュン。
そこへ昨日のブラックデスパーことコルトがやってきて、

コルト「ジュン、俺の邪魔をしたのはお前だな?」
ジュン「……」
コルト「何故俺の邪魔をした? 兄弟を殺したばかりか、兄貴の俺までも……お前は俺の妹だ。そしてハンター02の筈だ」
ジュン「……」
コルト「返事をしろ!」
ジュンが衣装を黄色いミニスカワンピとロングブーツに変えているのは大変喜ばしいのだが、あいにく、その足元をほとんど映してくれない。
ちくしょう。

ジュン「あの時、渡五郎がイナズマンになっていたら兄さんは負けていたわ。射撃の名手コルト・カシーラ、すなわち、ブラックデスパーに一度の失敗もさせなくなかったからよ」
コルト「なんだとぉ、何故俺がイナズマンに負けると決めてかかる?」

ジュン「私がいたからよ」
コルト「なにぃ、それは一体どういう意味だ?」
ジュン「私は兄さんたちが探していたあとひとりのインターポール、デスパーの秘密調査官」
コルト「貴様ぁ」
ジュン、自ら正体を明かすと、

素早く兄の顔に銃を突きつける。コルトもすぐ銃を抜き、
コルト「ジュン、お前、この俺までも撃つ気か」
ジュン「やめなさいよ兄さん、射撃の方は私のほうが上、それは兄さんもよく知ってる筈でしょ」
いいなぁ、この、妹なんだけど、上から見下したような態度と喋り方。
どっちかって言うと、牧れいさんってSっぽいキャラなので、こう言うシーンではその魅力が存分に発揮されるのだ。
コルト「貴様、よくも俺を裏切ったな」
ジュン「裏切りはしないわ、たった今から、デスパーNN作戦のハンター02!」
謎めいた言葉を口にしながら、引き金を引くジュンだったが、彼女が狙ったのは兄ではなく、その背後にいた荒井だった。

ジュン「荒井調査官、すべて聞いたとおりよ、今までの私はインターポールの白鳥ジュン、たった今からデスパーのハンター02……これは返すわ」
ジュン、そう言うと、衿につけていたバッジを毟り取り、五郎に逃げて寄越す。

五郎「名誉あるインターポールの調査官がデスパーに魂を売ったのか?」
五郎、銃口に体を晒しながら、険しい顔でジュンの本心を問い質すが、ジュンは眉ひとつ動かさず、

ジュン「そうよ、元々私は悪魔が好きな女よ」
五郎「それが何故インターポールに入った?」
ジュン「私はFBI幹部の娘、父や母を殺したデスパーが憎かった。それに悪は滅びると信じているからよ!」
五郎「……」
ジュン「私の兄はデスパーに改造された、でも私にはとても優しく育ててくれた。一度ぐらい良い妹になりたかった。だからインターボールを裏切ったのよ」
と、いささか分裂気味の答えを返す。
しかし、こうして五郎と堂々と渡り合っているジュンを見てると、是非、ゲストじゃなくてレギュラーとして番組に参加して欲しかったなぁと強く思わずにいられない。
もっとも、牧れいさんでは、「レッドバロン」同様、主人公を食っちゃう可能性が高いから、やっぱりゲスト出演で正解だったのかな?
ジュン、五郎の足元に向けて発砲するが、五郎も微動だにせず、
五郎「君の言うとおりだ。悪は滅びる!」

ジュン「余計なことはよして、渡五郎、死んでもらうわ!」
ミニスカワンピとブーツの組み合わせがサイコーに可愛いジュンだったが、非常に悲しいことに、それがはっきり見えるのは、このカットだけなのである。
ちくしょう。
五郎、ジュンの拳銃を奪おうと二人で揉み合っていたが、恐らく何も考えていないコルトが五郎目掛けて撃ち、

ジュン「ああっ」
コルト「ジュン!」
その狙いが外れ、ジュンの胸に命中してしまう。
ここから、イナズマンとブラックデスパーとのラス殺陣となるが、特にどうでもいいのでカット。

せいぜい、水に浮かんだ丸太の上でのアクションが目を引く程度である。
ちなみに彼らの後方に見えるのは、この年の7月に竣工したばかりの「船の科学館」であろう。
イナズマン、激闘の末、ブラックデスパーを倒すが、既にジュンは絶命しており、愁嘆場は見られない。

牧れいさんをお姫様抱っこするという美味しい役をもらった荒井さんが羨ましい。

本当の美人は、逆さまになっても美人だと言うことがよく分かるショット。
次の場面では、早くも教会の墓地に建てられた「マリア・エリザベート白鳥ジュン」と書かれた十字架に花を供えている五郎の姿が映し出される。
物悲しい鐘の音を聞きながら、なんとも遣る瀬無い気持ちになる五郎であったが、

荒井「五郎君、彼女が投げて寄越したバッジの中に暗号文が仕込んであった」
五郎「えっ」
荒井「デスパーシティの入り口が分かるかも知れん」
五郎「なんですって?」
そこへ緊迫した様子で駆けつけた荒井の口から出た言葉で、俄かに五郎の目に輝きが戻る。

五郎「白鳥ジュンはインターボールを裏切りはしなかったんですね?」
荒井「うん、インターポールのマークは伊達にはつけられない、名誉あるものなのだ。育ててくれた兄へも操(みさお)を立てて死んで行った気の毒な子だった」
そう、ジュンは、肉親への絶ち難い情愛と、インターポールとしての使命感の狭間で苦悩しつつ、最後までインターポールとしての誇りを失わなかった、気骨のある女性だったのである。
彼女が折りに触れ歌っていたあの歌は、そんな己のアンビバレントな心情を表現した魂の叫びだったのかもしれない。
こうして急転直下、デスパーの本拠地デスパーシティに潜入する為の大きな手掛かりを得た五郎と荒井は、次回、デスパーとの最終決戦に臨むことになるのである。
……
……
……
あのう、ところで、
ハンター03と04は? どうやら、白鳥ジュンの歌唱タイムが長過ぎたせいか、03と04の活躍するシーンがカットされてしまったらしい。
まぁ、最初から予定になかったのかもしれないが、ストーリーの流れからしたら、貯木場のシーンの前に、03と04が五郎を狙撃しようとして失敗するシーンがないとおかしいよね。
以上、色々と説明不足な点が気になるものの、極上の美女をゲストに迎えた、ハードボイルドタッチの力作であった。
これで、ミニスカワンピのジュンの回し蹴りなんてのがあったらなぁ……
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